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代償分割とは|家を1人が相続して他の相続人にお金を払う方法・評価額・税金・払えないとき
代償分割は、相続人の1人が家や土地を取得し、その代わりに他の相続人へ金銭(代償金)を払う遺産分割の方法です。代償金の額を決める計算式は、取得した条文にはありません。不動産をいくらとみるかを、相続人全員で決めます。この記事は、とくに代償金を用意するために、家や土地の売却を考えている方に向けて、払えないときの選択肢まで整理しています。
代償分割とは:家を取得する人が、他の相続人にお金を払う
遺産分割をする前の不動産は、相続人全員の共有です(民法898条1項)。家は1軒ですから、きょうだいで半分ずつに切り分けるわけにもいきません。そこで、1人が家を取得し、他の相続人には金銭で調整する方法があります。国税庁は、これを「共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので、現物分割が困難な場合に行われる方法」と説明しています(No.4173)。
民法の条文には「代償分割」という語は出てきません。次の条文が根拠になります。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 分け方の基準 | 民法906条 | 遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況その他一切の事情を考慮する |
| 話し合いで分ける | 民法907条1項 | 共同相続人は、いつでも、協議で遺産の全部または一部の分割ができる |
| 話し合いが調わない | 民法907条2項 | 各共同相続人は、分割を家庭裁判所に請求できる |
| 審判で代償分割をする | 家事事件手続法195条 | 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合に、特別の事情があると認めるとき、共同相続人の一人または数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる |
出典:e-Gov法令検索 民法・家事事件手続法(2026年10月2日取得)。
195条は、家庭裁判所が審判をするときの規定です。相続人どうしの話し合いで決めるときは、907条1項により、協議で分けることができます。相続した不動産を売って代金を分ける方法との違いは後半の表にまとめました。
代償金の額:不動産をいくらとみるか
代償金の額は、取得する不動産の価額から決まります。ところが、取得した条文と国税庁の原文には、代償金の額を決める計算式や、使う評価額を定めた規定はありません。不動産をいくらとみるかは、相続人全員の合意になります。目安になる数字は次の3つで、水準が違います。
| 数字 | 決める人・水準 | 相続との関係 |
|---|---|---|
| 売買の相場(時価) | 不動産会社の査定などで見る。決まった公的な数字はない | 国税庁は、代償債務の額を、代償分割の時における通常の取引価額を基に決める場合の相続税の計算を示している(次の相続税の節) |
| 路線価(相続税評価) | 国税庁・国税局長が毎年1月1日時点で定め、7月に公表。平成4年以降は地価公示の8割程度 | 土地の相続税評価の方法の一つ(路線価方式)。路線価がない地域は、固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式 |
| 固定資産税評価額 | 市町村長が定める。3年に1度評価替え。平成6年以降は地価公示の7割程度 | 家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を乗じた金額(同じ額) |
出典:国土交通省「主な公的土地評価一覧」、国税庁 タックスアンサー No.4602(令和8年4月1日現在法令等)(2026年10月2日取得)。
路線価は地価公示の8割程度、固定資産税評価額は7割程度ですから、同じ家と土地でも、どの数字を使うかで代償金の額が変わります。取得する人は低い数字で計算するほど払う額が小さくなり、受け取る人は受け取る額が小さくなります。どの数字で計算するかは条文に定めがないため、全員が納得する形で決めることになります。
それぞれの調べ方は、路線価の調べ方、固定資産税評価額の調べ方、売買の相場の見方は不動産の売却価格査定の仕組みにまとめています。
遺産分割協議書に書く内容と、書けない部分
