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特殊清掃の費用は誰が払う?|相続人・相続放棄した場合・賃貸の原状回復・費用の公表例
特殊清掃の費用の負担者を直接定めた文は、取得した民法の条文(621・896・915・921・939・940条)にはありません。民法896条は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。賃貸住宅は、621条が賃借人の原状回復義務を定めています。相続放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)が、相続財産の一部でも処分すると単純承認とみなされることがあります(921条1号)。費用は、賃貸住宅で孤独死保険が使われた事例の平均損害額が、遺品整理(残置物処理)費用で約29万円、原状回復費用で約49万円と公表されています。
このページは、相続した家の特殊清掃や片付けを頼みたい方向けです。ページ内で紹介する遺品整理のコンシェルジュの公式サイトが示す対応エリアは、関東の7都県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・群馬・栃木)、関西の6府県(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)、静岡県と、北海道の一部の市町村です。
相続放棄を考えている方は、処分や発注の前に確認してください
民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、単純承認をしたものとみなすと定めています(保存行為などは除く)。遺品の処分や清掃の発注がこれにあたるかは、条文からは分かりません。放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります(915条)。業者へ依頼する前に、家庭裁判所か弁護士・司法書士に確認してください。
費用を負担するのは誰か
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の注は、特殊清掃を「孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス」と説明しています。
民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と定めています。これは権利義務を一括して引き継ぐという一般的な定めで、特殊清掃の費用を誰が払うかを個別に決める条文ではありません。
実際にどうなるかは、建物の持ち主がだれだったかで分かれます。
相続放棄した場合
相続放棄に関する条文は次のとおりです。
| 条文 | 原文に書かれていること | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 915条 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純・限定承認か放棄をする。この期間は家庭裁判所で伸長できる。承認や放棄の前に、相続財産の調査ができる | 調査は認められているが、清掃や片付けが調査にあたるかは書かれていない |
| 921条 | 相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす。ただし、保存行為と、602条の期間を超えない賃貸は除く(1号)。3か月以内に限定承認か放棄をしなかったときも同じ(2号) | 清掃・片付け・遺品の処分が「処分」か「保存行為」かは、条文に書かれていない |
| 939条 | 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす | 放棄が認められたあとの効果。放棄の前の行為は別に判断される |
| 940条 | 放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならない | 保存義務の範囲に清掃が入るかは書かれていない。詳しくは相続放棄と管理義務 |
出典:e-Gov 法令検索(民法、令和8年6月24日施行版。2026年10月2日取得)。
裁判所の案内では、放棄の申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。費用や手順は相続放棄の費用と相続放棄を自分でやる方法で整理しています。
放棄が受理された人は939条により初めから相続人でなかったことになりますが、放棄の前に処分をした場合や、放棄の時に家を占有していた場合は、上の921条・940条が関わります。放棄をしたあとに自分の名前で業者と契約した場合の扱いは、条文からは分かりません。相続人が全員放棄したあとの建物の扱いは、相続財産清算人と不動産で整理しています。
賃貸住宅の場合(原状回復)
民法621条は、賃借人は賃借物を受け取ったあとに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた損耗と、経年変化を除く)がある場合に、賃貸借が終了したときはその損傷を原状に復する義務を負うと定めています。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるときは、この限りではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版、平成23年8月)は、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、損耗等を次の3つに分けて負担を整理しています。
| 区分 | ガイドラインの分類 | 費用を負担する側 |
|---|---|---|
| ①-A | 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化) | 賃貸人 |
| ①-B | 賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗) | 賃貸人 |
| ② | 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等 | 賃借人 |
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(2026年10月2日取得)。特約がある場合はその内容によります。
ただし、この173ページのガイドラインに、賃借人が亡くなった場合の特殊清掃の費用負担を述べた記載は見つかりませんでした。亡くなった状況が②にあたるかどうかも、ガイドラインからは分かりません。
日本少額短期保険協会は、入居者が加入する「入居者型」の孤独死保険を、被保険者である入居者の死亡事故によって遺族や保証人等に及んだ損害費用の補償と説明しています。賃貸の費用が遺族や保証人に及ぶことがある、という前提の保険商品です。敷金については、民法622条の2第2項が、賃借人が債務を履行しないとき、賃貸人は敷金をその債務の弁済に充てることができると定めています。
