遺産分割 読了時間:約10分

PR(本記事はアフィリエイト広告を含みます)

相続した土地を分筆して分ける・売るには|手続き・登録免許税・分筆できない場合

分筆は、1筆の土地を2筆以上に分ける登記です。相続では、分筆してから遺産分割で各相続人が別々の土地を取得する使い方と、分筆した一部だけを売る使い方があります。登録免許税は分筆後の1筆につき1,000円で、測量と申請は土地家屋調査士の業務です。分けたあとの土地が道路に2メートル以上接しない、または最低敷地面積を下回ると、建物を建てられないおそれがあります。この記事は、相続した土地を分筆して一部を売りたい方に向けて、流れ・費用・分筆できない場合を、法令と日調連・国税庁の原文で整理します。

分筆とは:1筆の土地を複数に分ける登記

土地は、登記簿上の1つの単位(1筆)ごとに登記されています。日調連のQ&Aは、所有地の一部をお隣の方へ売却したい場合の手続として、一つの土地を複数の土地に分割する「分筆」登記を申請すると答えています。分筆は、土地の所在・地番・地目・地積といった物理的な状況を公示する「表示に関する登記」のひとつです。

項目内容根拠
申請できる人表題部所有者または所有権の登記名義人。それ以外の者は申請できない不動産登記法39条1項
測量と申請の代理不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量と申請手続の代理は、土地家屋調査士が業として行う事務土地家屋調査士法3条1項
調査士でない者調査士会に入会している調査士・調査士法人でない者は、3条1項の事務を業として行えない(条文の定める例外を除く)土地家屋調査士法68条

出典:e-Gov法令検索 不動産登記法・土地家屋調査士法、日調連「不動産登記について」「相談Q&A」(2026年10月2日取得)。

日調連の土地家屋調査士白書2024には、土地の分筆登記の件数が、法務省の登記統計に基づいて載っています。令和4年は315,084件で、平成25年(435,703件)から減っています。減少傾向でも、年に30万件を超える手続です。

相続での使い方:分けて取得するか、一部を売るか

相続した土地で分筆を使う場面は、おもに2つです。遺産分割をする前の土地は相続人全員の共有なので、どちらの場合も、相続人の話し合いが前提になります。

場面進め方根拠
分けて各自が取得する土地を分筆し、遺産分割で、分けた土地を相続人ごとに割り当てる民法906条(分割の基準)・907条1項(協議でいつでも分割できる)
一部だけを売る売る部分を分筆して別の筆にし、その筆を売る。隣地の方に売る場合も同じ日調連 相談Q&A(土地に関して Q5)
土地の全部を売って代金を分ける分筆は要らない。換価分割として売り、代金を分ける別記事で整理

出典:e-Gov法令検索 民法、日調連 相談Q&A(2026年10月2日取得)。

土地の全部を売って代金を分けるなら、分筆は要りません。売る前の相続登記と、売却益の申告の割合は換価分割とはで、共有名義のまま売る場合は共有名義の不動産を売却・分割するにはで整理しています。協議の結果は遺産分割協議書にまとめます。

名義が亡くなった方のままの土地について、分筆登記の前に何をしておくかは、取得した原文では確認できませんでした。分筆登記の申請人は登記名義人と決まっており(39条1項)、相続登記には取得を知った日から3年以内の申請義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。相続登記の手続は相続登記の義務化と手続き・費用の全解説にまとめています。

流れ:境界確定から分筆登記まで

日調連のQ&Aは、土地の境界が確定するまでの流れを、次の8段階で示しています。分筆登記の申請には、分筆後の土地の地積測量図が要ります(不動産登記令の別表、分筆の登記の添付情報)。

段階内容誰が
1 依頼土地家屋調査士に相談して依頼する所有者
2 資料調査法務局・市区町村役場などで、公図・地積測量図、道路・水路など公共物との関係を調べる調査士
3 現地の測量依頼地を含む街区全体を測量する(現場によって範囲は異なる)調査士
4 資料と結果の確認収集資料、測量結果、現地の状況を精査する調査士
5 仮の境界点境界と思われる位置を現地に復元し、明示する調査士
6 境界立会隣接地所有者、公共物管理者などの関係者と現地で確認する調査士・関係者
7 境界標・確認書確認した位置に永久標を設置し、境界確認書を取り交わし、確定図面を作る調査士・関係者
8 登記申請必要であれば登記を申請する調査士

