相続放棄 読了時間:約9分

相続放棄は自分でできる?家庭裁判所への手続きの流れ・続柄別の必要書類・申述書の書き方

相続放棄は、自分でできます。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所へ、相続放棄の申述書を出します(民法第915条・第938条)。費用は収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手、あとは戸籍などの添付書類です。あなたが相続放棄を考えているなら、まず「自分の続柄でどの戸籍が要るか」と「3か月の数え始め」を確かめてください。裁判所の案内と申述書の様式をもとに、流れと書き方を整理しました。

自分でする手続きの流れ

裁判所の案内では、相続放棄の申述は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所にします。申述する人の住所地ではありません。手続きの順番は次のとおりです。

順すること出すもの・注意
1申述先の家庭裁判所を調べる裁判所の「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」で、被相続人の最後の住所地から調べる
2戸籍などを集める共通の2点と、続柄別の戸籍(続柄別の必要書類)
3申述書を書く書式と記入例は裁判所のホームページ(書き方)
4印紙と切手を添えて提出する収入印紙800円分(申述人1人につき)、連絡用の郵便切手。郵便料は裁判所ごとに異なる
5裁判所からの照会に答える書面での照会や、直接の事情の聞き取りがある場合がある
6受理通知書を受け取る証明書が要るときは別に申請する(提出したあと)

出典:裁判所「相続の放棄の申述」、裁判所 家事事件Q&A。郵便切手の金額は申述先の家庭裁判所に確認します(裁判所のサイトで郵便料を調べるときは「家庭裁判所」ボタンを選びます)。

戸籍の手数料を含めた実費の目安と、司法書士に頼んだ場合の報酬は相続放棄の費用はいくら?にまとめています。

3か月の期限と、決める前にしてはいけないこと

民法第915条第1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかをしなければならないと定めています。この期間の間は、相続財産を調べることもできます(同条第2項)。

数え始めは、裁判所のQ&Aによると、被相続人が亡くなったこと、およびこれにより自己が法律上相続人となったことを知ったときです。ただし、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部または一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば、受理されることもあるとされています。受理されるかどうかは事情によるため、3か月を過ぎていても、あきらめる前に家庭裁判所に確認してください。

放棄を決める前に、相続財産を処分しない

民法第921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています(保存行為と、第602条に定める期間を超えない賃貸は除く)。また、3か月以内に限定承認も放棄もしなかったときも、単純承認とみなされます。放棄するかもしれないうちは、財産を売ったり使ったりせず、まず調べることにとどめてください。放棄をした後でも、相続財産を隠したり勝手に使ったりすると単純承認とみなされる場合があります(同条第3号)。

続柄別の必要書類

必要書類は、申述書のほかに、次の2点がすべての人に共通です。

これに加えて、続柄によって出す戸籍が変わります。

申述人共通に加えて出す戸籍補足
被相続人の配偶者被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本―
被相続人の子、孫・ひ孫など(第一順位)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本。孫・ひ孫の場合は、本来の相続人(被代襲者)の死亡の記載のある戸籍謄本も―
被相続人の父母・祖父母など(第二順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本。子(代襲者を含む)で亡くなっている人がいれば、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本。亡くなっている直系尊属(相続人より下の代に限る)の死亡の記載のある戸籍謄本先順位の相続人などから提出済みのものは添付不要
被相続人の兄弟姉妹、おい・めい(第三順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本。子(代襲者を含む)で亡くなっている人がいれば、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本。被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本。おい・めいの場合は、本来の相続人(被代襲者)の死亡の記載のある戸籍謄本も先順位の相続人などから提出済みのものは添付不要

出典:裁判所「相続の放棄の申述」。戸籍等の謄本は「戸籍等の全部事項証明書」という名称で呼ばれる場合があります。

裁判所の案内には、次の取り扱いも書かれています。

申述書の書き方

申述書の書式(PDF・Word)と、成人の場合・未成年者の場合の記入例は、裁判所のホームページにあります。記入例には、実際に申述を受けた家庭裁判所が、判断するためにさらに書面で照会したり直接事情をたずねたりする場合があるので、裁判所からの照会や呼出しには必ず応じるように、と書かれています。

申述書は2枚で、1枚目が当事者と添付書類、2枚目が申述の趣旨と理由です。欄ごとに書くことは次のとおりです。

欄書くこと様式・記入例の注意
収入印紙収入印紙800円分を貼る貼った印紙に押印しない
申述人本籍、住所、電話、氏名、生年月日、職業、被相続人との関係(子・孫・配偶者・直系尊属・兄弟姉妹・おいめい・その他の番号に○)裁判所から連絡がとれるよう正確に。電話は平日の日中に連絡のつく番号(携帯電話でも構わない)
法定代理人申述人が未成年者などの場合に、親権者・後見人などを書く未成年者用の記入例が別にある
被相続人本籍、最後の住所、氏名、死亡の年月日亡くなった人のことを書く
添付書類戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本の通数、被相続人の住民票除票または戸籍附票にチェック同じ書類は1通で足りる
申述の趣旨「相続の放棄をする。」(あらかじめ印字されている)―
申述の理由相続の開始を知った日(令和何年何月何日)と、その理由を選ぶ1 被相続人死亡の当日/2 死亡の通知をうけた日/3 先順位者の相続放棄を知った日/4 その他(具体的に書く)
放棄の理由当てはまる番号に○をつける1 被相続人から生前に贈与を受けている/2 生活が安定している/3 遺産が少ない/4 遺産を分散させたくない/5 債務超過のため/6 その他(〔 〕内に具体的に書く)

