空き家を自治体・NPOに寄付できる?無償譲渡の手続きと税金の注意点
「売れないなら、いらない空き家を誰かに引き取ってほしい」——相続した実家の管理に困り、寄付・無償譲渡を考える人は少なくありません。しかし、自治体は必ずしも寄付を受け入れてくれるわけではなく、寄付先が自治体か民間団体かによって税金の扱いも変わります。本記事では、空き家の寄付・無償譲渡の実情と税務上の注意点を整理します。
空き家の寄付・無償譲渡という選択肢
相続した空き家が老朽化していたり、立地の需要がなかったりして売却が難しい場合、「無償でもいいから引き取ってほしい」と考えるのは自然な発想です。寄付・無償譲渡の相手としては、主に次の3つが考えられます。
- 市区町村(地方公共団体):公共利用の見込みがある場合に限り受け入れられることがある
- NPO法人・一般社団法人など:空き家再生や移住支援を目的とする団体が受け入れる場合がある
- 個人(買い手ではない引き取り希望者):民間のマッチングサービス等を通じて見つかる場合がある
いずれの場合も、寄付する側(相続人)に登記費用などの負担が生じる点、受け取る側にメリットがなければ簡単には成立しない点を理解しておく必要があります。
自治体(国・地方公共団体)へ寄付する場合
市区町村への寄付は、多くの人が最初に思いつく選択肢ですが、実際には受け入れられないケースが多いのが実情です。理由は、寄付を受けた自治体側に、その後の維持管理(固定資産税は自治体自身の所有になれば発生しませんが、解体・修繕・見回りなどのコストは残ります)の負担が生じるためです。
自治体が寄付を受け入れる可能性が高いのは、次のようなケースです。
- 公共施設(公園・道路・防災拠点など)としての活用が具体的に見込まれる
- 老朽化した建物を寄付者側の負担で解体した後、更地として提供する
- 地域の空き家対策事業(移住者向けの活用施設など)の対象として自治体が公募している
まずは窓口に相談を
寄付の可否・条件は自治体によって大きく異なり、明確な受け入れ基準を公開していない自治体も多くあります。「寄付したい」と考えたら、まず物件のある市区町村の空き家対策窓口・財産管理担当部署(総務課・管財課など)に相談し、受け入れの可否・条件を確認することが最初のステップです。
自治体へ寄付する場合の税金
個人が不動産を無償で誰かに渡す「贈与」は、通常、贈与を受けた側に税金の問題が生じます。しかし、贈与する側(相続人)にも注意すべき税金があります。
寄付する側:みなし譲渡課税の特例
所得税法59条1項1号により、個人が法人に対して財産を贈与した場合、その時の時価で譲渡があったものとみなして譲渡所得税が課される「みなし譲渡課税」の対象になります。地方公共団体も法律上は法人に該当するため、原則どおりであればこの規定が適用されそうに見えます。
しかし、租税特別措置法40条は「国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす」と定めています。つまり、国・地方公共団体への寄付であれば、特別な承認手続きを経ることなく、寄付した相続人にみなし譲渡課税は生じません。
受け取る側:地方公共団体は贈与税の対象外
贈与税は「個人が個人から」財産をもらった場合にかかる税金です(国税庁タックスアンサーNo.4402)。地方公共団体は個人ではないため、寄付を受けた自治体側に贈与税が発生することはありません。
解体費用・登記費用は寄付者の負担になるのが一般的
税金面で自治体への寄付が有利であっても、解体してから寄付する場合の解体費用や、寄付に伴う登記費用(所有権移転登記)は、寄付する側(相続人)が負担するのが一般的です。「税金がかからない」ことと「無償で完全に手放せる」ことは別の話である点に注意してください。
NPO法人・団体へ寄付する場合との違い
空き家再生・移住支援を目的とするNPO法人・一般社団法人などに寄付する場合、自治体への寄付とは税務上の扱いが異なります。
