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未支給年金に相続税はかかる?|相続財産ではなく受け取った遺族の一時所得・請求できる遺族の順位・確定申告が要る場合
未支給年金は、相続税の課税対象になりません。亡くなった人に支給されていなかった年金を、遺族が自分の名で請求して受け取るもので、国税庁は遺族の固有の権利としています。受け取ると相続税ではなく、受け取った遺族の一時所得(所得税)になります。
| 場面 | 税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 未支給年金を請求できる権利 | 相続税の課税対象にならない | 国税庁 質疑応答事例 |
| 遺族が請求して受け取った未支給年金 | 受け取った遺族の一時所得 | 所基通34-2 |
| 受け取った額が50万円以下で他に一時所得がない | 特別控除(最高50万円)の範囲に収まる | No.1490、日本年金機構 |
| 受け取った額が50万円を超える | 超えた額の2分の1が他の所得と合算される | No.1490 |
| 亡くなった人の準確定申告 | 亡くなった人の所得ではなく遺族の一時所得 | 所基通34-2 |
出典は国税庁の質疑応答事例・タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)・所得税基本通達、日本年金機構。2026年10月3日取得。
未支給年金が相続税の対象外になる理由
遺族が自分の権利として請求する
国民年金法19条1項は、年金給付の受給権者が死亡し、その人に支給すべき年金でまだ支給されていないものがあるとき、一定の遺族は「自己の名で」未支給の年金の支給を請求できると定めています。厚生年金保険法37条1項にも同じ定めがあります。
国税庁の質疑応答事例(老齢基礎年金の例)は、この請求権について、次のように整理しています。
- 相続財産に当たらない:最高裁判決(平成7年11月7日)で相続性が否定されており、民法の相続人の範囲・順位とは別に、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的に定められたものと解されている
- みなし相続財産にも当たらない:相続税法3条1項6号が対象にするのは、定期金が特別に又は選択的に一時金とされる場合の一時金のみ。未支給年金は最初から一時金のみを支給するもので、同号のみなし相続財産に該当しない
結論として、遺族が未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり、亡くなった受給権者に係る相続税の課税対象にはならないとされています。
相続税がかかるかどうかは、未支給年金とは別に、預金や不動産などほかの遺産の合計で決まります。基礎控除を超えるかの見方は相続税の申告が不要な場合にあります。
受け取ったときの所得税(一時所得)と計算例
遺族の一時所得になる
所得税基本通達34-2は、死亡した者に係る給与等・公的年金等・退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち、通達9-17により課税しないとされるもの(相続税の課税価格に算入されるもの)以外は、支払を受けた遺族の一時所得に該当するとしています。国税庁の質疑応答事例も、遺族が受けた未支給年金は一時所得に該当するとしています。
一時所得の計算
国税庁 No.1490 は、一時所得の金額を次の式で計算するとしています。
総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
税額の計算では、この一時所得の金額の2分の1に相当する金額を、給与所得などほかの所得の金額と合計して総所得金額を求めます。
計算例(当サイトの試算)
次の前提で、上の式を当てはめた当サイトの試算です。実際の申告は、事情に応じて税務署または税理士にご確認ください。
- 受け取った未支給年金のほかに、一時所得になる収入はない
- 収入を得るために直接要した支出はない
| 受け取った未支給年金 | 一時所得の金額 | 総所得金額に合算される額 |
|---|---|---|
| 30万円 | 30万円が特別控除の範囲内なので 0円 | 0円 |
| 90万円 | 90万円-50万円=40万円 | 40万円×1/2=20万円 |
| 150万円 | 150万円-50万円=100万円 | 100万円×1/2=50万円 |
合算された額で確定申告が必要かは、給与や年金などほかの所得との関係で決まります。
確定申告が必要かの目安
日本年金機構は、亡くなった方の未支給年金は支給金を受け取った方の一時所得に該当し、確定申告が必要になる場合があるとしています。支給金を受け取る年分に、その支給金を含む一時所得の金額の合計額が50万円以下である場合は、確定申告は不要です。詳細は最寄りの税務署に相談するよう案内されています。
請求できる遺族と順位
請求できるのは、亡くなった方の死亡の当時にその方と生計を同じくしていた、次の人です(国民年金法19条1項)。受け取れる順位も、この順番です(国民年金法施行令4条の3の2、厚生年金保険法施行令3条の2、日本年金機構)。
- 配偶者(国税庁の質疑応答事例は内縁の配偶者を含むとしています)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の三親等内の親族
- 先順位の人がいれば受け取れない:先順位者がいる場合、未支給年金を受け取ることはできません(日本年金機構)
- 同順位が2人以上のとき:そのうち1人が代表して請求します。1人の請求は全員のための請求とみなされ、1人への支給は全員への支給とみなされます(国民年金法19条5項)
- 亡くなった方が請求していなくてもよい:亡くなった方が死亡前にその年金を請求していなかったときも、遺族は自己の名で請求できます(国民年金法19条3項、厚生年金保険法37条3項)
上の順位は、民法の法定相続人の順位とは異なります。相続の手続の中で誰が法定相続人かを数える場面と、未支給年金を請求できる人は、別に考えます。
請求先・書類と期限の定め
請求先と書類
日本年金機構の案内では、未支給年金を受け取るには「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」の提出が必要です。
- 提出先:年金事務所に郵送で提出(電子申請も可)。障害基礎年金・遺族基礎年金のみを受けていた方が亡くなった場合は、市区町村の窓口に請求します(日本年金機構Q&A)
