相続税の延納とは?|条件・延納期間・利子税の割合と、申請書の出し方
相続税の延納は、相続税額が10万円を超え、金銭で一度に納めることが困難なときに、担保を提供して、年払い(年賦)で納める制度です。延納できる期間は、不動産などの割合に応じて最長5年から20年で、期間中は利子税がかかります。令和8年の利子税の特例割合は、区分によって年0.2%から1.0%です。申請は、相続税の納期限までに延納申請書を出して行います。
延納できる条件:4つすべてを満たすこと
国税庁 No.4211 は、次の4つの要件をすべて満たすときに延納を申請できるとしています。
- 相続税額が10万円を超えること。
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。延納できるのは、一括で納められない金額が限度です。
- 延納税額と利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合は、担保は要りません。
- 延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に提出すること。
相続税法38条1項も、相続税額が10万円を超え、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由があるときに、納税義務者の申請により、年賦延納の許可をすることができると定めています。許可をするのは税務署長で、申請すれば必ず許可されるわけではありません。
延納期間と利子税の割合(令和8年)
延納できる期間と利子税の割合は、相続税額の計算の基礎になった財産の価額の合計のうち、不動産等の価額が占める割合で決まります(国税庁 No.4211)。相続税法38条1項は、この割合が10分の5(50%)以上のときは、不動産等に対応する税額は最長15年、そのほかの税額は最長10年と定めています。国税庁の表では、不動産等の割合が75%以上のときは不動産等の部分が最長20年になります。
不動産等の割合が75%以上の場合
| 区分(最高の延納期間) | 本来の利子税割合 | 令和8年の特例割合 |
|---|---|---|
| ① 動産等に係る延納相続税額(最高10年) | 年5.4% | 年0.9% |
| ② 不動産等に係る延納相続税額(③を除く)(最高20年) | 年3.6% | 年0.6% |
| ③ 森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額(最高20年) | 年1.2% | 年0.2% |
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合
| 区分(最高の延納期間) | 本来の利子税割合 | 令和8年の特例割合 |
|---|---|---|
| ④ 動産等に係る延納相続税額(最高10年) | 年5.4% | 年0.9% |
| ⑤ 不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く)(最高15年) | 年3.6% | 年0.6% |
| ⑥ 森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額(最高20年) | 年1.2% | 年0.2% |
不動産等の割合が50%未満の場合
| 区分(最高の延納期間) | 本来の利子税割合 | 令和8年の特例割合 |
|---|---|---|
| ⑦ 一般の延納相続税額(⑧、⑨、⑩を除く)(最高5年) | 年6.0% | 年1.0% |
| ⑧ 立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く)(最高5年) | 年4.8% | 年0.8% |
| ⑨ 特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額(最高5年) | 年4.2% | 年0.7% |
| ⑩ 森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額(最高5年) | 年1.2% | 年0.2% |
出典:国税庁 No.4211「相続税の延納期間および延納に係る利子」。特例割合は、令和8年1月1日現在の延納特例基準割合1.3%で計算した割合です。延納特例基準割合が変わると特例割合も変わるため、申請のときは所轄の税務署で確認してください。
- 特例割合の計算:各年の延納特例基準割合が7.3%に満たないときは、延納利子税割合(年割合)に、延納特例基準割合を掛けて7.3%で割った割合が適用されます(0.1%未満の端数は切り捨て、0.1%未満になる場合は年0.1%)。たとえば区分⑦は、6.0% × 1.3% ÷ 7.3% = 1.07…% で、切り捨てて1.0%です。
- 延納税額が少ないとき:相続税法38条1項は、延納税額が50万円(不動産等の割合が50%以上のときは150万円)未満のとき、延納期間は、延納税額を10万円で割った数(1未満の端数は1)に相当する年数を超えられないと定めています。たとえば延納税額が30万円なら、最長3年です。
納期限に遅れて納めた場合は、延納ではなく延滞税がかかります。令和8年の延滞税の割合は年2.8%と年9.1%で、日数に応じて計算できます(相続税の延滞税の計算)。
利子税を払って延納するか、不動産を売って一括で納めるか
相続した財産の中に、不動産があるときは、延納のほかに、不動産を売って納税資金を作り、一括で納める方法もあります。延納は、期間中の利子税と、担保の手続きが必要です。売却は、買い手が決まるまでの日数と、売ったときの税金(譲渡所得税・住民税)を考えることになります。どちらが合うかは、家の事情によって変わります。
- 売って納める場合:相続税を払った人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続した財産を売ると、払った相続税のうち一定額を取得費に加算できます(国税庁 No.3267)。加算額と税額の差は取得費加算の特例の計算で試算できます。
