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建物滅失登記|解体後1か月以内の申請義務・自分でする手順と必要書類・費用・所有者が亡くなっているとき
建物を取り壊したら、所有者は取り壊した日から1か月以内に、法務局へ建物滅失登記を申請しなければなりません。不動産登記法57条の義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(164条1項)。必要なのは申請書と、取り壊した業者が出す建物滅失証明書が中心で、登録免許税は課税の対象に入っていません。登記上の所有者が亡くなっているときは、相続人の1人から申請できます。条文と法務局の記載例で、手順と必要書類を整理します。
| 手順 | やること | 必要なもの |
|---|---|---|
| 1 解体業者に頼む | 契約のときに、取り壊しの証明書を出してもらえるか確かめる | 建物滅失証明書(業者が会社なら会社法人等番号) |
| 2 登記記録を確かめる | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積と、所有者の住所氏名を確認する | 登記事項証明書(不動産番号で省略もできる) |
| 3 申請書を作る | 登記の目的は「建物滅失」。登記原因は取壊しとその日付 | 法務局の様式と記載例、申請人の認印 |
| 4 法務局に出す | 建物の所在地を管轄する法務局に、窓口かオンラインで申請する | 申請書、建物滅失証明書。住所の変更や相続があれば住民票・戸籍など |
| 5 市区町村 | 登記が年内に間に合わないときや未登記のときは、家屋滅失の届出を出す市がある | 市区町村の様式(名称は市による) |
不動産登記法、法務局の申請書様式と記載例、佐賀地方法務局のチェックリスト、かすみがうら市・熊野市の案内から作成(2026年10月3日取得)。
自分はどの場合に当てはまるか
- これから解体する:業者を決める段階で、建物滅失証明書を出してもらえるかを確かめておくと後が楽です(節6)。
- もう解体した:取り壊した日から1か月が期限です。業者の証明書を手元に、手順を進めます(節3)。
- 登記上の所有者が亡くなっている:相続人の1人から申請できます(節4)。
- 業者の証明書がもらえない:節5に、原文で言えることと言えないことを分けて書きました。
- 登記していない建物だった:滅失登記の対象になりません。未登記建物を相続したらに、固定資産税と登記の流れがあります。
- 解体せずに土地を売る:建物を取り壊していなければ、滅失登記の義務は生じません。古家付き土地の売却を見てください。
申請義務と期限:条文のどこに書いてあるか
不動産登記法57条は、建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならないと定めています。解体した場合の「滅失の日」は取り壊した日です。法務局の記載例も、申請書の「登記原因及びその日付」に建物の取壊しの日を書く形になっています。
同法164条1項は、57条の申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとしています。実際にどれだけの件数で科されているかを示す資料は、今回取れた原文にはありません。
28条は、表示に関する登記は、登記官が職権ですることができると定めています。「できる」と書いてあるだけで、申請しなくても登記官が代わりにしてくれると期待できる規定ではありません。1か月を過ぎてしまった場合も、164条の過料は「正当な理由がないのに怠ったとき」が対象です。早く申請する方向で進めてください。
解体の発注者が着工前に出す届出や、解体で気をつける点は、空き家の解体ガイドにまとめています。
自分で出す手順と必要書類
法務局は、建物滅失登記申請書の様式と記載例を公開しています(法務局「不動産登記の申請書様式について」の「4 建物滅失登記申請書」)。記載例の注意書きから、手順ごとにまとめます。
1 建物滅失証明書を用意する
建物が取り壊されたことの証明書です。記載例では、建物を取り壊した工事請負人が作り、建物の表示(所在・家屋番号)、滅失の理由(取壊しの日)、所有者を書いて、「上記のとおり建物を取り壊したことを証明します」と結び、日付・住所・会社名・代表者名に押印しています。
この証明書の真実性を確かめるため、工事請負人が法人のときは、その法人の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書など)と、登記所で交付される代表者の印鑑証明書も、工事請負人から交付されたら添付します。工事請負人が法人でないときは、個人の印鑑証明書です。ただし、法人の会社法人等番号を申請書に書けば、代表者の資格証明書と代表者の印鑑証明書(現在登記所に印鑑を登録している場合に限る)の添付は省略できます。
2 登記記録を確かめる
申請書の建物の表示は、登記事項証明書に記録されているとおりに書きます。不動産番号を書いたときは、所在・家屋番号・種類・構造・床面積を省略できます。登記上の所有者の住所が現在の住所と違うときは、登記記録上の住所から現在の住所までのつながりが分かる住民票の写しや戸籍の附票の写しなどを添付します。
3 申請書を作る
登記の目的は「建物滅失」、添付情報は「建物滅失証明書」です。申請人には、登記記録に記録されている現在の登記名義人の住所と氏名を書き、氏名の末尾に認印を押します。補正が必要なときに法務局から連絡するための電話番号(平日の日中に通じるもの)も書きます。申請書が複数枚になるときは契印が要ります。
4 法務局に出す
提出先は、建物の所在地を管轄する法務局です。管轄外に出すと申請は却下されます。申請の方法は、窓口に書面を出す方法のほか、登記・供託オンライン申請システムによる電子申請があります(不動産登記法18条)。代理人が出すときは委任状が要ります。
5 市区町村の手続を確かめる
