被相続人居住用家屋等確認書の取り方|必要書類・申請先・交付までの日数
被相続人居住用家屋等確認書は、空き家の3,000万円特別控除を確定申告で受けるときに添付する書類の1つで、空き家がある市区町村に申請して交付を受けます。必要書類は、被相続人の住民票の除票、相続人の住民票の写し、売買契約書、登記事項証明書、そして電気・水道・ガスの使用中止日が分かる書類など空き家だったことを示す書類です。交付までの日数は、神戸市が郵送で2週間程度、大阪市が7〜10日程度と案内しています。確定申告の期限は3月15日なので、そこから逆算して申請してください。
確認書は何のための書類か
相続した空き家を売ったときに、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(国税庁 No.3306)。この特例を受けるには、確定申告書に「売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書」を添付します。つまり、確認書は税務署ではなく市区町村が出す書類で、先に市区町村で取ってから確定申告をします。
確認書で市区町村が確かめるのは、次のような点です(国土交通省の通知、国税庁 No.3306)。
- 相続の開始の直前に、被相続人がその家屋に住んでいて、ほかに住んでいた人がいなかったこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住に使われていなかったこと
- 令和6年1月1日以後の譲渡では、家屋と敷地を相続した相続人の数(3人以上なら控除額は2,000万円)
特例の要件そのもの(昭和56年5月31日以前の建築、耐震基準、売却代金1億円以下、相続から3年を経過する年の12月31日まで、など)は相続した空き家の3,000万円特別控除で解説しています。この記事では、確認書をどう取るかに絞ります。
必要書類の一覧
市区町村に出す書類は、国土交通省の通知(最終改正は令和6年1月1日)の別表で定められています。家屋を耐震基準に適合した状態で売る場合(令和6年1月1日以降の譲渡)の基本は次の5つです。
| 書類 | 確かめること | 注意 |
|---|---|---|
| 被相続人の住民票の除票の写し | 死亡日と、死亡時の住所 | 老人ホーム等の入所後に別の施設へ移った場合は戸籍の附票の写し |
| 相続人の住民票の写し | 相続開始の直前から譲渡の時までの住所 | 住所の移り変わりが分からないときは戸籍の附票の写し |
| 売買契約書のコピー等 | 譲渡の日 | 引渡日が契約書で分からないときは登記事項証明書等 |
| 登記事項証明書 | 相続人の数 | 未登記・相続登記が未了・換価分割のときは遺産分割協議書等 |
| 空き家だったことを示す書類 | 相続から譲渡まで事業・貸付け・居住に使っていないこと | 次の節で詳しく説明 |
国土交通省の通知は、除票・住民票・登記事項証明書を「原則コピー不可」としています。一方、神戸市は必要書類の表でこれらを「コピー可」とし、横浜市は「必要書類については全てコピーでの提出が可能」としています。コピーでよいか、原本が必要かは、空き家がある市区町村の案内で確認してください。
次の場合は、書類が追加されます。
- 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合:要介護認定・要支援認定を受けていたことが分かる書類(介護保険の被保険者証のコピーなど)、施設の名称・所在地・施設の種類が分かる書類(入所時の契約書など)、入所後も家屋を使っていたことが分かる書類(電気・水道・ガスの契約名義と使用中止日が分かる書類、施設の外出・外泊の記録など)。
- 家屋を取り壊してから敷地だけを売る場合:家屋の閉鎖事項証明書(原則コピー不可)と、取壊し後に更地だったことが分かる写真。売買契約書は敷地の分になります。
自治体の案内には、細かい書類の扱いが違う点もあります。広島市は、令和8年10月1日以降に申請するものは登記事項証明書の添付を不要としています(地番・不動産番号のどちらかが確認できない場合は必要)。神戸市と横浜市は、相続人の住民票を譲渡日以降に取得したものと案内し、相続人が複数いるときは全員分を求めています。譲渡日の前には取れない書類があるので、申請の時期にも関わります。
「空き家だったことの証明」の集め方
5つ目の書類は、相続の時から譲渡の時まで、その家屋と敷地を事業・貸付け・居住に使っていなかったことを示すものです。国土交通省の通知は、次のいずれかを出すとしています。複数ある場合は、全部を出します。
- 電気・水道・ガスの使用中止日(閉栓日・契約廃止日など)が分かる書類。閉栓日などは相続開始日以降のものです。
- 宅地建物取引業者が「現況空き家」と表示した広告(相続人と媒介契約を結んだ業者のもの。コピー可)。
- 市区町村が容易に認められる書類。例として、市区町村が認める者が譲渡の時までに家屋を管理していた証明書や、空き家バンクへの登録の証明書が挙げられています。
通知は、市区町村の空き家データベースで確認できるときは、この書類は不要としています。
