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生産緑地を相続したら|相続税の評価(主たる従事者の死亡は95%)・納税猶予で営農を続けるか買取りの申出か・特定生産緑地・宅地にして売る流れ・固定資産税
生産緑地を相続したときの道は、農業を続けるか、買取りの申出をして制限を外すかの2つです。相続税の評価は、主たる従事者が亡くなったときは生産緑地でないものとして評価した価額の95%で、続けるなら相続税の納税猶予(租税特別措置法70条の6)、やめるなら市町村への買取りの申出(生産緑地法10条)です。申出をすると納税猶予は受けられず、買い取られなければ申出から3か月で建築などの制限が外れます。申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月なので、先にどちらにするかを決めます。
| 場面 | できること・扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続税の評価 | 生産緑地でないものとして評価した価額から減額。主たる従事者の死亡は95% | 財産評価基本通達40-3 |
| 農業を続ける | 農業投資価格を超える部分の相続税の納税を猶予。農業相続人の死亡などで免除 | 租税特別措置法70条の6 |
| 農業をやめる | 主たる従事者の死亡などで、市町村長に時価での買取りを申し出られる | 生産緑地法10条 |
| 申出のあと | 1か月以内に買取りの可否を通知。3か月で所有権が移らなければ制限が外れる | 生産緑地法12条・14条 |
| 固定資産税 | 制限が外れると宅地並みの評価・課税 | 国土交通省の資料 |
国税庁の通達・案内、国土交通省の資料、e-Gov(生産緑地法・租税特別措置法・相続税法)から作成(2026年10月3日取得)。
自分はどの場合に当てはまるか
- 農業をしていた親が亡くなり、生産緑地を相続した:節2に評価、節3と節4に続ける場合とやめる場合を書きました。
- 自分も農業を続ける:節3の納税猶予が使えるかが分かれ目です。申告期限までに農業を始め、農地の遺産分割を終えます。
- 農業はしない、売りたい:節4の買取りの申出から、節5の売るまでの流れへ進みます。納税猶予は受けられなくなります。
- 特定生産緑地かどうか分からない:節4の表に、指定のある場合とない場合の違いを書きました。
- 固定資産税が上がるのか心配:節6の表にまとめました。
- 農業委員会への届出が必要か知りたい:相続した農地は、農地法3条の3の届出が別に要ります。農地を相続したら農業委員会への届出が必要にあります。
相続税の評価はいくら減るか
生産緑地は、建物の新築や宅地の造成が市町村長の許可制になる代わりに、相続税の評価が減ります。財産評価基本通達40-3は、その生産緑地が生産緑地でないものとして評価した価額に、次の割合を掛けた金額を引く、と定めています。生産緑地でないものとして評価した市街地農地の価額は、通達40により、宅地とした場合の価額から造成費を引く方法か、固定資産税評価額に倍率を掛ける方法です。
| 相続開始のときの状態 | 引く割合 | 根拠 |
|---|---|---|
| 買取りの申出ができる(主たる従事者の死亡、指定から30年経過など) | 100分の5(95%で評価) | 通達40-3(2)・質疑応答事例 |
| 申出ができる日まで5年以下 | 100分の10 | 通達40-3(1) |
| 5年を超え10年以下/10年を超え15年以下 | 100分の15/100分の20 | 通達40-3(1) |
| 15年を超え20年以下/20年を超え25年以下/25年を超え30年以下 | 100分の25/100分の30/100分の35 | 通達40-3(1) |
| 買取りの申出から3か月を経過した | 減額なし(生産緑地でないものとして評価) | 通達40-3の括弧書き |
国税庁「財産評価基本通達」40-3・40、質疑応答事例「生産緑地の評価」から作成(2026年10月3日取得)。
評価の対象になる農地の面積や、宅地とした場合の価額は、土地ごとに違います。路線価・倍率表は国税庁のサイトで確認でき、評価に迷うときは税務署か、農地の相続税に詳しい税理士に相談してください。
