PR(本記事はアフィリエイト広告を含みます)
相続した畑の草刈り|放置するとどうなるか・農業委員会の調査と勧告・固定資産税の課税強化・近所から言われたら・自分で刈るか業者か
相続した畑の草を刈らずにいると、農業委員会の毎年の調査で遊休農地と判断され、利用意向調査、農地バンク(農地中間管理機構)との協議の勧告へと進み、勧告を受けた農地は固定資産税の評価額が1.8倍になります。草木が周りの畑の営農に著しい支障を生じさせると、市町村長の除去命令の対象にもなります。いずれも農地法と農林水産省の資料に書かれた流れで、通知の時点で草を刈って農業委員会に連絡する、貸す・売るなどの意向を答える、のどちらかで止められる段階があります。近所から言われたときの自治体の対応、自分で刈るか業者に頼むかも、原文で整理します。
| 場面 | 起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 草が伸びて近所から連絡が入った | 農業委員会が管理者に「お願いの文書」を送る例。その後の対応は任意で、近所同士の争いには入らない自治体がある | 蒲郡市・綾川町の案内 |
| 毎年の調査で雑草が繁茂と見られた | 所有者に通知が届く例。除草か耕作の再開をしたら農業委員会に連絡する | さいたま市・蒲郡市・綾川町の案内 |
| 遊休農地と判断された | 農業委員会が利用意向調査をする。貸す・売る・自分で耕すなどの意向を答える | 農地法30条・32条 |
| 意向を答えない、答えたとおりに進まない | 農業委員会が、農地バンクと協議するよう勧告する場合がある | 農地法36条 |
| 勧告を受けた | 固定資産税の評価額が1.8倍になる課税強化の対象になる | 農林水産省の資料、地方税法附則17条の3 |
| 草木が周りの畑の営農に著しい支障 | 市町村長が除去を命じる。従わないと30万円以下の罰金 | 農地法42条・66条、施行令29条 |
e-Gov法令検索の農地法・農地法施行令・地方税法、農林水産省の遊休農地対策の資料、蒲郡市・さいたま市・綾川町の案内から作成(2026年10月3日取得)。自治体の案内は一例です。
自分はどの場合に当てはまるか
- 農業委員会から通知や調査書が届いた:節3に利用意向調査の答え方と、答えなかったときの勧告の事由があります。節5に課税強化の条件があります。
- 近所から草を何とかしてほしいと言われた:節6に自治体の案内の一例があります。枝が越境しているときは隣地の竹木の枝が越境してきたらにあります。
- 畑を耕す予定はなく、草刈りに通えない:節7に自分で刈る場合と業者に頼む場合、節8に貸す・売る・手放す選択肢の案内があります。
- 相続したばかりで、名義がまだ亡くなった方のまま:節3の終わりと節8に、届出と相続登記の案内があります。
- 空き家の敷地や宅地の草刈り:所有者の義務と市役所に言われたときは空き家の草刈り、空き地は空き地の管理にあります。このページは農地(畑)の話です。
耕作放棄地・遊休農地・荒廃農地の違い
農地法で畑は「耕作の目的に供される土地」(2条1項)です。使われていない畑は、調べる人や制度によって呼び名が違います。
| 呼び名 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 耕作放棄地 | 以前耕作していた土地で、過去1年以上作付けせず、この数年の間に再び作付けする意思のない土地。農家の自己申告 | 農林水産省の資料(農林業センサス) |
| 遊休農地(1号) | 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地 | 農地法32条1項1号 |
| 遊休農地(2号) | 農業上の利用の程度が、周辺の農地に比べて著しく劣っていると認められる農地 | 農地法32条1項2号 |
| 荒廃農地 | 耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地 | 農林水産省の資料 |
農地法(e-Gov)、農林水産省「農地・荒廃農地等の分類と面積について」から作成(2026年10月3日取得)。
課税や勧告の話に出てくるのは、このうち農地法の「遊休農地」です。国の調査要領は、1号の遊休農地を「草刈り等を行うことにより直ちに耕作することが可能となる農地」と「草刈り等では直ちに耕作することはできず、基盤整備など条件整備が必要となる農地」に分けています。農林水産省の資料では、令和7年3月31日現在の遊休農地は全国で10.5万ha、荒廃農地は25.7万haです。
調査から勧告・裁定までの流れ