熊野市は、滅失登記が完了すると法務局から市に連絡があるので市役所での手続は要らないとしています。一方で、滅失登記をしないとき、または12月末日までに間に合わないときは、市に家屋滅失申告書を出すよう案内しています。かすみがうら市も、滅失登記が取り壊した翌年以降になるときは家屋滅失届を出すよう案内しています。取扱いは市区町村ごとに違うので、固定資産税の窓口に確かめてください。
登記上の所有者が亡くなっているとき
不動産登記法30条は、表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合に、これらの人に相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人が、その表示に関する登記を申請できると定めています。申請にあたっては、相続があったことを証する市町村長や登記官などの公務員が職務上作成した情報(戸籍など)を提供します(不動産登記令7条1項4号)。
法務局の相続登記ガイドブックのQ&Aは、被相続人名義の建物を取り壊した場合の手続を、相続人の1人から、相続人であることが確認できる戸・除籍謄本を添付して、建物滅失の登記を申請できると答えています。取り壊した建物について、先に相続登記をする必要があるとは書かれていません。
佐賀地方法務局のチェックリストによると、添付するのは次の戸籍等です。
- 所有者が死亡した記載のある戸籍
- 申請する人が所有者の相続人であることが確認できる戸籍
- 登記簿に記載されている所有者の住所と所有者の本籍のつながりを確認できる戸籍の附票等(本籍が記載されているもの)
- 相続人(申請人)の住民票又は戸籍の附票
建物は取り壊しても、土地の名義が亡くなった方のままなら、土地の相続登記の義務は別にあります。相続登記の義務化と、相続登記を自分でする方法を見てください。
業者の証明書がもらえないとき
法務局の記載例は、建物を取り壊した工事請負人の証明書を添付する形で作られています。佐賀地方法務局のチェックリストも「建物を取り壊した業者からの証明書が必要」と書いています。
業者が廃業した、連絡がつかない、自分で取り壊した、といった場合に代わりに何を出せばよいかは、今回取れた法務局の案内には書かれていませんでした。ここで推測で書類名を挙げることはしません。申請の前に、建物の所在地を管轄する法務局の登記相談の窓口で、手元の書類(解体工事の契約書、領収書、解体前後の写真など)で受け付けてもらえるかを確かめてください。
参考までに、かすみがうら市は家屋滅失届のとき、取り壊した日を確認できる書類として、解体業者が発行する証明書、工事費用の領収書、取り壊し工事の状況を撮影した日付入りの写真を用意するよう案内しています。これは市への届出の話で、法務局が同じ書類で足りるとは限りません。
確かめる前に解体を済ませる方は、契約のときに証明書の発行を頼んでおくのが確実です(節6)。
解体業者との関係と、解体費用
建物滅失証明書は、建物を取り壊した業者が作る書類です。解体の契約のときに、完了後に建物滅失証明書を出してもらえるか、業者が会社なら会社法人等番号を教えてもらえるかを確かめておきます。会社法人等番号を申請書に書くと、代表者の資格証明書と印鑑証明書の添付が省略できるため、申請の手間が減ります。
解体の費用と補助金は、空き家解体工事の費用相場と補助金にまとめています。解体ローンは空き家の解体ローンを見てください。業者が決まっていない場合は、見積もりを複数取り寄せて、証明書の発行も含めて比べる方法があります。
費用:登録免許税と、頼むときの報酬
| 費用 | かかるか | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 課税の対象に入っていない | 登録免許税法2条、別表第一 一(十五)、不動産登記規則144条1項 |
| 自分で出す場合の実費 | 書類の取得費と、業者に証明書を頼む費用の有無は別。金額は取れた原文にない | 市区町村、解体業者に確認 |
| 土地家屋調査士に頼む場合 | 報酬がかかる。公的な料金表は確認できていない | 事務所ごとに見積もりを取る |
登録免許税法・不動産登記規則・土地家屋調査士法から作成(2026年10月3日取得)。
登録免許税法2条は、別表第一に掲げる登記等について登録免許税を課すと定めています。別表第一の不動産の登記には「登記の抹消(土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く。)」とあり、表題部の登記の抹消は除かれています。不動産登記規則144条1項は、建物の滅失の登記をするとき、登記官は建物の登記記録の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、登記記録を閉鎖すると定めています。別表第一の本文に「滅失」の語はありません。
土地家屋調査士は、他人の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記について必要な調査や、申請手続の代理、提出書類の作成を行います(土地家屋調査士法3条1項1〜3号)。報酬は、公的な料金表を確認できていないため、金額は書きません。事務所によって違うので、依頼の前に見積もりで確認してください。
しないとどうなるか
- 過料:正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。
- 固定資産税:課税の基準日は1月1日です(地方税法359条)。熊野市は、固定資産税には日割り・月割りの制度はなく、1月1日に家屋が存在していれば、2月や3月に取り壊しても課税されるとしています。取り壊したのに手続がないと誤って課税される原因になるとして、かすみがうら市と熊野市は手続を求めています。
- 土地の税額:建物がなくなると、住宅用地の特例が外れて土地の固定資産税が上がります。東京都主税局は、住宅を取り壊して1月1日に空地や建築中になっている場合は特例が適用されないとしています。仕組みは土地の維持費はいくら?にあります。
よくある質問
建物滅失登記は、誰がしなければならないのですか?
