相続手続き 読了時間:約12分

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親の借金と相続放棄|借金があるか分からないときの調べ方・3か月の期限と延ばし方・あとから借金を知ったとき・放棄すると誰に移るか・取り立て・家を残したいとき

相続人は、被相続人の権利も借金も受け継ぎます。受け継ぎたくないときは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄を申し出ます。借金があるか分からないときは、先に相続財産を調べられ、調べても決められなければ家庭裁判所が3か月を延ばせます。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターは、法定相続人による開示を受け付けています。放棄すると、借金は次の順位の相続人(兄弟姉妹まで)に移ることがあります。下の表に、場面ごとにまとめました。

場面どうなる根拠
借金があるか分からず、3か月が近い財産を調べられる。調べても決められないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる(収入印紙800円)民法915条1項ただし書・2項、裁判所
3か月のうちに何もしなかった単純承認をしたとみなされる民法921条2号
3か月以内に借金が多いと分かった家庭裁判所に放棄を申述する(収入印紙800円)。放棄した人は初めから相続人でなかったとみなされる民法938条・939条、裁判所
3か月を過ぎてから借金を知った財産が全くないと信じ、信じたことに相当な理由があるときなどは、存在を認識した時から3か月以内なら受理されることもある裁判所のQ&A
家や預金を処分した単純承認をしたとみなされることがある民法921条1号
子が全員放棄した直系尊属、いなければ兄弟姉妹が相続人になる。配偶者は常に相続人民法889条・890条

民法(令和8年6月24日施行分まで反映)。2026年10月3日、e-Gov法令検索と裁判所のサイトで取得。

自分はどの場合か

借金があるか分からないときの調べ方(信用情報機関の開示)

民法915条2項は、相続人は相続の承認または放棄をする前に、相続財産の調査をすることができると定めています。借金の手がかりになる一般的なものは、督促状や契約書、通帳の引落し、クレジットカードの明細、自宅に届く郵便物です。

これらで分からないときは、信用情報機関に開示を申し込む方法があります。3つの機関はいずれも、亡くなった方の情報を法定相続人が開示できると案内しています。

機関載っている情報(機関の案内)相続人の開示
CICCICの会員会社(クレジット会社等)との契約内容、支払状況、残高など手数料は1,500円(定額小為替証書)または1,650円(コンビニの開示利用券、手数料込み)。10日ほど(法定相続情報一覧図)〜20日ほど(戸籍謄抄本など)
JICCローンやクレジット等の契約内容、返済・支払状況法定相続人または2親等以内の血族が申込める。手数料は2,177円(税込、速達2,511円。コンビニの郵送開示利用券)。書類の到着後7〜10日
全国銀行個人信用情報センター会員の銀行・信用金庫・農協等が登録した住宅ローン、カードローン、クレジットカード等の契約内容と返済状況法定相続人または法定代理人が申込める。7〜10日ほど。郵送の利用券は2,403円(2026年4月1日以降)

各機関の案内(2026年10月3日取得)。3つすべてに申し込むと、表の手数料は合計6,230円です(CICは1,650円で手計算)。CICの法定相続人の開示では、クレジット・ガイダンス情報は申し込めません。

開示でできることと、できないことがあります。

3か月の期限と、延ばす申立て

民法915条1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならないと定めています。3か月のうちに限定承認も放棄もしないと、単純承認をしたとみなされます(921条2号)。単純承認をすると、無限に被相続人の権利義務を承継します(920条)。

調べても決められないときは、期間を延ばす申立てがあります。裁判所の案内は次のとおりです。

起点の考え方は、節4にあります。放棄の手続きと必要書類は相続放棄は自分でできるのページにあります。

あとから借金を知ったとき

裁判所のQ&Aは、3か月の数え方を次のように説明しています。相続放棄の申述は、被相続人が亡くなったことと、これにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に行います。ただし、相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から3か月以内に申述すれば、相続放棄の申述が受理されることもあります。

