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共有名義の解消方法|共有物分割請求の流れ・費用・持分放棄・所在不明の共有者がいるとき・方法ごとの税金
共有者全員と話せるなら、持分の売買・贈与か、全員で売る方法があります。話がまとまらなければ、裁判所に共有物の分割を請求できます。連絡がつかない共有者がいるときは、その持分を取得するか、譲渡する権限を得る裁判があります。方法ごとの流れ・費用・税金を、民法・法務省・裁判所・国税庁の原文で並べます。
| 方法 | 向いている場合 | 費用と税金 |
|---|---|---|
| 共有者に持分を売る | 他の共有者が買い取れる | 売った人に譲渡所得の課税(国税庁No.3202) |
| 持分を贈与する | 対価を求めずに渡せる | もらった人に贈与税。暦年課税は年110万円の基礎控除(No.4402) |
| 全員で売って代金を分ける | 全員が売ることに合意できる | 売った人それぞれに譲渡所得の課税(No.3202) |
| 共有物分割(協議) | 全員で話し合える | 土地を持分に応じて現物分割するときは、譲渡はなかったものとして取り扱う(所得税基本通達33-1の7) |
| 共有物分割請求(裁判) | 協議が調わない、または協議できない | 訴え提起の手数料は訴額に応じる。弁護士費用は訴訟費用に含まれない |
| 持分の放棄 | 持分を手放したい | 他の共有者が受ける利益に、みなし贈与の定めが関わりうる(相続税法9条) |
| 所在不明の共有者の持分の取得・譲渡 | 連絡のつかない共有者がいる | 申立ての手数料1,000円。供託金は裁判所が定める額 |
民法・非訟事件手続法・民事訴訟費用等に関する法律・国税庁・法務省・裁判所の原文から作成(2026年10月3日取得)。
自分はどの方法に当てはまるか
共有名義の解消は、共有者と連絡がつくか、話し合えるかで、取れる方法が分かれます。
- 全員と話せて、買う人・売る人が決まる:持分の売買か贈与、または全員で売って代金を分けます(節2)。
- 全員と連絡はつくが、話がまとまらない:裁判所への共有物分割請求です(節3)。
- 連絡のつかない共有者がいる:持分の取得か譲渡の裁判です(節4)。
- 自分だけが抜けたい:持分の放棄があります(節5)。自分の持分だけを第三者に売る話は共有持分は売却できる?にまとめています。
- 共有のまま、使い方だけ決めたい:解消しない選択もあります(節5)。
相続で共有になった不動産は、遺産分割がまとまっていない間は、下の共有物分割請求を使えません(節3)。先に遺産分割がまとまらないときのページを見てください。
全員で話し合えるとき:売買・贈与・全員で売却
民法206条は、所有者は法令の制限内で、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有すると定めています。共有者全員が話し合えるなら、次の3つの形があります。
- 他の共有者に持分を売る:買った共有者の持分が増えます。全員が買い取る側に回れば、共有は解消します。売った人は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得に課税されます(国税庁No.3202)。
- 持分を贈与する:もらった人に贈与税がかかります。暦年課税は、1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額110万円を引いた残りに課税されます(No.4402)。
- 全員で第三者に売って、代金を分ける:全員が売主になります。法務省の資料は、持分だけを売った代金より、不動産全体を売って持分に応じて受け取る代金のほうが、高額になりやすいと説明しています。売った人それぞれに譲渡所得の課税があります。
代金の分け方や、売る価格を決める話し合いは、全員で行います。売ったときの税金の早見表は家を売る税金の早見表にあります。
共有者が負担を払わないとき
民法253条1項は、各共有者は持分に応じて、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負うと定めています。同条2項は、共有者が1年以内にこの義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得できるとしています。条文は「相当の償金」の額の決め方を定めていません。
話し合いが調わないとき:共有物分割請求
民法256条1項は、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定めています。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができ、その契約は更新できます(256条1項ただし書・2項)。
共有者の間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求できます(258条1項)。共有者の一部が応じなくても、請求自体はできます。
裁判所が命じる分け方
| 方法 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 共有物そのものを分ける。土地を持分に応じて分けるなど | 民法258条2項1号 |
| 賠償分割 | 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる。取得した人が他の共有者に代償金を支払う | 同項2号。法務省の呼び方 |
| 競売 | 競売で売って、代金を持分に応じて分ける | 同条3項。法務省は競売分割と呼ぶ |
民法258条・法務省「令和3年民法・不動産登記法改正」のポイント(P36)から作成。
競売を命じられるのは、現物分割と賠償分割のどちらもできないとき、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときです(258条3項)。法務省は、この条文で検討の順序を明確にしたと説明しています。裁判所は、分割の裁判の中で、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行などの給付を命じることもできます(同条4項)。
相続で共有になった不動産
共有物の持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、共有物分割請求による分割はできません(民法258条の2第1項)。相続開始から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分についても、この請求による分割ができます。ただし、遺産分割の請求があり、相続人が異議の申出をしたときは別です(同条2項ただし書)。異議の申出は、請求を受けた裁判所から通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所にします(同条3項)。
