相続手続き 読了時間:約10分

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遺言執行者とは|必要な場合(認知・廃除・清算型遺贈で家を売る)・相続人がなれるか・やること・報酬は誰が決めるか・選任の申立て(収入印紙800円)

遺言執行者は、遺言の内容を実現する人です。遺言で指定でき、指定がなければ家庭裁判所が選任できます。遺言による認知と相続人の廃除を書くなら必要で、相続人が務めることもできます(欠格は未成年者と破産者だけ)。報酬は、遺言に定めがあればそれにより、なければ家庭裁判所が定めます。選任の申立ての費用は、遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。下の表に、遺言執行者のやることを並べました。

やること根拠期限
就職を承諾し、任務を始める民法1007条1項承諾したら直ちに
遺言の内容を相続人に通知する民法1007条2項任務を開始したら遅滞なく
相続財産の目録を作り、相続人に渡す民法1011条1項遅滞なく
遺言による認知があれば、認知の届出をする戸籍法64条就職の日から10日以内
遺言による廃除があれば、家庭裁判所に廃除を請求する民法893条遺言が効力を生じた後、遅滞なく
遺贈の履行、名義変更、預貯金の払戻しなど、遺言の内容を実現する民法1012条1項・2項、1014条日数の定めは見つからない
任務が終わったら経過と結果を報告し、受け取ったものを引き渡す民法1012条3項(645条・646条の準用)相続人の請求があればいつでも。終了後は遅滞なく

民法・戸籍法(令和8年9月3日施行分まで反映)。2026年10月3日、e-Gov法令検索で取得。

自分はどの場合か(書く側・指定された側・相続人)

遺言執行者が必要になる場合

遺言執行者の指定は、遺言者の任意です(民法1006条1項は「指定することができる」)。ただ、遺言の内容によっては、遺言執行者でなければできないことがあります。

遺言の内容遺言執行者との関係根拠
子を認知する遺言執行者が、就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添えて届け出る民法781条2項、戸籍法64条
推定相続人を廃除する遺言執行者が、遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に請求する。廃除は被相続人の死亡の時にさかのぼって効力を生ずる民法893条
財産を遺贈する遺言執行者がある場合、遺贈の履行は遺言執行者だけが行える民法1012条2項
特定の財産を相続人に承継させる(特定財産承継遺言)遺言執行者は、対抗要件を備えるために必要な行為ができる。預貯金なら払戻しの請求と解約の申入れもできる(解約は預貯金債権の全部が対象の場合に限る)。遺言に別段の意思があれば、それに従う民法1014条2項〜4項
上のどれでもない指定するかどうかは遺言者が決める民法1006条1項

民法・戸籍法(2026年10月3日取得)。

相続人が遺言執行者になれるか

民法が遺言執行者になれないと定めているのは、未成年者と破産者です(民法1009条)。相続人であることや、遺贈を受ける人であることは、欠格事由に入っていません。遺言者が相続人の1人を指定していることは、条文の上では妨げがないということです。

相続人が兼ねるかどうかは、遺言の内容とほかの相続人との関係で決めることになります。どちらがよいかは、条文からは言えません。

遺言で家を売って分けると決まっているとき(清算型遺贈)

遺言に、不動産を売却し、その代金から費用や債務を差し引いた残りを分ける、と書く形があります(清算型遺贈と呼ばれることがあります)。民法は、遺言執行者が遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有すると定めています(1012条1項)。売る場面の流れを、条文の順に並べます。

  1. 遺言書の確認:自宅などで保管された自筆証書遺言は、検認を請求します。検認を経ずに遺言を執行すると、5万円以下の過料です(民法1004条・1005条)。公正証書遺言と、法務局に保管された遺言書は、検認が要りません(民法1004条2項、遺言書保管法11条)。
  2. 遺言執行者の就職:承諾したら直ちに任務を始め、遺言の内容を相続人に通知し、相続財産の目録を作って相続人に渡します(民法1007条・1011条)。
  3. 家の価値を知る:売ったときの金額は、売る前に査定で確認できます。
  4. 売却と精算:遺言の執行に関する費用は相続財産の負担です。ただし、これによって遺留分を減ずることはできません(民法1021条)。
  5. 名義の手続:相続人が遺言で不動産を取得した場合は、取得を知った日から3年以内の相続登記の申請義務があります(不動産登記法76条の2。遺贈は相続人に対する遺贈に限る)。くわしくは相続登記の義務化にあります。

遺言執行者がいる間は、相続人が相続財産を処分して遺言の執行を妨げることはできません(節5)。

できること・できないこと、相続人が止められなくなること

遺言執行者の権限と、そのとき相続人に起きることを、条文のとおりに分けます。

遺言に書かれていない財産の分け方は、遺言の内容の実現ではないので、遺言執行者の権限に入りません。相続人で話し合って決めます。まとまらないときの手続は遺産分割がまとまらないときにあります。

報酬は誰がいくらと決めるか

遺言執行者の報酬の額は、法令に定められていません。決め方は民法1018条1項のとおりです。

弁護士・司法書士・信託銀行に依頼するときの報酬の相場は、公的な資料に見つからなかったため、このページでは書きません。裁判所の案内にも、報酬の額の目安は載っていません。依頼を考えるときは、相談先から見積書をもらって確かめてください。公正証書遺言の作成費用は、公正証書遺言の費用にあります。

