遺言書の検認とは?必要な遺言・不要な遺言と、申立ての費用・必要書類
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です。公正証書遺言と、法務局(遺言書保管所)に保管された自筆証書遺言は不要です(民法1004条・遺言書保管法11条)。検認は、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。封印のある遺言書を、家庭裁判所の外で勝手に開封すると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。
検認が必要な遺言と、不要な遺言
民法1004条1項は、遺言書の保管者は相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求しなければならないと定めています。遺言書の保管者がいない場合は、遺言書を発見した相続人が同じく請求します。2項は、この規定は公正証書による遺言には適用しないと定めています。さらに遺言書保管法11条は、民法1004条1項の規定を、遺言書保管所に保管されている遺言書には適用しないと定めています。
| 遺言の種類 | 検認 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅などで保管) | 必要 | 民法1004条1項。民法968条は、全文・日付・氏名を自書して押印することを方式としている |
| 秘密証書遺言 | 必要 | 民法1004条2項が除外しているのは公正証書遺言だけ。民法970条は、署名押印して封じ、公証人1人と証人2人以上の前に提出することを方式としている |
| 公正証書遺言 | 不要 | 民法1004条2項。民法969条は、証人2人以上の立会いと、遺言者から公証人への口授を方式としている |
| 法務局に保管された自筆証書遺言 | 不要 | 遺言書保管法11条。法務省は、相続開始後に家庭裁判所での検認が不要と案内している |
封印があるかどうかは、検認が必要かどうかの条件になっていません(民法1004条1項)。封印があるかどうかで変わるのは、開封の方法です(後述)。
裁判所の案内では、「検認」とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
見つかった遺言書が法務局に保管されているものかどうかは、相続人であれば遺言書保管事実証明書の交付請求で確認できます(法務省)。手数料は1通につき800円です。
検認の流れ・費用・必要書類
申立人は、遺言書の保管者か、遺言書を発見した相続人です。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。裁判所の案内では、検認の手続は通常、次のように行われます。
- 検認の申立て:申立てがあると、裁判所から相続人に検認期日(検認を行う日)の通知が届く。
- 検認期日:申立人が遺言書を提出し、出席した相続人等の立会いのもと、裁判官が検認する。封がされた遺言書は、その場で開封する。申立人以外の相続人の出席は各人の判断で、全員がそろわなくても行われる。
- 検認済証明書の申請:遺言を執行するには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要になるため、検認が終わったあとに申請する。
申立てに必要な費用は、次のとおりです(裁判所)。
- 遺言書(封書の場合は封書)1通につき、収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なります。郵便料は保管金として納付することもできます)
- 検認済証明書の申請:遺言書1通につき150円分の収入印紙
申立書のほかに、標準的な添付書類として次の戸籍が挙げられています(裁判所)。同じ書類は1通で足ります。
- 共通:遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本/相続人全員の戸籍謄本/遺言者の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合は、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人が遺言者の直系尊属(父母・祖父母等)の場合:相続人と同じ代および下の代の直系尊属で死亡している人がいる場合は、その人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人がいない場合、遺言者の配偶者のみの場合、または配偶者と兄弟姉妹(およびその代襲者)の場合:遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本、死亡している兄弟姉妹・おいめいがいる場合はその戸籍謄本
申立前に入手が不可能な戸籍等があるときは、申立後に追加提出することでも差し支えないとされています。戸籍等に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合もあるため、申立てをする家庭裁判所に確認してください(裁判所)。一覧図の取り方は法定相続情報一覧図の取り方で説明しています。審理のために必要な場合は、追加の書類を求められることがあります。
期限と、勝手に開封したとき
検認の期限
民法1004条1項は「相続の開始を知った後、遅滞なく」、裁判所の案内は「遺言者の死亡を知った後、遅滞なく」と書いています。確認した原文には、何日以内という日数は書かれていません。ほかの手続の期限は、検認とは別に進みます。
| 手続 | 期限 | 出典 |
|---|---|---|
| 遺言書の検認 | 相続の開始を知った後、遅滞なく(日数の記載なし) | 民法1004条1項 |
| 相続の承認・放棄 | 相続の開始を知った時から3か月以内 | 民法915条1項 |
| 相続登記(遺言による取得を含む) | 不動産の所有権を取得したと知った日から3年以内 | 法務省 |
相続の放棄を考えているときは相続放棄の手続を、相続登記は相続登記の義務化を、そのほかの期限は遺産分割に期限はあるかを参照してください。
勝手に開封したとき
民法1004条3項は、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができないと定めています。裁判所の案内でも、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのうえ開封しなければならないとされています。
