相続登記は 2024年4月 から義務化。正当な理由なく3年以内に登記しないと最大10万円の過料対象です
TIMELINE

相続〜不動産処分の全体フロー

期限付きの重要手続きが複数同時進行します。「3ヶ月」「4ヶ月」「10ヶ月」「3年」の4つの期限を軸に抑えましょう。

下の期限はどれも法律の条文に書かれているものです。起算点がそれぞれ違うので、「亡くなった日から数える」と思い込んでいると数日〜数週間ずれます。各項目で条文の文言をそのまま示しました。

死亡直後〜7日

死亡届の根拠は戸籍法第86条です。「死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない」と定められています。届書には死亡の年月日時分および場所などを記載し、診断書または検案書を添付します。やむを得ない事由で診断書・検案書を得られないときは、死亡の事実を証すべき書面で代えることができ、その場合は得られない事由を届書に記載します。

世帯主変更届は住民基本台帳法第25条の世帯変更届です。「その属する世帯又はその世帯主に変更があつた者は、その変更があつた日から十四日以内に、その氏名、変更があつた事項及び変更があつた年月日を市町村長に届け出なければならない」とされています。死亡を知った日ではなく、変更があった日から14日である点に注意してください。

1ヶ月以内

検認については民法第1004条が根拠です。第1項は「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする」と定めています。第2項により公正証書による遺言には適用されません。そして第3項は「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない」としています。封のある自筆証書遺言を自宅で開けてしまわないでください。

相続人が複数いる場合、遺産分割が終わるまで不動産は共有状態です。民法第896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」とし、第898条第1項は「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めています。第2項により、各相続人の共有持分は法定相続分(民法第900条〜第902条)で算定されます。売却するには共有者全員の関与が必要になるので、相続人の確定を後回しにすると売却の入口で止まります。

分割の方法は民法第907条にあります。第1項は共同相続人がいつでも協議で分割できること(遺言で禁じられた場合等を除く)、第2項は協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できることを定めています。話がまとまらないまま何年も置くのではなく、家庭裁判所に持ち込む道があることを覚えておいてください。

3ヶ月以内(重要期限①)

民法第915条第1項は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」と定めています。起算点は死亡日ではなく知った時です。同項ただし書により、この期間は利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます。負債や不動産の調査が間に合わないと分かった時点で、伸長の申立てを検討してください。同条第2項は、承認・放棄をする前に相続財産の調査ができることを明記しています。

放棄の方法は民法第938条で「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」とされています。他の相続人に口頭で伝えるだけでは足りません。

期限を過ぎた場合の効果は民法第921条第2号にあり、第915条第1項の期間内に限定承認または放棄をしなかったときは単純承認をしたものとみなされます。加えて同条第1号は、期間内であっても相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認とみなすとしています(保存行為と、民法第602条に定める期間を超えない賃貸は除く)。放棄を検討している間に空き家を売ったり解体したりしないこと。放棄した後の管理義務については空き家問題の基礎で民法第940条を扱っています。

4ヶ月以内(重要期限②)

根拠は所得税法第125条第1項です。「居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第百二十条第一項の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に対し、当該所得税について申告書を提出しなければならない」とされています。

年をまたいだ死亡には別の条文が当たります。所得税法第124条第1項は、前年分の確定申告書を提出すべき居住者が、その年の1月1日から提出期限までの間に申告書を提出しないで死亡した場合について、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日までに提出しなければならないと定めています。1月・2月に亡くなった場合は、前年分と当年分の2件になることがあります

正確には「4ヶ月以内」ではなく「知った日の翌日から4月を経過した日の前日まで」です。数日の違いですが、期限ぎりぎりで動くときは効いてきます。

10ヶ月以内(重要期限③)

相続税法第27条第1項は、相続または遺贈により財産を取得した者などについて、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に相続税額があるときに、「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない」と定めています。

条文を読むと分かるとおり、申告義務が生じるのは基礎控除を超え、かつ税額があるときです。もっとも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、特例を使うために申告書の提出が必要になります。「税額が0だから出さなくてよい」と自己判断しないでください。

