相続した家がいらないとき|相続放棄・売る・寄付・相続土地国庫帰属・兄弟が相続したくないとき・放置するとどうなる
いらない家を相続しない方法は、家庭裁判所に相続放棄を申し出ることです。期限は自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項)で、収入印紙は800円(申述人1人につき)です。ただし放棄は「権利や義務を一切受け継がない」選択で、家だけを選んで放棄する形は裁判所の案内にありません。放棄しない、またはできない家は、売る・寄付する・個人に譲る・土地を国に引き取ってもらう(建物が残っていると申請できません)のどれかになります。何もしないままだと、3か月が過ぎて単純承認とみなされ、相続登記は3年以内、怠ると10万円以下の過料の対象です。
| 選び方 | 期限や条件 | 詳しいページ |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述。収入印紙800円 | 相続放棄は自分でできる |
| 売る | 売る期限の定めはなし。空き家の3,000万円特別控除は相続から3年後の12月31日まで、かつ令和9年12月31日まで | 空き家の処分方法 |
| 国に引き取ってもらう | 建物がある土地は申請できない。審査手数料は1筆14,000円、負担金は基本20万円 | 相続土地国庫帰属制度 |
| 寄付する | 国・地方公共団体は特に要件なく譲渡所得が非課税。受け取るかは相手の受諾しだい | 空き家を寄付できるか |
| 個人にタダで譲る | 書面にしない贈与は解除できる。もらう人に贈与税(暦年課税は年110万円まで基礎控除) | 家をタダで譲るには |
| 放置する | 相続登記は知った日から3年以内、怠ると10万円以下の過料 | 空き家を放置するとどうなる |
出典:e-Gov法令検索(民法・不動産登記法は施行日2026年6月24日、相続土地国庫帰属法は2025年6月1日、地方税法は2026年10月1日時点)、裁判所、法務省、国税庁タックスアンサー No.3108・No.4402・No.3306(令和8年4月1日現在法令等)。いずれも2026年10月3日取得。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の手続きは家庭裁判所・法務局・税務署・専門家にご確認ください。
いらない家を相続しないには、相続放棄で足りるか
民法915条1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のどれかをしなければならない、と定めています。放棄をしようとする人は、その旨を家庭裁判所に申し出る必要があります(938条)。裁判所の案内では、申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。
放棄をすると、その相続に関して初めから相続人にならなかったものとみなされます(939条)。裁判所は放棄を「相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない」ものと説明しています。預貯金は受け取って家だけ放棄する、という選び方は載っていません。
放棄の前後で気をつける点は3つあります。
- 先に処分しない:相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたとみなされます(921条1号)。家を売る契約は処分に当たると考えられるので、放棄を考えているなら売る前に決める必要があります。
- 3か月を過ぎない:期間内に限定承認も放棄もしなかったときも、単純承認とみなされます(921条2号)。調査しても決められないときは、利害関係人などの申立てで家庭裁判所が期間を伸ばせます(915条1項ただし書。裁判所の案内では収入印紙800円)。
- 放棄後も、住んでいれば保存義務が残る:放棄の時に家を現に占有しているときは、相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければなりません(940条1項)。
放棄後の管理の考え方は相続放棄したら管理義務はどうなるかのページ、費用の内訳は相続放棄の費用のページ、借金があるときの選択肢は限定承認のページにあります。
放棄しない(できない)なら、売る・譲る・寄付する・国に返す
売る:期限はないが、3,000万円特別控除には期限がある
家を売ること自体に法律上の期限はありません。ただし、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、かつ相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の1つです(国税庁 No.3306)。売る時期の期限は相続した家を売るタイミングのページ、処分方法の比較は空き家の処分方法のページにあります。
国に引き取ってもらう:土地だけ。建物があると申請できない
相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人への遺贈で土地を取得した人が、その土地の所有権を国に帰属させる承認を法務大臣に申請できる制度です(相続土地国庫帰属法2条1項)。共有の土地は共有者の全員が共同で申請します(同条2項)。令和5年4月27日より前に相続した土地も対象です。
- 申請できない土地:建物の存する土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、土壌汚染のある土地、境界が明らかでない土地などです(2条3項)。法務省のQ&Aは、建物は取り壊したうえで申請するのが原則としています。