登記記録に載っている所有者です。不動産登記法57条は、表題部所有者又は所有権の登記名義人が、滅失の日から一月以内に申請しなければならないと定めています。法務局の記載例も、申請人は登記記録の所有権に関する事項欄(甲区)に記録されている現在の登記名義人で、甲区がない登記記録では表題部の末尾に記録されている所有者です。解体業者が代わりに出す義務はありません。
登録免許税はかかりますか?
登録免許税法2条は、別表第一に掲げる登記について課税すると定めています。別表第一の不動産の登記には「登記の抹消(土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く。)」とあり、表題部の登記の抹消は課税の対象から外れています。不動産登記規則144条1項は、建物の滅失の登記では表題部の登記事項を抹消する記号を記録すると定めています。条文のとおりに読むと、建物滅失登記は登録免許税がかかる登記に入っていません。
自分で申請できますか?土地家屋調査士に頼む必要はありますか?
法務局は申請書の様式と記載例を公開しており、法務局のよくある質問は、申請書は自分で作成して登記所に提出することができ、建物を新築した場合などの表示に関する登記の申請書については土地家屋調査士に作成を依頼することもできるとしています。土地家屋調査士は、他人の依頼を受けて表示に関する登記の申請手続の代理や書類の作成を行う資格者です(土地家屋調査士法3条)。書類の準備や平日の法務局への提出が難しいときは、頼む選択肢になります。
解体業者から取り壊しの証明書がもらえません。どうすればよいですか?
法務局の記載例は、建物を取り壊した工事請負人の証明書を添付する形で、佐賀地方法務局のチェックリストも「建物を取り壊した業者からの証明書が必要」としています。業者が証明書を出さないとき、代わりに何を出せばよいかを定めた法務局の公式な案内は、今回取れた原文にはありませんでした。申請の前に、不動産の所在地を管轄する法務局の登記相談の窓口で、手元にある書類(解体工事の契約書や領収書、解体前後の写真など)で足りるかを確かめてください。
建物滅失登記をしないと、固定資産税は止まりませんか?
固定資産税は1月1日(賦課期日)に存在する家屋に課税されます(地方税法359条)。かすみがうら市と熊野市は、取り壊したのに手続がないと取り壊した家屋に誤って課税される原因になるとして、滅失登記か市への家屋滅失の届出を求めています。熊野市は、滅失登記が完了すると法務局から市に連絡があるので市役所での手続は要らないが、登記をしないとき、または12月末日までに間に合わないときは申告書を出すよう案内しています。市区町村ごとに取扱いが違うため、解体前に固定資産税の窓口にも確かめてください。
登記上の所有者が亡くなっていて、相続登記もしていません。滅失登記はできますか?
できます。法務局の相続登記ガイドブックのQ&Aは、被相続人名義の建物を取り壊した場合、相続人の1人から、相続人であることが確認できる戸籍・除籍謄本を添付して建物滅失の登記を申請できるとしています。不動産登記法30条も、表題部所有者又は登記名義人に相続があったときは、相続人が表示に関する登記を申請できると定めています。取り壊した建物について、先に相続登記をする必要はありません。
登記していない建物を取り壊したときは、どうなりますか?
佐賀地方法務局のチェックリストは、登記がされていない建物については滅失の登記申請はできないとしています。この場合は、市区町村の固定資産税の窓口に家屋滅失の届出(市によって名称は家屋滅失届・家屋滅失申告書)を出します。未登記建物については、未登記建物を相続したときのページにまとめています。
参考・出典
- e-Gov法令検索 不動産登記法(第18条・第28条・第30条・第57条・第164条)
- e-Gov法令検索 不動産登記令(第7条)
- e-Gov法令検索 不動産登記規則(第144条)
- e-Gov法令検索 登録免許税法(第2条・別表第一)
- e-Gov法令検索 土地家屋調査士法(第3条)
- e-Gov法令検索 地方税法(第343条・第359条)
- 法務局 不動産登記の申請書様式について(建物滅失登記申請書)
- 法務局 建物滅失登記申請書の記載例
- 法務局 登記の申請はどのような方法でしなければならないのですか?
- 佐賀地方法務局 不動産登記申請書提出前のチェックリスト(建物滅失)
- 東京法務局 相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)Q&A編
- かすみがうら市 家屋を取り壊したときの手続きについて
- 熊野市 家屋を取り壊したとき
- 東京都主税局 よくある質問
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案の法的な判断は、土地家屋調査士、司法書士、法務局、市区町村の窓口などにご確認ください。