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相続財産清算人と不動産|選任の申立て・売却の許可・売れないときの国庫帰属・費用
相続人がいない不動産は、家庭裁判所が選ぶ「相続財産の清算人」が、家庭裁判所の許可を得て売ります。相続人全員が相続放棄をして誰もいなくなった場合も、同じ手続です。売れずに残った財産は、最後に国庫に帰属します(民法959条)。これは、相続した人が申請する「相続土地国庫帰属制度」とは別の仕組みです。この記事は、裁判所の案内と条文を取得できた範囲で、申立て・費用・売却・登記と税金の入口を整理します。
清算人が必要になる場面
民法951条は、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産を法人とすると定めています。この場合、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任しなければなりません(952条1項)。
裁判所の案内は、相続人の存在、不存在が明らかでないときに、相続人全員が相続放棄をして結果として相続する者がいなくなった場合も含まれると書いています。清算人は、被相続人の債権者などに債務を支払うなどして清算を行い、清算後に残った財産を国庫に帰属させます。
裁判所の申立書の書式でも、申立ての理由は「相続人があることが明らかでないため」か「相続人全員が相続の放棄をしたため」のどちらかを選ぶ形になっています。
申立人・申立先・費用
裁判所の案内にある申立人は、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)と検察官です。申立先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。清算人になるのに資格は要らず、被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、最も適任と認められる人が選ばれ、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。
| 項目 | 金額 | 注記 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 800円分 | 申立書の書式の欄にも「収入印紙800円分」とある |
| 郵便切手 | 裁判所ごとに異なる | 申立先の家庭裁判所のサイトで確認する。保管金として納付もできる |
| 官報公告料 | 5,582円 | 家庭裁判所の指示があってから納める |
| 予納金 | 案内に金額の記載なし | 清算人の管理費用(報酬を含む)に不足が出そうなとき、申立人に納めてもらうことがある |
出典:裁判所「相続財産清算人の選任」、同「家事事件Q&A」(2026年10月2日取得。金額は取得時点のもの)。
清算人の報酬は相続財産から支払われます。相続財産が少なくて報酬が払えないと見込まれるときは、申立人が報酬相当額を家庭裁判所に納め、それを報酬にすることがあるとされています。
添付書類には、被相続人の出生から死亡までの戸籍、住民票の除票または戸籍附票のほか、財産を証する資料として不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)が挙がっています。不動産がある場合は、申立ての時点で登記簿の内容が必要になります。
選任から終了までの流れ
裁判所の案内と条文から分かる流れは次のとおりです。途中で相続財産がなくなった場合は、そこで手続は終わります。
| 段階 | 内容 | 期間・根拠 |
|---|---|---|
| 選任と公告 | 家庭裁判所が清算人を選任し、選任の公告と、相続人を捜す公告を行う | 6か月以上(民法952条2項) |
| 債権者・受遺者への公告 | 清算人が、請求の申出をすべき旨を公告する | 2か月以上。上の期間内に満了する(957条1項) |
| 特別縁故者の申立て | 被相続人と生計を同じくしていた人などが、残った財産の分与を請求できる | 上の公告期間の満了後3か月以内(958条の2) |
| 売却と弁済 | 清算人が、家庭裁判所の許可を得て不動産や株等を売却し、債権者や受遺者へ支払う | 裁判所の案内 |
| 終了 | 残った財産は国庫に引き継がれる | 959条 |
出典:e-Gov法令検索 民法952条・957条・958条の2・959条、裁判所「家事事件Q&A」(2026年10月2日取得)。
公告の期間内に相続人としての権利を主張する者がなければ、相続人と、清算人に知れなかった債権者・受遺者は、権利を行使できなくなります(958条)。
不動産を売るには家庭裁判所の許可が要る
清算人は、選任されただけでは不動産を自由に売れません。民法953条は、不在者の財産の管理人についての27条から29条までを、清算人に準用しています。そのうち28条は、管理人が103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができると定めています。
- 103条が認める範囲:保存行為と、物や権利の性質を変えない範囲での利用・改良を目的とする行為だけです。
- それを超える行為:家庭裁判所の許可が要ります(28条)。裁判所の案内は、必要があれば、清算人は家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株等を売却し、金銭に換えることもできると書いています。
許可の申立てに必要な費用や、許可を出す基準は、取得した裁判所の案内に記載がなく、書いていません。実際に売る場合の進め方は、選任された清算人(弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることもあります)に確認することになります。
売った代金は相続財産に入り、債権者や受遺者への支払、特別縁故者への分与のあと、残れば国庫に引き継がれます。
売れない不動産と、2つの「国庫帰属」の違い
売れない不動産が最後にどうなるかについて、条文は「前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する」(959条)としています。ただし、売れずに残った土地や家を、どのような手順で国が引き継ぐのかは、取得した条文と裁判所の案内に記載がありません。
名前が似ているため混同されやすい「相続土地国庫帰属制度」とは、前提も費用も別です。
| 項目 | 清算人の手続の最後(民法959条) | 相続土地国庫帰属制度 |
|---|---|---|
| 場面 | 相続人がいない(全員が放棄した場合を含む)ときの、清算が終わったあと | 相続等で土地の所有権を取得した人が、その土地を国に引き取ってもらうとき |
| 動く人 | 家庭裁判所が選ぶ清算人 | 土地の所有者が法務大臣に承認を申請する(2条1項) |
| 建物のある土地 | 959条に除外の定めはない | 申請できない(2条3項1号) |
| 費用 | 申立ての費用と、場合により予納金 | 承認後に負担金。国有地の管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定(10条1項) |
出典:e-Gov法令検索 民法959条、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(2026年10月2日取得)。
相続した土地を相続人として国に引き取ってもらう場合の要件と負担金は、相続土地国庫帰属制度とはにまとめています。
登記と税金:原文で言える範囲
登記