遺産分割での代償分割と換価分割は、代償分割とはと換価分割とはのページにあります。
裁判にかかる費用
| 費用 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 訴え提起の手数料 | 訴訟の目的の価額に応じる。100万円までの部分は10万円ごとに1,000円、100万円超500万円までは20万円ごとに1,000円 | 民事訴訟費用等に関する法律別表第一の1の項 |
| 弁護士費用 | 訴訟費用に含まれない。金額の目安はこのページでは載せない | 裁判所「訴訟費用について」 |
| 資力が乏しいとき | 訴訟上の救助、法テラスの民事法律扶助による立替制度 | 同上 |
| 競売を申し立てるとき | 手数料4,000円、民事執行予納金(裁判所ごとに異なる)、差押登記の登録免許税 | 裁判所「形式的競売」 |
共有物分割の訴えの訴訟の目的の価額の算定方法は、取れた原文からは確かめていません。申立先の裁判所か弁護士に確認してください。
裁判所の「形式的競売」の案内は、複数人が共有する不動産等について、判決などで競売を命じられた場合に利用する手続だと説明しています。申立先は原則として、目的となる不動産の住所地を管轄する地方裁判所です。
共有者の所在が分からないとき:持分の取得・譲渡の裁判
共有者が他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないときは、民法に2つの裁判があります。法務省は、令和5年4月1日施行の民法の改正(所有者不明土地等関係)に含まれるとしています。
| 比べる点 | 持分の取得(262条の2) | 譲渡する権限の付与(262条の3) |
|---|---|---|
| できること | 請求した共有者が、所在等不明共有者の持分を取得する | 所在等不明共有者以外の全員が特定の者に持分の全部を譲渡することを条件に、不明な共有者の持分もその者に譲渡する権限を得る |
| 向く場面 | 不明な共有者の持分を引き取る | 不動産全体を第三者に売る(法務省) |
| 申立先 | 不動産の所在地を管轄する地方裁判所(非訟事件手続法87条1項・88条1項) | |
| 事前の手続 | 裁判所が公告する。異議を届け出る期間は3か月以上(同法87条2項) | |
| お金 | 時価相当額を、裁判所が定める額で供託する | 時価相当額を持分に応じて按分した額を供託する(法務省) |
| 効力 | 裁判の確定で効力が生じる(同法87条9項) | 効力が生じた後2か月以内に譲渡の効力が生じないと失効。期間は裁判所が伸ばせる(同法88条3項) |
民法262条の2・262条の3、非訟事件手続法87条・88条、法務省のポイント(P37・P38)から作成。申立ての手数料は1,000円です(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の16の項)。
「所在等不明」とは、申立人が登記簿のほかに住民票等の調査など必要な調査をしても、所在が分からないことです。法務省は、裁判所が所在等不明と認める必要があると説明しています。共有者の氏名が分からない場合も対象です。
- 不明な共有者へのお金:持分を取得した共有者は、不明な共有者から、取得した持分の時価相当額の支払を請求されます(262条の2第4項)。実際には供託金から支払われ、差額があれば別に請求できると法務省は説明しています。
- 遺産共有のとき:不明な共有者の持分が相続財産に属し、遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していないと、どちらの裁判もできません(262条の2第3項・262条の3第2項)。
- 他の共有者が異議を出したとき:その不動産について共有物分割請求や遺産分割の請求があり、不明な共有者以外の共有者が異議の届出をすると、持分取得の裁判はできません(262条の2第2項)。
譲渡する権限の付与を受けても、不動産の売買契約は別に結びます。誰にいくらで売るかは、不明な共有者以外の共有者が決めます(法務省)。
持分の放棄と、解消しない選択
持分を放棄する
民法255条は、共有者の一人が持分を放棄したとき、または死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属すると定めています。放棄した人は共有から外れ、持分は残る共有者のものになります。条文は、他の共有者の同意を要件にしていません。
他の共有者は、対価を払わずに持分を受け取ることになります。相続税法9条は、対価を支払わないで利益を受けた場合に、利益を受けた人がその利益を、利益を受けさせた人から贈与により取得したものとみなすと定めています。持分の放棄にこの定めがあたるかや、登記の手続は、取れた原文からは確かめていません。税務署か司法書士に確認してください。
解消せずに、使い方だけ決める
共有のまま使い続けるなら、決める内容で必要な賛成が変わります。共有物の変更(軽微なものを除く)は全員の同意が必要です(251条1項)。管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます(252条1項)。保存行為は各共有者ができます(同条5項)。解消を急がなくてよい事情があるときは、こちらで足りることもあります。
現状のまま手放す:買取業者の公式の記載
共有者が動かないときや、時間をかけたくないときには、買取業者に相談する道もあります。買取業者の一つ、ラクウルの公式サイト(2026年10月3日に確認)には、次のように書かれています。
- 買い取れる物件:事故物件、再建築不可物件、共有持ち分物件、違反建築物件、旧耐震・築古物件、借地権、債務整理物件、長屋連棟式物件、立ち退き物件、底地、紛争物件の11種類が並んでいます。
- 費用:よくある質問に「査定に費用が掛かりますか?」があり、「査定は無料で行わせていただきます。(一部、対象外あり)」と答えています。
- 流れ:お問い合わせを受けた物件を調査して、買取査定金額を提示し、納得したら売買契約に進むとあります。
公式サイトには、持分だけを売る場合の条件や、共有者全員の同意が必要かどうかの記載はありません。共有者のうち誰が売りたいのか、全員で売りたいのかは、問い合わせの際に伝えて確認してください。持分だけを売ったときに起きることは、共有持分は売却できる?にあります。
よくある質問
共有名義を解消する方法には、どんなものがありますか?