出典:裁判所の相続放棄申述書の書式と記入例。選択肢の文言は様式の表記です。

「相続の開始を知った日」は、3か月の数え始めにあたる日を書く欄です。亡くなった当日に知ったのか、通知を受けた日なのか、先順位の人が放棄したことを知った日なのかを、自分の事情に合わせて選びます。

申述人が未成年者のとき、裁判所の案内では、未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く)や、複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者だけを代理して申述するときは、特別代理人の選任が必要です。

提出したあと:照会、受理通知書、受理証明書

申述書を出したあとの流れは、裁判所の案内と記入例から、次のとおり読み取れます。

  1. 裁判所からの照会:判断のために、書面で照会されたり、直接事情をたずねられたりする場合があります。照会や呼出しには必ず応じてください(記入例の注記)。
  2. 受理通知書:受理されると届きます(裁判所Q&Aに「受理通知書」の記載があります)。受理されると、その人は初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法第939条)。
  3. 受理後の連絡:亡くなった人の財産を管理している場合は相続人に引き継ぎます。債権者から債務の請求をされている場合は、債権者に、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよい、と裁判所のQ&Aは案内しています。
  4. 受理証明書:証明書が必要なときは、書類交付申請書に必要事項を書き、150円分の収入印紙(郵送の場合は返信用の郵便切手も)を添えて、受理した家庭裁判所に申請します。窓口では、印鑑と、受理通知書や運転免許証など本人を確認できるものを持参します。

申述から受理までにかかる日数は、裁判所の案内に書かれていないため、この記事では書いていません。

3か月に間に合わないとき

3か月の間に相続財産の状況を調べても、承認するか放棄するかを決められないときは、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てると、裁判所はこの期間を伸ばすことができます(民法第915条第1項ただし書)。次の点が裁判所の案内に書かれています。

どれだけ延びるかは、裁判所の案内に書かれていないため、この記事では書いていません。申立てが認められるかどうかも、事情によります。期限が近いと感じたら、早めに家庭裁判所に確認してください。

放棄したあと、限定承認との違い

放棄したあとの空き家:放棄の時点で実家を現に占有していた人は、次の相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意で保存する義務が残ります(民法第940条第1項)。住んでいた、鍵を持って出入りしていたなど、心当たりがあれば実家を相続放棄したら管理義務はどうなる?で確かめてください。

費用:実費と司法書士報酬の目安は相続放棄の費用はいくら?にあります。

限定承認との違い:借金の額が分からないときの選択肢に限定承認があります。裁判所の案内と条文で比べると、次のとおりです。

比べる点相続放棄限定承認
引き継ぐもの権利も義務も一切受け継がない相続によって得た財産の限度で、被相続人の債務を負担する
申述する人相続人(案内に全員でとの記載はない)相続人全員が共同して行う(民法第923条)
申述の期間知った時から3か月以内知った時から3か月以内
費用収入印紙800円分(申述人1人につき)、郵便切手収入印紙800円分、郵便切手
提出するもの申述書、戸籍など相続財産の目録を作成して提出(民法第924条)、戸籍など

出典:裁判所「相続の放棄の申述」「相続の限定承認の申述」、民法第922条〜第924条。限定承認は、提出するものも手続きも相続放棄とは異なります(限定承認とは?)。

よくある質問

相続放棄は自分でできますか?

できます。裁判所の案内では、相続放棄の申述は相続人が家庭裁判所に行い、申述書の書式と記入例が裁判所のホームページに載っています。必要なのは、申述書、収入印紙800円分(申述人1人につき)、連絡用の郵便切手、戸籍などの添付書類です。申述人が未成年者や成年被後見人の場合は、法定代理人が代理して申述します。

どこの家庭裁判所に出しますか?

被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の家庭裁判所です。申述する人の住所地ではありません。どの裁判所にあたるかは、裁判所の「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」で調べられます。

いつまでに出せばいいですか?

民法第915条第1項により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。3か月以内に相続財産を調べても決められないときは、期間を伸ばす申立てができます(間に合わないとき)。

亡くなってから3か月以上たっていますが、もう放棄はできませんか?

裁判所のQ&Aは、起算点を「被相続人が亡くなったこと、およびこれにより自己が法律上相続人となったことを知ったとき」としています。そのうえで、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部または一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば、受理されることもある、と案内しています。受理されるかどうかは事情によるため、早めに家庭裁判所に確認してください。

先に他の相続人が放棄しました。自分も3か月以内ですか?

申述書には、相続の開始を知った日の理由として「先順位者の相続放棄を知った日」を選ぶ欄があります。先順位の人の放棄で自分が相続人になった場合は、この選択肢にあたるかどうかを確認してください。どの日が3か月の始まりになるかは事情によるため、迷うときは家庭裁判所に確認することをおすすめします。

未成年の子が相続放棄をするときは?

法定代理人(親権者など)が代理して申述します。裁判所の案内では、未成年者と法定代理人が共同相続人で未成年者だけが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く)などは、特別代理人の選任が必要です。申述書は未成年者用の記入例があります。

受理されたことを証明する書類はもらえますか?

受理されると家庭裁判所から受理通知書が届きます(裁判所Q&Aの記載)。債権者などに示す証明書が必要なときは、書類交付申請書に必要事項を書き、150円分の収入印紙(郵送なら返信用の郵便切手も)を添えて、受理した家庭裁判所に申請します。窓口に行くときは、印鑑と、受理通知書や運転免許証など本人を確認できるものを持参します。

相続放棄をすれば、実家の管理もしなくてよくなりますか?

放棄の時点で実家を現に占有していた人は、次の相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意で保存する義務が残ります(民法第940条第1項)。くわしくは実家を相続放棄したら管理義務はどうなる?で説明しています。

参考・出典

運

空き家計算機 運営事務局

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