申立ての段階では、不動産登記事項証明書(未登記なら固定資産評価証明書)を添付します。売却したあとの名義変更の登記について、法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページに、相続財産法人や清算人に関する様式の記載を見つけられませんでした。どの名義でどう申請するかは書かず、司法書士に確認する事項としておきます。
税金
- 特別縁故者が財産を分与されたとき:相続税法4条1項は、民法958条の2により相続財産の全部または一部を与えられた場合、その与えられた時の時価に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したものとみなすと定めています。この分与で新たに申告書を出す必要が生じた人は、その事由が生じたことを知った日の翌日から10か月以内に提出します(相続税法29条1項)。
- 清算人が不動産を売ったときの譲渡所得の課税:国税庁の原文を取得できず、書いていません。税務署または税理士にご確認ください。
相続した人が不動産を売る場合の3,000万円特別控除などは、相続した空き家を売ると3,000万円控除が使える条件にまとめています。相続人がいる場合の話で、清算人が売る場合には、この記事では扱っていません。
相続放棄を考えている方へ:放棄するか、相続して売るか
相続人全員が放棄すると、最後は清算人の手続になります。放棄を選ぶ前に、押さえておきたい条文が4つあります。
| 条文 | 内容 | この選択への意味 |
|---|---|---|
| 915条1項 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認または放棄をする | 期間内に決める必要がある。伸長は家庭裁判所に請求できる |
| 921条1号 | 相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす | 放棄する可能性があるうちに売ると、放棄できなくなるおそれがある |
| 939条 | 放棄した人は、初めから相続人とならなかったものとみなす | 放棄すれば相続人ではなくなる |
| 940条1項 | 放棄の時に財産を現に占有している人は、相続人または清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意で保存する | 家に住んでいた・管理していた人は、清算人に引き渡すまで管理が続きうる |
出典:e-Gov法令検索 民法915条・921条・939条・940条(2026年10月2日取得)。
放棄したあとの管理の責任は、実家を相続放棄したら管理義務はどうなるで、放棄の手続は相続放棄は自分でできる、費用は相続放棄の費用にまとめています。
「放棄するか、相続して売って手放すか」を比べるなら、先に決めるのは順序です。921条1号があるため、売買契約を結ぶなど財産を処分する行為は、放棄する可能性が残っているうちは弁護士や家庭裁判所に確認してから行ってください。査定を受けることなど、どこまでが処分にあたるかの線引きは、取得した原文に記載がありません。
相続して売る場合、共有持ち分、再建築不可、築古、借地権つきなどの物件は、買い手が付きにくいことがあります。ラクウルの公式サイトは、こうした訳アリ物件の買取を掲げ、よくある質問の「相続前でも相談できますか?」に「はい、問題ありません」と答えています(2026年10月2日に確認)。査定の見方は不動産の売却価格査定の仕組みにまとめています。
よくある質問
相続財産清算人は、誰が家庭裁判所に申し立てますか?
民法952条1項は、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任するとしています。裁判所の案内は、申立人として、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)と検察官を挙げています。相続放棄をした人が利害関係人にあたるかどうかは、取得した原文に例示がないため、書いていません。申立先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
申立てには、いくらかかりますか?
裁判所の案内によると、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要で、郵便料は裁判所ごとに異なります。官報公告料は5,582円で、家庭裁判所の指示があってから納めます。このほか、相続財産から清算人の費用(報酬を含む)を払うと足りなくなりそうなときは、申立人に相当額を予納金として納めてもらうことがあるとされています。予納金の額は、取得した裁判所の案内に記載がありません。
清算人は、不動産を自由に売れますか?
自由には売れません。民法953条は、不在者の財産の管理人に関する27条から29条までを清算人に準用しています。28条は、管理人が103条に規定する権限(保存行為と、物や権利の性質を変えない範囲の利用・改良)を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て行うと定めています。裁判所の案内も、清算人は家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株等を売却し、金銭に換えることができると書いています。
売れない不動産は、最終的にどうなりますか?
民法958条の2に基づく分与などで処分されなかった相続財産は、959条により国庫に帰属します。裁判所の案内も、清算後に残った財産を国庫に帰属させるとしています。売れずに残った土地や家が、どのような手順で国に引き継がれるのかは、取得した原文に記載がなく、書いていません。
相続土地国庫帰属制度とは、同じものですか?
別のものです。相続土地国庫帰属制度は、相続等で土地の所有権を取得した人が、法務大臣に承認を申請する制度で、建物のある土地は申請できず(2条3項1号)、承認されると負担金を納めます(10条1項)。民法959条の国庫帰属は、相続人がいない場合の清算が終わったあとに、残った相続財産に起きる効果です。
清算人の選任から終了まで、どのくらいかかりますか?
期間の合計を示す原文は取得できませんでした。分かるのは、選任の公告と相続人を捜す公告が6か月以上の期間で行われること(952条2項)、債権者・受遺者への公告が2か月以上の期間で行われること(957条1項)、特別縁故者の分与の申立てが相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内であること(958条の2第2項)です。不動産の売却や弁済は、これらと並行して進むこともあります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第27条〜第29条・第103条・第915条・第921条・第939条・第940条・第951条〜第959条)
- e-Gov法令検索 相続税法(第4条・第29条)
- e-Gov法令検索 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
- 裁判所 相続財産清算人の選任
- 裁判所 相続財産清算人の選任申立書の書式及び記載例
- 裁判所 家事事件Q&A(相続財産清算人の項)
- 法務局 不動産登記の申請書様式について
- 訳アリ物件買取ラクウル よくある質問
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での申立て・費用・登記・税額は、弁護士・司法書士・税理士・家庭裁判所・税務署にご確認ください。