亡くなった人が主たる従事者でなかったときは、課税時期に買取りの申出ができるとは限りません。その場合は、表のとおり申出ができる日までの期間で割合が変わります。主たる従事者に誰が当たるかは、節4と質問に書きました。
農業を続ける:相続税の納税猶予
租税特別措置法70条の6は、農業を営んでいた人の農業相続人が農地を相続したとき、一定の要件のもとで、農業投資価格を超える部分に対応する相続税の納税を猶予する、としています。農業投資価格は、国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で都道府県ごとに確認できます。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 亡くなった人 | 死亡の日まで農業を営んでいた人など | 国税庁の案内 |
| 農業相続人 | 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も続けると認められる人。農業委員会の証明が要る | 国税庁の案内 |
| 農地 | 申告期限までに遺産分割された農地。未分割の農地は、猶予を受ける旨を申告書に書けない | 70条の6第5項 |
| 手続 | 期限内の申告書に適用を受ける旨を書き、税額と利子税に見合う担保を出す | 70条の6第1項 |
| 猶予の間 | 申告期限から3年目ごとに継続届出書を出し、農業を続ける | 国税庁の案内 |
| 免除 | 農業相続人の死亡など。都市営農農地等を持つ人の猶予期限は死亡の日 | 70条の6第6項1号 |
e-Gov 租税特別措置法70条の6、国税庁タックスアンサーNo.4147・「相続税の申告のしかた」(令和8年分)から作成(2026年10月3日取得)。
猶予が打ち切られるとき
- 農地を手放した、農業をやめた:譲渡・贈与・転用、賃借権などの設定、耕作の放棄、農業経営の廃止で、猶予された税額と利子税を納めます。特例農地等の面積の20%以下の譲渡等なら、その割合に応じた分です。
- 買取りの申出をした:都市営農農地等に生産緑地法の買取りの申出をすると、申出をした農地に対応する相続税を、申出の日の翌日から2か月を経過する日までに納めます(70条の6第8項1号イ)。
- 継続届出書を出さなかった:猶予が打ち切られます。
- 利子税:年3.6%です(70条の6第40項)。利子税特例基準割合が7.3%に満たない年は、国税庁の案内の算式で低くなります。
農地を人に貸す場合でも、都市農地の貸借の円滑化に関する法律に基づく認定都市農地貸付けや、特定農地貸付けなど、国税庁の案内にある特定貸付け等であれば、猶予は続きます。猶予の適用を受けるには相続税の申告書に適用を受ける旨を書く手続が要り、申告書の作成を税理士に頼む方法もあります。
農業をやめる:買取りの申出と特定生産緑地
買取りの申出ができるとき
| 場面 | 申出 | 根拠 |
|---|---|---|
| 告示から30年(申出基準日)を過ぎた | いつでもできる | 生産緑地法10条1項 |
| 主たる従事者が死亡した、または農林漁業に従事できない故障になった | できる(30年以内でも) | 生産緑地法10条2項 |
| 特定生産緑地に指定された | 指定期限日(申出基準日から10年)以後にできる | 生産緑地法10条の5 |
| 上のどれにも当てはまらないが、疾病等で農林漁業に従事するのが難しい | 買取りを申し出られる | 生産緑地法15条 |
e-Gov 生産緑地法10条・10条の5・15条、生産緑地法施行規則3条・5条から作成(2026年10月3日取得)。
「故障」には、両眼の失明や精神の著しい障害など、省令5条に挙げられた障害のほか、1年以上の入院などで市町村長が認定したものがあります。主たる従事者に当たる人には、申出の日に65歳未満なら年間従事日数の8割以上、65歳以上なら7割以上従事している人も含まれます(施行規則3条)。
自治体の運用は窓口で確認してください。京都市の案内では、主たる従事者の死亡を理由に申し出るときは、その人が従事していたすべての生産緑地を申し出るか、営農を続ける面積を決めたうえで残りを申し出ます。残した生産緑地は同じ理由では申し出られません。
特定生産緑地かどうか
