二世帯住宅の土地に小規模宅地等の特例は使える?区分登記の有無で何が変わるか
二世帯住宅で結果を分けるのは、建物が「区分所有建物である旨の登記」をされているかどうかです。登記がなければ、親が住んでいた部分と親族が住んでいた部分を合わせた敷地全体が、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等になります。登記があれば、対象は被相続人が住んでいた部分の敷地だけです。国税庁の設例では、同じ二世帯住宅でも、特例の対象になる面積が200㎡と50㎡で分かれました。
区分登記の有無で、対象になる敷地はどう変わるか
特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)の対象になるのは、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等です。被相続人が住んでいた建物が一棟の二世帯住宅のとき、その範囲は建物の登記で変わります(国税庁 No.4124、施行令40条の2第4項)。
| 建物の登記 | 被相続人等の居住用になる敷地 | 生計別の子(自分の部分に居住) |
|---|---|---|
| 区分所有建物である旨の登記がない | 被相続人の居住部分と、親族の居住部分を合わせた敷地全体 | 同居していた親族として扱われる。申告期限まで居住し、敷地を保有すれば要件を満たす |
| 区分所有建物である旨の登記がある | 被相続人の居住の用に供されていた部分の敷地だけ | 被相続人の居住部分に居住していた人にあたらず、同居親族として扱われない |
出典:国税庁 No.4124 注2・注3、施行令40条の2第4項・第13項、国税庁 資産課税課情報第1号(平成26年1月15日)設例。
「区分所有建物」の意味について、国税庁の通達69の4-7の3は、区分所有建物である旨の登記がされている建物をいうと説明しています。玄関やキッチンが別で、構造上は完全に分かれている二世帯住宅でも、区分所有の登記がされていなければ、登記がない側の扱いです。
国税庁の設例で金額の差を見る
国税庁の設例は、被相続人(甲)が自分の土地に建てた一棟の建物に、配偶者(乙)と生計別の子(丙)と住んでいたケースです。土地は200㎡で、乙と丙が2分の1ずつ相続し、2人とも申告期限まで保有して住み続けています。登記がないときと、あるときで、特定居住用宅地等になる面積は次のとおりです。
| 建物の登記 | 特定居住用宅地等になる面積 | 80%減額の額(評価額6,000万円の前提) |
|---|---|---|
| 区分所有の登記がない | 乙100㎡+丙100㎡=200㎡ | 6,000万円×80%=4,800万円 |
| 区分所有の登記がある | 乙のみ50㎡(丙は0㎡)=50㎡ | 1,500万円×80%=1,200万円 |
面積は国税庁 資産課税課情報第1号の設例(事例1・事例2)。評価額は、この記事で置いた前提です(200㎡全体で6,000万円、1㎡あたり30万円で均一)。
登記があるときは、乙が取得した持分のうち、甲の居住部分(100㎡)の2分の1にあたる50㎡だけが対象です。丙が取得した部分は、丙が被相続人の居住部分に居住していた人にあたらないため、対象になりません。この例では、減額の額に3,600万円の差が出ます。実際の評価額は路線価や土地の形で変わります。自分の土地の数字で試すときは、小規模宅地等の特例の計算機をお使いください。
土地を共有で相続した場合
土地を2人以上で相続したときは、取得した持分の割合に応ずる部分ごとに、特例の対象になるかを判定します(施行令40条の2第12項)。前の設例のように乙と丙が2分の1ずつ取得して、登記がなく、2人とも要件を満たせば、それぞれの100㎡が対象です。
- 取得者ごとに要件を見る:配偶者は取得者ごとの要件がありません。子は、申告期限まで居住して敷地を保有することが必要です。
- 全員の同意が必要:特例の対象になりうる宅地等を取得した人が2人以上いるときは、適用を受ける宅地等の選択について全員が同意し、原則として申告期限までに分割されている必要があります(国税庁 No.4124)。
- 建物が親子の共有名義の場合:今回確認した国税庁の資料と条文に、建物の名義が共有の二世帯住宅について個別に触れた記述はありませんでした。個別の判断は税務署か税理士にご確認ください。
別居している子が取得する場合
登記がない二世帯住宅で、甲が一方の部分に一人で住み、生計別の子乙がもう一方の部分に住んでいた場合を考えます。国税庁の設例(事例3)では、これまで別に住んでいた子丙が、甲の死亡後に甲の部分へ入居して住んでいます。土地は乙と丙が2分の1ずつ取得して、申告期限まで保有しています。
- 乙が住んでいた部分も、登記がないため、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に含まれます。
- 乙は、乙の部分に住む「被相続人の親族」として、同居親族の要件(申告期限まで居住・保有)で判断されます。
- 甲の部分で甲と共に起居していた親族はいません。丙は、家なき子特例のほかの要件を満たせば、その要件に当てはまる親族にあたるとされています。
家なき子特例の要件は家なき子特例とはで説明しています。
平成25年度改正の経緯