出典:日調連 相談Q&A「土地の境界確定はどのように行われるのですか?」、不動産登記令(2026年10月2日取得)。事案・地域によって流れが異なる場合があると、日調連は注記しています。

境界の確認が済んでいない土地では、6の境界立会が分筆の前提になります。境界確認の手順、確定測量と現況測量の違いは相続した土地の境界確認と測量が必要な理由で整理しています。

費用:登録免許税と土地家屋調査士の報酬

分筆の費用は、法務局に納める登録免許税と、測量・申請を依頼する土地家屋調査士への報酬です。

登録免許税:分筆後の1筆につき1,000円

登録免許税法の別表第一は、所有権の登記のある不動産の表示の変更の登記のうち、土地の分筆による登記事項の変更の登記は、分筆後の不動産の個数一個につき千円と定めています。

分け方分筆後の筆数登録免許税
1筆を2筆に分ける2筆2,000円
1筆を3筆に分ける3筆3,000円
1筆を4筆に分ける4筆4,000円

出典:e-Gov法令検索 登録免許税法 別表第一 一(十三)イ(2026年10月2日取得)。表は、条文の「分筆後の不動産の個数一個につき千円」から計算した例です。

土地家屋調査士の報酬:金額の公的な基準は取得できなかった

土地家屋調査士への報酬の公的な統計は、日調連の土地家屋調査士白書2024を含め、取得できませんでした。土地家屋調査士法にも、依頼者が支払う報酬額を定めた条文は見当たりません。そのため、この記事は金額を載せません。前の節の流れのとおり、作業には資料調査・測量・境界立会・境界標の設置・図面の作成・登記申請が含まれます。見積もりは複数の事務所に依頼し、どこまでの作業が含まれているかを比べてください。

分筆できない・しにくい場合

分筆の登記そのものを禁じる条文ではなく、分けたあとの土地に建物を建てられるかを縛る規定が問題になります。条文の主語は「建築物の敷地」です。

場面根拠内容
道路に接していない建築基準法43条1項建築物の敷地は、道路(自動車のみの交通の用に供する道路などを除く)に2メートル以上接しなければならない
面積が小さすぎる建築基準法53条の2第1項・2項用途地域に関する都市計画で敷地面積の最低限度が定められたときは、その最低限度以上でなければならない。最低限度は200平方メートルを超えられない
隣地所有者の所在が不明日調連 土地家屋調査士白書2024所在が不明で筆界を確認できないと、分筆の登記の申請が困難になる事案が増えている。その場合に使われるのが筆界特定制度
抵当権などが付いている不動産登記法40条所有権以外の権利の登記がある土地を分筆するとき、権利者が承諾した情報を提供すれば、分筆後のいずれかの土地について権利が消滅した旨を登記する

出典:e-Gov法令検索 建築基準法・不動産登記法、日調連 土地家屋調査士白書2024(2026年10月2日取得)。

53条の2第3項は、最低限度が定められた時点で現に敷地として使われていた土地などについて、その全部を一の敷地として使用する場合には1項を適用しないと定めています。分けて使う場合は、この例外の対象かどうかを、市区町村の窓口で確認してください。最低限度の数値は用途地域ごとに都市計画で決まるため、自治体ごとの条例や都市計画の原文は、この記事では取得できず載せていません。

相続した土地そのものを手放す別の方法は相続土地国庫帰属制度とはにまとめています。

分筆した一部を売る:仲介か買取か

分筆した一部を売るときは、一般の買主に仲介で売る方法と、不動産会社が直接買い取る方法があります。道路に接する長さや面積が小さい土地は、買主が限られることがあります。

買取業者の一つ、ラクウルが公式サイトに書いている内容は次のとおりです(2026年10月2日に確認)。

公式サイトには、分筆前の土地の一部だけを買い取れるかどうか、分筆登記や確定測量を売主が先に済ませる必要があるかどうかの記載はありません。問い合わせの際に、土地全体の状況と、売りたい範囲を伝えて確認してください。共有名義の物件の扱いは訳アリ物件買取ラクウルとはにまとめています。