- 特定生産緑地:市町村長が、申出基準日までに指定します。指定されると、買取りの申出ができる時期が10年延び(10年ごとに延長できます)、固定資産税は農地評価・農地課税のまま、相続税の納税猶予も受けられます(国土交通省の手引き)。
- 指定されていない:特定生産緑地の指定は告示から30年を経過するまでに行うもので、過ぎてからは指定できません。30年を過ぎた生産緑地はいつでも申出ができますが、次の相続で納税猶予が受けられません。
- 確認の方法:市町村の都市計画の窓口で、相続した生産緑地が特定生産緑地かどうか、申出基準日がいつかを聞いてください。
宅地にして売るときの流れ
| 順番 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 買取りの申出 | 市町村長に、省令の様式の書面で時価での買取りを申し出る。抵当権などがあれば、権利を消滅させる旨の書面を付ける | 生産緑地法10条1項 |
| 2. 市町村の通知 | 申出から1か月以内に、買い取る旨か買い取らない旨を書面で通知 | 生産緑地法12条1項 |
| 3. あっせん | 買い取らない旨を通知したときは、農林漁業を希望する人が取得できるようあっせんに努める | 生産緑地法13条 |
| 4. 制限の解除 | 申出から3か月以内に所有権が移らなければ、建築や造成の制限が外れる | 生産緑地法14条 |
| 5. 農地の転用 | 市街化区域内の農地は、許可ではなく農業委員会への届出で転用できる | 農地法5条1項6号 |
e-Gov 生産緑地法10条・12条・13条・14条、農地法5条から作成(2026年10月3日取得)。
- 申告期限との関係:相続税の申告書は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。納税猶予を使わずに売って納税するなら、買取りの通知まで1か月、制限の解除まで申出から3か月かかる点を見込み、早めに申し出ます。
- 相続した土地を売ったときの所得税:相続税を払った人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ると、相続税額の一部を取得費に加算できます(国税庁タックスアンサーNo.3267)。
- 農地のまま売るとき:所有権を移すには農地法3条の農業委員会の許可が要ります。農地の売却と転用の手続は、相続した農地を売るにはにあります。
売却額は、土地の場所と形、買い手によって変わります。このページでは相場を示していません。不動産会社の査定や、税理士の試算で確かめてください。
固定資産税は上がるか
| 状態 | 固定資産税等 | 出典 |
|---|---|---|
| 生産緑地(30年以内)・特定生産緑地 | 農地評価・農地課税 | 国土交通省の手引き |
| 買取りの申出をして制限が外れた | 宅地並みの評価・課税 | 国土交通省「生産緑地制度について」 |
| 特定生産緑地に指定されなかった(三大都市圏の特定市) | 宅地並みの評価・課税。課税標準額に初年度0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8を掛ける激変緩和 | 国土交通省の手引き |
| 同上(それ以外の市町村) | 宅地並みの評価、農地に準じた課税 | 国土交通省の手引き |
国土交通省「特定生産緑地指定の手引き」(令和8年4月版)、「生産緑地制度について」から作成(2026年10月3日取得)。
三大都市圏の特定市かどうかは、市によって決まります。固定資産税の額は、土地ごとの評価額によって変わるため、市町村の資産税の窓口で確認してください。
よくある質問
生産緑地を相続したら、相続税の評価はどうなりますか?
生産緑地でないものとして評価した価額から、財産評価基本通達40-3の割合を引いて評価します。課税時期に買取りの申出ができる生産緑地は100分の5を引きます。国税庁の質疑応答事例は、主たる従事者が亡くなったときは買取りの申出ができるので、生産緑地でないものとして評価した価額の95%で評価する、としています。申出ができる日まで5年以下なら100分の10、25年を超え30年以下なら100分の35です。金額は土地ごとに違うため、このページでは示していません。
亡くなった人が主たる従事者でなかったときも、買取りの申出はできますか?
