任意後見の費用はいくら?公正証書の手数料・監督人選任の申立て・任意後見監督人の報酬
任意後見の費用は、契約を結ぶとき、任意後見を始めるとき、始まってからの3つの時点に分かれます。契約時は公証人手数料13,000円・登記嘱託手数料1,600円・収入印紙2,600円で合計17,200円、任意後見を始めるときの家庭裁判所への申立ては収入印紙800円と登記手数料1,400円の合計2,200円(ほかに郵便切手)です。始まってからは、家庭裁判所が決める任意後見監督人の報酬を本人の財産から払います。額は、最高裁判所の実情調査(令和7年7月〜12月)で、本人の流動資産額ごとに整理しました。
費用は3つの時点で出る
任意後見は、本人に判断能力があるうちに、公正証書で任意後見契約を結んでおく制度です(任意後見契約に関する法律2条1号・3条)。契約の効力は、判断能力が不十分になったあとに家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から生じます。費用はこの流れに沿って、3つの時点で出ます。
| 時点 | 費用 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約を結ぶとき | 公証人手数料13,000円+登記嘱託手数料1,600円+収入印紙2,600円=17,200円 | 公証人手数料令16条・39条の2、法務省Q&A |
| 任意後見を始めるとき | 収入印紙800円+登記手数料の収入印紙1,400円=2,200円と郵便切手 | 裁判所「任意後見監督人選任」 |
| 始まってから | 任意後見監督人の報酬(家庭裁判所が決め、本人の財産から支払う)。任意後見人の報酬は契約で定める | 任意後見契約に関する法律7条4項、民法862条 |
司法書士などに契約書の作成を頼む場合の報酬は、これとは別にかかります(5つ目の見出しで扱います)。
契約を結ぶとき:公証役場の費用
任意後見契約は公正証書で結ぶため、公証役場の費用がかかります。任意後見契約は、目的の価額を算定できない法律行為にあたり、公証人手数料令16条により500万円とみなされます。別表では「200万円超500万円以下」の13,000円です。日本公証人連合会も、報酬の定めがある場合でも1契約1万3000円と説明しています。
| 項目 | 額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 公証人手数料(基本) | 13,000円 | 公証人手数料令16条・別表 |
| 登記嘱託手数料 | 1,600円 | 同令39条の2 |
| 登記所に納める収入印紙 | 2,600円 | 法務省Q&A、日本公証人連合会 |
| 小計 | 17,200円 | ― |
法務省のQ&Aも、基本手数料13,000円・登記嘱託手数料1,600円・登記所に納付する印紙代2,600円と案内しています。そのほか、本人らに交付する正本等の証書代、登記嘱託書郵送用の切手代などが別にかかります。
契約の登記は、公証人が1契約ごとに嘱託します。加算されるものは次のとおりです。
- 枚数による加算:公正証書の枚数が4枚(横書は3枚)を超えると、超える1枚ごとに300円(公証人手数料令25条)。日本公証人連合会は、3枚を超えるときと説明しています。
- 正本・謄本:書面は1枚につき300円(同令40条)。
- 出張:病院や施設に公証人に来てもらう場合は、日当が1日2万円(4時間以内は1万円)、旅費が交通の実費(同令43条)。病床執務加算がされる場合もあるとされています。
嘱託人が2人以上のときは、各嘱託人が連帯して手数料などを支払う義務を負います(同令2条)。本人と受任者のどちらが払うかは、契約の前に決めておきます。
任意後見を始めるとき:監督人選任の申立て
契約を結んだだけでは、任意後見は始まりません。本人の判断能力が不十分になったら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。選任された時から契約の効力が生じ、任意後見人が契約で決めた事務を行います(法務省Q&A)。
- 申立てができる人:本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者(任意後見契約に関する法律4条1項)。本人以外が申し立てるときは、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です(同条3項)。
- 申立先:本人の住所地の家庭裁判所。
| 費用 | 額 | 備考 |
|---|---|---|
| 申立手数料 | 収入印紙800円 | ― |
| 登記手数料 | 収入印紙1,400円 | 手持ちの登記印紙1,400円分でも納付できる(当分の間) |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所ごとに異なる | 保管金で納付することもできる |
| 鑑定費用 | 必要な場合のみ | 本人の精神の状況について鑑定が必要なとき、申立人が負担することがある |
出典:裁判所「任意後見監督人選任」。収入印紙の合計は800円+1,400円=2,200円です。
申立てには、本人の戸籍謄本、任意後見契約公正証書の写し、本人の成年後見等に関する登記事項証明書、本人の診断書、財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金の残高が分かる書類など)が必要です。
始まってから:任意後見監督人の報酬
任意後見監督人は、任意後見人が契約どおりに仕事をしているかを監督し、家庭裁判所に報告します(任意後見契約に関する法律7条)。任意後見契約に関する法律7条4項は、後見人の報酬を定めた民法862条を任意後見監督人に準用しています。家庭裁判所が本人の資力などによって、本人の財産から相当な報酬を与えることができます。