代償分割の合意も、遺産分割協議書にまとめます。ただし、法務局は、遺産の分割の方法や協議書の作成についての相談には応じないと、登記手続ハンドブックに書いています。ハンドブックにある協議書のイメージは「相続財産のうち、下記の不動産は、法務一郎が単独で相続する」という形で、不動産の所在・地番・地積などを書くものです。代償金の条項は入っていません。金額、支払期限、支払方法をどう書くかの公的な記載例は取得できなかったため、文例は載せません。
公的な原文から、協議書の段階で決めておく意味があると読める項目は次の2つです。
- 取得する不動産の特定と、代償金の額:国税庁は、代償分割の対象になった財産が特定され、代償債務の額がその財産の代償分割の時における通常の取引価額を基に決まっている場合に、相続税の課税価格を比例で計算する方法を示しています(次の相続税の節)。
- 登記の名義:不動産を取得する人の名義にする相続登記では、協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添えます。登録免許税は、課税価格に1,000分の4を掛けた額です(法務局のハンドブック)。
書き方は、司法書士・弁護士にご相談ください。協議書に書く一般的な項目は遺産分割協議書の書き方にまとめています。
代償金が払えないとき:売って用意する選択肢
家を取得したい人が、代償金を払うお金を用意できないことは起こります。審判で代償分割をするには「特別の事情があると認めるとき」が必要で(家事事件手続法195条)、払うお金をどう用意するかの基準は、取得した原文にありません。家や土地を売って用意するなら、次の道があります。
- 家を売って、代金を分ける(換価分割):代償分割をやめて、不動産を売った代金を相続人で分けます。売る前の相続登記、売った利益の申告の割合は換価分割とはで整理しています。
- 土地の一部を売って、代償金にあてる:1筆の土地を分筆して一部だけ売る方法があります。手続きと登録免許税は相続した土地を分筆して分ける・売るにはにまとめています。
- 相続人自身の他の不動産を渡す:代償金の代わりに渡すと、渡す人に所得税がかかります(後半の節)。
共有持ち分、再建築不可、築古、借地権つきなどの訳アリ物件は、ラクウルの公式サイトも「一般的な物件に比べて買い手から敬遠されやすい」と書いています。そうした物件には、不動産会社が直接買い取る方法があります。
売り先を探す:仲介か買取か
買取は、一般に仲介の相場より価格が下がる場合があるため、複数社の査定で比べることになります。査定の見方は不動産の売却価格査定の仕組みにまとめています。
買取業者の一つ、ラクウルが公式サイトに書いている内容は次のとおりです(2026年10月2日に確認)。
- 買取の対象:事故物件・再建築不可物件・共有持ち分物件・違反建築物件・旧耐震や築古の物件・借地権・底地などを挙げています。
- 相談の入口:よくある質問に「相続前でも相談できますか?」があり、「はい、問題ありません」と答えています。権利証や関係書類を紛失していても、問題ないと書かれています。
- 査定:査定はすべて無料(一部対象外あり)で、最短当日で査定金額を提示するとしています。
- 費用と決済:自社で直接買い取るため仲介手数料などの諸費用はかからず、決済は最短1日としています。提示金額に納得できない場合は断れると書かれています。
公式サイトには、相続人どうしで代償分割の話し合いをしている途中の物件を売る場合の条件に関する記載はありません。名義や登記の状況は、問い合わせの際に伝えて確認してください。
相続税:代償金を払った人と受け取った人の課税価格
代償分割をすると、相続税の課税価格の計算が変わります。国税庁のタックスアンサー(No.4173)は、次のように説明しています。
- 代償財産を交付した人:相続または遺贈で取得した現物の財産の価額から、交付した代償財産の価額を引いた金額
- 代償財産の交付を受けた人:相続または遺贈で取得した現物の財産の価額と、交付を受けた代償財産の価額の合計額
代償財産の価額は、代償分割の対象になった財産を取得した人が負担した債務の額の、相続開始の時における金額です。ただし、代償分割の対象になった財産が特定され、代償債務の額がその財産の代償分割の時における通常の取引価額を基に決まっている場合は、その債務の額に「相続開始の時における相続税評価額が、代償分割の時の通常の取引価額に占める割合」を掛けた価額になります。国税庁の具体例は次のとおりです。
| 課税価格 | 代償財産を現金2,000万円とする場合 | 代償金が時価5,000万円を基に決まった場合 |
|---|---|---|
| 甲(土地を取得して支払う) | 4,000万円 − 2,000万円 = 2,000万円 | 4,000万円 − 2,000万円 × 4,000万円 ÷ 5,000万円 = 2,400万円 |