国税庁の説明によると、平成25年度の税制改正(所得税法等の一部を改正する法律・平成25年法律第5号)で、被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が区分所有建物かどうかによって、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の要件と、同居親族の要件が異なることとされました。国税庁は、改正された通達のあらましを平成26年1月15日付の資産課税課情報第1号で示しています。
- 通達69の4-7の3で、区分所有建物は「区分所有建物である旨の登記がされている建物」をいうと明らかにされました。
- 同じ改正で、老人ホームに入所していた場合の取扱い(老人ホームに入っていた親の自宅と小規模宅地等の特例)と、貸付事業用宅地等を選ばない場合に特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等を併用できる限度面積(小規模宅地等の特例とはの表)も定められています。
二世帯住宅の部分がいつの相続から適用されるかは、今回確認した資料に書かれていないため、日付は書きません。相続の開始日による取扱いの違いは、税務署か税理士にご確認ください。
申告書に添付する書類
この特例は、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法69条の4第7項)。特定居住用宅地等について、同居親族が適用を受ける場合の書類は次のとおりです(施行規則23条の2第8項2号)。
- 小規模宅地等の計算に関する明細書、選択する宅地等の明細を書いた書類、遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど財産の取得状況を証する書類
- 取得者が個人番号を有しない場合は、その宅地等を自己の居住の用に供していることを明らかにする書類
書類の様式や取得先は条文に書かれていません。ほかの相続税申告書類は相続税の申告に必要な書類にまとめています。
よくある質問
二世帯住宅でも、小規模宅地等の特例は使えますか?
使える場合があります。建物が区分所有建物として登記されていなければ、親が住んでいた部分と親族が住んでいた部分を合わせた敷地全体が、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等になります。区分所有登記がある場合は、被相続人が住んでいた部分の敷地だけが対象です(国税庁 No.4124)。
玄関もキッチンも別の完全分離型でも、登記がなければ敷地全体が対象ですか?
国税庁の判定は、構造ではなく「区分所有建物である旨の登記がされているか」です。構造上は完全に分かれていても、区分所有の登記がない一棟の建物であれば、被相続人または親族の居住の用に供されていた部分が対象になります(通達69の4-7の3、No.4124 注3)。
区分所有登記がある二世帯住宅で、子が土地を相続したらどうなりますか?
国税庁の設例では、登記がある建物の敷地を子が取得した場合、子は被相続人の居住の用に供されていた部分に居住していた人にあたらず、同居親族として扱われません。子が被相続人と生計を一にしていた場合などは、別の区分の要件で判断されます。個別の判断は税務署か税理士にご確認ください。
土地を兄弟で共有で相続した場合、特例はどうなりますか?
取得した持分の割合に応ずる部分ごとに、それぞれの要件に当たるかを判定します(施行令40条の2第12項)。たとえば、2人が2分の1ずつ取得して、2人とも要件を満たせば、それぞれの持分に応ずる部分が対象です。適用する宅地等の選択には、取得した全員の同意が必要です(国税庁 No.4124)。
二世帯住宅の子が、申告期限の前に転勤になった場合は?
国税庁の質疑応答事例では、相続人の配偶者や子が引き続き家屋に住み、転勤という特殊事情が解消したときは家族と起居を共にすることになる家屋であれば、申告期限まで居住の用に供していたものとみるとしています。ただし、配偶者や子が申告期限前に住まなくなると、特定居住用宅地等には当たりません。
親の住んでいた部分に誰も住まなくなったら、どうなりますか?
同居親族の要件として条文が求めているのは、相続開始時から申告期限まで引き続き敷地を保有し、その建物に居住していることです。親が住んでいた部分が空いたことは、条文の要件には出てきません。取得者が別居の親族の場合は、家なき子特例の要件を確認します(家なき子特例とは)。
相続税がゼロになる場合も、申告は必要ですか?
必要です。この特例は、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書などの書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法69条の4第7項)。
参考・出典
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)
- 国税庁 質疑応答事例 単身赴任中の相続人が取得した被相続人の居住用宅地等についての小規模宅地等の特例
- 国税庁 質疑応答事例 「相続開始時から申告期限まで引き続き当該建物に居住していること」の意義
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令(第40条の2)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第69条の4)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行規則(第23条の2)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の適用可否・評価額の算定は税理士または所轄の税務署にご確認ください。