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二世帯住宅を相続したら売れる?親の死後に誰が取得するか・区分登記の有無で売り方はどう変わるか・片方だけ売れるか・3,000万円控除の使いどころ・兄弟でもめたとき
親の死後の二世帯住宅は、まず遺産分割で誰が取得するかを決め、そのうえで建物が区分登記されているかどうかで売り方が分かれます。区分登記があれば各部分を別々の所有権として売る形になり、登記が一つの建物のままなら、家全体を売るか、先に建物の区分の登記ができるかを確かめることになります。売ったときの3,000万円控除は、売る人がその家屋に住んでいたかで変わります。兄弟でもめたときの選択肢も、民法・不動産登記法・国税庁の原文で整理しました。売値は示しません。
| 状況 | 売るときの論点 | 確かめること |
|---|---|---|
| 一つの建物として登記 | 家全体が一つの所有権。片方だけ売るには、先に区分の登記ができるかが問題 | 構造上・利用上の独立。法務局か土地家屋調査士 |
| 区分登記あり | 各部分が別々の所有権。片方の区分だけを売る形になる | 各部分の名義人は誰か。登記事項証明書 |
| 兄弟で共有で相続 | 自分の持分は売れるが、家全体を売るには他の共有者の同意が要る | 遺産分割の協議か調停。共有物の分割請求 |
| 同居の子が住み続ける | 住み続ける共有者は、別段の合意がなければ持分を超える使用の対価を償還する | 代償金で取得するか、売って分けるか |
出典は民法249条・251条・898条・907条、不動産登記法2条22号・54条、建物の区分所有等に関する法律1条(e-Gov法令検索、2026年10月3日取得)。「確かめること」はこのページの整理で、法令の区分ではありません。
自分はどの場合に当てはまるか
- 誰が取得するか決まっていない:節2に書きました。遺産分割の調停は遺産分割がまとまらないときにあります。
- 建物の登記がどうなっているか分からない:節3に書きました。相続税の土地の評価の特例は二世帯住宅の小規模宅地等の特例にあります。
- 売ったときの税金が知りたい:節4に書きました。控除の要件と期限は空き家の3,000万円特別控除、税額の全体は家を売る税金はいくら?にあります。
- 兄弟で共有になった、同居の兄弟と意見が合わない:節5に書きました。自分の持分だけ売る方法は共有持分は売却できる?、共有を解消する手続は共有名義の解消方法にあります。
- 売る時期に迷う:相続した家を売るタイミングにあります。
親の死後、二世帯住宅は誰が取得するのか
- 出発点:相続人が数人あるとき、相続財産は共有に属し、相続分が各相続人の共有持分になります(民法898条)。これは遺産分割が済むまでの状態です。
- 決め方:共同相続人は、協議でいつでも遺産の全部または一部を分割できます(907条1項)。協議が調わないとき、または協議ができないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。
- 何を考慮して決めるか:民法906条は、遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類と性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活の状況その他一切の事情を考慮してするとしています。同居の子が住み続けたい事情も、別居の兄弟の事情も、この「一切の事情」の中で話し合われます。同居の子が優先されるという条文は、確かめた範囲では見つかりませんでした。
- 分け方の型:一人が家を取得して他の相続人にお金を払う方法は代償分割、家を売って代金を分ける方法は換価分割にあります。
- 名義:相続で所有権を取得した人は、取得を知った日から3年以内に移転登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。遺産分割で法定相続分を超えて取得した人は、遺産分割の日から3年以内です(同条2項)。手続は相続登記の義務化にあります。
区分登記の有無で、売るときに何が変わるか
- 区分登記がある場合:建物の区分所有等に関する法律1条は、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居などに供することができるものがあるとき、各部分はそれぞれ所有権の目的とすることができるとしています。区分登記がある二世帯住宅は、親世帯の部分と子世帯の部分が別々の所有権で、片方の区分だけを売る形になります。
- 登記が一つの建物のままの場合:建物全体が一つの所有権です。不動産登記法54条1項2号は、表題登記がある建物の部分で区分建物に該当するものを、登記記録上区分建物とする登記(建物の区分の登記)を定めています。この登記を申請できるのは、表題部所有者か所有権の登記名義人です(54条1項)。
- 区分建物に当たる範囲:同法2条22号は、構造上区分された部分で独立して住居、店舗、事務所、倉庫などの用途に供することができるものとしています。玄関から階段、水回りまで世帯ごとに分かれた間取りは当てはまる可能性があります。玄関や廊下を共用する間取りが当てはまるかは、条文だけでは決まらないため、法務局か土地家屋調査士に確かめます。