裁判所の案内によると、監督人が本人の財産から報酬を受け取るには、家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立て、認められた額を本人の財産から受け取ります。申立手数料は収入印紙800円です。
誰が任意後見監督人になるか
任意後見受任者や任意後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は、任意後見監督人になれません(同法5条)。法務省のQ&Aは、本人の親族等ではなく、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職や法人といった第三者が選ばれることが多いとしています。このため、家族が任意後見人になる契約でも、第三者の監督人に報酬を払うことが多くなります。
報酬付与額の割合(最高裁判所の実情調査)
最高裁判所事務総局家庭局は、令和7年7月〜12月に認容で終局した報酬付与申立事件(全体で102,466件、うち任意後見監督人は1,357件)を集計し、公表しています。親族以外の任意後見監督人で、付加報酬の求めが無いときの、流動資産額ごとの報酬付与額の割合は次のとおりです。
| 本人の流動資産額 | 最も多い区分 | 次に多い区分 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 10万円台 74.5% | 10万円未満 25.5% |
| 100万円以上500万円未満 | 10万円台 80.2% | 10万円未満 17.3% |
| 500万円以上1,000万円未満 | 10万円台 74.8% | 10万円未満 23.3% |
| 1,000万円以上5,000万円未満 | 10万円台 54.1% | 20万円台 32.1% |
| 5,000万円以上1億円未満 | 30万円台 58.0% | 10万円台 22.5% |
| 1億円以上 | 30万円台 63.5% | 20万円台 14.1% |
出典:最高裁判所事務総局家庭局「報酬に関する実情調査の集計結果について」(令和7年7月〜12月)資料15。報酬付与額は、審判で報酬付与対象期間中の報酬として決定された金額です。調査には、対象期間が12か月を超える事件や満たない事件も含まれ、実際に全額を受け取ったかは不明とされています。
- 流動資産額は、現金、預貯金(後見制度支援信託・後見制度支援預貯金を除く)、有価証券の合計額です。不動産は含まれません。
- 付加報酬の求めがある場合は、同じ資料の資料16で割合が高い区分が上がります。たとえば流動資産が1億円以上では、40万円台が42.9%で最も多くなっています。
- 親族の任意後見監督人に対する報酬付与申立事件は、見当たらなかったとされています。
任意後見人の報酬と、司法書士に頼む場合
任意後見契約に関する法律の条文に、任意後見人の報酬を定めたものは見当たりません。日本公証人連合会が「報酬の定めがある場合でも」と説明しているとおり、任意後見人の報酬は契約で定める扱いです。家族が任意後見人になる場合の報酬額の目安は、確認した原文にありません。
司法書士や弁護士に契約書の作成や任意後見人への就任を頼む場合の報酬は、依頼先との契約で決まります。日本司法書士会連合会は、司法書士の報酬に基準はなく、全国アンケートの結果を公表しています(令和6年3月、税込)。
| 頼む内容 | 平均額 | 有効回答数 |
|---|---|---|
| 司法書士が受任者にならず、契約書の原案を作り公証役場へ同行 | 96,683円 | 240 |
| 司法書士が任意後見人に就任した場合の定額報酬(月額) | 44,479円 | 199 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(令和6年3月)第2 任意後見-1・任意後見-2。契約書の作成の報酬には、公証人手数料などを含みません。公証役場へ同道した場合は出張日当がかかることがあります。月額の定額報酬は、司法書士が任意後見人に就任した場合の額で、契約で定め、本人の財産から支払われます。
弁護士・行政書士の報酬額は、確認した公的な資料に載っていないため、このページには書いていません。
成年後見と比べて、親の家を売るとき
任意後見と、判断能力が低下してから家庭裁判所に申し立てる成年後見(法定後見)の、費用と家の売却に関わる違いを並べます。
| 項目 | 任意後見 | 成年後見 |
|---|---|---|
| 管理する人 | 契約で決めた任意後見人 | 家庭裁判所が選ぶ |
| 始めるときの印紙代 | 契約時17,200円。選任の申立て2,200円 | 申立て800円+登記手数料2,600円 |
| 報酬 | 任意後見人は契約で定める。監督人は家庭裁判所が決める | 後見人・監督人とも家庭裁判所が決め、本人の財産から支払う |
| 家を売るとき | 契約で任意後見人に与えた代理権の範囲による | 居住用の建物やその敷地の売却は家庭裁判所の許可が必要(民法859条の3) |
出典:任意後見契約に関する法律、民法、裁判所「成年後見人の選任」「任意後見監督人選任」。
民法859条の3は成年後見人の規定です。任意後見契約に関する法律の条文には、居住用不動産の処分に家庭裁判所の許可を求める規定は見当たりませんでした。ただし、売却を任意後見人の代理権に含めておくかどうかは契約の内容で決まるため、売却を想定するなら契約の前に公証役場や専門家に確認してください。
成年後見で親の家を売る流れは親が認知症で家を売りたいとき、家族信託の費用は家族信託の費用はいくら?で整理しています。
よくある質問
任意後見の費用の相場はいくらですか?
