老人ホームに入っていた親の自宅に、小規模宅地等の特例は使える?空き家でも対象になる3つの条件
老人ホームに入所して自宅が空き家のまま亡くなっても、次の3つを満たせば、入所の直前まで住んでいた自宅の敷地は「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」として扱われます。相続開始の直前に要介護認定または要支援認定などを受けていたこと、対象の住居・施設に入っていたこと、入所後に自宅を事業の用や被相続人等以外の人の居住の用にしていないことです。そのうえで、敷地を取得する人が、配偶者・同居親族・家なき子特例のいずれかの要件を満たす必要があります。
対象になる3つの条件
被相続人が老人ホームなどに入っていて、相続開始の直前に自宅に住んでいなかった場合でも、次の3つを全て満たせば、入所の直前まで住んでいた自宅の敷地は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に含まれます(国税庁 No.4124 注1、租税特別措置法69条の4第1項)。
| 条件 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 認定 | 相続開始の直前に、要介護認定または要支援認定を受けていた(介護保険法施行規則140条の62の4第2号に該当していた人を含む)。障害のある人は障害支援区分の認定 | 施行令40条の2第2項、施行規則23条の2第2項 |
| 2 入居 | 対象の住居・施設に入居または入所していた | 施行令40条の2第2項 |
| 3 入所後の使い方 | 入所後に、自宅が事業の用または新たに被相続人等以外の人の居住の用に供されていない | 施行令40条の2第3項 |
出典:国税庁 No.4124 注1、施行令40条の2第2項・第3項。老人ホーム等の取扱いは、国税庁の質疑応答事例の題名では、平成26年1月1日以後に相続または遺贈により取得する場合のものです。
小規模宅地等の特例の全体像は小規模宅地等の特例とはで説明しています。
要介護認定はいつの時点で見るか
国税庁の通達69の4-7の2は、要介護認定等を受けていたかどうかを、相続の開始の直前に認定を受けていたかで判定すると定めています。そのため、施設に入居した時点で認定を受けていなくても、相続開始の直前に認定を受けていれば、条件1を満たします(国税庁 質疑応答事例)。
要介護認定の申請中に亡くなった場合も、国税庁の質疑応答事例が扱っています。市町村が認定を行った場合、その効力は申請のあった日にさかのぼって生ずるため、相続開始の日以後に認定があったときも、相続開始の直前に認定を受けていた被相続人に該当するものとして差し支えないとされています。
対象になる住居・施設の種類
国税庁が挙げている、要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が入居・入所していた住居・施設は次のとおりです(No.4124 注1(1)、施行令40条の2第2項1号)。
- 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(グループホーム)
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに該当するものを除く)
障害支援区分の認定を受けていた被相続人については、障害者支援施設(施設入所支援が行われるもの)と、共同生活援助を行う住居が対象です(同項2号)。入居先がどれに当たるかは、添付書類で明らかにします。
入所後に貸した・誰かが住んだ場合
条件3のとおり、被相続人が入所したあとに、自宅が事業の用または新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合は、この取扱いの対象から除かれます(国税庁 No.4124 注1)。
- 被相続人等とは:被相続人と、被相続人と生計を一にしていた親族です。さらに、被相続人と入所の直前に生計を一にして、自宅に引き続き居住している親族も含みます(施行令40条の2第3項)。
- 自宅を貸した場合:賃貸した場合は、事業の用または被相続人等以外の人の居住の用のどちらかにあたると読めます。
- 子が引っ越して住んだ場合:その子が、被相続人と入所の直前に生計を一にして引き続き居住している親族でなければ、被相続人等以外の人の居住の用にあたります。
個別のケースは、税務署か税理士にご確認ください。
住民票を移していた場合
今回確認した条文と国税庁の資料に、住民票を老人ホームに移したことを、適用の可否の条件とする記述は見当たりませんでした。条文が求めているのは、条件1〜3の事実です。
国税庁の質疑応答事例は、被相続人等の居住の用に供されていたかどうかを、基本的には、その建物に生活の拠点を置いていたかどうかで判定するとしています。具体的には、日常生活の状況、その建物への入居目的、建物の構造・設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無などを総合して判断します。申告書には、相続の開始の日以後に作成された被相続人の戸籍の附票の写しを添付します(次の節の表)。住民票の扱いを含めた個別の判断は、税務署か税理士にご確認ください。
敷地を取得する人の要件
3つの条件を満たして「居住の用に供されていた宅地等」にあたっても、特例を使えるのは、次の区分の要件を満たす親族です(No.4124、租税特別措置法69条の4第3項2号)。
- 被相続人の配偶者:取得者ごとの要件はありません。
- 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族:相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、敷地を申告期限まで保有していること。