生産緑地法10条2項の申出は、その生産緑地の農林漁業の主たる従事者が亡くなったときなどにできます。主たる従事者には、国土交通省令(施行規則3条)で、申出の日に主たる従事者が65歳未満なら年間従事日数の8割以上、65歳以上なら7割以上従事している人も含まれます。どの人が主たる従事者にあたるかは市町村が確認しますので、申出の前に窓口で聞いてください。指定から30年を過ぎていれば、主たる従事者かどうかに関係なく申し出られます(同条1項)。
相続した生産緑地で、農業をしないまま持っていてもよいですか?
生産緑地法7条は、生産緑地について使用または収益をする権利を持つ人に、農地等として管理することを求めています。8条は、建物の新築・増築や宅地の造成を市町村長の許可制にしています。農業を続けないなら、買取りの申出で制限を外す方法があります。人に貸す方法もあります(都市農地の貸借の円滑化に関する法律)。市町村か農業委員会に聞いてください。
納税猶予を受けた生産緑地を、あとで売ったり買取りを申し出たりするとどうなりますか?
国税庁の案内では、譲渡・贈与・転用、賃借権などの設定、耕作の放棄、農業経営の廃止をすると、納税猶予が打ち切られ、猶予されていた税額と利子税を納めます。都市営農農地等に生産緑地法の買取りの申出をしたときも同じで、租税特別措置法70条の6第8項により、申出をした農地に対応する相続税を、申出の日の翌日から2か月を経過する日までに納めます。利子税は年3.6%(70条の6第40項)で、利子税特例基準割合が7.3%に満たない年は低くなります。
納税猶予された税金は、いつ免除されますか?
国税庁の案内では、特例の適用を受けた農業相続人が亡くなったとき、農地等を農業の後継者に生前一括贈与したとき(租税特別措置法70条の4)などに免除されます。都市営農農地等(特定生産緑地を含む生産緑地)を持つ農業相続人の納税猶予期限は、その死亡の日です(70条の6第6項1号)。免除までは、相続税の申告期限から3年目ごとに継続届出書を出し、農業を続けます。
相続した生産緑地が特定生産緑地かどうかは、どこで分かりますか?
市町村が特定生産緑地を指定したときは公示し、農地等利害関係人に通知します(生産緑地法10条の2第4項)。指定されているかどうかは、市町村の都市計画の窓口で確認できます。特定生産緑地の指定は、告示から30年を経過するまでに行うもので、30年を過ぎてからは指定できません(国土交通省の手引き)。指定されていない生産緑地は、すでに30年を過ぎていれば、いつでも買取りの申出ができる一方、次の相続で納税猶予が受けられません。
買取りの申出をしたら、市は必ず買い取ってくれますか?
生産緑地法11条は、特別の事情がない限り、時価で買い取るものとする、としています。市町村長は申出の日から1か月以内に、買い取る旨か買い取らない旨を書面で通知し(12条)、買い取る場合の時価は、買い取る側と所有者の協議で決まります。買い取らない旨の通知があったときは、農林漁業を希望する人へのあっせんに努めることになっています(13条)。実際に買い取るかどうかは、予算などで市町村ごとに違いますので、窓口で聞いてください。
買取りの申出をすると、固定資産税は上がりますか?
国土交通省の資料では、買取りの申出をして行為制限が解除されると、納税猶予が受けられず、固定資産税等は宅地並みの評価・課税になります。特定生産緑地に指定されなかった場合は、三大都市圏の特定市では宅地並み課税に移り、課税標準額に初年度0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8を掛ける激変緩和があります。税額は土地ごとに違うため、このページでは示していません。市町村の資産税の窓口で確認してください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 生産緑地法
- e-Gov法令検索 生産緑地法施行規則
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第70条の6)
- e-Gov法令検索 相続税法(第27条)
- e-Gov法令検索 農地法(第5条)
- 国税庁 財産評価基本通達 第2章 第3節 農地(40・40-3)
- 国税庁 質疑応答事例 生産緑地の評価
- 国税庁 No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
- 国税庁 農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(相続税の申告のしかた)
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国土交通省 生産緑地制度(特定生産緑地指定の手引き)
- 国土交通省 生産緑地制度について
- 京都市 生産緑地の買取りの申出(生産緑地法10条)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案の判断は、市町村、税務署、税理士などにご確認ください。