賃貸借契約の特約、保証人の有無、亡くなった状況で結論が変わるため、貸主や管理会社から請求を受けたときは、弁護士などに内容を確認してから対応してください。
売る・貸すときの告知
特殊清掃をした家を売る・貸すときの告知は、国土交通省の人の死の告知に関するガイドライン(令和3年10月)が、宅地建物取引業者の対応の目安を示しています。特殊清掃に関わる部分は次のとおりです。
| 場面 | ガイドラインの記載 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 自然死・日常生活の中の不慮の死で、特殊清掃等が行われていない | 賃貸借・売買とも、原則として告げなくてもよい | 特殊清掃等が行われた場合は、次の行へ |
| 自然死などでも、長期間人知れず放置され、特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた | 買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるため、告げなくてよい場合から外れる | 告げる場合は、発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因、特殊清掃等が行われた旨を告げる |
| 賃貸で、特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年が経過した後 | 特段の事情がない限り、原則として借主に告げなくてもよい。事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は除く | 売買にこの3年の区切りは示されていない |
| 買主・借主から問われた場合 | 経過した期間や死因に関わらず、調査で判明した点を告げる必要がある | 氏名・年齢・住所・具体的な死の態様などを告げる必要はない |
出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」4.告知について(2026年10月2日取得)。
このガイドラインは宅地建物取引業者の対応の目安で、売主個人の民法上の責任とは別に考える必要があります。期間の見方や売るときの注意は事故物件を売るときの告知義務はいつまでで整理しています。
公表されている費用の例
特殊清掃だけの料金を公表した公的な資料は、取得した範囲に見つかりませんでした。ここでは、公表されている近い項目の数字を原文のまま並べます。相場として一つの金額にまとめることはしません。
日本少額短期保険協会は、孤独死保険の保険金支払データから、賃貸住宅で孤独死が発生した場合の損害額を公表しています。
| 項目(平均損害額) | 累積データ(2015年4月〜2025年3月) | 2024年度の単年 |
|---|---|---|
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 294,131円 | 266,265円 |
| 原状回復費用 | 494,344円 | 610,507円 |
出典:日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月)P.17・P.22。異常値を除いた平均。
同じレポートの最大損害額は、遺品整理(残置物処理)費用が4,253,473円、原状回復費用が7,564,673円で、最小は1,080円と422円です。事例によって大きく開いています。レポートは、単年の原状回復費用が累積より高い理由を物価高騰による材料・工費等の影響が考えられると説明しています。特殊清掃は独立した項目ではなく、原状回復費用に含まれるかの記載もありません。また、対象は孤独死保険に加入していた賃貸住宅で、持ち家の相続とは条件が異なります。
次に、遺品整理のコンシェルジュの公式サイトが掲載している、片付けのご利用事例の費用目安です。特殊清掃の事例ではなく、遺品整理・生前整理・空き家片付けの事例です。
| 事例 | 費用目安(税込) | 作業人数・時間 |
|---|---|---|
| 物量多めの遺品整理(4LDK規模) | 250,000〜350,000円 | 10名・3日間 |
| マンションの生前整理 | 150,000〜250,000円 | 7名・2日間 |
| 短期間の遺品整理(1K規模) | 50,000〜100,000円 | 2名・1日間 |
| 立ち会いなしの空き家片付け | 100,000〜150,000円 | 5名・1日半 |
出典:遺品整理のコンシェルジュ公式サイトのご利用事例(2026年10月2日取得)。同サイトは「料金や作業内容は、間取りだけで決まるものではありません」と注意しています。
国民生活センターが2013年4月から2018年6月30日までのPIO-NET登録分522件を分析した結果では、遺品整理サービスの契約金額の平均は約42万円、実際に支払った金額の平均は約30万円でした。特殊清掃に限った数字ではありません。
業者に頼む前に
国民生活センターは、遺品整理サービスの契約トラブルとして、見積もりの際にせかされて契約した、高額なキャンセル料を請求された、作業当日に予定外の追加料金を請求された、処分しないよう頼んだ物を処分された、という相談事例を挙げています。注意点として次の5つを示しています。
- 複数社から見積もりを取るなど、事業者の選定は慎重にする。見積もりにあたって出張料や見積料が発生するかも、呼ぶ前に確認する
- 作業内容と費用を明確に出してもらい、見積書の内容を十分に確認する
- 料金、キャンセル料、具体的な作業内容を事前に確認する
- 残しておく遺品と処分する遺品を明確に分ける
- トラブルになった場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する
同じ資料は、家庭の遺品整理で捨てることにしたごみは一般廃棄物にあたり、運搬や処分は市町村から委託を受けた事業者か、市町村長から一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者でなければできないとしています。この資料は遺品整理サービスを対象にしたもので、特殊清掃に絞った注意喚起は取得できませんでした。
遺品整理のコンシェルジュは、条件に合う業者3社を紹介するサービスです。公式サイトのサービス一覧に特殊清掃があり、見積もりの申込みフォームのサービス欄にも「その他(特殊清掃)」の選択肢があります。ただし、特殊清掃の料金や対応できる業者は公式サイトに載っていません。利用規約は、利用者と提携業者との契約の成否や履行、提供されるサービスの内容や質等を保証しないと定めているため、特殊清掃に対応できるかと料金は、紹介された業者の見積もりで確認します。残った家財の片付けの流れは空き家の片付けは誰に頼むで整理しています。
よくある質問
特殊清掃の費用は、相続人が必ず払わなければなりませんか?