| 乙(代償金を受け取る) | 2,000万円 | 2,000万円 × 4,000万円 ÷ 5,000万円 = 1,600万円 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.4173(令和8年4月1日現在法令等)。甲が相続により取得した土地は、相続税評価額4,000万円・代償分割時の時価5,000万円で、乙に現金2,000万円を支払う例(2026年10月2日取得)。
共同相続人および包括受遺者の全員の協議に基づいて、この方法に準じた方法、または他の合理的と認められる方法で代償財産の額を計算して申告する場合は、その申告した額によることが認められる、とも書かれています。相続税の申告は、税務署・税理士にご確認ください。
不動産で代償したとき・家を売るときの所得税
相続人自身の不動産を、代償金の代わりに渡したとき
国税庁のタックスアンサー(No.4173)は、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合、履行した人は、履行の時の時価でその資産を譲渡したことになり、所得税が課税されると説明しています。受け取った人は、履行があった時の時価で、その資産を取得したことになります。根拠は所得税基本通達33-1の5で、代償分割により負担した債務の履行として資産の移転があったときは、履行をした人がその時の価額で資産を譲渡したことになる、と定めています。
代償金を払って取得した家を、あとで売るとき
所得税基本通達38-7は、代償分割により負担した債務に相当する金額は、債務を負担した人が、その代償分割に係る相続により取得した資産の取得費には算入されないと定めています。代償金を払って取得した家を売るときは、払った代償金を取得費に足せない、という意味です。
売ったときの3,000万円特別控除(No.3306)は、要件の一つに、売った人が相続または遺贈で被相続人居住用家屋と敷地等を取得した相続人であることを挙げています。代償分割で取得した家にこの特例が当てはまるかは、取得した原文に記載がないため、断定しません。特例の要件は相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除で整理しています。
不動産取得税:相続の非課税と、代償分割の注記
地方税法73条の7第1号は、相続(包括遺贈と、被相続人から相続人への遺贈を含む)による不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができないと定めています。
東京都主税局のQ&A「相続により不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税になりますか。」は、「相続による不動産の取得については非課税となります。」と答えたうえで、留意点として「生前贈与は『相続』に含まれません」「代償分割は『相続』に含まれません」と書いています。この注記が、代償分割で家を取得する相続人の取得を指すのか、代償金の代わりに相続人自身の不動産を渡して受け取る場合を指すのかは、文言から読み取れませんでした。総務省の「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年総税都第16号と一部改正)も確認しましたが、代償分割を書いた箇所は見つかりませんでした。
そのため、課税されるともされないとも断定しません。代償金の代わりに不動産を渡す場合などの扱いは、不動産のある都道府県の都道府県税事務所にご確認ください。
換価分割との違い
相続した不動産を売って代金を分ける方法が換価分割です。家事事件手続法194条は、家庭裁判所が審判をするために必要があると認めるとき、遺産の全部または一部を競売して換価することを相続人に命じられるとしています。
| 項目 | 換価分割 | 代償分割 |
|---|---|---|
| 不動産の行き先 | 第三者に売る | 相続人の1人(または数人)が取得する |
| 相続人どうしのお金 | 売却代金を分ける | 取得した人が、他の相続人に対する債務を負う |
| 審判での根拠 | 家事事件手続法194条(遺産の換価を命ずる裁判) | 家事事件手続法195条(債務を負担させる方法による分割)。特別の事情が必要 |
| 先に必要なもの | 売る前の相続登記と、買主 | 他の相続人に支払う金銭を用意できること |
出典:e-Gov法令検索 家事事件手続法194条・195条(2026年10月2日取得)。
売ったあとの税金、売る前の相続登記、代表者名義で売るときの贈与税の扱いは換価分割とはで整理しています。共有名義のまま売る場合は共有名義の不動産を売却・分割するにはが参考になります。
よくある質問
代償分割は民法のどこに書いてありますか?
