相続人代表者指定届とは?|亡くなった人の固定資産税の納税通知書を受け取る相続人を、市区町村に届け出る書類
相続人代表者指定届は、亡くなった人の税金の書類を受け取る相続人を1人決めて、市区町村に届け出る書類です。根拠は地方税法第9条の2で、固定資産税のほか、市民税や軽自動車税なども同じ様式で扱う市区町村があります。届出をしても名義は変わらず、相続登記や相続税の手続でもありません。相続人が複数いて届出がないまま相当の期間がたつと、市区町村が相続人の1人を代表者に指定することがあります。
相続人代表者指定届とは
地方税法第9条の2第1項は、納税者に相続があって相続人が2人以上いるとき、相続人は、その中から被相続人の地方税の賦課徴収(滞納処分を除く)と還付に関する書類を受け取る代表者を指定できる、と定めています。指定した相続人は、その旨を地方団体の長(市区町村長)に届け出ます。
固定資産税の場合、毎年届く納税通知書が、この「賦課徴収に関する書類」にあたります。亡くなった人の名義の土地や家屋の納税通知書を、相続人の誰に送るかを決めるための届出です。
- 名義は変わりません。泉佐野市は、この届出は書類を受け取る代表者を指定するもので、固定資産や軽自動車の所有者名義は変更されないとしています。
- 相続の権利にも相続税にも関係しません。尼崎市・大阪狭山市・加古川市が、相続の権利、相続登記、相続税とは関係がないと注意書きしています。
- 届出の対象は固定資産税に限りません。大阪市は市税の各税目ごとの届出書を案内し、太宰府市は市民税・県民税、軽自動車税、固定資産税・都市計画税、国民健康保険税に共通の様式を用意しています。
誰が、どう届け出るか:全員の同意は要るか
代表者になれる人と届出書の書き方は、地方税法施行令第2条が定めています。
- 代表者の選び方(第1項):被相続人の死亡時の住所または居所と同じ住所を持つ相続人、その他、被相続人の地方税の納付について便宜のある人の中から定めます。
- 届出書に書くこと(第2項):被相続人の氏名・死亡時の住所または居所・死亡年月日/各相続人の氏名・住所または居所・被相続人との続柄・相続分/代表者の氏名・住所または居所。
- 署名(第2項):届出は、代表者を指定した相続人が連署した文書でします。
条文が連署するとしているのは「代表者を指定した相続人」で、「相続人全員」とは書かれていません。実際の様式では、尼崎市が、代表者以外に相続人がいる場合は届出書の裏面に氏名等を書くよう案内しています。加古川市は、相続権を持つ人どうしで相談したうえで、代表者が届出書に記入するよう案内しています。署名や添付書類の求め方は市区町村で異なるため、空き家がある市区町村の様式の注意書きで確かめてください。
尼崎市は、届出の内容について相続人や関係者から異議があって紛争になっても、市は解決に責任を負わないと書いています。代表者は相続人の間で話をして決めておく必要があります。
市区町村の様式名と提出先
様式の名前は市区町村で違います。どの市区町村も、届出書をダウンロードして書き、窓口か郵送で出す形です。
| 市 | 様式名 | 提出先 |
|---|---|---|
| 神戸市 | 相続人の代表者の指定(変更)届出書 | 固定資産税調整課(固定資産税・都市計画税) |
| 尼崎市 | 相続人代表者指定(変更)届 | 資産税課 |
| 泉佐野市 | 相続人(現所有者)代表者指定届 | 税務課 |
| 太宰府市 | 相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書 | 税務課 固定資産税係 |
各市の公式サイト(2026年10月2日に確認)による。神戸市は個人市民税と固定資産税・都市計画税で提出先が分かれている。
添付書類と期限の案内は次のとおりです。
- 神戸市:届出書のほか、手続きをする人の本人確認書類、相続関係のわかる書類(戸籍謄本など)の写し。遺言書などで相続人を代表者に指定する場合は、その写し。
- 尼崎市:届出書に照会番号の記載がない場合は、代表者の本人確認書類を添付。
- 大阪市:お亡くなりになった納税義務者の相続人が、相続が発生した年内に届け出るよう案内。
- 川西市:所有者が亡くなった年の12月末までに相続登記または未登記家屋の名義変更が終わらない場合は、翌年度以降の納税通知書を受け取る代表者の指定が必要。
- 太宰府市:兼用の様式は、納税義務者が亡くなったことを知った日の翌日から3か月を経過した日までに提出。
期限の決め方は市区町村ごとに違います。「いつまで」と一律に言える原文は見つからなかったため、お住まいの市区町村、または空き家がある市区町村の案内で確認してください。
相続放棄をした人は届け出るか
民法第939条は、相続の放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなす、と定めています。代表者を決める相続人には含まれず、市区町村の案内もそのとおりに書かれています。
- 泉佐野市:相続を放棄された方については、この指定届の提出は不要。その場合は、家庭裁判所の「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」のコピーを提出。
- 大阪狭山市:相続権を放棄された場合は、「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」の写しを提出。その場合、届出の提出は不要。
- 加古川市:相続放棄について、家庭裁判所から市に通知はない。手続をした人、これから手続をする予定の人は、市に連絡するよう案内。