- 承認されない土地:一定の崖があって管理に過分の費用や労力がかかる土地、地上や地下に管理・処分の妨げになる物がある土地などです(5条1項)。
- お金:審査手数料は土地1筆当たり14,000円で、取り下げや不承認でも返還されません。承認後の負担金は20万円が基本で、市街化区域等の宅地・農地と森林は面積に応じて20万円以上です。負担金の額の通知を受けた日から30日以内に納めないと、承認は効力を失います(10条3項)。
- 期間:標準処理期間は8か月で、事案によっては超えることがあります(法務省Q&A)。
要件の全体は相続土地国庫帰属制度のページにあります。
寄付する:国・地方公共団体は非課税、法人は時価で譲渡とみなされる
贈与は、財産を無償で与える意思を表示し、相手方が受諾することで効力を生じます(民法549条)。受け取るかどうかは相手が決めます。国税庁によると、個人が土地・建物を法人などに寄附すると、寄附時の時価で譲渡があったものとみなされて所得税(譲渡所得)が課税されます。例外のうち、国や地方公共団体に寄附した場合は特に要件も手続きも要りません。公益法人等に寄附する場合は、国税庁長官の承認を受ける申請を、寄附の日から4か月以内または確定申告期限のいずれか早い日までに出す必要があります(No.3108)。
自治体・NPOへの寄付の流れは空き家を寄付できるかのページにあります。
個人にタダで譲る:口約束は解除できる。もらう人に贈与税
書面によらない贈与は、各当事者が解除できます。履行が終わった部分は別です(民法550条)。個人から贈与で財産をもらった人には贈与税がかかり、暦年課税では1年間の合計が110万円以下なら課税されません(国税庁 No.4402)。登記や税金の負担は家をタダで譲るにはのページにあります。
兄弟が相続したくない・売りたくないとき
相続人が数人いるとき、相続財産はその共有に属します(民法898条1項)。相続放棄は相続人ごとの手続きで、収入印紙も申述人1人につき800円です。放棄した人は初めから相続人にならなかったものとみなされる(939条)ので、家は放棄しなかった相続人が引き継ぎます。被相続人の子の全員が放棄すると、条文の順位では次が直系尊属、その次が被相続人の兄弟姉妹です(889条1項)。配偶者は常に相続人です(890条)。
放棄ではなく、家をどうするかで意見が分かれているときは、共同相続人はいつでも協議で遺産の全部または一部を分割でき(907条1項)、協議が調わなければ家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。売って代金を分ける方法は換価分割のページ、相続開始から10年を過ぎると分割の扱いが変わる点(904条の3)は遺産分割に期限はあるかのページ、自分の持分だけを売れるかは共有持分の売却のページにあります。
何もしないで放置すると、法律上どうなるか
- 3か月が過ぎると単純承認になる:期間内に限定承認も放棄もしないと、単純承認をしたとみなされます(民法921条2号)。単純承認は被相続人の権利や義務をすべて受け継ぐ選択です(裁判所)。
- 相続登記の義務:相続で不動産の所有権を取得した人は、取得を知った日から3年以内に所有権移転の登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料です(164条1項)。
- 固定資産税は、現に所有している人に来る:登記されている所有者が賦課期日(1月1日)前に死亡しているときは、同日に家を現に所有している人が納税義務者です(地方税法343条2項)。
放置した空き家に対する空家法の措置と固定資産税の特例の扱いは、空き家を放置するとどうなるかのページにあります。相続登記の費用は相続登記の費用の相場のページにあります。
どれを選ぶかは、何を残したいかで分かれる
- 預貯金など、家以外も受け取りたい:放棄は一切を受け継がない選択なので使えません。売る・譲る・寄付する・国に返す(土地のみ)から選びます。
- 建物のある家を、壊さず手放したい:国庫帰属は建物があると申請できないので、売る・譲る・寄付するになります。
- 売れない、断られたと言われた:買取の査定を聞く方法があります。ラクウルの公式サイトは、査定は無料、築年数は完全に不問、建て替えができない土地でも「問題ありません」と案内しています。「相続前でも相談できますか」への回答も「はい、問題ありません」です。相続放棄の手続き中や共有名義の家を買い取るかは公式サイトに記載がないので、問い合わせのときに確かめてください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 - 民法(明治二十九年法律第八十九号)
- e-Gov法令検索 - 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
- e-Gov法令検索 - 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
- e-Gov法令検索 - 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
- 裁判所 - 相続の放棄の申述
- 裁判所 - 相続の承認又は放棄の期間の伸長
- 法務省 - 相続土地国庫帰属制度の概要
- 法務省 - 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A
- 国税庁 - No.3108 国や地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う法人等に財産を寄附したとき
- 国税庁 - No.4402 贈与税がかかる場合
- 国税庁 - No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例