相続した家に住むときの手続き|名義変更(相続登記)・住民票・住所変更登記・固定資産税の納税義務者・火災保険・小規模宅地等の特例で相続税は
相続した家に自分で住み始めるとき、登記と届出で法律に期限があるのは3つです。名義変更(相続登記)は相続を知った日から3年以内、住民票は転入・転居した日から14日以内、相続登記のあとに引っ越して登記の住所が変わったときの住所変更登記は2年以内です。固定資産税は毎年1月1日の所有者に課税され、火災保険は契約者が亡くなっていれば名義変更が要ります。相続税の特例(小規模宅地等)は、相続の直前に同居していたかで結論が変わります。
| 何を | いつまでに(原文) | どこへ・根拠 |
|---|---|---|
| 名義変更(相続登記) | 相続で取得したと知った日から3年以内。遺産分割で取得したときは分割の日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 法務局・不動産登記法76条の2・164条1項 |
| 住民票 | 転入・転居をした日から14日以内。正当な理由なく届け出ないと5万円以下の過料 | 市区町村・住民基本台帳法22・23・52条 |
| 住所変更の登記 | 相続登記のあとに引っ越したら、変更があった日から2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料 | 法務局・不動産登記法76条の5・164条2項 |
| 固定資産税 | 毎年1月1日の所有者に課税。登記名義人が亡くなっていれば、その日に現に所有している人 | 市区町村・地方税法343・359条 |
| 火災保険 | 契約者が亡くなっていれば、相続人への名義変更が必要(期限の記載は取得したFAQになし) | 契約の代理店・各社FAQ |
| 相続税 | 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 | 税務署・国税庁 No.4205 |
出典:e-Gov法令検索(不動産登記法は施行日2026年6月24日、地方税法・住民基本台帳法は同年10月1日時点)、国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)、損保ジャパン・東京海上日動・三井住友海上の公式FAQ。いずれも2026年10月2〜3日取得。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の手続きは窓口・専門家にご確認ください。
名義変更(相続登記):住み始める日ではなく、相続を知った日から3年
不動産登記法76条の2第1項は、相続で所有権を取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めています。数えはじめるのは相続を知った日で、家に住み始めた日ではありません。同じ条の2項で、遺産分割で法定相続分を超えて取得した人は、分割の日から3年以内です。
- 過料:正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料です(164条1項)。
- 遺産分割がまとまらないとき:76条の3は、相続人であることを登記官に申し出れば、この義務を履行したものとみなすと定めています(3年の期間内に申し出た場合)。その後の遺産分割で取得したときは、分割の日から3年以内に登記を申請します。詳しくは相続人申告登記のページに整理しています。
登記の義務と申請の流れは相続登記の義務化の解説、費用の目安は相続登記の費用相場、遺産分割の期限との関係は遺産分割に期限はあるかのページにあります。
住民票と、登記の住所
住民票の届出は14日以内
住民基本台帳法は、他の市区町村から引っ越してきたとき(転入)も、同じ市区町村の中で住所を変えたとき(転居)も、その日から14日以内に市区町村長へ届け出るよう定めています(22条・23条)。正当な理由なく届け出ないと5万円以下の過料です(52条2項)。
- 今の住所が別の市区町村なら:引っ越す前に、今の市区町村へ「あらかじめ」転出届を出します(24条)。
- 世帯や世帯主が変わるとき:世帯変更届も、変更があった日から14日以内です(25条。政令で定める者は除かれます)。
相続登記のあとに引っ越したら、住所変更の登記
相続登記で自分が所有者として登記されたあとに引っ越して住所が変わったときは、不動産登記法76条の5により、変更があった日から2年以内に住所の変更登記を申請します。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料です(164条2項)。義務化は令和8年4月1日からです。
期限の数え方や、申請の手間を減らすスマート変更登記は住所変更登記の義務化のページにまとめています。
固定資産税:誰に届くか、住んでいる家の特例
名義が亡くなった親のままでも、固定資産税の納税義務は宙に浮きません。条文は次のとおりです。
| 場面 | 原文の記載 | 根拠 |
|---|---|---|
| 誰に課税されるか | 固定資産税は固定資産の所有者に課する。土地・家屋の所有者とは、登記簿に所有者として登記されている者 | 地方税法343条1・2項 |
| 登記名義人が亡くなっているとき | 登記されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、賦課期日に当該土地・家屋を現に所有している者 | 343条2項 |
| 賦課期日 | 当該年度の初日の属する年の1月1日 | 359条 |