- 利用状況調査(農地法30条):農業委員会は、毎年1回、管内の農地の利用の状況を調べなければならず、必要があるときはいつでも調べられます。さいたま市は毎年5月〜9月、蒲郡市は毎年9月〜10月頃に実施しています(一例)。雑草繁茂などで適正に管理されていない農地の所有者には、通知を送る自治体があります。
- 周辺の農業者からの申出(31条):農地の周辺で農業を営む人は、営農条件に著しい支障が生じるおそれがある遊休農地について、農業委員会に適切な措置を求められます。農業委員会は、利用状況調査その他の措置を講じなければなりません。
- 利用意向調査(32条1項):調査の結果、遊休農地(上の1号・2号)に当たると、農業委員会が所有者に今後の利用の意向を尋ねます。さいたま市は、草刈り等の管理がされていない遊休農地の所有者に毎年1月頃に実施しています(一例)。
- 意向の答え方:国の様式の選択肢は4つです。①農地中間管理機構(農地バンク)の事業を利用する、②自ら所有権の移転や賃借権などの設定・移転を行う、③自ら耕作する、④その他。様式には、表明の日から6か月たっても農業上の利用の増進が図られない場合は、知事の裁定で賃借権が設定される場合があることを承知する、という文言があります。
- 協議の勧告(36条1項):農業委員会は、次のようなときに、農地バンクと協議するよう勧告します。耕作する意思の表明から6か月たっても利用の増進が図られない/貸す・売る意思の表明から6か月たっても権利の設定や移転が行われない/農業上の利用を行う意思がない/利用意向調査から6か月たっても意向の表明がない/利用の増進が図られないことが確実と認められる。正当の事由があるときは除かれます。
- 裁定(37条・39条):勧告から2か月以内に協議が調わないときは、農地バンクが勧告から6か月以内に知事へ裁定を申請できます。知事が農地バンクの賃借権を設定すべきと裁定すると、存続期間は40年を限度に定められます。
- 通知の宛先:周南市の案内では、調査書は農地台帳に記載された所有者と耕作者あてに送られます。所有者が亡くなっている場合は、農地の相続登記をして農業委員会に届け出ると、台帳の所有者が更新されます。届出の期限と過料は農地を相続したら農業委員会への届出が必要にあります。
草木が周りの畑に及ぶとき:除去命令と罰金
遊休農地(上の1号・2号)で、病害虫の発生、土石の堆積その他の政令で定める事由によって、周辺の営農条件に著しい支障が生じる、または生じるおそれがあるときは、市町村長が期限を定めて、支障の除去や発生の防止のための措置を命じることができます(農地法42条1項)。政令で定める事由の1つが、「農作物の生育に支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は草木の生息又は生育」です(農地法施行令29条1号)。
- 命令に従わないとき:命令に違反した人は、30万円以下の罰金です(農地法66条)。市町村長が自ら措置を行うこともでき、その費用を所有者等に負担させることができます(42条3項・4項)。
- 自治体の案内:泉佐野市は、遊休農地で病害虫の発生や悪臭など支障の除去が必要な場合は、所有者等に速やかな改善をお願いすることがあるとしています(一例)。さいたま市は、遊休農地は火災やゴミの不法投棄、病害虫の発生等の原因になるとしています(一例)。
- 実際の適用件数:除去命令を出した件数は、取得した資料にありませんでした。
固定資産税が上がるのはどの段階か
固定資産税が上がるのは、草が伸びた時点ではなく、農地法36条1項の勧告を受けた後です。農林水産省の「遊休農地の課税の強化」の資料には、次のことが書かれています。
- 対象:農業委員会が農地バンクと協議すべきことを勧告した、農業振興地域内の遊休農地です。勧告が行われるのは、貸付けの意思を表明せず、自ら耕作の再開も行わないなど、遊休農地を放置している場合に限られるとされています。
- 勧告が行われない場合:利用意向調査で農地バンクへの貸付けの意思を表明したときは、機構側の事情で貸付けが行われていなくても、勧告は行われません。また、森林の様相を呈するなど農地として再生不可能で、農業委員会が非農地と判断した場合も、勧告は行われません。
- 課税の方法:通常の農地の評価額は、売買価格に0.55(限界収益率)を乗じたものですが、遊休農地には0.55を乗じません。結果として1.8倍になります。平成29年度からの制度です。
- 解除:勧告のあとで、遊休農地が解消されたと確認された、農地バンクが借り入れた、裁定で農地バンクが権利を取得した、のいずれかになると勧告が撤回され、翌年度以降の課税強化は解除されます。
