家族信託の費用はいくら?公証人手数料と登録免許税の計算例、司法書士報酬のアンケート平均
家族信託の費用は、①信託契約を公正証書にする公証人手数料、②不動産を信託するときの登録免許税、③司法書士などの報酬の3つです。評価額3,000万円の自宅(土地2,000万円・建物1,000万円)と預貯金1,000万円を信託する例では、公証人手数料が46,000円、登録免許税が100,000円です。司法書士報酬は、日本司法書士会連合会のアンケート(令和6年3月)で、契約書の案文作成の支援が平均206,175円、信託の登記の申請代理まで頼むと平均327,576円でした。
費用は3つに分かれる
家族信託(民事信託)は、親(委託者)が子(受託者)に財産の管理や処分を任せる契約です(信託法3条1号の信託契約)。契約を結ぶこと自体に決まった手数料があるわけではなく、かかる費用は次の3つに分かれます。
| 費用 | 決まり方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 公証人手数料 | 信託契約を公正証書にする場合。信託財産の価額に応じた別表の額に、1億円以下なら13,000円を加算 | 公証人手数料令9条・22条の2 |
| 登録免許税 | 不動産を信託する場合。信託の登記は、土地が評価額の0.3%、建物が0.4% | 登録免許税法別表第一、租税特別措置法72条 |
| 司法書士などの報酬 | 依頼先との契約で決まる。基準はなく、全国アンケートの平均が公表されている | 日本司法書士会連合会 |
信託契約を公正証書にしなければならない、という規定は確認した原文にありません。日本司法書士会連合会は、公正証書で作成することが推奨されるとしています。
計算例:自宅3,000万円と預貯金1,000万円を信託する
日本司法書士会連合会のアンケートの設例に合わせて、固定資産税評価額の合計が3,000万円の自宅の土地建物(このページでは、土地2,000万円・建物1,000万円とします)と、預貯金1,000万円を信託財産とし、子を受託者にする場合を計算します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 公証人手数料 | 信託財産4,000万円は「3,000万円超5,000万円以下」で33,000円。これに13,000円を加算 | 46,000円 |
| 登録免許税(土地) | 2,000万円×0.3% | 60,000円 |
| 登録免許税(建物) | 1,000万円×0.4% | 40,000円 |
| 小計 | 法令で額が決まる部分 | 146,000円 |
| 司法書士報酬 | 契約書の案文作成から信託登記の申請代理まで頼んだ場合のアンケート平均 | 327,576円 |
| 合計のイメージ | ― | 473,576円 |
公証人手数料は、信託財産の価額をそのまま別表に当てはめた概算です。原文には信託の「目的の価額」の数え方の明記を確認できなかったため、実際の額は公証役場に確認してください。正本・謄本の交付、公正証書の枚数による加算、出張の日当・旅費は含みません。司法書士報酬は平均値で、事案によって変わります。
委託者から受託者へ自宅の所有権を移す登記には、登録免許税が課されません(登録免許税法7条1項1号)。課されるのは、信託の登記の分です。
実家を売れるようにする目的なら、成年後見とどう違うか
親の実家を将来売りたい子にとって、家族信託の目的は、親の判断能力が十分でなくなったあとも不動産を動かせるようにしておくことです。同じ目的で使われる成年後見と、費用や手続の違いを並べます。
| 項目 | 家族信託 | 成年後見 |
|---|---|---|
| 始め方 | 委託者と受託者が信託契約を結ぶ(信託法3条1号) | 家庭裁判所に申し立てる。申立てから審判まではおおむね1〜2か月程度 |
| 管理する人 | 契約で決めた受託者(例:子) | 家庭裁判所が選ぶ。候補者が必ず選ばれるわけではなく、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもある |
| 不動産を売るとき | 受託者は信託財産を処分する権限を持つ。ただし信託行為で制限できる(信託法26条) | 居住用の建物やその敷地を売るには、家庭裁判所の許可が必要(民法859条の3) |
| 費用 | このページの3つ | 後見人への報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払う |
| 終わるとき | 信託の目的を達成したときなど、信託法163条の終了事由に当たるときに終わる | 本人の能力が回復するか、本人が亡くなるまで続き、家族の意思でやめることはできない |
出典:信託法、民法、裁判所「後見ポータルサイト」。
信託した不動産を実際に売るときは、買主への所有権移転の登記に加えて、信託の抹消の登記が必要です。信託法14条は、登記しなければ権利を第三者に対抗できない財産は、信託の登記をしなければ信託財産であることを第三者に対抗できないと定めています。
公証人手数料の表と加算