租税特別措置法40条は、公益法人等(公益社団法人・公益財団法人など一定の要件を満たす法人)への財産の贈与について、その贈与が教育・科学の振興・文化の向上・社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与すること等の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けたものに限り、みなし譲渡課税の対象から外れる特例を認めています。逆に言えば、この承認を受けていない一般的なNPO法人・団体への寄付は、寄付した相続人に対してみなし譲渡課税(時価で譲渡があったとみなされる課税)が生じる可能性があります。
「NPOに空き家を無償で引き取ってもらえたのに、確定申告で予想外の譲渡所得税が発生した」という事態を避けるため、NPO・団体への寄付を検討する場合は、その団体が国税庁長官の承認を受けているかどうか、事前に確認することが重要です。
移住・定住促進団体への寄付という選択肢
地域によっては、移住・定住促進を目的とする自治体外郭団体や、古民家・歴史的建造物の保存を目的とする団体が、空き家の寄付・低額譲渡の受け入れ先になっている場合があります。こうした団体は、地域の空き家対策の一環として活動しているケースが多く、自治体の空き家対策窓口を通じて紹介を受けられることもあります。寄付を検討する際は、まず自治体の窓口に相談し、地域内でどのような受け入れ先があるかを確認するとよいでしょう。
寄付が難しい場合の代替手段
寄付先が見つからない、または自治体・NPOから受け入れを断られた場合、次のような代替手段を検討できます。
| 手段 | 概要 |
|---|---|
| 空き家バンクへの登録 | 市区町村が運営する空き家バンクに登録し、移住希望者等とのマッチングを図る |
| 専門の買取業者への売却 | 低価格でも構わないという条件で、空き家買取業者に直接買い取ってもらう |
| 相続土地国庫帰属制度 | 建物を解体して更地にした上で、一定の要件を満たせば国に引き渡せる制度(審査手数料・負担金がかかる) |
空き家バンクの仕組みと活用法は田舎の空き家・土地が売れない場合の対処法5選、買取業者の選び方は空き家買取業者の選び方で詳しく解説しています。
寄付前に確認しておくべきこと
空き家の寄付・無償譲渡を検討する際は、次の点を事前に確認しておくことをおすすめします。
- 寄付先(自治体・団体)に受け入れの意思・条件があるかどうか
- 解体や修繕が寄付の条件になっていないか、その場合の費用負担
- 寄付する相手が国・地方公共団体か、それ以外の法人かによる税務上の違い
- 相続登記が完了しているか(登記が済んでいないと寄付の手続き自体が進められません)
- 他に相続人がいる場合は、寄付について全員の同意が取れているか
相続登記が未了の場合は、まず相続した不動産の名義変更(相続登記)が2024年4月から義務化を確認し、登記の状況を整理してから寄付の検討を進めることをおすすめします。
よくある質問
Q. 空き家を自治体に寄付したいが、必ず受け取ってもらえる?
A. いいえ、必ず受け取ってもらえるとは限りません。多くの自治体は、将来の維持管理費用の負担を理由に、公共利用の見込みがない空き家・土地の寄付を断る方針を取っています。寄付を検討する場合は、まず物件のある市区町村の空き家対策窓口・財産管理担当部署に相談し、受け入れの可否を確認することが第一歩です。
Q. 自治体に寄付すると、寄付した側に税金はかかる?
A. 国・地方公共団体に対して財産を寄付(贈与)した場合、租税特別措置法40条により、所得税法上のみなし譲渡課税(贈与時の時価で譲渡があったとみなす課税)の対象から外れます。つまり、自治体への寄付であれば、寄付した相続人に譲渡所得税は生じません。一方、NPO法人など公益法人等への寄付は、国税庁長官の承認を受けない限りみなし譲渡課税の対象になり得るため、自治体への寄付とは扱いが異なります。
Q. 寄付先が見つからない場合、他にどんな選択肢がある?
A. 空き家バンクへの登録、専門の買取業者への売却、更地にした上での相続土地国庫帰属制度の利用などが代替の選択肢になります。いずれも一定の費用や条件があるため、維持し続ける場合のコストと比較しながら検討することをおすすめします。
参考・出典
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、寄付の受け入れ可否は自治体・団体ごとに、税務上の扱いは個別事情により異なります。詳細は自治体窓口・税理士にご確認ください。