場面裁判所の案内から読めること根拠
亡くなったときから借金の存在を知っていた亡くなったことと、自分が相続人となったことを知った時から3か月裁判所のQ&A、民法915条
財産が全くないと信じていて、信じたことに相当な理由がある財産の全部または一部の存在を認識した時から3か月以内に申述すれば、受理されることもある裁判所のQ&A
先順位の人の放棄で、自分が相続人になったQ&Aの文言は「これにより自己が法律上相続人となった事実を知った時」。放棄を知った時がこれに当たるかは、案内に書かれていない裁判所のQ&A

裁判所「裁判手続Q&A(家事)」(2026年10月3日取得)。事件番号の特定できる判決は、このページでは引きません。

受理されるかどうかは家庭裁判所が判断します。3か月を過ぎたから無理とも、事情があれば必ず通るとも、このページでは言えません。事情を説明する書き方は、弁護士・司法書士など専門家に相談してください。3か月を過ぎるまで何もしなかった場合は、単純承認をしたとみなされます(民法921条2号)。一度した放棄は、3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。

放棄すると借金は誰に移るか(次順位・兄弟)

相続放棄をした人は、その相続に関しては、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。裁判所のQ&Aは、申述が受理されると申述人は最初から相続人ではなかったことになり、被相続人の債務を相続により負担することはなくなるとしています。一方で、被相続人の権利義務は、次に相続人になる人に移ります。

放棄した人次に相続人になる人根拠
子の全員配偶者は常に相続人のまま。子がいなくなるので、直系尊属(父母。親等の近い者が先)が配偶者と同順位で相続人になる民法887条・889条1項1号・890条
子の全員と直系尊属の全員兄弟姉妹が、配偶者と同順位で相続人になる民法889条1項2号・890条
配偶者同順位の他の相続人(子、直系尊属、兄弟姉妹)で相続分を計算し直す民法939条・900条
兄弟姉妹その子(おい・めい)は代襲しない。代襲の原因は死亡・欠格・廃除で、放棄は入っていない民法889条2項・887条2項
相続人の全員相続人のあることが明らかでない状態になり、相続財産は法人になる。家庭裁判所が清算人を選ぶ民法951条・952条

民法(2026年10月3日、e-Gov法令検索で取得)。法定相続分の割合は法定相続分の早見表にあります。

注意する点が3つあります。

取り立てが来たとき

貸金業を営む者の取立てには、貸金業法21条の規制があります。禁止される言動のうち、読者に関わりやすいものを並べます。

禁止される言動条文の内容根拠
威迫・私生活の平穏を害する言動人を威迫し、または私生活もしくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない貸金業法21条1項
勤務先などへの連絡正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけたり、訪問したりしてはならない貸金業法21条1項3号
債務者等以外への肩代わりの要求債務者等以外の者に、債務者等に代わって債務を弁済することを要求してはならない貸金業法21条1項7号
弁護士・司法書士に委託した後債務の処理を弁護士・司法書士に委託し、書面で通知があった場合、正当な理由がないのに債務者等へ電話・訪問で弁済を要求してはならない貸金業法21条1項9号

貸金業法(2025年10月1日施行分まで反映、2026年10月3日取得)。「債務者等」は債務者または保証人です(同法2条5項)。放棄した相続人がこれに当たるかは、条文からは言えません。銀行や個人からの取立てを直接規制する条文は、このページでは取り上げていません。

家を残したいなら(限定承認・売って返す)

放棄は、被相続人の権利や義務を一切受け継がない選び方です(裁判所)。借金だけでなく、家も受け継ぎません。家は残したいとき、または家を売って返したいときは、次の選び方があります。

選び方家と借金はどうなるか根拠
単純承認(売って返す)無限に権利義務を承継する。売った代金で足りなかった借金は残る民法920条・921条1号
限定承認相続で得た財産の限度でのみ債務を弁済する。共同相続人の全員でする。3か月以内に財産目録を家庭裁判所へ民法922条〜924条
放棄権利も義務も一切受け継がない。家も受け継がない民法939条、裁判所

民法・裁判所の案内(2026年10月3日取得)。

よくある質問

親に借金があるかどうか分からないとき、どうやって調べますか?

