税金・控除 読了時間:約8分

相続した土地・家の取得費が分からないとき|売却額の5%で計算できるが税額は大きくなりやすい

取得費が分からなければ、売った金額の5%を取得費にして譲渡所得を計算できます(国税庁 No.3258)。ただし、取得費が小さいほど譲渡所得は大きくなり、税金も増えます。売却額2,000万円の例では、取得費5%なら税額は約369.7万円、実額が1,000万円と分かれば約186.9万円で、差は約182.8万円です。売る前に、購入時の資料を探してください。建物は国税庁の「標準的な建築価額表」で推計する方法もあります。

取得費が分からないときの計算(概算取得費)

譲渡所得は「売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます。

国税庁 No.3258の説明

売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなど、取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。例えば、土地建物を3,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、150万円を取得費とすることができます。

実際の取得費が売った金額の5%を下回る場合も、同じく5%相当額を取得費にできます。つまり「分からない」だけでなく「古くて実額が小さい」場合にも使える計算です。

相続した土地・家で取得費を探すとき

取得費は「亡くなった人が買ったときの金額」

相続した土地建物を売るときの取得費は、被相続人(亡くなった人)がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します(国税庁 No.3270)。相続のときに評価した金額ではありません。購入時期も同じで、被相続人が取得した時期がそのまま引き継がれます。

探す資料の例

どの資料が実額の証明として足りるかは、税務署や税理士に確認してください。

5%を使うと、相続人が払った登記費用は入らない

業務に使っていない土地建物を相続したとき、相続人が払った登記費用や不動産取得税は取得費に含まれます。ただし、売った金額の5%を取得費にする場合は、相続人などが払った登記費用などを取得費に含められません(国税庁 No.3270)。相続登記の費用が大きいときは、5%にする前に合計額を見比べてください。

5%と実額で税額はいくら変わるか

売却額2,000万円・譲渡費用80万円(売却額の4%)・所有期間5年超(長期)・特例なしの場合で、取得費だけを変えて比べます。税額は、このサイトの譲渡所得の計算ツールと同じ計算式で出しています。

項目取得費5%実額1,000万円
取得費100万円1,000万円
譲渡所得1,820万円920万円
税額(20.315%)369.7万円186.9万円

譲渡所得 = 2,000万円 −(取得費 + 譲渡費用80万円)。税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%の合計20.315%。

実額が1,000万円と分かるだけで、税額は約182.8万円小さくなります。取得費の資料探しに時間をかける価値があるかは、このような差で判断できます。自分の売却額と取得費を入れて試すときは、相続不動産の譲渡所得の計算ツールが使えます。

建物は「標準的な建築価額表」で推計できる

使えるのは、土地と建物の価額が契約で分かれていないとき

土地と建物を一括で買っていて、契約書で建物の価額が区分されていないときは、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を使って建物の取得価額を計算しても差し支えない、と国税庁の手引きにあります。契約書で土地と建物の価額が分かれている場合や、建物の消費税額から割り戻せる場合は、この表は使いません。

新築の建物を買っていた場合の算式

建物の取得価額 = 建築年の建築単価 × 延べ床面積

中古の建物を買っていた場合は、ここから建築時から購入時までの経過年数に応じた償却費相当額を引きます。表は建築年ごと・構造ごとに、1㎡あたりの工事費予定額(千円)が載っています。木造・木骨モルタル造の一部を抜粋します。

建築年単価(千円/㎡)100㎡の場合
昭和40年16.8168万円
昭和50年67.7677万円
昭和55年92.5925万円
昭和60年104.21,042万円
平成2年131.71,317万円
平成12年159.01,590万円

出典:国税庁「建物の標準的な建築価額表」(建築着工統計の工事費予定額÷床面積)。鉄筋コンクリート造・鉄骨造などは国税庁の表を確認してください。

建物は古いほど、取得費が小さくなる

建物の取得費は、取得価額から減価償却費相当額を引いた金額です。事業に使っていなかった建物は、取得価額×0.9×償却率×経過年数で償却費相当額を計算し、取得価額の95%が限度です(国税庁 No.3261)。木造の償却率は0.031です。

例:昭和55年に新築で買った木造100㎡を令和8年に売る(経過年数46年)

取得価額は 92.5千円/㎡ × 100㎡ = 925万円。償却費相当額は 925万円 × 0.9 × 0.031 × 46年 = 1,187.1万円となり、取得価額の95%(878.8万円)が限度なので、建物の取得費は約46万円(取得価額の5%)です。

木造の場合、経過年数が35年以上になると、計算上は95%の限度に達します。古い建物は取得費がほぼ残らないため、土地の購入代金が分からないままだと、建物と土地の合計が売却額の5%を下回ることもあります。そのときは、5%の概算取得費が使えます。

土地の購入代金は、資料で確かめる

契約書に土地と建物の価額が分かれていなければ、国税庁の手引きでは、購入時の時価の割合で区分するとされています。土地の購入代金は、売買契約書や代金の振込記録で確かめるのが基本です。資料が見つからなければ、この記事の最初で説明した5%の概算取得費で計算します。

相続税を払った人は取得費加算の特例

相続した土地や家を売る場合、払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります(国税庁 No.3267)。要件は次の3つです。

適用を受けるには、確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などを添えて申告します。

空き家の3,000万円特別控除とは併用できません

相続した空き家には、売却益から最大3,000万円を引ける特別控除もあります。取得費加算とは同じ不動産で併用できず、どちらか有利な方を選びます。条件は相続した空き家の3,000万円特別控除で解説しています。

申告の時期や必要書類は相続した不動産を売却した年の確定申告、売却額別の税額の早見表は家を売る税金はいくら?でまとめています。

よくある質問

取得費が分からないとき、本当に売却額の5%でいいのですか?

国税庁 No.3258は、先祖伝来の土地建物や買い入れた時期が古いなど取得費が分からない場合、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができると説明しています。実際の取得費が5パーセント相当額を下回る場合も同じです。

実際の取得費が5%より高いと分かったら、どちらを使えますか?

5%の概算は、取得費が分からない場合か、実際の取得費が5%を下回る場合の扱いです。実額が分かって5%を上回るなら、実額を取得費にして計算します。どちらが有利かは、実額の資料が見つかるかで決まります。

相続したときに払った登記費用は取得費に入りますか?

業務に使っていない土地建物を相続したときに相続人が払った登記費用や不動産取得税は、取得費に含まれます(国税庁 No.3270)。ただし、売った金額の5%を取得費にする場合は、相続人などが払った登記費用などを取得費に含めることはできません。

親が買った時期が分からなくても、長期譲渡になりますか?

相続で取得した資産の取得の時期は、被相続人が取得した時期がそのまま引き継がれます(国税庁 No.3270)。被相続人が取得した時から、売った年の1月1日までの所有期間で長期か短期かを判定します。

取得費加算の特例は、取得費が分からない場合でも使えますか?

取得費加算の特例(国税庁 No.3267)は、相続や遺贈で財産を取得した人に相続税が課税されていて、その財産を相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合の特例です。取得費が分かるかどうかは要件に入っていません。どの取得費の方法と組み合わせられるかは、税務署や税理士に確認してください。

参考・出典

運

空き家計算機 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。空き家・相続不動産の活用・売却・管理について、国土交通省・法務省・農林水産省などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。