- 区分しないで売る場合:建物全体を一括で売る、または共有のまま持分を売る形になります。共有の売却は共有持分は売却できる?にあります。
- 相続税の特例との関係:区分登記の有無は、相続税の土地の評価の特例でも対象を分けます。違いは二世帯住宅の小規模宅地等の特例にあります。売却のときの控除への影響は次の節に書きました。
売ったときの3,000万円控除は、住んでいなかった部分に使えるか
- 自分が住んでいた家を売るとき:国税庁のタックスアンサー No.3302(居住用財産の3,000万円特別控除)は、売る資産を「現に自分が住んでいる家屋」「以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合)」とその敷地などとしています。同居の子が自分の住まいを売る場合は、ここに当てはまることがあります。
- 住んだことがない家屋:国税庁の質疑応答事例には、社宅に住む人が、扶養親族の住む父所有の家屋を相続して譲渡した例があります。回答は、その人は所有者としてその家屋に居住したことがないので、この控除は適用できないというものです。別居の兄弟が親の住んでいた部分を相続して売るときの参考になりますが、事実関係が同じとは限りません。
- 共有の家屋に一人が住んでいたとき:別の質疑応答事例は、甲所有の土地の上の甲と乙の共有家屋に、甲は居住、乙は別居という場合に、甲は家屋の共有持分と敷地の全部に控除を適用して差し支えないとしています。土地を甲が持つ事案です。
- 親が住んでいた家を相続して売るとき(No.3306):被相続人居住用家屋の要件は、昭和56年5月31日以前の建築、区分所有建物登記がされていないこと、相続開始の直前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことです。同居の子がいた二世帯住宅は、最後の要件が問題になります。区分登記があれば、二つ目の要件に当てはまりません。期限などは空き家の3,000万円特別控除にあります。
- 誰に売るか:No.3302は、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないことを要件にしています。「特別の関係がある人」には、生計を一にする親族、売った後その家屋で同居する親族なども含まれます。兄弟姉妹の間の売買がどれに当たるかは、この説明だけでは分かりません。
どの特例に当たるかは事実関係で変わります。国税庁の質疑応答事例の全体から「二世帯」の語を含む事例を探しましたが、確かめた範囲では見つかりませんでした。申告の前に税務署か税理士に確かめます。税額の計算は相続した土地を売ったときの税金にあります。
兄弟でもめたときの選択肢
- 遺産分割が済んでいない間:協議が調わなければ、家庭裁判所の調停・審判で決めます(民法907条2項)。裁判所の案内では、調停が不成立になると自動的に審判の手続が始まり、裁判官が遺産に属する物または権利の種類と性質その他一切の事情を考慮して審判をします。進め方は遺産分割がまとまらないときにあります。
- 共有になったあと:各共有者は、共有物の全部をその持分に応じて使えます(249条1項)。管理に関する事項は持分の価格の過半数で決め(252条1項)、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が要ります(251条1項)。分割は、各共有者がいつでも請求でき、5年を超えない期間は分割しない契約もできます(256条1項)。
- 共有物の分割を裁判所に求めるとき:協議が調わなければ裁判所に請求でき(258条1項)、裁判所は、現物の分割か、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法を命じることができます(同条2項)。どちらもできない、または価格を著しく減らすおそれがあるときは競売を命じることができます(同条3項)。遺産分割をすべき共有物は、この分割ができません。相続開始から10年を経過すると、相続人の異議の申出がない限り、持分の分割ができます(258条の2)。
- 自分の持分だけを手放す:共有持分は売却できる?にあります。
- 買取業者に聞く:ラクウルの公式サイト(raku-uru.org、2026年10月3日取得)は、買い取れる物件に「共有持ち分物件」「紛争物件」を挙げています。一覧に説明文はなく、二世帯住宅の記載もないため、持分だけを買い取るのか、家全体なのか、他の共有者の同意をどう扱うのかは、問い合わせて確かめます。
- 住み続けている家でも:よくある質問(akiya-kaitori.net/faq/)には、「人が住んだままでも売買できますか?」に「はい、問題ありません」とあり、お引渡しまでの猶予や、そのまま住む対応の提案があるとされています。「他社に断られた物件でも大丈夫ですか?」「相続前でも相談できますか?」にも「はい、問題ありません」とあります。
- 買取額の聞き方:公式サイトのAI査定の入力は、エリア・築年数・土地面積で、氏名・電話番号・メールアドレスの欄はありません。買取額を聞くには、公式サイトのメール相談で、お名前・電話番号・メールアドレス・物件の種別・都道府県・市区町村を入力します。AI査定とメール相談は別の手続きです。
よくある質問
二世帯住宅を相続したら、兄弟で共有にしなければなりませんか?
