家なき子特例とは?どんな人が、何を満たせば使えるのか
家なき子特例は、被相続人に配偶者も同居の相続人もいないときに、別居していた親族が自宅の敷地を取得した場合に使える小規模宅地等の特例です。取得者は、相続開始前3年以内に自分・配偶者・三親等内の親族などの持ち家に住んだことがないこと、今住んでいる家を過去に所有したことがないこと、申告期限まで敷地を保有していることなど、6つの要件を全て満たす必要があります。使うには、相続税の申告書への記載と添付書類が欠かせません。
家なき子特例を使えるのは誰か
小規模宅地等の特例のうち、被相続人が住んでいた敷地は「特定居住用宅地等」として、330㎡までの部分が80%減額されます。誰が取得するかで、取得者に求められる条件が変わります(国税庁 No.4124)。
| 取得者 | 取得者ごとの要件 | 条文 |
|---|---|---|
| 被相続人の配偶者 | なし。同居していたかどうかも問われない | 69条の4第3項2号の本文 |
| 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族(同居親族) | 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、敷地を申告期限まで保有する | 同号イ |
| 上の2つ以外の親族(家なき子特例) | 要件(1)〜(6)を全て満たす | 同号ロ |
出典:国税庁 No.4124「特定居住用宅地等の要件」、租税特別措置法69条の4第3項2号。
家なき子特例は、3行目の「それ以外の親族」が使う仕組みです。配偶者や同居親族がいる場合は、そちらの要件が先に問われます。小規模宅地等の特例の全体像は小規模宅地等の特例とはで説明しています。減額される金額は小規模宅地等の特例の計算機で確かめられます。
取得者の要件6つを条文どおりに
国税庁は、同居親族でも配偶者でもない親族について、次の(1)から(6)を全て満たすことを求めています(No.4124)。
- (1) 国籍に関する要件:国税庁の表は「居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと」と書いています(財務省令の定めは施行規則23条の2第4項)。外国に住んでいる相続人は、国税庁のNo.4138で納税義務者の区分を確認してください。
- (2) 被相続人に配偶者がいないこと。
- (3) 相続開始の直前に、被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた相続人がいないこと。相続人には、相続放棄があった場合に放棄がなかったものとした場合の相続人を含みます(施行令40条の2第14項)。
- (4) 相続開始前3年以内に、日本国内にある取得者・取得者の配偶者・取得者の三親等内の親族・取得者と特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと。被相続人が住んでいた家屋は除きます。
- (5) 相続開始時に、取得者が居住している家屋を、相続開始前のいつの時点でも所有していたことがないこと。
- (6) 敷地を相続開始時から申告期限まで引き続き保有していること。
(3)の「同居」について、国税庁の通達(69の4-21)は、被相続人と共に起居していた人をいうと説明しています。一棟の建物が独立した部分に分かれていて、被相続人がその一つに住んでいた場合は、その独立部分に共に住んでいた人が同居の親族になります。
「3年以内の持ち家」にあたる家・あたらない家
要件(4)は、住んでいた家の所有者で決まります。条文が挙げている所有者は、次のとおりです。
| 住んでいた家の所有者 | 要件(4)の家屋か | 根拠 |
|---|---|---|
| 取得者本人 | あたる(使えない) | 69条の4第3項2号ロ(1) |
| 取得者の配偶者 | あたる(使えない) | 同上 |
| 取得者の三親等内の親族(親・祖父母・兄弟姉妹・おじ・おばなど) | あたる(家賃の有無は条文に出てこない) | 同上 |
| 取得者や親族などが発行済株式の10分の5超を持つ法人(特別の関係がある法人) | あたる | 施行令40条の2第15項 |
| 上のどれでもない人や法人(賃貸住宅の大家など) | あたらない | 条文に挙がっていない |
| 被相続人が住んでいた家 | 除外される(住んでいてもよい) | 同号ロ(1)のかっこ書 |
出典:租税特別措置法69条の4第3項2号ロ、施行令40条の2第15項、国税庁 No.4124。条文は「相続税法の施行地内にある家屋」と書いており、国外の家屋は挙げていません。個別の判断は税務署か税理士にご確認ください。
孫・マンションの場合
孫が取得する場合
条文は取得者を「被相続人の親族」と書き、相続人に限る書き方をしていません(69条の4第3項2号ロ)。孫が代襲相続人になる場合や、遺言で遺贈を受ける場合は、「相続又は遺贈により取得した」親族にあたります。
要件(4)(5)(6)は、取得者である孫自身について判断します。たとえば、孫が三親等内の親族である自分の親(被相続人の子)が所有する家に住んでいると、要件(4)にあたります。孫の個別のケースは、税務署か税理士にご確認ください。
取得者がマンションに住んでいる場合
- 自分や配偶者が所有するマンションに住んでいる:要件(4)の「取得者・配偶者が所有する家屋」に居住しているため、使えません。
- 賃貸マンションに住んでいる:所有者が上の表の「あたる」人や法人でなければ、要件(4)にはあたりません。
- 以前に所有していたマンションに今住んでいる:要件(5)の「居住している家屋を過去に所有していたことがない」に反するため、使えません。
- 以前に所有していた別のマンションを売って、今は賃貸に住んでいる:要件(5)は今住んでいる家屋についての要件です。売却前にそのマンションに住んでいた時期が相続開始前3年以内なら、要件(4)で問題になります。
被相続人の自宅がマンションの場合
特例の対象は、土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地になっているものです。財務省令が対象から外している建物は、耕作用の温室など農地に関するものだけで、マンションを外す定めはありません(施行規則23条の2第1項)。マンションの敷地についての個別の評価は、税務署か税理士にご確認ください。