公証人手数料令の別表で、法律行為の目的の価額ごとの手数料は次のとおりです(e-Gov法令検索の現行条文)。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超 200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超 500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円超 3億円以下 | 49,000円に、超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
出典:公証人手数料令 別表(第9条関係)。3億円を超える区分は省略しています。
信託の公正証書には、この額に13,000円が加算されます。信託財産の価額が1億円を超えるときは加算されません(同令22条の2)。日本公証人連合会の手数料の案内にも、信託財産の価額が1億円以下の場合は1万3000円が加算されると書かれています。
- 枚数による加算:公正証書が4枚(横書は3枚)を超えると、超える1枚ごとに300円(同令25条)。
- 正本・謄本:書面は1枚につき300円、電子データは2,500円(同令40条・40条の2)。
- 出張:公証人に自宅や施設に来てもらう場合は、日当が1日2万円(4時間以内は1万円)、旅費が交通の実費(同令43条)。
登録免許税と、不動産取得税・贈与税
不動産を信託すると、受託者への所有権の移転と、信託の登記の2つの登記をします(日本司法書士会連合会)。登録免許税がかかるのは信託の登記で、税率は次のとおりです。
| 登記 | 税率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 土地の所有権の信託の登記 | 評価額の0.3%。令和11年3月31日までの登記に限る | 租税特別措置法72条1項2号 |
| 建物の所有権の信託の登記 | 評価額の0.4% | 登録免許税法別表第一 |
| 委託者から受託者への所有権の移転の登記 | 課されない | 登録免許税法7条1項1号 |
土地の0.3%の軽減は令和11年3月31日までです。軽減がなければ、登録免許税法の本則の税率(0.4%)です。
課税の基になる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎にできます(登録免許税法附則7条)。評価額の調べ方は固定資産税評価額の調べ方で説明しています。
不動産取得税
委託者から受託者に信託財産を移す場合の不動産の取得には、不動産取得税を課すことができないと定められています(地方税法73条の7第3号。同条に除外の定めがあるため、個別の事案は都道府県税事務所に確認してください)。
贈与税
信託の効力が生じたときに、適正な対価を負担せずに受益者になる人がいる場合、その人は委託者から信託の権利を贈与で取得したものとみなされます(相続税法9条の2第1項)。誰を受益者にするかで課税関係が変わるため、契約の前に税理士か税務署に確認してください。
司法書士報酬のアンケート平均と信託口口座
日本司法書士会連合会は、全国の司法書士5,558名に令和6年3月にアンケートをとり、民事信託の報酬を公表しています。設例は、固定資産評価額の合計が3,000万円の自宅の土地建物と預貯金1,000万円を信託財産とし、子を受託者とする場合です。金額はすべて消費税込みで、下の行ほど、上の行の業務に加えて頼んだ場合の合計額です。
| 頼む範囲 | 平均額 | 有効回答数 |
|---|---|---|
| 信託契約書の案文作成の支援 | 206,175円 | 126 |
| 上に加えて、公正証書の作成に同行 | 246,819円 | 113 |
| 上に加えて、信託口口座の開設支援 | 277,196円 | 107 |
| 上に加えて、所有権移転と信託の登記の申請代理 | 327,576円 | 127 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(令和6年3月)民事信託-1〜4。公証人手数料と登録免許税は含みません。
- 不動産の調査費用(登記記録の確認、公図や住宅地図での漏れの調査など)は別にかかります。
- 委託者が施設に入所していて司法書士が複数回面談する場合や、公証役場が遠方の場合は、日当や交通費が加算されることがあります。
- 登記の手数料は、申請件数、固定資産評価額、信託目録に記載する情報量や難易度などで変わります。前提として住所変更登記や抵当権の抹消登記が必要な場合もあります。
信託口口座
受託者が管理する信託財産の金銭は、信託専用の口座(信託口口座)で管理することが推奨されています。金融機関に契約条項の事前審査を受ける必要がある場合もあり、複数の金融機関に打診すると費用が増えることがあります。口座を開く金融機関に払う手数料の額は、確認した原文に書かれていないため、載せていません。
信託した不動産を売るとき
同じアンケートには、受託者が信託財産の評価額2,000万円の土地を売却した設例があります。買主への所有権移転の登記と信託の抹消の登記を頼んだ場合の司法書士報酬は、平均77,478円(有効回答232)です。
誰が払うか・経費になるか
登録免許税は、登記等を受ける者が納める義務を負います(登録免許税法3条)。ただし、家族の誰が最終的に負担するかを決める規定は、確認した原文にはありません。信託契約を結ぶ前に、委託者(親)、受託者(子)、受益者の間で決めておきます。
信託の費用が不動産所得などの必要経費になるかどうかは、確認した原文からは判断できなかったため、ここには書いていません。税理士か所轄の税務署にご確認ください。
よくある質問
家族信託の費用の相場はいくらですか?