分けたあとの相続税の評価

国税庁のタックスアンサーによると、土地は原則として地目ごとに評価し、路線価方式の土地は、路線価を土地の形状などに応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その面積を乗じて計算します。分筆で筆が増えても、評価の単位は筆の数とは限りません。

場面評価単位の扱い根拠
原則宅地は「1画地の宅地」(利用の単位となっている1区画)を評価単位とする。1画地は1筆とは限らず、2筆以上のこともあれば、1筆が2画地以上のこともある財産評価基本通達7-2(1)と(注)1
著しく不合理な分割遺産分割などによる宅地の分割が親族間等で行われ、分割後の画地が通常の用途に供することができないなど著しく不合理なときは、分割前の画地を「1画地の宅地」とする財産評価基本通達7-2(1)(注)
評価額の計算路線価方式は、路線価を形状等に応じた補正率で補正してから面積を乗じる。倍率方式は固定資産税評価額に倍率を乗じる国税庁 No.4602

出典:国税庁 財産評価基本通達 第2章第1節、タックスアンサー No.4602(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月2日取得)。

通達の「著しく不合理」に当たるかどうかの基準は、この記事では取得できた範囲に具体例がなく、載せていません。分け方によっては、分割前の土地全体を1画地として評価される可能性があるため、遺産分割の前に税理士・税務署へ確認してください。路線価の調べ方は路線価の調べ方で整理しています。

よくある質問

分筆登記は、誰が申請できますか?

不動産登記法39条1項は、分筆の登記を、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できないと定めています。登記簿上の名義が亡くなった方のままの土地について、相続人が分筆登記を申請できるかどうかは、取得した原文では確認できませんでした。相続登記は取得を知った日から3年以内の申請が義務です(不動産登記法76条の2第1項)。分筆の前に、土地家屋調査士・司法書士に名義の状況を伝えて進め方を確認してください。

分筆登記の登録免許税はいくらですか?

登録免許税法の別表第一は、所有権の登記のある土地の分筆による登記事項の変更の登記について、分筆後の不動産の個数一個につき千円と定めています。1筆を2筆に分けるなら、分筆後は2個なので2,000円、3筆に分けるなら3,000円になる読み方です。これは登録免許税だけの額で、測量や申請を依頼する土地家屋調査士への報酬は別にかかります。

分筆には測量が必要ですか?

不動産登記令の別表は、分筆の登記の申請に添付する情報として、分筆後の土地の地積測量図を挙げています。そのため、申請には分筆後の土地の測量が前提になります。日調連が示す境界確定の流れでは、依頼地を含む街区全体を測量し、隣接地所有者などと現地で境界を確認する手順が含まれています。事案・地域によって流れは異なるとされています。

土地家屋調査士への報酬は、いくらくらいですか?

金額の公的な統計や基準は、取得できませんでした。土地家屋調査士法の条文にも、依頼者が支払う報酬の額を定めたものは見当たりませんでした。作業内容に境界の確認と立会い、測量、図面の作成、登記の申請があるため、事務所や土地によって見積もりが変わると考えられます。複数の事務所に見積もりを依頼し、作業の範囲を比べてください。

分筆すると、建物を建てられない土地になることはありますか?

あります。建築基準法43条1項は、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。また、53条の2第1項は、用途地域に関する都市計画で敷地面積の最低限度が定められたときは、敷地面積をその最低限度以上にしなければならないと定めています。分筆の前に、分けたあとの土地が道路に接する長さと面積を確認してください。数値は地域で異なるため、市区町村の窓口で確認が要ります。

分筆した土地の相続税の評価は、分筆の形で変わりますか?

財産評価基本通達7-2は、宅地の評価単位を「1画地の宅地」(利用の単位となっている1区画の宅地)としています。ただし、遺産分割などによる宅地の分割が親族間で行われ、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、著しく不合理と認められるときは、分割前の画地を1画地とします。筆を分けただけで評価単位が変わるとは限りません。個別の評価は、税務署・税理士にご確認ください。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での分筆の可否・登記の手続・費用・相続税の評価は、土地家屋調査士・司法書士・税理士・税務署・市区町村の窓口にご確認ください。

運

空き家計算機 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。空き家・相続不動産の活用・売却・管理について、国土交通省・法務省・農林水産省などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。