申告期限までの保有と、売却するときの注意
要件(6)のとおり、敷地を申告期限まで保有していることが必要です。相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。申告期限より前に売ると、要件(6)を満たさなくなります。
要件(6)が定めているのは申告期限までの保有です。申告期限のあとの保有期間を、同号ロは定めていません。ただし、申告期限までに遺産分割が終わっていない敷地には、原則として適用がありません(69条の4第4項)。
取得した敷地を申告期限より前に売る予定の場合は、この特例は使えません。売るときの税金は空き家の3,000万円特別控除で説明しています。
申告書に添付する書類
家なき子特例を使うには、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、次の書類を添付します(租税特別措置法69条の4第7項、施行規則23条の2第8項2号)。
| 書類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 計算の明細書など | 小規模宅地等の計算に関する明細書。選択する宅地等の明細と限度面積要件を満たす旨を書いた書類(取得者が複数のときは全員の同意を証する書類も)。遺言書の写し、または全員が自署押印した遺産分割協議書の写しと印鑑証明書 | 8項1号イ〜ハ |
| 住所・居所の書類 | 取得者が個人番号を有しない場合に、相続開始の日の3年前の日から相続開始の日までの住所・居所を明らかにする書類 | 8項2号ハ |
| 3年以内の居住家屋の書類 | 3年の間に居住した家屋が、要件(4)の家屋以外であることを証する書類 | 8項2号ニ |
| 現在の居住家屋の書類 | 相続開始時に居住している家屋を、相続開始前のいずれの時にも所有していたことがないことを証する書類 | 8項2号ホ |
出典:租税特別措置法施行規則23条の2第8項。書類の様式・取得先は条文に書かれていません。他の相続税申告書類は相続税の申告に必要な書類にまとめています。
よくある質問
家なき子特例は、誰が使えますか?
被相続人に配偶者がおらず、相続開始の直前に被相続人と同居していた相続人もいない場合に、別居していた親族が自宅の敷地を取得したときに使えます。取得者は、3年以内に自分・配偶者・三親等内の親族などの持ち家に住んだことがないこと、今住んでいる家を過去に所有したことがないこと、申告期限まで敷地を保有していることなど、6つの要件を全て満たす必要があります(国税庁 No.4124)。
孫は家なき子特例を使えますか?
条文は取得者を「被相続人の親族」と書いており、相続人に限る書き方ではありません。孫が代襲相続人になる場合や、遺言で遺贈を受ける場合は、相続または遺贈で敷地を取得した人にあたります。そのうえで、要件の3年以内の持ち家などは、取得者である孫自身について判断します。孫の個別のケースは、税務署か税理士にご確認ください。
賃貸マンションに住んでいても使えますか?
条文が挙げているのは、取得者本人・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋です。住んでいる賃貸マンションの所有者がこれらに当たらなければ、「3年以内の持ち家」の要件には引っかかりません。所有者が親族の場合は、家賃を払っていても所有者で判断されます。
持ち家のマンションに住んでいます。家なき子特例は使えませんか?
相続開始前3年以内に、自分や配偶者が所有する家屋に住んでいたことがあると、要件を満たしません。また、相続開始のときに住んでいる家屋を過去に所有していたことがある場合も要件を満たしません。持ち家を売却して賃貸に移った場合は、売却の時期と住んでいた期間が3年の判定に関わるため、個別の判断は税務署か税理士にご確認ください。
同居していた人が相続放棄をした場合は、どうなりますか?
要件の「同居していた相続人がいないこと」の相続人は、相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人をいいます(施行令40条の2第14項、国税庁 No.4124)。同居の相続人が放棄をしても、同居の相続人がいない扱いにはなりません。
申告期限より前に敷地を売ったら、どうなりますか?
要件のひとつが「相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること」なので、申告期限より前に売ると要件を満たさなくなります。相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。
相続税がゼロになる場合も、申告は必要ですか?
必要です。この特例は、相続税の申告書に適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書などの書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法69条の4第7項)。特例を使った結果、相続税が0円になる場合も同じです。
遺産分割がまとまっていない場合は、どうなりますか?
申告期限までに分割されていない宅地等には、原則として適用がありません。ただし、申告期限から3年以内に分割された場合は、その分割された宅地等に適用される定めがあります(同条4項ただし書)。詳しくは遺産分割に期限はある?で説明しています。
参考・出典
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第69条の4)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令(第40条の2)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行規則(第23条の2)
- e-Gov法令検索 相続税法(第27条)
- 国税庁 「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の適用可否・評価額の算定は税理士または所轄の税務署にご確認ください。