選任・報酬・解任・辞任の申立ての費用

遺言執行者がないとき、またはなくなったときは、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が選任できます(民法1010条)。裁判所の案内は次のとおりです。

家庭裁判所に申し立てる4つの手続は、いずれも家事事件手続法の別表第一に定められた事項で、申立ての手数料は同じです。

手続内容根拠・手数料
選任遺言執行者がないとき、なくなったとき。利害関係人が請求する民法1010条、別表第一の104項。800円
報酬の付与遺言に報酬の定めがないとき、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって定める民法1018条1項、別表第一の105項。800円
解任任務を怠ったとき、その他正当な事由があるとき。利害関係人が請求する民法1019条1項、別表第一の106項。800円
辞任の許可正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て辞する民法1019条2項、別表第一の107項。800円

800円は民事訴訟費用等に関する法律別表第一の15項(家事事件手続法別表第一の事項の審判の申立て)。選任は裁判所の案内(2026年10月3日取得)、他の3つは法令の表から読み取ったものです。郵便切手などの費用は別です。

選任の申立てを却下する審判には、利害関係人が即時抗告をできます(家事事件手続法214条3号)。抗告の手数料は申立て手数料の1.5倍で、1,200円です(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の18項。800円の1.5倍の手計算)。

辞任と解任

よくある質問

遺言執行者とは、何をする人ですか?

裁判所の案内では、遺言の内容を実現する者のことです。民法は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定めています(民法1012条1項)。遺言執行者がいる遺贈は、その履行を遺言執行者だけが行えます(同条2項)。

遺言執行者は、必ず決めておく必要がありますか?

遺言者は、遺言で遺言執行者を指定することができるとされていて(民法1006条1項)、指定は義務ではありません。ただし、遺言による認知では遺言執行者が届け出ること(戸籍法64条)、遺言による推定相続人の廃除では遺言執行者が家庭裁判所に請求すること(民法893条)が定められています。この2つの内容を遺言に書くなら、遺言執行者が必要になります。

相続人が遺言執行者になることはできますか?

民法が遺言執行者になれないと定めているのは、未成年者と破産者です(民法1009条)。相続人であることは欠格事由に入っていません。家庭裁判所が選任するときは、遺言執行者となるべき者の意見を聴かなければなりません(家事事件手続法210条2項)。相続人が兼ねるかどうかは、遺言の内容とほかの相続人との関係で決めることになります。

遺言執行者の報酬は、いくらですか?

額は法令に定められていません。遺言に報酬が定めてあればそれによります。定めがなければ、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって定めることができます(民法1018条1項)。弁護士・司法書士・信託銀行に依頼したときの報酬の相場は、公的な資料に見つからなかったため、このページでは示しません。依頼を考えるときは、相談先の見積書で確かめてください。

報酬や遺言執行の費用は、誰が負担しますか?

遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とされています。ただし、これによって遺留分を減ずることはできません(民法1021条)。

遺言執行者ができないことはありますか?

遺言執行者の権限は、遺言の内容を実現するために必要な行為です(民法1012条1項)。遺言に書かれていない財産の分け方は、その権限に入りません。また、遺言が相続財産のうち特定の財産だけに関するときは、遺言執行者の権限もその財産だけに及びます(民法1014条1項)。

遺言執行者がいるのに、相続人が不動産を勝手に売ったらどうなりますか?

遺言執行者がいる場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為ができません。これに違反してした行為は無効です。ただし、事情を知らない第三者(善意の第三者)には対抗できません(民法1013条1項・2項)。

遺言執行者が決まっていないとき、どうすればよいですか?

遺言執行者がないとき、またはなくなったときは、利害関係人(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など)の請求によって、家庭裁判所が選任することができます(民法1010条)。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所、費用は遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です(裁判所の案内)。

遺言執行者を引き受けた人が、何もしてくれません。どうすればよいですか?

遺言執行者がその任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人が家庭裁判所に解任を請求できます(民法1019条1項)。解任の審判の前には、家庭裁判所が遺言執行者の陳述を聴きます(家事事件手続法210条1号)。解任の申立てがあり、遺言の内容の実現のため必要があるときは、審判が効力を生ずるまでの間、職務の執行を停止したり、職務代行者を選任したりすることもできます(同法215条)。

遺言執行者を辞めたいときは、どうすればよいですか?

正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます(民法1019条2項)。許可の申立ては、遺言執行者の辞任についての許可として、家事事件手続法の別表第一に定められています。申立ての手数料は800円です(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の15項)。

遺言書の検認の前に、遺言を執行してもよいですか?

検認が必要な遺言書(自宅などで保管した自筆証書遺言など)では、検認を経ないで遺言を執行した人は、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。公正証書遺言は検認が不要です(民法1004条2項)。法務局(遺言書保管所)に保管された遺言書も、検認は不要です(遺言書保管法11条)。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の遺言の執行や報酬は、家庭裁判所、弁護士、司法書士などの専門家にご相談ください。

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