- 延納する場合:上の表の利子税が、延納期間にわたってかかります。
延納の担保に出せるもの
国税庁 No.4211 は、延納の担保として提供できる財産を、次のものに限っています。
- 国債および地方債
- 社債その他の有価証券で、税務署長等が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団など
- 税務署長等が確実と認める保証人の保証
相続や遺贈で取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や、共同相続人または第三者が所有している財産も、担保にできます。提供した担保が適当でないと税務署長が認めるときは、担保の変更を求められます。
延納の申請期限と、申請書の出し方
延納の申請は、相続税の納期限、または納付すべき日までに、納税地の所轄税務署長に、延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出します(相続税法39条1項)。申請書には、次の事項を書きます。
- 金銭で納付することを困難とする金額と、その困難とする理由
- 延納を求めようとする税額と期間
- 分納税額と、その納期限
- そのほか財務省令で定める事項
| 申告の場合 | 延納申請期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期限内申告 | 申告期限 | 国税庁 No.4211 |
| 更正または決定 | 通知が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日 | 国税庁 No.4211 |
| 期限後申告または修正申告 | 申告書の提出の日 | 国税庁 No.4211 |
出典:国税庁 No.4211。申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。
- 担保の書類が間に合わないとき:担保提供関係書類提出期限延長届出書を出すと、1回につき3か月を限度として、最長6か月まで書類の提出期限を延ばせます。
- 審査の期間:税務署長は、申請期限から3か月以内に許可または却下をします。担保などの状況によっては、最長6か月まで延びることがあります。
- 書類の不備:申請書や担保提供関係書類に不備があると、訂正や提出を求められます。通知を受けた日の翌日から20日以内に応じないと、延納の申請を取り下げたものとみなされます(相続税法39条10項・12項)。
- 許可も却下もないとき:審査期間内に許可も却下もされなかった場合は、申請に係る条件により延納の許可があったものとみなされます(同条28項)。
申告書の作成と、添付する書類の一覧は、相続税の申告に必要な書類で説明しています。
延納のデメリット
- 利子税がかかる:延納期間中は利子税の納付が必要です。区分によって令和8年は年0.2%から1.0%ですが、一括で納める場合は払わない費用です。
- 担保の手続きが必要:原則として延納税額と利子税の額に相当する担保を提供します。書類が納期限までに間に合わないときは、提出期限の延長を届け出ることができます。
- 許可されないことがある:税務署長が要件を調べて許可または却下を決めます。担保が適当でないと認められたときは、変更を求められます。
- 許可のあとに条件が変わることがある:資力の状況の変化等により、許可の取消しや延納期間の短縮などが行われることがあります(相続税法39条32項)。
- 延納でも納められなくなったとき:申告期限から10年以内に限り、延納から物納への変更(特定物納)ができます。物納の条件は相続税の物納とは?で説明しています。
よくある質問
延納に担保は必ず必要ですか?
原則として必要です。延納税額と利子税の額に相当する担保を提供します。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は、担保を提供する必要がありません(国税庁 No.4211、相続税法38条4項)。
延納の申請は、いつまでにしますか?
相続税の納期限、または納付すべき日までです(相続税法39条1項)。国税庁は、期限内申告の場合は申告期限、期限後申告または修正申告の場合は申告書の提出の日、更正または決定の場合は通知が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日が、延納申請期限になるとしています(No.4211)。
担保の書類が間に合わないときは、どうなりますか?
延納申請書は納期限までに出し、担保提供関係書類を出せないときは、担保提供関係書類提出期限延長届出書を出します。1回につき3か月を限度として、最長6か月まで書類の提出期限を延ばせます(国税庁 No.4211)。
延納の申請をすれば、必ず許可されますか?
許可されるとは限りません。税務署長は、要件を調べたうえで、申請期限の翌日から3か月以内に、許可または却下をします(相続税法39条2項)。担保が適当でないと認められるときは、担保の変更を求められます。変更の求めを受けた日の翌日から20日以内に、変更後の担保提供関係書類を出さないと、申請を却下されることがあります(同条5項)。
延納で払えなくなったときは、どうなりますか?
延納の許可を受けたあとに、資力の状況が変わったなどで延納条件を履行することが困難になったときは、申告期限から10年以内に限り、まだ分納期限が来ていない税額について、延納から物納への変更(特定物納)ができます(国税庁 No.4211)。また、税務署長は、資力の状況の変化等により許可の条件で延納を認めることが適当でないと認める場合、許可の取消しや延納期間の短縮などをすることができます(相続税法39条32項)。
参考・出典
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の適用可否・税額の算定は税理士または所轄の税務署にご確認ください。