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換価分割とは|相続した不動産を売って代金を分ける手続き・登記・税金
換価分割は、相続した不動産を売って、その代金を相続人で分ける遺産分割の方法です。売る前に相続登記が要り(相続人申告登記では売れません)、売った利益の申告は「売る時点で代金の取得割合が決まっていたか」で割合が変わります。この記事は、不動産を誰も単独で引き継がずに売って分けたい相続人の方に向けて、登記・協議書・売り先・税金の順に、民法・不動産登記法・地方税法・法務省・国税庁の原文で整理します。
換価分割とは:不動産を売って代金を分ける遺産分割
遺産分割で不動産を分ける方法には、相続人の1人が不動産を取得する方法と、不動産を売って代金を分ける方法があります。後者が換価分割です。遺産分割をする前の不動産は、相続人全員の共有です(民法898条1項)。そのため、売るには相続人が協力して手続を進めることになります。
民法の条文には「換価分割」という語は出てきません。話し合いと審判の根拠は、次の条文です。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 分け方の基準 | 民法906条 | 遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況その他一切の事情を考慮する |
| 話し合いで分ける | 民法907条1項 | 共同相続人は、いつでも、協議で遺産の全部または一部の分割ができる |
| 話し合いが調わない | 民法907条2項 | 各共同相続人は、分割を家庭裁判所に請求できる |
| 審判で売って分ける | 家事事件手続法194条 | 家庭裁判所は、審判のため必要と認めるとき、遺産の競売による換価を命じられる。必要かつ相当と認めるとき、相続人の意見を聴いて、任意の売却を命じることもできる(競売を求める共同相続人がいるときを除く) |
出典:e-Gov法令検索 民法・家事事件手続法(2026年10月2日取得)。
換価分割が候補になるのは、不動産を単独で取得する相続人がいないとき、または取得する人が他の相続人へ支払う金銭を用意できないときです(代償分割との違いは後半の表にまとめました)。共有名義の売却全般は共有名義の不動産を売却・分割するには、遺産分割の期限は遺産分割に期限はある?で整理しています。
売る前に要る相続登記:共有名義か、代表者名義か
被相続人名義のままでは売れません。法務省のQ&Aは、相続人申告登記が不動産の権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記をする必要があると説明しています。登記には、次の2つの形があります。
| 登記の形 | 手続の要点 | 注意 |
|---|---|---|
| 法定相続分で共有名義にする | 遺産分割をしなくても登記できる。相続人のうち1人が申請人になって申請してもよい | 申請人にならなかった相続人には、登記識別情報が通知されない |
| 遺産分割で代表者1人の名義にする | 遺産分割協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付する(登記申請人の分は除く) | 登録免許税は、課税価格(固定資産課税台帳の価格)に1,000分の4を乗じた額 |
出典:法務局「登記手続ハンドブック」相続登記①(遺産分割協議編)・相続登記②(法定相続編)、法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(2026年10月2日取得)。
登記には期限もあります。不動産登記法76条の2第1項は、相続で所有権を取得した人に、取得を知った日から3年以内の申請を義務づけています。法務省のQ&Aによると、遺産分割で不動産を取得した場合も、遺産分割の日から3年以内に、その内容に応じた登記が必要です。正当な理由なく登記をしない場合は、10万円以下の過料の対象になります。売るつもりでも、この期限は進みます。
登記の費用と手順は相続登記の費用の相場、自分で申請する方法は相続登記を自分でやる方法、期限が迫るときの相続人申告登記は相続人申告登記とはにまとめています。
遺産分割協議書に書く内容と、書けない部分
換価分割の合意は、遺産分割協議書にまとめます。ただし、法務局は、遺産の分割の方法や協議書の作成についての相談には応じないと、登記手続ハンドブックに書いています。ハンドブックの協議書のイメージは図で、換価分割の条項の例は載っていません。国税庁・裁判所のページでも、条項の記載例は取得できませんでした。そのため、条項の文例はこの記事に載せません。
文例の代わりに、公的な原文から、協議書の段階で決めておく意味がある項目は次の2つと読めます。
- 代金の取得割合:国税庁の質疑応答は、売る時点までに取得割合を定めていれば、その割合で譲渡所得を申告すると説明しています(詳しくは申告の割合の節)。
- 登記の名義:共有名義にするのか、代表者1人の名義にするのかで、登記の手続が変わります(前の節)。
売却価格の下限や売却の期限、売れ残ったときの扱いなどをどう書くかは、公的な記載例が取得できなかったため載せません。書き方は、司法書士・弁護士にご相談ください。協議書に書く一般的な項目は遺産分割協議書の書き方で整理しています。
売り先を探す:仲介か買取か
登記と取得割合を決めたら、買主を探します。一般の買主に仲介で売る方法と、不動産会社が直接買い取る方法があります。買取は、一般に仲介の相場より価格が下がる場合があるため、複数社の査定で比べることになります。査定の見方は不動産の売却価格査定の仕組み、仲介手数料は不動産売却の仲介手数料の仕組みで整理しています。
買取業者の一つ、ラクウルが公式サイトに書いている内容は次のとおりです(2026年10月2日に確認)。
- 買取の対象:事故物件・再建築不可物件・共有持ち分物件・違反建築物件・旧耐震や築古の物件・借地権・底地などを挙げています。