時点ごとに分かれます。①契約を結ぶとき:公証人手数料13,000円、登記嘱託手数料1,600円、登記所に納める収入印紙2,600円で合計17,200円です(公正証書の枚数が多い場合の加算、正本・謄本の交付、郵便代は別)。②任意後見を始めるとき:家庭裁判所への監督人選任の申立てに、収入印紙800円と登記手数料の収入印紙1,400円、郵便切手がかかります。③始まってから:任意後見監督人の報酬を、家庭裁判所が決めて本人の財産から払います。司法書士などに頼む場合の報酬は別です。
任意後見契約は、公正証書にしないとできませんか?
任意後見契約に関する法律3条は、任意後見契約を法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならないと定めています。このため、公証役場に払う費用がかかります。
任意後見監督人の報酬は毎月いくらですか?
月額を定めた基準は、確認した原文にありません。最高裁判所事務総局家庭局の実情調査(令和7年7月〜12月)は、審判で決まった報酬付与額を、本人の流動資産額ごとの割合で示しています。付加報酬の求めが無い親族以外の任意後見監督人では、流動資産が1,000万円未満のとき10万円台が7割台から8割、1,000万円以上5,000万円未満で10万円台が54.1%、5,000万円以上では30万円台が最も多くなっています。報酬付与の対象期間は事件ごとに異なります。
家族が任意後見監督人になれますか?
任意後見契約に関する法律5条は、任意後見受任者または任意後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は任意後見監督人になれないと定めています。法務省のQ&Aも、家庭裁判所が選ぶのは本人の親族等ではなく、弁護士・司法書士・社会福祉士などの第三者が多いとしています。最高裁判所の実情調査でも、親族の任意後見監督人に対する報酬付与申立事件は見当たらなかったとされています。
任意後見人(家族)に報酬は払うのですか?
任意後見契約に関する法律の条文に、任意後見人の報酬を定めたものは見当たりません。日本公証人連合会は、契約に報酬の定めがある場合でも公証人手数料は13,000円になると説明しており、報酬は契約で定められます。家族が任意後見人になる場合の報酬額の目安は、確認した原文にありません。
任意後見契約を結んだだけで、毎月の費用はかかりますか?
任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます(任意後見契約に関する法律2条1号、法務省Q&A)。契約を結んだだけの間は、監督人の報酬は生じません。契約時の公証役場の費用が先にかかります。
司法書士に任意後見契約の作成を頼むと、いくらかかりますか?
日本司法書士会連合会のアンケート(令和6年3月・税込)では、司法書士が任意後見受任者にならず、契約書の原案を作って公証役場に同行した場合の平均が96,683円(有効回答240)でした。公証人手数料などは別にかかります。弁護士の報酬は、確認した原文に額がありません。
参考・出典
- e-Gov法令検索 任意後見契約に関する法律(第2条〜第5条、第7条)
- e-Gov法令検索 民法(第859条の3、第862条)
- e-Gov法令検索 公証人手数料令(第2条、第16条、第25条、第39条の2、第40条、第43条、別表)
- 日本公証人連合会 手数料
- 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A(Q22 任意後見契約公正証書の費用)
- 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A(Q16〜Q20 任意後見制度について)
- 裁判所 任意後見監督人選任
- 裁判所 報酬の付与(成年後見制度、未成年後見制度)
- 裁判所 成年後見人の選任
- 裁判所 報酬に関する実情調査の集計結果について(令和7年から)
- 日本司法書士会連合会 司法書士の報酬について(報酬に関するアンケート 令和6年3月)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での契約内容・費用・報酬の額は、公証役場・家庭裁判所・弁護士・司法書士にご確認ください。