PR(本記事はアフィリエイト広告を含みます)
貸している土地・アパートを相続したら|貸家建付地とは・評価の式・空室があると評価は上がるか・貸付事業用宅地等の特例
アパートなどを建てて人に貸している土地(貸家建付地)は、「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で評価します(財産評価基本通達26)。賃貸割合は、課税時期(相続では被相続人の死亡の日)に貸している部分の割合なので、空室が多いと割合が下がり、評価額は上がります。継続的に貸してきて、一時的に空いていたと認められる部屋は、貸している扱いにして差し支えないとされています。建物は貸家として別の式で評価し、土地は一定の要件を満たせば貸付事業用宅地等として、200㎡まで50%減の特例があります。
| 評価に使う要素 | どこで調べるか | 評価への影響 |
|---|---|---|
| 自用地としての価額 | 路線価図の路線価に奥行価格補正率などと地積を掛ける。倍率地域は固定資産税評価額×倍率 | 評価の出発点。ここから引く |
| 借地権割合 | 路線価図の路線価の右のA〜G(90〜30%)。倍率地域は評価倍率表 | 高い地域ほど、引く額が大きい |
| 借家権割合 | 国税局長が定める割合。財産評価基準書で確認 | 借地権割合と掛け合わせて引く |
| 賃貸割合 | 死亡の日の各部屋の入居状況(賃貸借契約書、管理会社の入居一覧) | 空室が多いほど割合が下がり、評価額は上がる |
国税庁 財産評価基本通達26、タックスアンサー No.4614、路線価図の説明から作成(2026年10月3日取得)。
自分はどの場合に当てはまるか
- 自分の土地にアパートや貸家が建ち、入居者がいる:貸家建付地です。節2から読んでください。
- 全室が空いている・入居者を募集もしていない:自用地としての価額で評価します(節3)。
- 土地だけを貸し、借りた人が建物を建てている:貸宅地で、式が違います。借地権の目的なら「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」です(国税庁 No.4613)。
- 月極めなどの貸駐車場にしている:貸家建付地にならず、原則は自用地としての価額で評価します(国税庁 No.4627)。
- 会社の社宅の敷地:社宅には一般に借地借家法の適用がないとされ、貸家建付地の評価は行わず、自用地としての価額で評価します(国税庁 No.4614)。
路線価の見つけ方や借地権割合の記号の読み方は路線価の調べ方のページ、アパートそのものの管理・税金・売却は相続したアパートのページに書きました。
貸家建付地の評価の式と、賃貸割合の数え方
財産評価基本通達26は、貸家(借家権の目的となっている家屋)の敷地の用に供されている宅地を貸家建付地とし、その価額を次の式で評価すると定めています。国税庁のタックスアンサー No.4614 も同じ式です。
貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
賃貸割合は、貸家に「各独立部分」(構造上区分された数個の部分の各部分)がある場合に、次の式で出します。
賃貸割合=課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷その家屋の各独立部分の床面積の合計
通達26の注1によると、各独立部分とは、隔壁・扉・階層などで他の部分と完全に遮断され、独立した出入口を備えるなど、独立して賃貸その他の用に供することができる部分です。ふすま・障子・ベニヤ板のような堅固でないもので仕切られた部分や、階層で分かれていても独立した出入口がない部分は、各独立部分にあたりません。共用の廊下・階段・エレベーターだけを通って外と出入りできる構造なら、独立した出入口があるものとして扱います。
| 数えるもの | 原文の取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 基準になる日 | 課税時期。相続では被相続人の死亡の日 | 国税庁 No.4614 |
| 数える単位 | 各独立部分の床面積。戸数ではない | 通達26(2) |
| 共用の廊下・階段を通る部屋 | 共用部分だけを通って外と出入りできる構造なら、独立した出入口を備える部分にあたる | 通達26の注1 |
国税庁 財産評価基本通達26、タックスアンサー No.4614 から作成(2026年10月3日取得)。
自用地としての価額から貸家建付地の価額までは、土地の相続税評価額の計算機で試算できます。所有する宅地の一部を人に貸して(借地)、ほかの部分に貸家が建っているときは、借地権と借家権という別の権利があるため、それぞれ別の宅地として評価します(国税庁 質疑応答事例)。土地を分けるときは相続した土地の分筆のページに書きました。
空室があると評価は上がるか
上がります。賃貸割合が下がるほど、引く額が小さくなるためです。ただし、空室のすべてが評価に響くわけではありません。
- 全室が空いているとき:課税時期に現実に貸し付けられていない家屋の敷地は、以前は貸家でも、もっぱら賃貸用に新築した家屋でも、自用地としての価額で評価します(国税庁 質疑応答事例)。
- 一部が空いているとき:通達26の注2は、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期に一時的に賃貸されていなかったと認められるものを、賃貸されている各独立部分に含めて差し支えないとしています。