民法1005条は、遺言書の提出を怠り、検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外で開封した者を、5万円以下の過料に処すると定めています。過料の対象は、この3つの行為です。
遺言書が見つかったら、開封せず、そのまま家庭裁判所に提出するのが原文に沿った扱いです。開封してしまった場合の遺言そのものの効力や、実際に過料が科される基準は、確認した原文に書かれていません。
検認のあとにすること
検認が終わったら、遺言書に検認済証明書を付けてもらい、遺言の内容に沿った手続に進みます。
- 預金の払戻し:全国銀行協会は、遺言書がある場合の必要書類として、遺言書検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)などを挙げています。遺言の内容に応じて手続や必要書類が異なるため、遺言書と検認を確認できる書類がそろった段階で、お取引金融機関に相談するよう案内されています。口座の手続は口座の凍結と解除で説明しています。
- 不動産の名義変更:法務省は、相続(遺言を含む)で不動産の所有権を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務づけられたと案内しています(不動産登記法76条の2第1項)。必要書類と申請の流れは相続登記を自分でやる方法で説明しています。
- 遺産分割:遺言と遺産分割協議の関係や、分割の時期の考え方は遺産分割に期限はあるかで説明しています。
遺言者は、遺言で遺言執行者を指定できます(民法1006条1項)。遺言執行者がその任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法1007条2項)。
法務局の保管制度との違い
自筆証書遺言は、遺言者が法務局(遺言書保管所)に預ける制度があります。預けた遺言書は、検認が不要です。遺言者が亡くなったあとの違いを、法務省と裁判所の案内から並べると次のとおりです。
| 項目 | 自宅などで保管した自筆証書遺言 | 法務局に保管した自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 |
| 相続開始後に使う書面 | 遺言書と検認済証明書 | 遺言書情報証明書。原本は遺言者本人が撤回しない限り相続人にも返還されず、証明書が原本の代わりになる |
| 相続人側の主な費用 | 検認の申立て800円+連絡用の郵便切手、検認済証明書150円 | 遺言書情報証明書1通1,400円(収入印紙) |
| 遺言者の事前の手続 | なし | 遺言者本人が保管所に出向いて申請(1件3,900円)。代理人や郵送では申請できない |
| ほかの相続人への知らせ | 裁判所から検認期日の通知 | 相続人の1人が閲覧や証明書の交付を受けると、他の相続人全員に保管通知が届く |
| 遺言の有効性 | 検認は有効・無効を判断しない | 制度は保管された遺言書の有効性を保証しない |
出典:裁判所「遺言書の検認」、法務省「自筆証書遺言書保管制度」、遺言書保管法。保管された遺言書の原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間管理されると法務省は案内しています。
相続人が保管所で閲覧や証明書の交付を受けられるのは、遺言者が亡くなったあとです。保管事実証明書・遺言書情報証明書は全国どこの遺言書保管所でも請求でき、郵送でも請求できます(法務省)。遺言書情報証明書の請求には、遺言者が死亡したことを確認できる書類、請求者の住民票の写し、相続人であることが確認できる戸籍謄本などが必要です。
よくある質問
遺言書の検認とは何ですか?
裁判所の案内では、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
検認が必要な遺言書は?
民法1004条は、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人に検認の請求を義務づけ、同条2項で適用除外にしているのは公正証書による遺言だけです。そのため自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要です。ただし遺言書保管法11条により、法務局(遺言書保管所)に保管されている遺言書は検認が不要です。
検認の申立てはどこにしますか?費用はいくらですか?
申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。費用は、遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便料は裁判所ごとに異なります。検認が終わったあとの検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要です(裁判所)。
検認は相続人全員がそろわないとできませんか?
裁判所の案内では、申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは各人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続は行われます。検認期日には、申立人が遺言書と、担当者から指示されたものを持参します。
検認はいつまでにすればいいですか?
民法1004条は「相続の開始を知った後、遅滞なく」、裁判所の案内は「遺言者の死亡を知った後、遅滞なく」と書いています。確認した原文には、何日以内という日数の定めは書かれていませんでした。なお、相続の承認・放棄は相続の開始を知った時から3か月以内(民法915条1項)と、別に期限があります。
封のしてある遺言書を、うっかり開封してしまいました。
民法1004条3項は、封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できないと定め、民法1005条は、家庭裁判所外で開封した者を5万円以下の過料に処すると定めています。開封してしまった場合の遺言そのものの効力や、実際に過料が科される基準は、確認した原文に書かれていません。家庭裁判所に事情を伝えて、検認の手続を確認してください。