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私道に持分がない家を売るには?掘削・通行の承諾が取れないときの民法のルール・承諾料・位置指定道路と2項道路の違い・断られた家の売り方
令和5年4月1日に施行された民法の改正で、水道・ガス・電気などの設備を他人の土地に通す権利(設備設置権)が明文化され、成立する場合は、承諾書がなくても民法上は設置できます。承諾料を求められても応ずる義務はないと、法務省は解説しています。ただし事前の通知は必要で、拒まれたときは判決を求めることになります。通行そのものの権利、私道の種類、売却への影響は、法務省・国土交通省・住宅金融支援機構の原文で、このページに分けて整理しました。
| 困っていること | 民法・国の解説の答え | 最初に確かめる先 |
|---|---|---|
| 他人の私道の下に、水道管などを新しく通したい | 設備設置権が成立すれば、承諾書がなくても民法上は設置できる。事前の通知は必要 | 水道事業者・ガス事業者の窓口 |
| 承諾料を求められた | 設備設置権が成立する場合は、応ずる義務はない(法務省) | 買主になる不動産会社・水道事業者 |
| 前の私道が、建築基準法の道路なのか分からない | 特定行政庁が指定道路図と指定道路調書を閲覧に供する | 特定行政庁(市町村または都道府県)の建築関係の窓口 |
法務省「令和3年民法・不動産登記法改正のポイント」と「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」、国土交通省「建築基準法道路関係規定運用指針の解説」(2026年10月3日に取得)。設備設置権が成立するかは、土地ごとに違います。
自分はどの場合に当てはまるか
- 水道管・ガス管を、他人の私道の下に通す必要がある:節2と節3から読んでください。
- 承諾料や承諾書を求められている:節3にあります。
- 前の私道が建築基準法の道路なのか分からない:節4にあります。
- 売れるのか、買主のローンに響くのかを知りたい:節5にあります。
- 道路に接していない・接道が足りない:再建築不可の土地のページにあります。
- 敷地に里道・赤道・水路がかかっている:里道・水路の払い下げのページにあります。
- 訳アリの家の買取業者を比べたい:訳アリ物件の買取のページにあります。
私道に持分がないと、何が困るのか
法務省のガイドラインは、私道の持ち方を大きく2つに分けています。持分がない、といっても、どちらの私道か、自分がどこまで権利を持つかで、話が変わります。
- 共同所有型:私道全体を複数の人が所有し、民法の共有の規定が当てはまるものです。共有持分を持つ人は、持分に応じて私道を使えます。
- 相互持合型:私道が複数の筆の土地からできていて、隣り合う宅地の所有者が、それぞれ一筆ずつ所有するものです。ガイドラインは、各所有者が互いに、通行などを目的とする地役権を設定していると考えられている、としています。裁判例には、明示の合意がなくても黙示の通行地役権を認めたものがある、とも書かれています。
水道管などの工事で困るのは、その管が通る土地の所有者の承諾を、どう扱うかです。工事の中身ごとに、次のように分かれます。
- 新しく管を通す:節3の設備設置権が当てはまるかを見ます。
- すでにある配水管の取替え:ガイドラインの事例では、承諾書が残っていなくても、水の供給を受け続けている以上、利用権が黙示に設定されたと認められることが多い、としています。
- 通行そのもの:持分も地役権も持たない人が私道を通行する権利について、取得した原典には書かれていませんでした。通行の根拠が、登記された地役権なのか、書面の承諾なのかは、買主になる不動産会社と、私道の所有者に確かめることになります。
私道に面した土地の境界がはっきりしないときは、境界確認と測量のページにあります。
令和5年の民法改正で、掘削の承諾は要らなくなったのか
令和3年に成立し、令和5年4月1日に施行された民法の改正で、民法213条の2が設けられました。法務省の資料によると、改正の前は明文の規定がなく、設備の設置に応じてもらえないときや、所有者が所在不明のときの対応が難しく、不当な承諾料を求められる例もありました。
| 論点 | 民法213条の2・法務省の解説 | 注意点 |
|---|---|---|
| 使える場面 | 他の土地に設備を設置したり、他人の設備を使ったりしなければ、電気・ガス・水道水などの供給を受けられないとき | 電話・インターネットなどの電気通信も含まれる。隣り合っていない土地にも設置できる |
| 場所と方法 | 必要な範囲内で、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ | 公道に通じる私道があれば、通常はその部分を選ぶ |
| 事前の通知 | 目的・場所・方法を、他の土地の所有者と、その土地を使っている人に通知する | 所在不明でも通知は必要。公示による意思表示を使う |