- 条文:地方税法の附則17条の3は、農地法36条1項の勧告があった農地を「勧告遊休農地」とし、附則17条の4は、勧告遊休農地には農地の固定資産税の特例(附則19条)を適用しないと定めています。
- 適用実績:令和7年1月1日時点で、課税強化の対象になっていたのは全国で427件・67haです。そのうち令和6年1月2日以降に新たに対象になったのは63件・12haです。
周南市は、利用意向調査に未回答の場合や、回答のとおりに対応されていない場合(意向の表明から6か月経過後)は、翌年度から固定資産税の課税が強化されることもあるとしています(一例)。同じ市は、この調査は課税強化を主たる目的としたものではないとも書いています。課税前の通知の時点で、貸す・売る・耕すなどの意向を答えることが、勧告に進まない入口です。
近所から言われたら
- 蒲郡市の案内(一例):「隣の畑から木や草が伸びて敷地内に入ってきている」「害虫や害獣の発生の恐れがある」といった相談が農業委員会に寄せられています。市が民事的な事項に対応すると近隣の関係がこじれることがあるため、管理者が不明なときは、農業委員会が把握している管理者あてに「お願いの文書」を送りますが、その後の対応は任意です。
- 綾川町の案内(一例):相隣問題は町が指導や介入をすることができず、当事者間で話し合って解決します。話し合いがつかないときは、民事調停か裁判です。
- 農地法の窓口:周辺で農業を営む人は、営農条件に著しい支障が生じるおそれがある遊休農地について、農業委員会に措置を求められます(農地法31条)。
- 通知が来たとき:さいたま市・蒲郡市・綾川町は、除草または耕作を再開したら、農業委員会事務局に連絡するよう案内しています(一例)。
- 枝や竹木の越境:隣地へ伸びた枝を相手が切り取れる条件は隣地の竹木の枝が越境してきたらにあります。
自分で刈る場合と、業者に頼む範囲
- 自分で刈る:通知や連絡があったとき、確認できた自治体の案内は、除草または耕作の再開を求めるだけで、刈り方は指定していません。草の量や畑の広さが、自分で刈れる範囲かで決めることになります。
- 業者に頼む:蒲郡市は、自分で刈ることが難しい場合は、有料で専門の事業者に依頼する方法があるとしています。市が事業者を推奨したりあっせんしたりするものではなく、契約や実施内容のトラブルに市は介入できないとも書いています(一例)。
- 草刈り110番の公式サイト:個人でお持ちの畑や空地だけでなく、管理会社や土地のオーナー、学校や病院関係などから依頼を受けているとあります。何ヶ月ごと、半年ごと、1年ごとなど、定期的な草刈りにも対応するとしています。
- 料金:公式サイトの「163円〜/㎡(税込)」は、草刈り・草むしり・芝刈りの料金です。畑の料金は載っていません。対応エリア・加盟店により記載の価格や条件では対応できない場合があるとの注記があります。現地調査のあと無料で見積もりを出し、見積もり後のキャンセルも可能で、確定後の追加料金は発生しないとあります。ただし、対応エリア・加盟店・現場状況により、事前に確認したうえで調査・見積りに費用をいただく場合があるとも書かれています。
- 除草剤:公式サイトのよくある質問は、周辺で米や野菜などを作る田畑があった場合、まず使用してよい環境かの判別から必要になるとしています。見積もりのときに現地を見てもらい、使うかどうかを相談します。
- 防草シートや砂利:農地法4条1項は、農地を農地以外のものにする者は都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。防草シートや砂利を敷く行為がこれに当たるかは、取得した資料に書かれていません。農地を覆う前に、農業委員会に聞いてください。宅地や空き地の防草シートは防草シートの費用は何で決まる?にあります。
耕さない畑を手放す・任せる選択肢
草刈りを続けるのが負担なら、利用意向調査の選択肢にもある次の方法があります。詳しい手続きは別のページに任せます。
- 貸す(選択肢①):農地バンクに貸し付ける方法は相続した農地を売るには?の節6にあります。利用意向調査で貸付けの意思を表明すると、機構側の事情で貸付けが行われなくても勧告は行われない、と農林水産省の資料にあります。
- 売る(選択肢②):農業委員会の許可・転用・売却の手続きと費用は相続した農地を売るには?にあります。
- 国に引き取ってもらう:負担金の金額と、引き取ってもらえない土地の要件は相続土地国庫帰属制度とは?にあります。
- 生産緑地の場合:市街化区域の生産緑地は別の仕組みです。生産緑地を相続したらにあります。
- 名義:調査書は台帳の所有者あてに届くため、相続登記が先です。相続登記の義務化とは?にあります。
よくある質問
畑の草刈りをしないと、法律違反になりますか?