- それ以外の親族:家なき子特例の要件(1)〜(6)を全て満たすこと。申告期限まで保有していることも含まれます。要件は家なき子特例とはで説明しています。
同居親族と家なき子特例は、申告期限まで敷地を保有する要件があります。申告期限前に売る予定がある場合は、この2つの区分では特例を使えません。
申告書に添付する書類
老人ホーム等に入所していた被相続人の宅地等について特例を使うときは、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、次の書類を添付します(租税特別措置法69条の4第7項、施行規則23条の2第8項3号)。
| 書類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 取得者の区分ごとの書類 | 計算の明細書、遺言書や遺産分割協議書の写しなど。同居親族で個人番号を有しない場合は居住の用に供していることを明らかにする書類、家なき子は住所・居所や過去の持ち家に関する書類も | 8項3号イ(2号イ〜ホ) |
| 戸籍の附票の写し | 相続の開始の日以後に作成された被相続人のもの | 8項3号ロ |
| 認定を受けていたことを明らかにする書類 | 介護保険の被保険者証の写し、障害福祉サービス受給者証の写しなど | 8項3号ハ |
| 入居先の書類 | 入居・入所していた住居・施設の名称・所在地と、どの種類に当たるかを明らかにする書類 | 8項3号ニ |
出典:租税特別措置法施行規則23条の2第8項3号。入居先が発行する書類の名称や様式は条文に書かれていません。ほかの相続税申告書類は相続税の申告に必要な書類にまとめています。
よくある質問
要支援認定でも、対象になりますか?
対象になります。国税庁は、要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が、対象の住居・施設に入居または入所していた場合を挙げています(No.4124 注1)。
入居した時点では、要介護認定を受けていませんでした。使えませんか?
使えます。要介護認定等を受けていたかどうかは、相続の開始の直前の状態で判定します(通達69の4-7の2)。入居の時点で認定を受けていなくても、相続開始の直前に認定を受けていれば足ります(国税庁 質疑応答事例)。
要介護認定の申請中に亡くなりました。認定が出たのは相続のあとです。
国税庁の質疑応答事例では、相続開始の日以後に認定があった場合も、認定は申請のあった日にさかのぼって効力が生ずるため、相続開始の直前に要介護認定等を受けていた者に該当するものとして差し支えないとしています。
サービス付き高齢者向け住宅に入居していた場合は、対象ですか?
有料老人ホームに該当するものを除く、高齢者の居住の安定確保に関する法律のサービス付き高齢者向け住宅が、対象の住居に挙がっています(施行令40条の2第2項1号ハ)。入居先がどの施設に当たるかは、添付書類で明らかにします。
病院に入院したまま亡くなった場合は、どうなりますか?
国税庁の質疑応答事例では、入院は一時的なものと認められるため、その建物が入院後に他の用途に供されたような特段の事情がなければ、被相続人の生活の拠点はなおその建物にあるとみて、居住の用に供されていた宅地等に該当するとしています。老人ホームの特例とは別の整理です。
住民票を老人ホームに移していても、特例は適用できますか?
今回確認した条文と国税庁の資料に、住民票を移したことを適用の可否の条件とする記述は見当たりませんでした。条文が求めているのは、認定、対象の住居・施設への入居、入居後に自宅を事業の用などにしていないことです。住民票の扱いも含めた個別の判断は、税務署か税理士にご確認ください。
誰も住まない自宅を相続します。特例は使えますか?
特例を使えるかは、取得者の区分で変わります。配偶者は取得者ごとの要件がなく、同居していた親族は申告期限まで居住して保有すること、それ以外の親族は家なき子特例の要件を満たすことが必要です。同居親族と家なき子特例は、申告期限まで保有する要件があるため、申告期限前に売る予定がある場合は使えません(家なき子特例とは)。
相続税がゼロになる場合も、申告は必要ですか?
必要です。この特例は、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書などの書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法69条の4第7項)。
参考・出典
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 質疑応答事例 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)
- 国税庁 質疑応答事例 老人ホームに入所していた被相続人が要介護認定の申請中に死亡した場合の小規模宅地等の特例
- 国税庁 質疑応答事例 入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例
- 国税庁 質疑応答事例 小規模宅地等の特例の対象となる「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定
- 国税庁 「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第69条の4)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令(第40条の2)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行規則(第23条の2)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の適用可否・評価額の算定は税理士または所轄の税務署にご確認ください。