相続したマンションを売ったときの税金|建物の減価償却で取得費が減り、古いほど税額は増える
税金のかかる額(譲渡所得)は「売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)」です。マンションは建物部分の取得費から減価償却費相当額を引くため、持っていた期間が長いほど取得費が減り、税額は増えます。購入額3,000万円(建物1,800万円)を25年持って2,500万円で売る例では、購入時の資料があれば税額は約1.5万円、取得費が分からず売却額の5%で計算すると約462.2万円です。亡くなった人の取得費と取得日を引き継ぎます。空き家の3,000万円特別控除は、マンションは対象外です。
相続マンションの譲渡所得の計算式
相続したマンションを売ったときの所得税・住民税は、譲渡所得に税率を掛けて出します。
譲渡所得の計算
譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費は、亡くなった人(被相続人)がそのマンションを買ったときの購入代金や購入手数料などが基になります。相続のときの評価額ではありません。取得の時期も被相続人の取得時期がそのまま引き継がれるため、売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得になります(国税庁 No.3270)。
ただし、建物の取得費は、購入代金がそのまま取得費になるわけではありません。建物は使ったり時間がたったりすると価値が下がるので、購入代金から所有期間中の減価償却費相当額を引いた金額が取得費になります(国税庁 No.3261)。マンションの購入代金には土地の持分も含まれるため、まず土地と建物に分けます。
購入額を「土地」と「建物」に分ける
減価償却は建物にだけかかるため、マンションの購入代金を「建物の取得価額」と「土地の取得価額」に分けます。国税庁の手引き「譲渡所得の申告のしかた」には、次の区分方法が載っています。
1. 購入時の契約で建物と土地の価額が分かれているとき
売買契約書などに建物と土地の価額が書かれていれば、その価額で分けます。
2. 契約書に建物の価額がなく、消費税額が分かるとき
建物に課税された消費税額が分かるときは、次の算式で建物の取得価額を計算できます。土地には消費税がかからないため、この方法が使えます。
建物の取得価額(消費税額から)
建物の消費税額 ×(1+消費税の税率)÷ 消費税の税率
例えば、税率10%で建物に90万円の消費税がかかっていたなら、90万円 × 1.10 ÷ 0.10 = 990万円が建物の取得価額です。税率は、令和元年10月1日以後の購入は10%、平成26年4月1日〜令和元年9月30日は8%、平成9年4月1日〜平成26年3月31日は5%、平成元年4月1日〜平成9年3月31日は3%です。経過措置で旧税率が適用されている場合があるため、契約書で確認してください。
3. 契約書に区分がなく、消費税額も分からないとき
購入時の時価の割合で区分します。区分の方法として、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」で建物の取得価額を計算してもよいとされています。マンションの床面積は、専有部分の床面積でも差し支えありません。この方法の算式と単価は、取得費が分からないときの記事で解説しています。
建物の減価償却費相当額の出し方
売ったマンションを事業(賃貸など)に使っていなかった場合の減価償却費相当額は、国税庁 No.3261の算式で出します。
事業に使われていなかった建物(非業務用)の算式
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
- 償却率:建物の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨て)に対応する旧定額法の償却率です。(鉄骨)鉄筋コンクリート造は0.015です。
- 耐用年数の例:住宅用の鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)。1.5倍は70.5年で、端数を切り捨てた70年に対応する償却率が0.015です。
- 経過年数:建物を取得してから売るまでの年数です。6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨てます。相続の場合は、被相続人が取得した時から数えます。
- 限度:減価償却費相当額は、建物の取得価額の95%までです。
賃貸など事業に使っていた期間がある場合の計算は異なります。その場合は、毎年の減価償却費を合計します(国税庁 No.3261)。
償却費は「購入代金から引く」ため、持っていた年数が長いほど建物の取得費は小さくなります。購入額が同じで、売る金額も同じなら、長く持っていたマンションほど譲渡所得が増え、税額も増えます。
計算例:25年持ったマンションを2,500万円で売る
被相続人が新築で3,000万円で買い(契約書の内訳は建物1,800万円・土地持分1,200万円)、25年所有したマンションを、相続人が2,500万円で売る例です。譲渡費用(仲介手数料など)は100万円、特例は使わない前提です。
取得費と譲渡所得の計算
減価償却費相当額 = 1,800万円 × 0.9 × 0.015 × 25年 = 607.5万円
建物の取得費 = 1,800万円 − 607.5万円 = 1,192.5万円
取得費 = 建物 1,192.5万円 + 土地 1,200万円 = 2,392.5万円
譲渡所得 = 2,500万円 −(2,392.5万円 + 100万円)= 7.5万円
税額 = 7.5万円 × 20.315% = 約15,236円
この例は、購入額と売却額が近いため譲渡所得は小さくなっています。ただ、同じ購入額・同じ売却額でも、持っていた年数が長くなるほど、減価償却で取得費が減って税額が増えます。
| 所有年数 | 取得費 | 税額 |
|---|---|---|
| 10年 | 2,757万円 | 0円 |
| 25年 | 2,392.5万円 | 1.5万円 |
| 40年 | 2,028万円 | 75.6万円 |
| 60年 | 1,542万円 | 174.3万円 |
