公正証書遺言の費用はいくら?手数料の表と、5,000万円を配偶者と子に分ける計算例
公正証書遺言の手数料は、財産を受ける人ごとに「目的の価額」の表を当てはめて合算し、全体が1億円以下なら遺言加算13,000円が付きます(公証人手数料令9条・19条、日本公証人連合会)。たとえば5,000万円を配偶者3,000万円・子2,000万円に分ける遺言なら、26,000円+26,000円+13,000円で65,000円です。このほかに、正本・謄本の交付、公正証書の枚数による加算、出張や病床での作成にかかる費用があります。法務局に自筆証書遺言を預ける場合の保管の申請は3,900円です。
手数料の表と計算のしかた
公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で定められています。遺言の目的である財産の価額に応じた手数料は、同令の別表で次のとおりです(e-Gov法令検索の現行条文)。
| 遺言の目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超 200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超 500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円超 3億円以下 | 49,000円に、超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
| 3億円超 10億円以下 | 109,000円に、超過額5,000万円までごとに13,000円を加算 |
| 10億円超 | 291,000円に、超過額5,000万円までごとに9,000円を加算 |
出典:公証人手数料令 別表(第9条・第17条・第19条関係)。
日本公証人連合会は、具体的な手数料の出し方を次のように案内しています。
- 財産の相続または遺贈を受ける人ごとに財産の価額を算出し、表に当てはめて手数料を求め、それらを合算して公正証書全体の手数料とする。
- 全体の財産が1億円以下のときは、合算した額に遺言加算13,000円が付く。公証人手数料令19条1項は、遺言の目的の価額が1億円を超えるときは加算しないと定めています。
- 価額は、公証人が公正証書の作成に着手した時の価額による(同令10条)。
受け取る人が増えるほど、表を当てはめる回数が増えます。同じ5,000万円でも、1人に渡す遺言なら33,000円+13,000円=46,000円、2人に分ける遺言は次の節のように65,000円です(いずれも手計算)。
計算例:5,000万円を配偶者と子に分ける
財産が5,000万円で、配偶者に3,000万円、子に2,000万円を渡す遺言を、別表に当てはめて計算します。
| 項目 | 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 3,000万円(1,000万円超3,000万円以下) | 26,000円 |
| 子 | 2,000万円(1,000万円超3,000万円以下) | 26,000円 |
| 小計 | 全体で5,000万円 | 52,000円 |
| 遺言加算 | 全体が1億円以下 | 13,000円 |
| 手数料の合計 | ― | 65,000円 |
3,000万円ちょうどは「3,000万円以下」の区分に入ります。正本・謄本の交付、公正証書の枚数による加算、出張・病床の費用は含みません。
正本と謄本を電子データで各1通受け取る場合は、各2,500円で5,000円が加わり、70,000円になります。書面で受け取る場合は1枚300円で、枚数は文案の長さで決まります。日本公証人連合会は、遺言公正証書の作成時に正本1通と謄本1通の交付を受けるのが通常と案内しています。
手数料のほかにかかる費用と証人
手数料の表で決まる額のほかに、次の費用が加わることがあります。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 遺言加算 | 13,000円(遺言の目的の価額が1億円を超えるときは加算なし) | 手数料令19条1項 |
| 枚数による加算 | 公正証書が4枚(横書は3枚)を超えると、超える1枚ごとに300円。電磁的記録で作成する場合は、出力した書面が3枚を超える1枚ごとに300円 | 手数料令25条 |
| 正本・謄本(書面) | 1枚につき300円 | 手数料令40条1項 |
| 正本・謄本(電子データ) | 各2,500円 | 手数料令40条の2、日本公証人連合会 |
| 病床での作成 | 手数料の額(遺言加算・枚数加算の前)の5割を加算 | 手数料令32条 |
| 出張の日当 | 1日2万円(4時間以内は1万円) | 手数料令43条1号 |
| 出張の旅費 | 交通に要する実費(宿泊が必要な場合は宿泊費相当額も) | 手数料令43条2号 |
病床での作成は、上の計算例なら小計52,000円の5割=26,000円が加わります(手計算)。出張先として、日本公証人連合会は自宅、老人ホーム、介護施設、病院などを挙げています。
支払いの時期
公証人は、事務の取扱いを完了した後でなければ手数料等の支払いを請求できません(手数料令4条1項)。ただし、概算額の予納を求めることができ、予納しないと嘱託を拒まれることがあります(同令6条)。
証人の費用
公正証書遺言には、証人2名の立会いが必要です(民法969条)。公証人手数料令に、証人への報酬の定めはありません。日本公証人連合会の案内では、証人は遺言者が手配でき、未成年者、推定相続人、遺贈を受ける人、その配偶者や直系血族等は証人になれません。適当な人が見当たらない場合は公証役場で紹介することも可能とされていますが、紹介を受けた場合の費用は、確認した原文に書かれていません。
作成の流れと必要書類
日本公証人連合会の案内では、公正証書遺言の作成は通常、次のように進みます。相談は無料です。
- 相談・依頼:士業者や銀行等を介さず、遺言者やその親族等が公証役場に直接、電話やメール、予約のうえの来訪で依頼してもよい。