- 主な添付書類:亡くなった方の年金証書、続柄がわかる書類(戸籍謄(抄)本など)、生計を同じくしていたことがわかる書類(住民票など)、受け取りを希望する口座がわかる書類(通帳の写しなど)。マイナンバーの記入で省略できるものがあります
- 住所が別のとき:亡くなった方と別の住所のときは、「生計同一関係に関する申立書」なども必要になります
届出が遅れると
日本年金機構は、提出が遅れると年金を多く受け取りすぎることになり、後で返す場合があるため、年金を受けている方が亡くなったときはすみやかに提出するよう案内しています。亡くなった方の口座を解約していないと、未支給年金の請求をした場合でも入金される場合があるとも案内されており、口座の解約は金融機関に相談します。
時効の定め
国民年金法102条1項・厚生年金保険法92条1項は、年金給付を受ける権利は、支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき、支払期月ごとに支払う年金給付の支給を受ける権利は、所定の支払期月の翌月の初日から5年を経過したときに、時効で消滅すると定めています。未支給年金の請求に、この5年をどの日から数えるかは、日本年金機構の該当ページに記載がありません。請求を考えている方は、早めに年金事務所へ確認してください。
国民年金基金・企業年金・共済年金の場合
国民年金基金
国民年金基金連合会は、保証期間のある終身年金A型や確定年金に加入している方が、年金を受け取る前、または保証期間中に亡くなった場合に、遺族に一時金(遺族一時金)が支払われると案内しています。受け取れるのは、死亡時に生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹で、この順位です。同連合会は「遺族一時金は非課税です」とも案内しています。
これは、国民年金・厚生年金の未支給年金とは別の仕組みです。基金の未支給の扱いと、遺族一時金に相続税がかかるかは、本記事では扱いません。加入していた基金にご確認ください。
企業年金
企業年金(企業年金連合会、勤務先の年金制度など)の未支給の扱いは、本記事では扱いません。規約により異なるため、加入先の窓口にご確認ください。
JR・JT・NTT・農林共済の共済年金
日本年金機構は、JR・JT・NTT・農林共済が支給する共済年金を受け取っていた場合は、法定相続人が請求できるとしています。
ほかの手続きとの関係
- 亡くなった人の所得税の申告は、準確定申告とは?期限は4か月にまとめています。
- 死亡退職金の非課税枠と課税は、死亡退職金に相続税はかかる?にあります。
- 相続税の申告が要るかの見方は、相続税の申告が不要な場合にあります。
よくある質問
未支給年金には相続税がかかりますか?
かかりません。国税庁の質疑応答事例は、未支給年金請求権は遺族が自己の固有の権利として請求するものであり、亡くなった受給権者に係る相続税の課税対象にならないとしています。相続税法3条1項6号のみなし相続財産にも当たらないとされています。受け取った遺族には、相続税ではなく所得税(一時所得)の問題が生じます。
未支給年金は誰が受け取れますか?順位はありますか?
亡くなった方と死亡の当時に生計を同じくしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、これら以外の三親等内の親族です。この順位のとおりで、先順位の人がいる場合は後順位の人は受け取れません(日本年金機構、国民年金法施行令4条の3の2、厚生年金保険法施行令3条の2)。同順位が2人以上いるときは、そのうち1人が代表して請求します。
受け取った未支給年金は確定申告が必要ですか?
日本年金機構は、未支給年金は受け取った人の一時所得に当たり、確定申告が必要になる場合があるとしています。支給金を受け取る年分に、その支給金を含む一時所得の金額の合計が50万円以下の場合は、確定申告は不要とされています。必要かどうかは他の所得の状況によっても変わるため、詳細は最寄りの税務署にご確認ください。
未支給年金は、亡くなった人の準確定申告に含めますか?
国税庁の所得税基本通達34-2は、死亡した人に係る公的年金等で死亡後に支給期が到来するもの(相続税の課税価格に算入されるものを除く)は、支払を受けた遺族の一時所得に該当するとしています。亡くなった人の所得ではなく、受け取った遺族自身の所得として扱われます。亡くなった人の準確定申告の手続は、別のコラムにまとめています。
未支給年金は、遺産分割で相続人どうしで分ける財産ですか?
国税庁の質疑応答事例は、未支給年金請求権について最高裁判決(平成7年11月7日)で相続性が否定されているとし、民法の相続人の範囲・順位とは別に、遺族が自己の名で請求できると整理しています。国民年金法19条1項も「自己の名で」請求できると定めています。
いつの分までが未支給年金になりますか?
日本年金機構は、まだ受け取っていない年金や亡くなった日より後に振り込まれた年金のうち、亡くなった月分までの年金を未支給年金として遺族が受け取れるとしています。届出が遅れると年金を多く受け取りすぎることになり、後で返す場合があるため、すみやかに提出するよう案内されています。
参考・出典
- 国税庁 質疑応答事例 未支給の国民年金に係る相続税の課税関係
- 国税庁 所得税基本通達 法第34条《一時所得》関係(34-2)
- 国税庁 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係(9-17)
- 国税庁 タックスアンサー No.1490 一時所得
- 日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
- 日本年金機構 年金Q&A 年金受給者が亡くなりましたが、まだ受け取っていない年金があります
- e-Gov法令検索 国民年金法(第19条・第102条)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法(第37条・第92条)
- e-Gov法令検索 国民年金法施行令(第4条の3の2)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法施行令(第3条の2)
- 国民年金基金連合会 遺族一時金
- 相続アシスト(税理士法人SWATS) 公式サイト
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の相続や年金の請求、確定申告の要否は、年金事務所・税務署または税理士にご相談ください。