相続登記 読了時間:約8分

未登記建物を相続したら|固定資産税はかかる?表題登記から所有権保存登記までの流れと費用

登記されていない建物も、相続の対象であり、固定資産税の課税対象です。法務局は、相続人名義で建物の表題登記をしたうえで、所有権の保存登記をする流れを案内しています。保存登記の登録免許税は、固定資産課税台帳の価格の0.4%です(評価額300万円の建物なら12,000円)。相続登記の義務化を定める条文は「所有権の登記名義人」がいる不動産が前提で、未登記建物には別に、取得から1か月以内の表題登記の義務が条文にあります。

未登記でも固定資産税はかかる

法務局の相続登記ガイドブックは、納税通知書に建物の記載がある場合について、「登記の有無にかかわらず、現に建物が存在していれば課税の対象となり、納税通知書に記載されます」としています。

地方税法も同じ仕組みです。登記されている家屋は家屋課税台帳に、登記簿に登記されていない家屋で課税できるものは家屋補充課税台帳に、所有者と価格が登録されます(第381条第3項・第4項)。固定資産税の納税義務者は、登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記・登録されている人で、その人が賦課期日(1月1日)前に亡くなっているときは、賦課期日に現に所有している人です(第343条第2項)。

未登記の場合、所有者が亡くなったあとの名義は、法務局ではなく市区町村への届出で変えます。

これは税の台帳の名義を変える手続で、登記ではありません。登記は次の章以降で説明します。

相続登記の義務化の対象になるか

令和6年4月に始まった相続登記の義務は、不動産登記法第76条の2に定められています。条文は、「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」に、相続で所有権を取得した人が、取得を知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請する、という書き方です。

未登記の建物には所有権の登記がなく、登記名義人がいません。そのため、この条文の文言には当たりません。ただし、次の点は別に確認が要ります。

登記期限根拠
表題登記(未登記建物)所有権の取得の日から1か月以内不動産登記法第47条第1項
相続による所有権移転登記(登記名義人がいる不動産)取得を知った日から3年以内第76条の2第1項
申請を怠ったとき正当な理由がなければ10万円以下の過料第164条第1項

不動産登記法の条文による。個別の事案で過料の対象になるかは、法務局または土地家屋調査士に確認してください。

相続登記の義務化そのものの解説は相続した不動産の名義変更(相続登記)の義務化、遺産分割がまとまらないときの簡易な方法は相続人申告登記で説明しています。

表題登記から保存登記までの流れ

  1. 建物が登記されているか確認する。納税通知書に建物が載っていても、登記されているとは限りません。法務局で登記事項証明書を請求して確かめます。表題部だけが登記されていて所有権の登記がない建物は、手順3の所有権保存登記から進みます(法務局ガイドブックQ&A)。
  2. 相続人名義で建物の表題登記をする。法務局は、建物を新築したときの表題登記には図面の作成が必要で、土地家屋調査士に依頼できると案内しています。法務省は、未登記建物の表題登記について、調査や測量を要する申請の代理、法務局に出す書面の作成、これらの相談を業として行えるのは土地家屋調査士に限られるとしています。
  3. 所有権の保存登記をする。表題登記で所有者として記録された人が、所有権の保存登記を申請します。保存登記を申請できるのは、表題部所有者またはその相続人、確定判決で所有権が確認された人、収用で所有権を取得した人です(不動産登記法第74条第1項)。相続登記などの権利の登記の代理を業として行えるのは、司法書士と弁護士に限られます(法務省)。
  4. 市区町村の台帳に反映される。さいたま市は、家屋が登記されたときは登記事項が優先されるとしています。また、登記されている家屋の所有権移転登記をすると法務局から市税事務所に通知されるため、特に連絡は要らないとしています。

費用:登録免許税と専門家の報酬

所有権の保存登記の登録免許税は、登録免許税法の別表第一で、不動産の価額の1000分の4です。法務局の案内では、課税標準は市区町村の固定資産課税台帳の価格で、毎年届く固定資産課税明細書の「価格」または「評価額」の欄の額です(「固定資産税課税標準額」ではありません)。1,000円未満を切り捨てて税率をかけ、100円未満を切り捨てます。1,000円に満たないときは1,000円です。

建物の評価額税率登録免許税
1,000,000円 0.4% 4,000円
3,000,000円 0.4% 12,000円
5,000,000円 0.4% 20,000円

法務局「登録免許税の計算」の計算方法による。住宅用家屋の軽減措置など、税率が下がる場合の要件は別にあります。

遺産分割協議書に建物をどう書くか

家屋番号は、建物の表示に関する登記の登記事項です(不動産登記法第44条第1項第2号)。登記されていない建物には、まだ家屋番号が付いていません。

未登記の建物を協議書にどう特定して書くかについて、公的な記載例は、今回確認した法務局・法務省・市区町村の資料では見つかりませんでした。そのため書き方は載せません。分かっているのは次の点です。

売却するには登記が要る

法務省のQ&Aは、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記をする必要がある、としています。法務局のガイドブックは、登記名義人が亡くなったあとに相続人が登記をしないまま第三者に売却した場合、被相続人から第三者に直接移すことはできず、相続人への相続登記をしてから売買の登記をする、と説明しています。

未登記建物の場合は、まず相続人名義の登記を作る必要があります。つまり、表題登記と所有権保存登記を終えてから、買主への所有権移転登記に進む流れが基本です。建物を残して売るのか、解体して土地だけ売るのかなど、売り方によって必要な手続が変わることがあるため、売却先と司法書士に先に確認してください。

よくある質問

未登記の建物は、相続登記の義務化の対象になりますか?

相続登記の義務を定める不動産登記法第76条の2は、「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」の規定です。所有権の登記がない未登記建物には登記名義人がいないため、この条文の文言には当たりません。ただし、法務省のQ&Aは未登記建物に触れておらず、別に第47条の表題登記の義務があります。法務局は、未登記建物も相続の対象で、相続人名義で建物の表題登記をする必要があると案内しています。

表題登記は自分で申請できますか?

法務省は、未登記建物の表題登記について、調査や測量を要する申請の代理、法務局に出す書面の作成、これらの相談を業として行えるのは土地家屋調査士に限られるとしています。ご自身で申請する場合も、法務局は表題登記に図面の作成が必要になると案内しています。

納税通知書に建物が載っていますが、登記されているか分かりません。

法務局のガイドブックは、登記の有無にかかわらず、現に建物があれば課税の対象となり納税通知書に記載されるとしています。登記の有無は、法務局で登記事項証明書を請求して確認します。

未登記の建物を放置すると、どうなりますか?

固定資産税は、市区町村の課税台帳の名義の人にかかり続けます。加古川市は、届出をしないと課税台帳の所有者が変更されず、亡くなった前所有者に課税されると案内しています。表題登記の申請を正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です(不動産登記法第47条第1項・第164条)。売却や担保にする場面では、相続人名義の登記が前提になります。

未登記の建物にも相続税はかかりますか?

相続税の計算で、家屋は固定資産税評価額と同じ額で評価します(国税庁 No.4602)。未登記の家屋も、市区町村の家屋補充課税台帳に価格が登録されます(地方税法第381条第4項)。相続税がかかるかどうかは、遺産の総額が基礎控除額を超えるかで決まります。評価額の調べ方は固定資産税評価額の調べ方で説明しています。

参考・出典

運

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