国税庁 No.4614 は、一時的な空室と認められるかどうかを、次の事実関係から判断するとしています。
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること
- 借りていた人の退去後、速やかに新しい入居者の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に使われていないこと
- 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと
質疑応答事例には、学生向けアパートで、3月上旬に卒業生が退去し新入生を募集していて、3月末には全室が貸されている、という事例があります。この場合は貸家と貸家建付地として評価し、一時的に空室になっていた部分は実際に賃貸されている部分に加えて賃貸割合を計算して差し支えない、と答えています。ここまでの取扱いは財産評価の話です。一時的な空室を、次の節の特例の側でも同じ基準で扱うと明記した文は、国税庁のタックスアンサーと租税特別措置法の条文には見当たりません。特例を使う場合の空室の扱いは、税理士か税務署でご確認ください。
アパートの建物(貸家)の評価
アパートの建物は、貸家として評価します。通達89は家屋の価額を固定資産税評価額と定め、通達93は貸家の価額を次の式とします。
貸家の価額=固定資産税評価額-固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合
土地の式と違い、借地権割合は入りません。賃貸割合は土地と同じ数え方です(通達93は通達26(2)の賃貸割合を使うとしています)。借家権割合は国税局長が定める割合で、財産評価基準書で確認できます(通達94、国税庁 No.4614)。空室だらけでも、一時的な空室と認められる部分は貸している扱いにできる点も、土地と同じです。
貸付事業用宅地等の特例(50%減・200㎡)
相続開始の直前に、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の貸付事業の用に供されていた宅地等は、要件を満たせば貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の対象になります。貸付事業は、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業、事業と称するに至らない不動産の貸付けなどの準事業です(租税特別措置法第69条の4第3項第4号、施行令第40条の2第7項)。国税庁のQ&Aは、事業的規模でない貸付けでも対象になる、と答えています。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 減額の割合 | 貸付事業用宅地等は50%(課税価格に算入するのは評価額の100分の50) | 措置法第69条の4第1項第2号 |
| 限度面積 | 貸付事業用宅地等だけを選ぶ場合は200㎡以下。居住用(330㎡)や事業用(400㎡)の宅地等と併用すると、面積を換算して合計200㎡以下にする | 措置法第69条の4第2項第3号 |
| 3年以内に貸し始めた土地 | 対象外。ただし、3年を超えて特定貸付事業(準事業以外の貸付事業)を行っていた被相続人等の宅地等は除かれない | 措置法第69条の4第3項第4号、施行令第40条の2第19項 |
| 引き継ぐ親族に求められること | 申告期限まで貸付事業を引き継いで続け、その宅地等を持ち続ける。生計を一にしていた親族が取得するときは、相続前から申告期限まで自分の貸付事業の用に供し続け、持ち続ける | 措置法第69条の4第3項第4号イ・ロ |
| 遺産分割 | 申告期限までに分割されていない宅地等には、原則として適用がない。申告期限から3年以内に分割された場合は例外がある | 措置法第69条の4第4項 |
| 手続き | 相続税の申告書に適用を受ける旨を書き、計算の明細書などを添付する | 措置法第69条の4第7項 |
租税特別措置法と施行令(e-Gov、2026年10月3日取得)、国税庁 No.4124 とそのQ&Aから作成。
特例の全体像(居住用330㎡・事業用400㎡との違いなど)は小規模宅地等の特例のページに書きました。
当サイト試算:土地6,000万円・建物1,500万円の例
次の前提で、賃貸の状況ごとに評価額を計算しました。実際の評価は、土地の形や道路との関係で補正が入り、申告ごとに違います。
- 土地:路線価30万円/㎡、地積200㎡、奥行価格補正率などは1.00として、自用地としての価額6,000万円
- 借地権割合60%(路線価図の記号D)、借家権割合30%(当サイトの計算機と同じ設定)
- アパート:10戸で、すべて同じ床面積。建物の固定資産税評価額1,500万円
| 賃貸の状況 | 計算 | 評価額 |
|---|---|---|
| 10戸すべて貸している(土地) | 6,000万×(1-0.6×0.3×1.0) | 4,920万円 |
| 同(建物) | 1,500万×(1-0.3×1.0) | 1,050万円 |
| 8戸貸し、2戸は一時的とは認められない空室(土地) | 6,000万×(1-0.6×0.3×0.8) | 5,136万円 |
| 同(建物) | 1,500万×(1-0.3×0.8) | 1,140万円 |
| 全室が空室(土地・自用地) | 6,000万円のまま | 6,000万円 |
| 同(建物) | 1,500万×(1-0.3×0) | 1,500万円 |