家庭裁判所は放棄を市区町村に知らせないため、放棄をした側から受理通知書の写しなどで伝える必要があります。放棄の手続と費用は相続放棄の費用はいくら?、放棄したあとの空き家の管理は実家を相続放棄したら管理義務はどうなる?で整理しています。
出さないとどうなるか
地方税法第9条の2第2項は、すべての相続人または相続分のうちに明らかでないものがあり、相当の期間内に届出がないとき、地方団体の長は相続人の1人を指定して代表者にできるとしています。指定したときは、相続人にその旨を通知します。施行令第2条第3項は、一部の相続人について届出がないときも、この「届出がないとき」に含まれるとしています。
実際の案内では、泉佐野市・大阪狭山市・大阪市が「市が相続人代表者を指定することがある」と書いています。尼崎市は、書類の不着や返戻があって届出の代表者に送るのが不適当と判断したときは、予告なく別の相続人を代表者に指定することがあるとしています。
届出をしなくても、固定資産税がかからなくなるわけではありません。地方税法第343条第2項は、登記簿上の所有者が賦課期日(毎年1月1日、第359条)の前に死亡しているときは、賦課期日に現に土地や家屋を所有している者に課税するとしています。川西市は、相続人が複数いるときは相続人全員が納税義務を承継するとしており、太宰府市は、全員で連帯して納付する義務を負うとしています。
固定資産の現所有者には、別に申告の定めがあります。地方税法第384条の3は、登記名義人が死亡しているときの現所有者に、市町村の条例で定めるところにより、現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日以後の日までに必要事項を申告させることができるとしています。第386条は、この申告をしなかった場合に市町村が条例で10万円以下の過料を定められるとしています。過料を条例に定めているかどうかは市町村ごとに異なるため、自分の市区町村の条例は確認できていません。
相続登記をすると、翌年度からどうなるか
固定資産税は、1月1日に登記簿に所有者として登記されている人にかかります。相続登記が済めば登記名義人が納税義務者になり、代表者届は役目を終えます。
- 尼崎市:対象物件の登記名義人が変更された場合、翌年度以降の納税義務者は新しい登記名義人になり、届出と関係なく新しい登記名義人に告知などが行われる。
- 泉佐野市:固定資産の所有者の変更には法務局での相続登記が必要。賦課期日(1月1日)までに相続登記が終わらない場合は、届出に基づき代表者あてに納税通知書を送る。
- 川西市:この届出書を出した後でも、年内に相続登記をした場合は登記が優先される。
代表者を決めただけでは、相続登記の義務を果たしたことにはなりません。不動産登記法第76条の2は、相続で所有権を取得した人に、取得を知った日から3年以内の登記申請を義務づけています。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(第164条)。相続登記の手順は相続した不動産の名義変更(相続登記)の義務化と相続登記を自分でやる方法、遺産分割がまとまらないときの簡易な方法は相続人申告登記で説明しています。
固定資産税の計算方法と、相続した不動産の納税義務者の考え方は、固定資産税の計算方法と相続した不動産の納税義務者・軽減措置にまとめています。
よくある質問
相続人全員の署名や同意は必要ですか?
地方税法施行令第2条第2項は、届出を「代表者を指定した相続人が連署した文書」でするとしています。条文は「相続人全員」とは書いていません。一方、尼崎市の届出書は、代表者以外に相続人がいる場合に裏面へ氏名等を書く形です。署名欄の作り方や添付書類は市区町村で異なるため、空き家がある市区町村の様式の注意書きを確認してください。
相続人代表者になると、固定資産税を一人で負担することになりますか?
なりません。太宰府市は、現所有者(相続人)が複数いる場合は全員で連帯して固定資産税を納付するとしており、代表者は納税通知書などを受け取る人です。大阪狭山市と加古川市も、この届出は市税の書類の送付先を決めるもので、相続の権利や相続税の手続とは関係がないとしています。負担を相続人どうしでどう分けるかは、相続人の間で決めることになります。
「相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書」とは何ですか?
太宰府市の説明では、「相続人代表者指定届」と「固定資産現所有者申告書」の2つを1枚にした様式です。現所有者の申告は地方税法第384条の3に基づくもので、条文は、市町村が条例で定めるところにより、現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日以後の日までに申告させることができるとしています。太宰府市は、亡くなったことを知った日の翌日から3か月を経過した日までに提出するよう案内しています。
決めた代表者をあとから変えられますか?
変えられます。地方税法施行令第2条第6項は、届出をした相続人が地方団体の長に届け出て、指定した代表者を変更できるとしています。泉佐野市や尼崎市には「変更届」の様式があります。
他の相続人の住所が分からない、連絡が取れないときはどうなりますか?
施行令の届出書には、各相続人の氏名・住所・被相続人との続柄・相続分を書く欄が要ります(第2条第2項第2号)。連絡が取れない相続人がいる場合の扱いは自治体で異なるため、先に市区町村の窓口に相談してください。川西市と加古川市は、戸籍謄本など相続関係の分かる書類の写しを添えるよう案内しています。戸籍の集め方は法定相続情報一覧図の取り方でまとめています。