取得した民法の条文に、特殊清掃の費用の負担者を直接定めた文はありません。896条は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。賃貸住宅で賃借人が負っていた原状回復義務のように、被相続人に義務があった場合は、相続人へ承継される可能性があります。自分の家として相続した建物の清掃を業者に頼む場合は、契約をした人が業者との契約の当事者になります。個別の事情で結論が変わるため、弁護士や司法書士、管理会社に確認してください。
相続放棄をすれば、特殊清掃の費用は払わなくてよいですか?
民法939条は、相続の放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなすと定めています。ただし、放棄の前に相続財産の全部または一部を処分すると、921条1号により単純承認をしたものとみなされることがあります。また、940条は、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している人に、次の管理者へ引き渡すまでの保存義務を定めています。放棄した人が自分の名前で業者と契約した場合の扱いは、条文からは分かりません。
相続放棄を考えています。先に特殊清掃や遺品の片付けを頼んでもよいですか?
頼む前に、家庭裁判所か弁護士・司法書士に確認してください。民法921条1号は、相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定め、保存行為などは除いています。清掃や片付けがどちらにあたるかは条文に書かれていません。放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内で、期間は利害関係人などの請求により家庭裁判所で伸長できます(915条)。相続財産の調査は、承認や放棄の前にすることができます(915条2項)。
賃貸住宅で入居者が亡くなったとき、特殊清掃の費用は誰が払いますか?
民法621条は、賃借人は賃借物に生じた損傷(通常の使用による損耗と経年変化を除く)を、賃貸借の終了時に原状に復する義務を負うと定め、賃借人の責めに帰することができない事由による場合を除いています。国交省のガイドラインは、経年変化と通常損耗は賃貸人が、故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗は賃借人が負担するという考え方を示しています。ただし、ガイドラインに賃借人の死亡後の特殊清掃の費用負担を述べた記載は見つかりませんでした。賃貸借契約の内容や保証人の有無で変わるため、管理会社や貸主、弁護士に確認してください。
特殊清掃の費用の相場はいくらですか?
特殊清掃だけの料金を公表した公的な資料は、取得した範囲に見つかりませんでした。日本少額短期保険協会の第10回孤独死現状レポートは、賃貸住宅で孤独死保険が使われた事例の平均損害額を、遺品整理(残置物処理)費用で294,131円、原状回復費用で494,344円(累積データ、異常値を除く)と公表しています。最大は遺品整理(残置物処理)費用で4,253,473円、原状回復費用で7,564,673円と、事例によって大きく開いています。レポートは特殊清掃を独立した項目にしていません。
特殊清掃をした家を売るときは、買主に伝える必要がありますか?
国交省の人の死の告知に関するガイドラインは、自然死などでも、長期間人知れず放置されて特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるとして、告げなくてよい場合から外しています。賃貸は、特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年が経過した後は、原則として借主に告げなくてもよいとしています。売買の取引にこの3年の区切りは示されていません。売主の責任は民法の定めにもよるため、詳しくは事故物件を売るときの告知義務の記事で整理しています。
参考・出典
- e-Gov 法令検索 民法
- 裁判所 相続の放棄の申述
- 国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のダウンロード
- 国土交通省 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(PDF)
- 国民生活センター こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル
- 日本少額短期保険協会 第10回 孤独死現状レポート(PDF)
- 遺品整理のコンシェルジュ 公式サイト
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案の法的な結論を示すものではありません。相続放棄や賃貸の費用負担の判断は、家庭裁判所、弁護士、司法書士などの専門家にご確認ください。