| 10戸すべて貸している土地に、貸付事業用宅地等の50%減を当てはめる | 4,920万×(1-0.5) | 2,460万円 |
当サイト試算(財産評価基本通達26・93、租税特別措置法第69条の4の式に、上の前提を当てはめた)。特例は、貸家建付地として評価した金額に割合を当てはめた例で、実際の申告書での扱いは税理士か税務署でご確認ください。
この例では、10戸すべて貸している場合と、8戸だけ貸している場合の差は、土地で216万円、建物で90万円です。10戸のうち2戸が一時的な空室と認められれば、賃貸割合は1.0のまま計算して差し支えないとされています。相続税の総額は、財産全体と相続人の数で決まります。相続税の計算機で、評価額を入れて試算できます。
よくある質問
貸家建付地は何と読みますか?貸宅地とは違いますか?
「かしやたてつけち」と読みます。自分の土地に建てたアパートなど、借家権の目的となっている家屋(貸家)の敷地の用に供されている宅地です。貸宅地は、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地で、土地だけを貸して借りた人が建物を所有している場合などがあたります。評価の式も違い、貸宅地(借地権の目的)は「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」です(国税庁 No.4613)。
借家権割合はいくらですか?
財産評価基本通達94は、借家権割合を「国税局長の定める割合」としています。国税庁のタックスアンサー No.4614 は、借地権割合と借家権割合を「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できると案内しています。当サイトの計算機は借家権割合30%で計算しています。申告では、相続開始の年の基準書で確かめてください。
入居者が全員いなくなったアパートの敷地は、貸家建付地として評価できますか?
国税庁の質疑応答事例は、借家人が立ち退いたあとの空き家の敷地は、以前は貸家でも自用地としての価額で評価する、と答えています。もっぱら賃貸用に新築した家屋でも、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)に現実に貸し付けられていなければ同じ扱いです。一部の部屋だけが空いている場合は、次の問いのとおり賃貸割合で調整します。
一部の部屋が空室のとき、賃貸割合はどう数えますか?
戸数ではなく、各独立部分の床面積で数えます。賃貸割合は「課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷その家屋の各独立部分の床面積の合計」です。継続的に貸してきた部屋で、課税時期に一時的に空室だったと認められるものは、貸していたものとして数えて差し支えない、とされています(財産評価基本通達26の注2、国税庁 No.4614)。
相続の3年前にアパートを建てて貸し始めたら、貸付事業用宅地等の特例は使えませんか?
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、貸付事業用宅地等になりません。ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(準事業以外の貸付事業)を行っていた被相続人等の貸付事業の用に供された宅地等は、除かれません(租税特別措置法第69条の4第3項第4号、施行令第40条の2第19項)。事業と称するに至らない規模の貸付けだった場合は、3年以内に貸し始めた宅地等は特例の対象になりません(国税庁 No.4124 のQ&A)。
親に家賃を払わずアパートに住んでいる親族がいる場合、特例はどうなりますか?
国税庁のQ&Aは、特例の対象になる不動産の貸付けは相当の対価を得て継続的に行うものに限られ、使用貸借で貸している宅地等は対象にならない、と答えています。個別の契約の判断は、税理士か税務署にご相談ください。
参考・出典
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価
- 国税庁 No.4613 貸宅地の評価
- 国税庁 No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価
- 国税庁 財産評価基本通達 25・26(貸宅地・貸家建付地の評価)
- 国税庁 財産評価基本通達 89・93・94(家屋・貸家・借家権の評価)
- 国税庁 質疑応答事例 貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価
- 国税庁 質疑応答事例 貸宅地と貸家建付地(宅地の評価単位)
- 国税庁 質疑応答事例 貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲
- 国税庁 路線価図の説明(借地権割合A〜G)
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4124 Q&A 事業的規模でない不動産貸付けの場合
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第69条の4)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令(第40条の2)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の申告の判断は、税理士または税務署にご確認ください。