費用は大きく3つです。①信託契約を公正証書にする公証人手数料(信託財産の価額に応じた別表の額に、1億円以下なら13,000円が加算されます)、②不動産を信託する場合の登録免許税(土地は評価額の0.3%、建物は0.4%)、③司法書士などの報酬です。日本司法書士会連合会のアンケート(令和6年3月)では、評価額3,000万円の自宅と預貯金1,000万円を信託する設例で、契約書の案文作成の支援が平均206,175円、信託の登記の申請代理まで頼むと平均327,576円でした。
家族信託を専門家に頼まず自分でやると、いくら安くなりますか?
公証人手数料と登録免許税は法令で額が決まるため、専門家に頼んでも頼まなくても同じです。変わるのは司法書士などの報酬の部分で、アンケートでは頼む範囲によって平均206,175円から327,576円でした。どこまで自分で進められるかは、確認した原文には書かれていません。公証役場や法務局に相談してください。
家族信託の費用が高いと言われるのはなぜですか?
公証人手数料と登録免許税に加えて、司法書士などの報酬が別にかかるためです。アンケートの平均額は、契約書の案文作成の支援だけで206,175円、公正証書の作成に同行すると246,819円、信託口口座の開設支援まで加えると277,196円、信託の登記の申請代理まで加えると327,576円と、頼む範囲が広がるほど増えます。公証人手数料と登録免許税は、これとは別に払います。
家族信託の費用は経費にできますか?
信託の費用が不動産所得などの必要経費になるかどうかは、確認した原文からは判断できなかったため、このページでは書いていません。税理士か所轄の税務署にご確認ください。
信託口口座を銀行で開くと、いくらかかりますか?
金融機関に支払う手数料の額は、確認した原文に書かれていません。日本司法書士会連合会のアンケートでは、口座の開設支援を頼んだ場合の司法書士報酬が平均277,196円(契約書の案文作成と公正証書の作成同行を含む合計)でした。金融機関に契約条項の事前審査を受ける必要があったり、複数の金融機関に打診したりすると、費用が増えることがあるとされています。
家族信託の費用は誰が払うのですか?
登録免許税は、登記等を受ける者が納める義務を負うと登録免許税法3条に定められています。家族の誰が最終的に負担するかを決める規定は、確認した原文にはありません。信託契約を結ぶ前に、家族で決めておく必要があります。
信託した実家を売るときにも、費用はかかりますか?
信託した不動産を受託者が売ると、買主への所有権移転の登記のほかに、信託の抹消の登記が必要です。日本司法書士会連合会のアンケートでは、評価額2,000万円の土地を受託者が売却した設例で、この2つの登記の司法書士報酬は平均77,478円(有効回答232)でした。登録免許税などは別にかかります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 公証人手数料令(第9条、第22条の2、第25条、第40条、第40条の2、第43条、別表)
- 日本公証人連合会 手数料
- e-Gov法令検索 登録免許税法(第3条、第7条、別表第一、附則第7条)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第72条)
- e-Gov法令検索 地方税法(第73条の7)
- e-Gov法令検索 相続税法(第9条の2)
- e-Gov法令検索 信託法(第3条、第14条、第26条、第163条)
- e-Gov法令検索 民法(第859条の3)
- 日本司法書士会連合会 司法書士の報酬について(報酬に関するアンケート 令和6年3月)
- 裁判所 成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