| 償金と承諾料 | 損害には償金を払う。承諾料に応ずる義務はない | 地下に管を通し、地上の利用を制限しないときは、損害が認められないことがある |
民法213条の2(e-Gov法令検索)と、法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」27・28ページ。
つまり、設備設置権が成立する場合、民法上は承諾書がなくても設置できます。ただし、次の点は残ります。
- 拒まれたとき:自力執行は禁止されているため、妨害禁止の判決を求めることになります。他の土地が空き地で、使う人も妨害のおそれもないときは、裁判を経なくても設置できると考えられていますが、事案ごとの判断です。
- 水道事業者の手続き:承諾書を求めるかどうかは、各地方公共団体が決めます。厚生労働省の通知は、承諾書がないことは、給水を断る正当の理由に当たらないとしています。京都市は、承諾書の写しを求める取扱いをやめました。
- 売却の場面:売買契約でどう扱うかは、取得した原典に書かれていませんでした。買主になる不動産会社と水道事業者の両方に確かめます。
位置指定道路と2項道路は、何が違うのか
建築物の敷地は、建築基準法42条の道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法43条1項)。私道のうち、この道路として扱われるものに、位置指定道路(42条1項5号)と2項道路(42条2項)があります。国土交通省の運用指針の解説をもとに、違いを整理します。
| 項目 | 位置指定道路(5号道路) | 2項道路 |
|---|---|---|
| 成り立ち | 土地を建築物の敷地にするため、築造しようとする者が、特定行政庁から位置の指定を受けた幅員4m以上の道 | 建築基準法の規定が適用された際に、現に建築物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの |
| 指定の手続き | 申請に基づく。申請には、土地所有者などの承諾書が要る | 特定行政庁が、基準時に自ら行う性質のもの |
| 土地への影響・留意点 | 運用指針は、築造が完了し、道路としての形態が整ってから指定するべきとしている | 所有権の制限はなく、使用権の制限が生じる。補償の対象にはならない |
建築基準法42条(e-Gov法令検索)と、国土交通省「建築基準法道路関係規定運用指針の解説」(平成21年1月改定)。2項道路は、中心線から2mの線を道路の境界線とみなします。
- 調べ方:特定行政庁が、指定道路図と指定道路調書を作成して閲覧に供するものとされています。前の私道がどちらなのか、そもそも42条の道路なのかは、そこで確かめます。
- 42条の道路でない私道のとき:接道の条件を満たさず、再建築不可になる場合があります。くわしくは再建築不可の土地のページにあります。
売却と住宅ローンには、どう響くのか
公的な原典で言えるのは、次の範囲です。売値への影響や、ローンの審査の通りやすさは、取得した原典に書かれていませんでした。
- 買主への説明:宅地建物取引業法35条1項は、宅地建物取引業者が売買に関わるとき、契約が成立するまでに、私道に関する負担に関する事項(3号)と、飲用水・電気・ガスの供給及び排水のための施設の整備の状況(4号)を、書面で説明しなければならないとしています。私道に関する負担や、水道・ガスなどの整備の状況は、買主に説明される事項です。
- 住宅ローン:住宅金融支援機構のフラット35のよくある質問は、家のある土地と公道の間の進入路を、申込人以外が所有している場合について、申込人が進入路を使う権原により取扱いが異なる、としています。詳しくは取扱金融機関に問い合わせるよう案内されています。
- 確かめる相手:買主になる不動産会社、買主が相談する金融機関、水道事業者の窓口の3つです。
断られた家は、どう売るか
私道の持分や承諾の問題で地元の不動産会社に断られても、売る道がなくなるわけではありません。訳アリ物件を専門に買い取る会社に、現状のまま相談する方法があります。
- ラクウルの公式サイトの記載:買い取れる物件の一覧に「再建築不可物件」があります。よくある質問には、「建て替えが出来ない土地でも処分できますか?」に対し、「はい、問題ありません」とあり、建築基準法や都市計画法の観点なども考慮しつつ査定する、と書かれています。
- 断られた物件:「他社に断られた物件でも大丈夫ですか?」にも、「はい、問題ありません」と書かれています。
- 注意点:公式サイトに私道の語は出てきません。私道の持分がない家が買取の対象になるかは、物件ごとに、相談して確かめることになります。
申し込みは、開いた画面のいちばん上の「メール相談」から、名前・電話番号・メールアドレスと、物件の種別・都道府県・市区町村の6項目で進められます。
よくある質問
承諾料を払わないと、水道管やガス管を通せませんか?