- メモと資料の提出:財産を誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいかのメモと、必要な資料を提出する。
- 文案の作成と修正:公証人が遺言公正証書の案を作り、メール等で示す。修正したい箇所を伝えると、公証人が修正して確定する。
- 作成日時の確定:遺言者が公証役場に出向くか、公証人が自宅や病院等に出張する日時を決める。
- 遺言当日:遺言者が証人2名の前で内容を口頭で告げ、公証人が読み聞かせまたは閲覧で確認する。間違いがなければ、遺言者と証人2名が電子サインをし、公証人が電子署名して完成する。
準備する資料として、日本公証人連合会は次を挙げています。事案によっては、ほかにも資料が必要になる場合があります。
- 遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書(運転免許証、旅券、マイナンバーカードなど、官公署発行の顔写真付き身分証明書でも本人確認ができる)
- 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
- 財産を相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票など住所の記載のあるもの。法人の場合は登記事項証明書または代表者事項証明書
- 不動産がある場合は、登記事項証明書と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
- 預貯金等がある場合は、通帳またはそのコピー
- 証人を用意する場合は、証人予定者の氏名、住所、生年月日のメモ
固定資産税評価額の調べ方は固定資産税評価額の調べ方で説明しています。
法務局保管の自筆証書遺言との比較
自筆証書遺言は、法務局(遺言書保管所)に預ける制度があります。費用と手間の違いを、日本公証人連合会と法務省の案内から並べると次のとおりです。
| 項目 | 公正証書遺言 | 法務局に保管した自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 作るときの費用 | 手数料令の表で決まる。上の例(5,000万円を2人に)で65,000円 | 保管の申請1件3,900円(収入印紙)。保管年数で増えない |
| 全文の手書き | 不要。手書きするのは署名だけで、署名できない場合も公証人が代わる措置を取れる | 必要。財産目録以外の全文を自書し、法務省令の様式で無封にする |
| 証人 | 2名の立会いが必要 | 不要 |
| 出張 | 公証人が自宅・病院・施設などに出張できる(日当・旅費がかかる) | 遺言者本人が予約のうえ保管所に出向く。法務局の職員の出張はない |
| 家庭裁判所の検認 | 不要 | 不要 |
| 亡くなったあと | 通常、作成時に受け取った正本・謄本で遺言を執行する | 相続人等が遺言書情報証明書(1通1,400円)の交付を請求して使う |
| 有効性 | 公証人が関与し、日本公証人連合会は方式の不備で無効になるおそれがないと案内している | 制度は、保管された遺言書の有効性を保証しない(法務省) |
出典:日本公証人連合会「遺言」、法務省「自筆証書遺言書保管制度」、公証人手数料令。
どちらも検認は不要です。検認が必要になる遺言の種類や、申立ての費用と必要書類は遺言書の検認とはで説明しています。
専門家に頼む場合の報酬
公証人手数料令が定めているのは、公証人が受ける手数料、日当、旅費などです(同令1条)。司法書士、行政書士、税理士などの専門家に相談や書類の準備を頼む場合、その報酬は、これまでに見た公証人の手数料とは別にかかります。報酬の額は、確認した原文に書かれていないため、金額は載せていません。依頼する前に見積もりで確認してください。
日本公証人連合会は、専門家を介さず、遺言者やその親族等が公証役場に直接依頼することもできると案内しています。遺言の内容の相談は、公証人が無料で受けています。
よくある質問
公正証書遺言の費用はいくらですか?
公証人手数料令の別表では、遺言の目的の価額が50万円以下なら3,000円、1,000万円超3,000万円以下なら26,000円、3,000万円超5,000万円以下なら33,000円と、価額ごとに定められています。日本公証人連合会の案内では、財産の相続または遺贈を受ける人ごとに価額を算出して手数料を求め、合算します。全体が1億円以下のときは、これに遺言加算13,000円が付きます。
5,000万円を配偶者3,000万円・子2,000万円に分ける場合の手数料は?
配偶者3,000万円は26,000円、子2,000万円も26,000円で、合算すると52,000円です。全体の価額が1億円以下のため遺言加算13,000円が付き、手数料は65,000円になります。正本・謄本の交付、公正証書の枚数による加算、出張の日当・旅費は含みません。
証人の費用はかかりますか?
公証人手数料令に、証人への報酬の定めはありません。日本公証人連合会の案内では、証人2名は遺言者が手配でき、未成年者、推定相続人、遺贈を受ける人、その配偶者や直系血族などは証人になれません。適当な人がいない場合は公証役場が紹介することも可能とされていますが、紹介を受けた場合の費用は、確認した原文に書かれていません。
自宅や病院に公証人に来てもらうと、いくら増えますか?
出張には、公証人の日当が1日2万円(4時間以内は1万円)と、交通に要する実費の旅費がかかります(公証人手数料令43条)。作成が嘱託人の病床でされたときは、遺言加算などの加算前の手数料の額に5割が加算されます(同令32条)。
公証人への相談は有料ですか?
日本公証人連合会の案内では、公正証書遺言の相談はすべて無料です。手数料がかかるのは、公正証書を作成するときです。
司法書士や行政書士を通さず、自分で公証役場に頼めますか?
日本公証人連合会は、士業者や銀行等を介さず、遺言者やその親族等が公証役場に直接、遺言の相談や作成の依頼をしても差し支えないと案内しています。士業者に頼む場合の報酬額は、確認した原文に書かれていません。