電気・水道・ガスの書類は、使用中止の通知書のほか、支払い証明書、料金請求書、領収書、お客様情報の開示請求に対する回答書、通帳のコピー、クレジットカードの利用明細(最終の料金引き落とし日が分かるもの)などが、通知の別表に例として挙げられています。手元に通知書がない場合は、各社に問い合わせます。神戸市は、契約者との相続関係などの確認が必要だとして、ガス・電気・水道の問い合わせ先を案内しています。空き家の電気・ガス・水道の止め方は空き家の電気・ガス・水道の管理方法と停止・再開手続きで解説しています。
なお、使用中止日を示すライフラインの種類は、自治体の書き方に違いがあります。国土交通省と神戸市は「電気、水道またはガス」、広島市は「電気またはガス」と書いています。水道の書類で足りるかは、申請先の案内で確認してください。
申請先・手数料・日数:神戸市・横浜市・大阪市・広島市
申請先は、売る空き家がある市区町村です。自治体の案内ページと必要書類の一覧から、4市の申請先と日数を整理します。
| 自治体 | 申請先 | 手数料・交付までの日数 |
|---|---|---|
| 神戸市 | 建築住宅局建築指導部安全対策課。申請書・必要書類と、切手を貼った返信用封筒を提出 | 手数料の記載なし。交付は郵送で2週間程度 |
| 横浜市 | 建築局住宅部住宅政策課。原則郵送。窓口は予約制 | 手数料・日数とも記載なし。確定申告前は混むので早めに |
| 大阪市 | 物件がある区の区役所。窓口は事前予約 | 手数料の記載なし。7〜10日程度 |
| 広島市 | 物件がある区の区役所建築課。事前に相談のうえ、持参または郵送 | 手数料の記載なし。申請から交付まで数日 |
各市の案内ページを2026年10月2日に確認しました(神戸市は2026年4月1日更新、横浜市は2026年9月28日更新、大阪市は2026年5月26日表示、広島市は2026年9月2日更新)。4市のページと必要書類の一覧には手数料の記載を見つけられませんでした。無料と決まったわけではないので、申請前に担当課へ確認してください。
申請者が複数いるときは、神戸市・横浜市とも申請者ごとに申請書が必要です(横浜市は添付書類一式も申請者ごと)。広島市も、複数の相続人が特例を受ける場合は、各人が申請書を出し、添付書類は省略できないとしています。
様式は、譲渡の内容で3種類に分かれます。国土交通省の様式では、別記様式1-1が「耐震基準に適合する家屋の譲渡」、1-2が「家屋の全部を取り壊した後の敷地の譲渡」、1-3が「譲渡の後に耐震基準に適合した、または取り壊した場合」です。自治体のページから、譲渡の日に合う様式と記入例をダウンロードできます。
確定申告が近づくと窓口は混みます。横浜市は「確定申告前は申請が混みあいますので、早期の申請を推奨します」、広島市も、確定申告が近づくと区役所建築課の窓口が混雑すると案内しています。
代理人が申請するときの委任状
空き家のある市区町村が遠方で、相続人本人が行けない場合は、代理人が申請できます。
- 横浜市:代理人(本人以外)が申請する場合は委任状が必要で、様式は問いません。委任状には委任者の署名または押印が必要です。代理人あてに郵送で交付してほしいときは、返信用封筒の宛先に代理人の名前を書きます。
- 大阪市:参考として委任状の様式(Word・PDF)を公開しています。確認書を郵便で受け取るときの返信用封筒には、代理人が申請する場合は代理人の住所を書きます。
神戸市・広島市の案内ページには、委任状の記載を見つけられませんでした。代理人に頼むときは、申請先に必要な書類を確認してください。なお、郵送での申請ができる市区町村なら、相続人が遠方にいても代理人なしで進められます。
買主が取り壊す・耐震改修する場合(令和6年1月以降の譲渡)
令和6年1月1日以後の譲渡では、売った後に買主が家屋を取り壊す、または耐震改修をする場合でも、特例の対象になります。譲渡の時から、売った年の翌年2月15日までに、耐震基準に適合することになったか、家屋の全部を取り壊した場合です(国税庁 No.3306)。この場合の確認書は、国土交通省の様式のうち別記様式1-3を使います。
確定申告書には、確認書に加えて、次のいずれかの書類も添付します(国税庁 No.3306 提出書類(3))。
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(売った時から翌年2月15日までに工事が完了し、工事完了の日から確定申告書の提出の日までに調査が終わったまたは評価されたもの)
- 登記事項証明書その他の書類で、売った時から翌年2月15日までに家屋の全部を取り壊した旨を証するもの
国土交通省の通知は、市区町村が確認書を出すときに、買主が必要な措置をとること、措置がとられず特例を受けられなかったときの定めを、売買契約書の特約等で決めていることが分かる書類を求めるとしています。ただし、この書類の提出は適用要件ではなく、出せなくても確認書の交付が妨げられるものではないとされています。国土交通省のよくある質問も、特約等がない場合でも確認書は発行できるとしつつ、買主の協力が得られないと特例を受けられないトラブルにつながるので、特約等を確認事項にしていると説明しています。
取壊しの期限が翌年2月15日で、確定申告の期間は翌年2月16日からです。買主の工事が終わる時期は、申告書を作れる時期に直接関わります。