取得した民法・家事事件手続法の条文に、代償分割という語は出てきませんでした。遺産分割の基準は民法906条、協議でいつでも分割できることは907条1項、協議が調わないときに家庭裁判所に請求できることは907条2項です。家庭裁判所が審判をするときに、特別の事情があると認めて、共同相続人の一人または数人に他の共同相続人に対する債務を負担させ、現物の分割に代えられる、と定めているのが家事事件手続法195条です。国税庁は、この方法を代償分割と呼んでいます。
代償金の額は、どうやって決めますか?
取得した条文と国税庁の原文に、代償金の額を決める計算式や、使う評価額を定めた規定はありませんでした。不動産をいくらとみるかは、相続人全員で合意することになります。目安になる数字には、売買の相場、相続税の路線価、固定資産税評価額があり、国土交通省によると、路線価は地価公示の8割程度、固定資産税評価額は7割程度の水準です。同じ不動産でも、どの数字を使うかで代償金の額が変わります。
代償金を受け取ると、相続税や贈与税はかかりますか?
国税庁のタックスアンサー(No.4173)は、代償財産の交付を受けた人の相続税の課税価格を、相続や遺贈で取得した現物の財産の価額と、交付を受けた代償財産の価額の合計額と説明しています。払った人の課税価格は、現物の財産の価額から、交付した代償財産の価額を引いた金額です。代償金について贈与税が問題になる場合を述べた原文は、取得できませんでした。個別の事情は税務署・税理士にご確認ください。
代償金の代わりに、自分の不動産を渡すことはできますか?
国税庁のタックスアンサー(No.4173)は、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転なので、履行した人は、履行の時の時価でその資産を譲渡したことになり、所得税が課税されると説明しています。受け取った人は、履行があった時の時価でその資産を取得したことになります。
代償金を払うお金がないときは、どうしたらよいですか?
家事事件手続法195条は、審判で代償分割をするには特別の事情があると認めることが必要としています。払うお金を用意できない場合の選択肢として、不動産を売って代金を分ける換価分割、土地の一部を分筆して売る方法があります。ただし、取得した原文には、分割払いにできる条件や、支払能力の目安を定めたものはありませんでした。具体的な進め方は、弁護士・司法書士にご相談ください。
代償分割での不動産の取得に、不動産取得税はかかりますか?
地方税法73条の7第1号は、相続(包括遺贈と、被相続人から相続人への遺贈を含む)による不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができないと定めています。東京都主税局のQ&Aは、相続による不動産の取得については非課税となるとしたうえで、留意点として「代償分割は『相続』に含まれません」と書いています。この注記が、代償分割で家を取得する相続人の取得を指すのか、代償金の代わりに相続人自身の不動産を渡して受け取る場合を指すのかは、文言から読み取れませんでした。総務省の取扱通知(道府県税関係)にも、代償分割を書いた箇所は見つかりませんでした。そのため、課税されるともされないとも断定しません。代償金の代わりに不動産を渡す場合などの扱いは、不動産のある都道府県の都道府県税事務所にご確認ください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第898条・第906条・第907条)
- e-Gov法令検索 家事事件手続法(第194条・第195条)
- e-Gov法令検索 地方税法(第73条の7)
- 国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 所得税基本通達 第33条関係(33-1の5 代償分割による資産の移転)
- 国税庁 所得税基本通達 第38条関係(38-7 代償分割に係る資産の取得費)
- 国土交通省 主な公的土地評価一覧
- 東京都主税局 不動産取得税 よくある質問
- 総務省 地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)
- 法務局 登記手続ハンドブック 相続登記①(遺産分割協議編)
- 訳アリ物件買取ラクウル 公式サイト
- 訳アリ物件買取ラクウル ご利用の流れ
- 訳アリ物件買取ラクウル よくある質問
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での代償金の額・協議書の内容・税額・不動産取得税の取扱いは、弁護士・司法書士・税理士・税務署・都道府県税事務所にご確認ください。