これは条文にはっきり書かれています。相続税法第19条の2第3項は、配偶者の税額軽減について「第一項の規定は、第二十七条の規定による申告書…に、第一項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をした書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する」としています。小規模宅地等の特例も同じ作りで、租税特別措置法第69条の4第7項が、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用すると定めています。

また、「申告までに分割が間に合わないと特例が一切使えなくなる」というのも正確ではありません。相続税法第19条の2第2項は、申告期限までに分割されていない財産を配偶者の税額軽減の対象から外す一方、そのただし書で「その分割されていない財産が申告期限から三年以内…に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない」としています。訴えの提起その他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、税務署長の承認を受けてさらに延ばす道もあります。ただし、いずれも申告期限までに所定の手続きを踏むことが前提です。分割がまとまらない見込みなら、10か月を迎える前に税理士に相談してください。

同条第2項は、申告書を提出すべき者が提出期限前に提出しないで死亡した場合について、その者の相続人が、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に、死亡した者に係る申告書を提出しなければならないとしています。相続の途中で相続人が亡くなる(数次相続)と、期限がもう一段増えます。

3年以内(重要期限④)

相続登記の根拠は不動産登記法第76条の2第1項で、相続により所有権を取得した者は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」とされています。同条は遺産分割後の期限や、相続人申告登記との関係も定めており、詳しくは相続登記義務化のページにまとめました。

3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)は租税特別措置法第35条第3項です。適用されるのは平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡で、かつ「当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日まで」にしたものに限られます。譲渡の対価の額が1億円を超えるものは除かれます。要件と細かい例外は3,000万円特別控除のページにあります。

取得費加算は租税特別措置法第39条第1項です。相続税額がある個人が、「当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る相続税法第二十七条第一項…の規定による申告書…の提出期限…の翌日以後三年を経過する日までの間」に、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された資産を譲渡した場合に、取得費に相続税額のうち対応する部分を加算できるという規定です。相続開始から3年ではなく、相続税の申告期限(10か月)からさらに3年なので、実質は相続開始から約3年10か月になります。

ここで注意が必要なのが2つの特例の関係です。措置法第35条第3項の「対象譲渡」の定義には「第三十九条の規定の適用を受けるものを除く」という括弧書きがあります。3,000万円特別控除と取得費加算は、同じ譲渡について併用できません。どちらが有利かは譲渡益と納めた相続税額で変わるので、売る前に試算してください。

売却に入ってからの期限

不動産会社に売却を任せる段階でも、期間の定めがあります。宅地建物取引業法第34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間は3月を超えることができないとし、これより長い期間を定めたときはその期間は3月とすると定めています。第4項により更新は依頼者の申出によるもので、更新の時から3月を超えることはできません。

報告の頻度も法定です。同条第9項は、専任媒介契約を締結した業者に対し、業務の処理状況を2週間に1回以上(依頼者が自ら探した相手方と契約できない特約を含む専属専任媒介契約では1週間に1回以上)報告することを義務づけています。第8項により、売買の申込みがあったときは遅滞なく依頼者に報告しなければなりません。そして第10項で、第3項から第6項まで及び第8項・第9項に反する特約は無効とされています。売却の全体像は相続不動産の売却の流れにまとめています。

不動産処分の判断フロー

  1. 維持費がいくらかかるか把握 → 維持費シミュレーター
  2. 売却・賃貸・解体の選択肢を検討
  3. 売却なら譲渡所得税を試算 → 譲渡所得税計算機(準備中)
  4. 売却 vs 賃貸で迷うなら → 収支比較ツール(準備中)
  5. 決断したら実行。3年ルールに間に合うよう逆算。

解体を選ぶ場合は、工事の前に発注者自身が都道府県知事に出す届出があります。着工日から逆算して日程を組む必要があるので、空き家の解体ガイドで条文と期限を確認してください。

相談すべき専門家

参考・出典

事案ごとに必要な手続きは異なります。まず相続専門の税理士または司法書士に全体を相談するのが安全です。