購入3,000万円(建物1,800万円)・売却2,500万円・譲渡費用100万円・特例なし、で所有年数だけを変えた比較です。10年の行は、取得費が売却額と譲渡費用の合計を上回って売却損になるため、この売却分の税額は0円です。実際には、古く買ったマンションほど購入額は小さいのが普通で、この表は減価償却の効果だけを取り出したものです。税額は譲渡所得の計算ツールと同じ計算式で出しています(税率は所得税15%+復興特別所得税+住民税5%で20.315%)。
購入額が分からないときは売却額の5%
亡くなった人の購入時の資料が見つからず、取得費が分からないときは、売った金額の5パーセント相当額を取得費にできます(国税庁 No.3258)。実際の取得費が5%を下回る場合も同じです。
先ほどの例で購入額が分からないとすると、取得費は 2,500万円 × 5% = 125万円になります。
同じ売却でも、取得費の分かり方で税額が変わる
購入時の資料がある:取得費 2,392.5万円 → 譲渡所得 7.5万円 → 税額 約1.5万円
資料がなく5%で計算:取得費 125万円 → 譲渡所得 2,275万円 → 税額 約462.2万円
この例では、実額が分かる場合の取得費が5%よりずっと大きいため、差は約460.6万円になります。売る前に、売買契約書・重要事項説明書・通帳の記録・住宅ローンの資料を探す価値があります。探し方と、建物の推計方法は相続した土地・家の取得費が分からないときで解説しています。なお、5%で計算するときは、相続人が払った登記費用などを取得費に含められません(国税庁 No.3270)。
マンションで使える特例・使えない特例
使えない:空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売ると最大3,000万円を控除できる特例(国税庁 No.3306)は、対象の「被相続人居住用家屋」の要件に「区分所有建物登記がされている建物でないこと」があります。分譲マンションの1室は区分所有建物登記がされているため、この特例は使えません。一戸建ての場合の条件は相続した空き家の3,000万円特別控除で解説しています。
使える可能性:取得費加算の特例
相続税を払った人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までにマンションを売ると、払った相続税の一部を取得費に加算できます(国税庁 No.3267)。要件に建物の種類は入っていません。加算額と税額の差は取得費加算の特例の計算ツールで試算できます。
使える可能性:マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
相続した人自身がそのマンションに住んでいる、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」の対象になりえます(国税庁 No.3302)。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外など、ほかの要件もあります。被相続人だけが住んでいて相続人は住んでいなかったマンションは、こちらの対象になりません。
特例の申告は、確定申告書に必要書類を添えて行います。申告の流れは相続した不動産を売却した年の確定申告で解説しています。
よくある質問
相続したマンションを売ると、税金はいくらかかりますか?
売った金額から、取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得に税率を掛けます。長期譲渡(売った年の1月1日で所有期間が5年超)の税率は、所得税15%・復興特別所得税・住民税5%を合わせて約20.315%です。相続の場合の所有期間は被相続人が取得した時から数えます(国税庁 No.3270)。取得費は被相続人の購入代金が基で、建物部分は減価償却費相当額を引いた金額になります(国税庁 No.3261)。
亡くなった親の購入額が分からないときは、どうなりますか?
購入時の資料が見つからないなど取得費が分からない場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費にできます(国税庁 No.3258)。ただし、実額が分かる場合に比べて譲渡所得が大きくなりやすく、税額も増えます。この記事の例では、実額で計算すると約{man(withDocs.pattern[0].tax)}万円の税額が、5%だと約{man(without.pattern[0].tax)}万円になります。
相続したマンションは、空き家の3,000万円特別控除を使えますか?
使えません。国税庁 No.3306は、対象の「被相続人居住用家屋」の要件に、区分所有建物登記がされている建物でないことを挙げています。分譲マンションの1室は区分所有建物登記がされているため、この特例の対象外です。
相続したマンションに自分が住んでいた場合は、3,000万円控除を使えますか?
相続した人自身が、現に住んでいるマンション、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るマンションであれば、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の対象になりえます(国税庁 No.3302)。ほかに、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外であることなどの要件があります。当てはまるかは税務署や税理士に確認してください。
建物と土地の値段が契約書に分けて書かれていません。どう分けますか?
国税庁の手引きでは、建物に課税された消費税額が分かれば「消費税額×(1+税率)÷税率」で建物の取得価額を出せます。それも分からなければ、購入時の時価の割合で区分します。区分の方法として、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」から計算してもよいとされています。
取得費加算の特例は、マンションでも使えますか?
取得費加算の特例(国税庁 No.3267)は、相続や遺贈で財産を取得した人に相続税が課税されていて、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合の特例です。要件に建物の種類は入っておらず、マンションも対象になりえます。加算できる額は支払った相続税などで決まります。