共有にしなければならない決まりはありません。民法898条は、相続人が数人あるとき相続財産は共有に属するとしており、これは遺産分割が済むまでの状態です。共同相続人は、協議でいつでも遺産の分割をすることができ(907条1項)、協議が調わないときは家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。同居の子が家を取得して他の兄弟にお金を払う、家を売って代金を分けるなど、分け方は話し合いで決めます。
完全分離型の二世帯住宅は、片方だけ売ることができますか?
建物が区分所有の登記になっていれば、各部分は別々の所有権なので、片方の区分だけを売る形になります。登記が一つの建物のままのときは、先に建物の区分の登記ができるかどうかが問題になります。不動産登記法54条1項2号は、表題登記がある建物の部分で区分建物に該当するものを、登記記録上区分建物とする登記を定めています。区分建物に当たるのは、構造上区分された部分で独立して住居などに供することができるものです(同法2条22号)。自分の家が当たるかは、法務局か土地家屋調査士に確かめます。
二世帯住宅を売ると、3,000万円の特別控除は使えますか?
売る人が、その家屋に住んでいる、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までなら、国税庁のタックスアンサー No.3302の居住用財産の特例の対象になります。別居の兄弟が親の住んでいた部分を相続して売る場合は、国税庁の質疑応答事例が、所有者として居住したことがない家屋は適用できないとした例を載せています。親が一人で住んでいた家を相続して売る特例(No.3306)は、区分所有建物登記がされていないこと、被相続人以外に居住していた人がいないことなどが要件です。どれに当たるかは、税務署か税理士に確かめます。
同居の兄が住み続けていて、別居の私は売りたいのですが、どうすればよいですか?
遺産分割が済んでいない間は、遺産分割の協議か家庭裁判所の調停・審判で決めます。共有になったあとは、各共有者はいつでも共有物の分割を請求でき(民法256条1項)、協議が調わなければ裁判所に請求できます(258条1項)。裁判所は、現物の分割、債務を負担させて持分を取得させる方法、競売のいずれかを命じることができます(同条2項・3項)。自分の持分だけを売る方法は、共有持分の売却のページにあります。住み続けている共有者は、別段の合意がなければ、持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務があります(249条2項)。
親が亡くなって何年も、二世帯住宅の名義を変えずにいても問題ありませんか?
相続で不動産の所有権を取得した人は、取得を知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。遺産分割で法定相続分を超えて取得した人は、遺産分割の日から3年以内です(同条2項)。遺産分割がまとまらないときは、相続人である旨を登記官に申し出る方法があり、期間内に申し出ると、この義務を履行したものとみなされます(76条の3第1項・2項)。詳しくは相続登記の義務化のページにあります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(第249条〜第258条の2・第898条・第906条・第907条)
- e-Gov法令検索 不動産登記法(第2条・第54条・第76条の2)
- e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(第1条・第2条)
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 質疑応答事例 扶養親族の居住の用に供している相続家屋
- 国税庁 質疑応答事例 共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合
- 裁判所 遺産分割調停
- ラクウル(買い取れる物件)
- ラクウル よくある質問
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、二世帯住宅の売却額や買取の可否、登記の可否、税額を保証するものではありません。個別の事情は、司法書士・土地家屋調査士・税理士・税務署・弁護士などにご確認ください。