法務省は、民法の設備設置権が成立する場合、他の土地の所有者から設備の設置を承諾することに対するいわゆる承諾料を求められても、応ずる義務はないと解説しています。ただし、設備の設置で他の土地に損害が生じたときは償金を払います。償金の対象は実損害で、地下に導管を通し地上の利用を制限しないケースでは、損害が認められないことがあるとされています。
承諾が取れないとき、勝手に掘ってもよいですか?
法務省の解説は、設備設置権がある場合も、一般に自力執行は禁止されているとしています。拒まれたときは、妨害禁止の判決を求めることになります。他の土地が空き地で、使っている人がおらず、設備の設置が妨害されるおそれもないときは、裁判を経なくても適法に設置できると考えられる、とも書かれていますが、事案ごとの判断です。
私道の所有者が分からない・所在不明のときは、どうなりますか?
設備設置権を使うときの事前の通知は、相手が所在不明でも例外なく必要です。法務省の解説は、簡易裁判所の公示による意思表示(民法98条)を使うとしています。通知の期間の目安は事案によりますが、2週間から1か月程度と書かれています。
水道事業者は、承諾書がないと工事を受け付けないのですか?
承諾書の要否は、各地方公共団体が実情に応じて判断します。法務省のガイドラインが紹介する厚生労働省の通知(平成28年11月28日付け)は、承諾書の提出がないことは、水道事業者が給水を断る正当の理由に当たらないとしています。一方で、工事の申込み時に、土地の所有者との調整は申込人が行うことを確認する対応は否定していません。実際の扱いは、水道事業者の窓口で確かめます。
自分の家の前の私道が、位置指定道路か2項道路かを調べるには?
国土交通省の運用指針は、特定行政庁が、指定道路図と指定道路調書を作成・保存し、閲覧に供するものとしています。閲覧の場所と方法は、特定行政庁が定めて告示します。特定行政庁は、建築主事などを置く市町村ではその市町村の長、それ以外の市町村の区域では都道府県知事です(建築基準法2条)。
私道に持分がないと、買主の住宅ローンは使えませんか?
取得した原典では、使えない、とは書かれていませんでした。住宅金融支援機構のフラット35のよくある質問は、家のある土地と公道の間の進入路を申込人以外が所有している場合、申込人が進入路を使う権原によって取扱いが異なるとして、取扱金融機関への問い合わせを案内しています。融資の可否は、買主が相談する金融機関の判断です。
私道の持分がない家は、ラクウルで買い取ってもらえますか?
ラクウルの公式サイトには、買い取れる物件の一つに再建築不可物件が載っています。よくある質問にも「他社に断られた物件でも大丈夫ですか?」「はい、問題ありません」とあります。ただし、公式サイトに私道の語は出てこないため、私道の持分がない家が対象になるかは、相談して確かめることになります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第210条〜第213条の3)
- e-Gov法令検索 建築基準法(第42条・第43条)
- e-Gov法令検索 宅地建物取引業法(第35条)
- 法務省 新制度の概要・ポイント(民法等の一部を改正する法律)
- 法務省 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(PDF)
- 法務省 所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)(PDF)
- 国土交通省 建築基準法道路関係規定運用指針の解説(PDF)
- 住宅金融支援機構 フラット35 よくある質問(進入路がある場合の抵当権の設定方法)
- ラクウル(訳アリ不動産買取専門店)公式サイト
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の土地について、設備設置権が成立するか、承諾書が要るか、売却や融資ができるかを保証するものではありません。国土交通省の運用指針の解説は平成21年改定のものです。取り扱いは水道事業者・特定行政庁・金融機関ごとに異なるため、必要に応じて窓口や弁護士・司法書士・土地家屋調査士などの専門家に確認してください。