相続登記は 2024年4月 から義務化。正当な理由なく3年以内に登記しないと最大10万円の過料対象です
農地・土地 読了時間:約11分

山林を相続したらどうする?届出・境界・売却の手続きと注意点

実家の相続をきっかけに、田舎にある山林(森林)の名義も一緒に引き継ぐケースは少なくありません。山林は農地とは異なる法律(森林法)に基づく手続きが必要で、境界が不明確なことも多く、売却も簡単ではありません。本記事では、相続後に必要な届出、保安林の制限、売却・活用の方法、相続土地国庫帰属制度の適用可否までを整理します。

山林(森林)を相続したらまず確認すること

実家の相続で不動産の一覧(名寄帳・固定資産税の課税明細書)を確認すると、思いがけず山林・原野が含まれていることがあります。まず確認すべきポイントは次の3つです。

これらは土地が所在する市町村・都道府県の林務担当部局に問い合わせることで確認できます。実家とは別の地域に山林があるケースでは、現地の役所への確認が必要になる点に注意してください。

森林の土地の所有者届出制度(90日以内・10万円以下の過料)

森林法第10条の7の2は、地域森林計画の対象となっている民有林について、新たに所有者となった者に市町村長への届出を義務づけています。この制度は農地法の許可制とは異なり、個人・法人を問わず、面積にかかわらず、売買・相続等によって新たに森林の土地の所有者となった場合に届出が必要です。

項目 内容
届出先 土地のある市町村の長
届出期限 所有者となった日から90日以内
対象となる土地 都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林(登記上の地目にかかわらず、現況が森林であれば対象になり得る)
対象外になる場合 国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している場合
罰則 届出をしない、または虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料(森林法第213条)

相続登記とは別の制度

この届出制度は、法務局で行う相続登記(不動産登記)とは別の制度です。相続登記を済ませたことをもって届出をしたことにはなりません。相続登記の義務化(2024年4月施行)と森林の土地の所有者届出は、それぞれ別に対応が必要です。

保安林の指定があるとどうなるか

相続した山林が「保安林」に指定されている場合、立木の伐採や土地の形質変更に制限がかかります。森林法第34条1項により、保安林では原則として都道府県知事の許可を受けなければ立木を伐採してはならないと定められています(間伐など一定の行為は許可不要とされる場合があります)。

保安林の指定は、水源の保護・土砂流出の防止・生活環境の保全などの公益目的で行われるものです。相続した山林が保安林かどうかは、都道府県の森林担当部局または市町村の林務担当部局で確認できます。保安林であることは、伐採・売却・活用のいずれの場面でも制約になるため、早い段階で確認しておくことをおすすめします。

山林特有の境界・現況確認の難しさ

山林は、農地や宅地と比べて境界確認が難しい典型的な土地です。理由は次のようなものです。

境界が不明確なままだと、売却時の買い手探しが難しくなるだけでなく、後述する相続土地国庫帰属制度も利用できません(境界が明らかでない土地は却下要件に該当します)。実家の相続と同様に、山林の境界確認・測量が必要になる場面については相続した土地の境界確認と測量が必要な理由も参考にしてください。

山林を売る・活用する方法

山林は宅地に比べて需要が限られる土地ですが、次のような売却・活用の方法があります。

森林組合・山林専門の仲介業者に相談する

地域の森林組合や、山林の売買を専門に扱う不動産会社に相談すると、林業関係者・投資家などの需要のある買い手につながる可能性があります。一般の不動産仲介では買い手が見つかりにくい山林でも、専門業者であれば流通ルートを持っていることがあります。

森林経営管理制度の活用

森林経営管理法(平成30年制定、平成31年4月施行)に基づく森林経営管理制度では、所有者自身が経営管理できない森林について、市町村が意向調査を行い、林業経営に適した森林は「意欲・能力のある林業経営者」に経営管理権を集積・集約化し、林業経営に適さない森林は市町村が公的に管理する仕組みが用意されています。所有権を移転する制度ではありませんが、管理の負担を軽減する選択肢として、土地のある市町村の林務担当部局に相談する価値があります。

太陽光発電用地としての活用(限定的)

山林に太陽光発電設備を設置する事例もありますが、樹木の伐採、傾斜・日照条件、林地開発許可などの制約があり、宅地・農地に比べて活用のハードルは高くなります。詳しくは相続した土地の活用法5選で紹介しています。

山林でも使える相続土地国庫帰属制度

売却も活用も難しい山林については、2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」を使って国に引き取ってもらう選択肢があります。山林も制度の対象になりますが、次のような要件に該当すると申請の却下・不承認の対象になります。

申請には土地一筆当たり14,000円の審査手数料がかかり、承認後は10年分の管理費用相当額として算定される負担金の納付が必要です。負担金は土地の種目・区域によって算定式が異なり、森林は面積に応じて負担金額が変動する種目とされています。具体的な算定方法は法務局・法務省が公開している負担金額の自動計算シートで確認できます。

申請前に法務局へ相談を

相続土地国庫帰属制度は、境界確認・現地調査など準備に時間がかかる制度です。山林の場合は間伐の実施状況なども審査対象になるため、申請を検討する場合は早い段階で土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)に相談することをおすすめします。

相続登記の義務化も山林に適用される

2024年4月から相続登記が義務化されており、正当な理由なく相続を知った日から3年以内に登記をしないと、最大10万円の過料の対象になります。この義務は宅地・農地だけでなく山林にも同様に適用されます。相続した山林の価値が低く登記費用が見合わないと感じても、義務化対象であることに変わりはないため、まずは登記の状況を確認することをおすすめします。詳しくは相続した不動産の名義変更(相続登記)が2024年4月から義務化をご覧ください。

よくある質問

Q. 山林を相続したら必ず届出が必要?

A. 地域森林計画の対象となっている森林の土地を相続した場合は、面積にかかわらず、所有者となった日から90日以内に市町村長への届出が必要です(森林法第10条の7の2)。届出をしない、または虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料の対象になります(同法第213条)。届出の対象になるかどうかは、土地が所在する市町村の林務担当部局に確認してください。

Q. 山林の固定資産税はどれくらいかかる?

A. 山林の固定資産税評価額は宅地に比べて低く算定されるのが一般的で、地目・立木の状況などによって評価額は異なります。正確な評価額は、毎年送付される納税通知書(課税明細書)や、市町村の資産税課で確認できます。

Q. 山林は相続放棄すれば管理義務から逃れられる?

A. 相続放棄をしても、放棄の時点でその山林を現に占有していた人には、次の管理者に引き渡すまでの保存義務が残る場合があります。この仕組みは実家の空き家と同様です。

参考・出典

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の届出・許可・国庫帰属の可否は市町村の林務担当部局または法務局にご確認ください。

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