農地法2条の2は、農地の所有者などに「農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない」と定めています。罰則の章(64条〜69条)に、この条文の違反に対する罰則はありません。罰金があるのは、遊休農地で草木などが周りの営農に著しい支障を生じさせ、市町村長の除去命令(42条1項)に従わなかった場合で、30万円以下です(66条)。命令の前に、利用意向調査・勧告・固定資産税の課税強化という流れがあります。
草刈りをしていれば、遊休農地にならないのですか?
取得した資料に、草刈りだけで遊休農地から外れるという記載はありません。農地法32条1項1号は「現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地」を挙げ、国の調査要領はこの1号の中に「草刈り等を行うことにより直ちに耕作することが可能となる農地」という区分を置いています。周南市は、草刈り等のタイミングや作物の種類によっては誤って遊休農地と判断した場合もあるので、調査票に回答してほしいとしています。判断するのは農業委員会ですので、通知が来たら窓口に聞いてください。
固定資産税は何倍になりますか?
農林水産省の資料では、農地法に基づく勧告を受けた遊休農地は、評価額の算定で売買価格に0.55を乗じない扱いになり、結果として1.8倍になります。平成29年度からの制度です。勧告の前に、利用意向調査で機構への貸付けの意思を表明した場合は、機構側の事情で貸付けが行われていなくても勧告は行われないとされています。実際の税額は市区町村が通知する納税通知書で確かめてください。
調査の通知を放っておくとどうなりますか?
農地法36条1項4号は、利用意向調査を行った日から6か月たっても所有者から意向の表明がないときを、農業委員会が勧告する事由に挙げています(正当の事由があるときを除く)。周南市は、利用意向調査に未回答の場合は翌年度から固定資産税の課税が強化されることもあるとしています。調査書は農地台帳の所有者あてに送られるため、相続登記や農業委員会への届出が済んでいないと、亡くなった方の名前で届くことがあります。
近所から草を何とかしてほしいと言われました。市に代わりに刈ってもらえますか?
確認できた自治体の案内では、行政が代わりに刈るという記載はありませんでした。蒲郡市は、近隣の農地の雑草の相談に市が民事的な事項に対応すると関係がこじれることがあるとして、管理者あての「お願いの文書」を送るが、その後の対応は任意としています。綾川町は、相隣問題は町が指導や介入をすることができず、話し合いがつかないときは民事調停か裁判になるとしています。自治体により違うため、農業委員会に聞いてください。
草刈りのあとに、防草シートや砂利を敷いてもよいですか?
農地法4条1項は、農地を農地以外のものにする者は都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。防草シートや砂利を敷く行為がこれに当たるかは、取得した資料に書かれていません。農地を覆う前に、農業委員会に聞いてください。空き家や宅地の防草シートの費用と手順は、別のページにあります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 農地法(第2条の2・第4条・第30条〜第42条・第66条)
- e-Gov法令検索 農地法施行令(第29条)
- e-Gov法令検索 地方税法(附則第17条の3・第17条の4)
- 農林水産省 遊休農地対策について
- 農林水産省 遊休農地の課税の強化
- 農林水産省 遊休農地の課税強化の適用実績(令和7年1月1日時点)
- 農林水産省 遊休農地に関する農地法の措置の概要
- 農林水産省 利用意向調査別記様式(農地法施行規則第74条)
- 農林水産省 遊休農地に関する措置の状況に関する調査要領
- 農林水産省 農地・荒廃農地等の分類と面積について
- 蒲郡市 農地の適正管理について
- さいたま市 農地の適正な管理をお願いします
- 綾川町 農地の適正管理について
- 周南市 農地の「利用状況調査」と「利用意向調査」の実施
- 泉佐野市 農地の管理について(農地利用意向調査)
- 草刈り110番(公式サイト)
- 草刈り110番 料金のご案内
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案の判断は、農業委員会、市町村、税務署、税理士、草刈りの業者などにご確認ください。