| 現所有者の申告 | 登記されている個人が死亡している場合、市町村長は現所有者に、条例で定めるところにより、現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日以後の日までに、住所・氏名などを申告させることができる | 384条の3 |
| 親に課されるはずだった分 | 被相続人に課されるべき地方団体の徴収金は、相続人が納付する。相続人が2人以上のときは相続分であん分 | 9条1・2項 |
| 住んでいる家の敷地 | 専ら人の居住の用に供する家屋の敷地で政令で定めるものが住宅用地。面積が200㎡以下のものは、課税標準が価格の6分の1 | 349条の3の2第1・2項 |
出典:e-Gov法令検索 地方税法(施行日2026年10月1日時点。2026年10月3日取得)。実際の申告の期限・様式は、条例で定める市区町村ごとに異なります。
相続した家に住む場合、敷地は居住用の家屋の敷地として住宅用地にあたるのが通常です。ただし349条の3の2第1項のかっこ書きは、勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地を住宅用地から除いています。この仕組みは特定空き家のページに、固定資産税の計算は固定資産税の解説と固定資産税の試算ツールにあります。
火災保険と、電気・ガス・水道
火災保険:契約者が亡くなっていれば名義変更
親が火災保険を契約していた場合、公式FAQの回答は次のとおりです。
| 会社 | 公式FAQの回答 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 損保ジャパン | 契約者が死亡した場合は「契約者名義変更等の手続きが必要」 | 取扱代理店。新たに契約者となる法定相続人から連絡 |
| 東京海上日動 | 「相続人へのご契約名義の変更手続」が必要。解約する場合も名義変更の手続きが必要 | ご契約の代理店。相続人から連絡 |
| 三井住友海上 | 「名義変更(相続)手続」が必要。解約する場合も一度名義変更をする | 取扱代理店。相続される方から連絡 |
出典:各社の公式FAQ(2026年10月2日取得)。必要な書類は保険会社・代理店の案内に従ってください。
引っ越して住み始めるときの補償の見直しや、空き家のまま持つ場合の火災保険は空き家の火災保険のページに整理しています。
電気・ガス・水道
使用開始の期限は、法令からは見当たりませんでした。申し込み先は地域ごとに別の電力会社・ガス会社・水道局なので、住み始める前に確認してください。止めていた場合の再開の流れは空き家の電気・ガス・水道のページに、家の防犯は相続した家に住む・貸すときの防犯のページにあります。
相続税:小規模宅地等の特例は、同居していたかで変わる
相続税は、課税価格の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときに申告が必要です(国税庁 No.4152・4205)。基礎控除内なら申告も納税も要りません。自宅の敷地の評価額を下げる小規模宅地等の特例では、被相続人が住んでいた宅地等(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額されます(No.4124)。誰が取得するかで要件が分かれます。
| 取得した人 | 国税庁の要件 | 出典 |
|---|---|---|
| 被相続人の配偶者 | 取得者ごとの要件はない | No.4124 |
| 被相続人と同じ一棟の建物に居住していた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から申告期限まで有していること | No.4124 |
| 上の2つ以外の親族 | 次の6つをすべて満たすこと。①居住制限・非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者でない ②被相続人に配偶者がいない ③相続開始の直前に被相続人の居住の用の家屋に居住していた相続人がいない ④相続開始前3年以内に、取得者・その配偶者・三親等内の親族などが所有する家屋(被相続人が住んでいた家屋を除く)に居住したことがない ⑤相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続開始前のいずれの時にも所有していたことがない ⑥その宅地等を相続開始時から申告期限まで有している | No.4124 |
出典:国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」、No.4152、No.4205(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月3日取得)、租税特別措置法69条の4。
同居していた親族の区分は、要件が「相続開始の直前から」居住していることなので、相続のあとに引っ越してきて住み始めただけでは当たりません。同居していなかった親族の区分は、要件に「住むこと」は書かれていない一方、持ち家がないことなどの条件が並びます。あなたがどちらにあたるかは、税務署か税理士に確かめると安心です。特例を使うには、相続税の申告書にその旨を記載し、計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付します(No.4124)。
要件の全体は小規模宅地等の特例のページ、同居していない親族の特例は家なき子特例のページ、概算の税額は相続税の計算ツールにあります。