民法と税の原文から、次の6つに整理できます。①共有者に持分を売る(買い取ってもらう)、②持分を贈与する、③全員で売って代金を分ける、④共有物分割(協議でまとまらなければ裁判所に請求)、⑤持分の放棄、⑥共有者の所在が分からないときの持分の取得・譲渡の裁判です。どれが使えるかは、共有者全員と話せるかで決まります。
共有物分割請求は、いつでもできますか?
原則としていつでもできます。民法256条1項は、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定めています。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができ、その契約は更新できます(同条1項ただし書・2項)。また、相続で共有になった不動産は、共同相続人の間で遺産分割をすべき場合、この請求による分割はできません(258条の2第1項)。
共有者が分割に応じないときは、どうなりますか?
裁判所に分割を請求できます。民法258条1項は、共有物の分割について協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求できると定めています。共有者の同意がなくても、請求自体はできます。
共有物分割請求で、裁判所はどんな分け方を命じますか?
現物を分ける方法か、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法(法務省は賠償分割と呼ぶ)です。この2つができないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売を命じることができます(民法258条2項・3項)。あわせて、金銭の支払や登記義務の履行などの給付を命じることもできます(同条4項)。
共有物分割請求の費用は、いくらかかりますか?
訴え提起の手数料は、訴訟の目的の価額に応じて決まります(民事訴訟費用等に関する法律別表第一)。価額が100万円までの部分は10万円ごとに1,000円、100万円を超え500万円までの部分は20万円ごとに1,000円です。共有物分割の訴えの価額の算定方法は、取れた原文からは確かめていません。弁護士費用は訴訟費用に含まれないと裁判所が説明しており、このページでは金額の目安を載せません。
共有者の一人が行方不明です。共有名義を解消できますか?
民法262条の2・262条の3に、裁判所の手続があります。他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないとき、請求した共有者がその持分を取得する裁判、または不動産全体を第三者に売るために持分を譲渡する権限を得る裁判です。申立先は不動産の所在地の地方裁判所で、異議を届け出る期間は3か月以上です(非訟事件手続法87条)。法務省は令和5年4月1日施行の民法の改正としています。
共有持分を放棄すると、どうなりますか?
共有者の一人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。放棄した人は共有から外れますが、不動産自体は残る共有者のものになります。他の共有者が対価を払わずに利益を受けるため、相続税法9条(対価を支払わないで利益を受けた場合のみなし贈与)が関わる可能性があります。個別の扱いは、税務署か税理士に確認してください。
共有名義を解消すると、税金はかかりますか?
方法で変わります。持分や不動産を売れば、売った人に譲渡所得の課税があります(国税庁No.3202)。贈与でもらった人には贈与税がかかり、暦年課税は年110万円の基礎控除があります(No.4402)。土地を持分に応じて現物分割するときは、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます(所得税基本通達33-1の7)。賠償分割や競売の代金の課税は、取れた原文からは確かめていないので、税務署か税理士に確認してください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第206条・第249条〜第258条の2・第262条の2・第262条の3)
- e-Gov法令検索 非訟事件手続法(第87条・第88条)
- e-Gov法令検索 民事訴訟費用等に関する法律(別表第一)
- e-Gov法令検索 相続税法(第9条)
- 法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し
- 裁判所 形式的競売
- 裁判所 訴訟費用について
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
- 国税庁 所得税基本通達(第33条関係、33-1の7 共有地の分割)
- 訳アリ物件買取ラクウル
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案の法的な判断や税額は、弁護士、司法書士、税理士、税務署などにご確認ください。