- 相談の入口:よくある質問に「相続前でも相談できますか?」があり、「はい、問題ありません」と答えています。権利証や図面などの書類が揃っていなくても、査定は可能と書かれています。
- 査定:査定はすべて無料(一部対象外あり)、現地調査も無料で、最短当日で査定金額を提示するとしています。
- 費用と決済:自社で直接買い取るため仲介手数料は不要で、決済は最短1日としています。提示金額に納得できない場合は断れると書かれています。
公式サイトには、相続人全員が売主になる場合の条件や、遺産分割が済んでいない段階での手続に関する記載はありません。売主になる相続人の人数や、登記の状況は、問い合わせの際に伝えて確認してください。共有名義の物件を売りたい場合は訳アリ物件買取ラクウルとは、相続した不動産の相談窓口としては相続不動産の買取専門ラクウルとは、買取業者の選び方は空き家買取業者の選び方で整理しています。
売った利益の申告:割合は「売る前に決まっていたか」で変わる
不動産を売って利益が出ると、譲渡所得の申告が必要です。所有期間は、相続したものは原則として被相続人が取得した日から数えます(国税庁 No.3202)。売った年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地・建物の税額は、課税長期譲渡所得金額に所得税15%と住民税5%を掛けて計算します。令和29年(2047年)までの各年分は、所得税額に2.1%の復興特別所得税が加わります(No.3208)。
換価分割で次に問題になるのが、売った利益を、相続人のそれぞれがどの割合で申告するかです。国税庁の質疑応答は、次のように整理しています。
| 売る時点の状況 | 申告の割合 | 国税庁の説明 |
|---|---|---|
| 代金の取得割合を売る前に定めていた | 定めた取得割合 | 各相続人は、取得割合と同じ所有割合で売ったことになる |
| 特別の事情がなく、法定相続分で代金を取得する | 法定相続分 | 各相続人が法定相続分で売ったのだから、その割合で申告する |
| 取得割合が決まっておらず、売ったあとで代金を分割する(審判の換価分割を含む) | 売った時点の法定相続分 | 確定申告の期限までに代金を分割し、全員が取得割合で申告した場合は認められる。期限までに分割しないまま申告したあとでは、更正の請求はできない |
出典:国税庁 質疑応答事例(譲渡所得)「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく。2026年10月2日取得)。
売る前に取得割合を決めておけば、その割合で申告できます。売ったあとで代金の分け方を決める場合は、確定申告の期限が分かれ目になります。個別の事案は、税務署・税理士にご確認ください。
取得費加算と3,000万円特別控除:同じ家では選ぶ
相続した不動産を売ったときに使える特例が2つあります。国税庁の説明では、3,000万円特別控除の要件に「売った家屋や敷地等について、取得費加算の特例などの他の特例の適用を受けていないこと」があり、同じ家屋・敷地で両方を使うことはできません。
| 項目 | 取得費加算(No.3267) | 3,000万円特別控除(No.3306) |
|---|---|---|
| 内容 | 支払った相続税額のうち一定金額を、譲渡資産の取得費に加算する | 譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除する |
| 売る期限 | 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(令和9年12月31日までの譲渡) |
| 主な要件 | 取得した人に相続税が課税されていること | 被相続人が住んでいた家で、昭和56年5月31日以前の建築、区分所有でない、耐震基準を満たす(または取り壊して土地を売る)など。売却代金は1億円以下 |
| 金額の上限など | 譲渡益が上限(超える場合は譲渡益相当額)。譲渡した財産ごとに計算する | 最高3,000万円。相続人が3人以上のときは2,000万円まで(令和6年1月1日以後の譲渡) |
出典:国税庁 タックスアンサー No.3267・No.3306(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月2日取得)。要件はこの表より多くあります。
換価分割では、売却代金の1億円以下の判定に注意が必要です。国税庁の説明では、他の相続人が売った部分も含めた売却代金で判定します。相続人それぞれが売る形にしても、合計で判定される点に注意してください。特例の要件は相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除、取得費が分からないときは取得費が分からないとき、税額の目安は家を売る税金の早見表で整理しています。
贈与税と不動産取得税は問題になるか
贈与税:代表者名義で売って、代金を分ける場合
国税庁の質疑応答に、換価分割のための相続登記と贈与税を扱った事例があります。調停で換価分割をすることになり、換価の都合で共同相続人の1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、あとで代金を分配する場合の質問です。国税庁の回答は次のとおりです。
- 1人の名義にしたことが単に換価のための便宜のものであること
- その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配されること
この2つを満たす場合は、贈与税の課税が問題になることはないとしています。逆に読むと、名義人が代金を分配しない場合は、この回答の外になります。この事例は調停が前提で、協議だけで進める場合について書いた原文は取得できませんでした。協議で進める場合の扱いは断定できないため、税務署・税理士にご確認ください。
不動産取得税:相続による取得は課されない