3月15日から逆算する
確定申告の期間は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日までです(国税庁 No.2020)。確認書はこの申告書に添付するので、交付が間に合わなければ申告ができません。
- 売買契約・引渡し:契約書の日付と引渡日が「譲渡の日」の根拠になります。神戸市・横浜市は、相続人の住民票を譲渡日以降に取るよう求めています。
- 書類を集める:住民票の除票・相続人の住民票・登記事項証明書・電気(水道・ガス)の使用中止日の書類をそろえます。使用中止の書類を会社に請求するときは、契約者との相続関係などの確認が必要になる場合があります(神戸市の案内)。
- 申請する:交付までは、神戸市が郵送で2週間程度、大阪市が7〜10日程度です。横浜市は日数を案内していません。
- 確定申告:確認書を受け取ってから、他の書類と合わせて、3月15日までに申告します。
神戸市の「2週間程度」を基準に逆算すると、3月15日に間に合わせるには遅くとも3月初めまでの申請が必要です。書類の不備による修正や郵送の往復も考えると、2月中の申請を目安にしておくと安心です。買主が取り壊す場合は、売った年の翌年2月15日までの工事完了が前提になるので、さらに余裕がありません。
申告の流れと、確認書以外に必要な書類は相続した不動産を売却した年の確定申告で解説しています。
よくある質問
被相続人居住用家屋等確認書は、どこに申請しますか?
売った家屋・土地がある市区町村です。国税庁 No.3306は、確定申告書に添付する書類として「売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書」を挙げています。住んでいる市区町村ではなく、空き家の所在地の市区町村が窓口です。大阪市や広島市のように、物件のある区の区役所で受け付ける市もあります。
確認書は、いつまでに必要ですか?
空き家の3,000万円特別控除を受ける確定申告のときに、申告書へ添付します。確定申告の期間は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日までです(国税庁 No.2020)。交付に神戸市は2週間程度、大阪市は7〜10日程度と案内しているため、申告期限から逆算して早めに申請してください。
申請に手数料はかかりますか?
神戸市・横浜市・大阪市・広島市の案内ページと書類一覧では、手数料の記載を見つけられませんでした。無料かどうかはこの記事では断定できません。申請前に、空き家がある市区町村の担当課へ確認してください。
住民票の記載だけでは、親が住んでいたことを確認できないときは、確認書はもらえませんか?
国土交通省のよくある質問では、住民票の記載から相続開始の直前に被相続人が居住していたことを確認できない場合でも、代替書類・補完書類や申請者へのヒアリングで要件を満たすと確認できれば、確認書が交付される場合があるとされています。交付されるかどうかは市区町村の判断になるため、まず担当課に相談してください。
確認書が交付されれば、3,000万円控除は必ず受けられますか?
いいえ。横浜市・大阪市・広島市は「確認書の交付を受けても、特例を受けられない場合がある」と案内し、神戸市も適用の可否は管轄の税務署に問い合わせるよう案内しています。確認書は要件の一部を市区町村が確認した書類で、適用の可否は税務署が判断します。
買主が家屋を取り壊す場合も、確認書は必要ですか?
必要です。国税庁 No.3306の提出書類の(3)は、譲渡の時から翌年2月15日までに家屋が耐震基準に適合することとなった場合、または全部の取壊しが行われた場合にも、市区町村長から交付を受けた確認書を挙げています。令和6年1月1日以後の譲渡が対象です。国土交通省のよくある質問では、特約等を結んでいない場合も確認書の発行は可能とされていますが、買主の協力が得られないと特例を受けられないおそれがあります。
分譲マンションの1室でも確認書を取れますか?
特例の対象になりません。国税庁 No.3306は、対象の「被相続人居住用家屋」の要件に、区分所有建物登記がされている建物でないことを挙げています。分譲マンションの1室は区分所有建物登記がされているため、確認書の前に特例そのものが使えません。
参考・出典
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.2020 確定申告
- 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
- 国土交通省 通知「相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋及びその敷地等の譲渡に係る所得税及び個人住民税の特例措置の適用に当たっての要件の確認について」(令和6年1月1日改正)
- 神戸市 空き家対策等にかかる特別控除
- 横浜市 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
- 大阪市 被相続人居住用家屋等確認書の交付について
- 広島市 被相続人居住用家屋等確認書の交付