民法915条2項は、相続人は相続の承認または放棄をする前に、相続財産の調査をすることができると定めています。手がかりの一つが信用情報機関の開示です。CIC・日本信用情報機構(JICC)・全国銀行個人信用情報センターは、いずれも法定相続人が亡くなった方の信用情報の開示を申し込めると案内しています。ただし、機関に加盟していない会社との契約や個人間の借入れは載らず、全国銀行個人信用情報センターは、借入者の死亡を金融機関が確認すると登録情報が削除されるのが一般的としています。開示報告書に載っていないことは、借金がないことの証明にはなりません。

3か月の期限が近いのに、借金があるのか分かりません。どうすればよいですか?

相続人が相続財産の状況を調査しても、単純承認・限定承認・放棄のどれにするかを決められないときは、家庭裁判所が申立てにより3か月の期間を伸ばせます(民法915条1項ただし書、裁判所の案内)。申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があり、費用は相続人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。伸ばされる期間の長さは、裁判所の案内には書かれていません。

3か月を過ぎてから借金を知りました。もう相続放棄はできませんか?

裁判所のQ&Aは、相続放棄の申述は、被相続人が亡くなったことと、これにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に行うとしたうえで、相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から3か月以内に申述すれば、受理されることもあるとしています。受理されるかどうかは家庭裁判所が判断するため、できるとも、できないとも、このページでは言えません。

相続放棄をしたら、親の借金は誰が払うのですか?

相続放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。借金を含めた権利義務は、次に相続人になる人に移ります。子の全員が放棄すると直系尊属(父母・祖父母)、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人になります(民法889条)。配偶者は常に相続人です(民法890条)。全員が放棄して相続人がいなくなれば、相続財産は法人になり、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求で清算人を選びます(民法951条・952条)。

私だけ放棄すると、兄弟や配偶者に借金が移りますか?

放棄した人は初めから相続人でなかったことになるため、同じ順位の残りの相続人で相続分を計算し直します(民法939条・900条)。たとえば子が2人で配偶者がいるとき、子の1人が放棄すれば、配偶者と残る子が相続人です。配偶者が放棄すれば、子が相続人のままで、配偶者の分は初めから無かったものとして計算されます。放棄の連絡を家族にしておくかどうかは、条文には定めがありません。

債権者から請求が来ました。とりあえず払ってもよいですか?

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。相続財産から返済に充てることがこれに当たるかは事情によるため、条文だけでは言えません。放棄を考えているなら、返済・名義変更・売却の前に、弁護士・司法書士など専門家に相談して決めてください。単純承認をすると、無限に被相続人の権利義務を承継します(民法920条)。

相続放棄が受理されたあとに、取り立てが来たらどうすればよいですか?

裁判所のQ&Aは、債権者から債務の請求をされている場合には、債権者に対して、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよいかと思われる、としています。受理した家庭裁判所には、受理証明書を申請できます(収入印紙150円分と、郵送なら返信用の郵便切手。裁判所のQ&A)。貸金業を営む者の取立てには、貸金業法21条の規制があります。

預貯金や家は受け取りたいが、借金は引き継ぎたくありません。そういう選び方はありますか?

限定承認があります。相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務を弁済することを留保して承認する方法です(民法922条)。共同相続人の全員が共同でする必要があり(民法923条)、相続財産の目録を作って家庭裁判所に提出し、3か月以内に申述します(民法924条)。くわしくは限定承認のページにあります。

借金と家の価値のどちらが大きいか分からないとき、先に家を売ってもよいですか?

家を売ることは相続財産の処分に当たると考えられ、単純承認をしたとみなされる可能性があります(民法921条1号)。単純承認をすると、無限に被相続人の権利義務を承継するため(民法920条)、売った代金で足りなかった借金は残ります。放棄や限定承認を選ぶ可能性が少しでもあるなら、売る前に決めてください。

一度した相続放棄は、取り消せますか?

相続の承認と放棄は、3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。ただし、総則・親族の規定による取消しは妨げられず(同条2項)、取消しをするときは家庭裁判所に申述します(同条4項)。取消権は、追認をすることができる時から6か月行使しないと時効で消え、放棄の時から10年を経過したときも同じです(同条3項)。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の相続放棄の可否や期限は、家庭裁判所、弁護士、司法書士などの専門家にご相談ください。

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