地方税法73条の7第1号は、相続(包括遺贈と、被相続人から相続人への遺贈を含む)による不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができないと定めています。相続人が不動産を取得する段階では、この条文が当たります。売却を受けて買う側が取得する場合は、73条の2第1項が、不動産の取得に対して取得者に課すと定めています。
代償分割との違い
相続人の1人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法が代償分割です。家事事件手続法195条は、家庭裁判所が審判をする場合に、特別の事情があると認めるとき、共同相続人の一人または数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えられると定めています。
| 項目 | 換価分割 | 代償分割 |
|---|---|---|
| 不動産の行き先 | 第三者に売る | 相続人の1人(または数人)が取得する |
| 相続人どうしのお金 | 売却代金を分ける | 取得した人が、他の相続人に対する債務を負う |
| 審判での根拠 | 家事事件手続法194条(遺産の換価を命ずる裁判) | 家事事件手続法195条(債務を負担させる方法による分割)。特別の事情が必要 |
| 先に必要なもの | 売る前の相続登記と、買主 | 他の相続人に支払う金銭を用意できること |
出典:e-Gov法令検索 家事事件手続法194条・195条(2026年10月2日取得)。代償分割の課税関係は代償分割とはへ。
不動産を取得する人がいるなら、代償分割や、取得した相続人が自分で売る方法も選べます。どれが合うかは、相続人の事情で変わります。
よくある質問
換価分割は民法のどこに書いてありますか?
取得した民法の条文のうち、換価分割という語が出てくる箇所はありませんでした(家事事件手続法にも同じ語はありません)。遺産分割の基準は民法906条、協議でいつでも分割できることは907条1項、協議が調わないときに家庭裁判所に請求できることは907条2項に書かれています。家庭裁判所が審判をするときに、遺産を競売や任意売却で換価することを相続人に命じられるのは、家事事件手続法194条です。
売る前に、相続登記は必要ですか?
法務省のQ&Aは、相続人申告登記について、不動産の権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記をする必要があると説明しています。相続人申告登記だけでは売れないという読み方になります。売る前に、法定相続分での登記か、遺産分割による登記のどちらかを済ませる必要があります。
代表者1人の名義にして売り、代金を分けると贈与税がかかりますか?
国税庁の質疑応答は、遺産分割の調停で換価分割をすることになり、換価の都合で共同相続人の1人の名義に相続登記をしてから換価し、代金を分配する事例について、名義を1人にしたことが単に換価のための便宜で、代金が調停の内容に従って実際に分配される場合は、贈与税の課税が問題になることはないと答えています。この事例は調停が前提で、協議だけで進める場合について書いた原文は取得できませんでした。個別の事情は税務署・税理士にご確認ください。
売った利益の税金は、誰がどの割合で申告しますか?
国税庁の質疑応答は、売る時点で換価代金の取得割合が決まっていれば、その割合に応じて、決まっておらず後日分割する場合は売った時点の法定相続分に応じて申告すると説明しています。後者でも、確定申告の期限までに代金が分割され、共同相続人の全員が取得割合に基づいて申告した場合は、その申告が認められます。期限までに分割されないまま法定相続分で申告したあとで分割しても、更正の請求はできません。
換価分割では、不動産取得税を払いますか?
地方税法73条の7第1号は、相続(包括遺贈と、被相続人から相続人への遺贈を含む)による不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができないと定めています。相続人が不動産を相続で取得する段階には、この条文が当たります。売却を受けた買主の取得は相続による取得ではなく、73条の2第1項が定める「不動産の取得者に課する」不動産取得税の問題になります。買主側の話のため、この記事では金額などは扱いません。
売る前に相続登記の期限が来そうなときは?
不動産登記法76条の2第1項は、相続で所有権を取得した人に、取得を知った日から3年以内の登記申請を義務づけています。法務省のQ&Aによると、期限までに遺産分割が難しいときは、相続人申告登記で義務を果たせます。ただし、これは売却に必要な登記ではないため、売る段階では改めて相続登記が要ります。相続人申告登記の内容は別の記事で整理しています。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第898条・第906条〜第909条)
- e-Gov法令検索 家事事件手続法(第194条・第195条)
- e-Gov法令検索 不動産登記法(第76条の2)
- e-Gov法令検索 地方税法(第73条の2・第73条の7)
- 法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A
- 法務局 登記手続ハンドブック 相続登記①(遺産分割協議編)
- 法務局 登記手続ハンドブック 相続登記②(法定相続編)
- 国税庁 質疑応答事例 未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等
- 国税庁 質疑応答事例 遺産の換価分割のための相続登記と贈与税
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 訳アリ物件買取ラクウル 公式サイト
- 訳アリ物件買取ラクウル ご利用の流れ
- 訳アリ物件買取ラクウル よくある質問
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での登記・協議書の内容・税額・贈与税の課税の有無は、司法書士・弁護士・税理士・税務署にご確認ください。