相続税 読了時間:約9分

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名義預金とは?|相続税の対象になる判断の基準(誰が出したか・誰が管理していたか・贈与の合意)・申告書の書き方・孫名義・贈与税との違い

名義預金は、口座の名義は家族でも、亡くなった人の財産と認められる預金の通称で、相続税の対象になります。国税庁は、名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは課税対象としています。名義だけでは決まらず、原資を出した人、管理の状況、贈与の事実の有無などで判断されます。

判断の要素名義預金とされやすい贈与と認められやすい
原資を出した人亡くなった人の収入・退職金などが原資で、名義人にその収入がない名義人自身の収入や固有の財産が原資
通帳・印鑑の管理亡くなった人が保管し、手続きも自分で行っていた名義人(未成年なら親権者)が管理し、自由に使える
贈与の合意名義人が口座の存在を知らず、受け取る意思がない贈与の意思表示と受諾があり、贈与が成立している

出典は国税不服審判所の公表裁決事例集(No.74・No.93・No.124)の判断で挙がった要素を整理したものです。個々の事案の結論なので、同じ事情でも同じ結果になるとは限りません。2026年10月3日取得。

国税庁の説明:家族名義の財産は?

国税庁の「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」の3ページに、「Q&A 家族名義の財産は?」があります。問いは、父(被相続人)の財産を整理していたところ、家族名義の預金通帳が見つかった。この預金も相続税の申告に含める必要があるのか、というものです。

答えは、名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは、相続税の課税対象になる、というものです。被相続人の預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で、家族名義や無記名のものも、申告に含める必要があるとされています。

相続税法・民法・国税通則法の条文に「名義預金」という語はなく、国税庁の資料も「家族名義の財産」「名義は異なるが、被相続人に帰属するもの」と書いています。家族名義の預金がすべて課税されるわけではなく、課税されるのは「被相続人の財産と認められるもの」です。

申告書への書き方

国税庁の「相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)」の現金・預貯金等の欄には、「名義は異なるが、被相続人に帰属するものはありませんか(無記名の預金も含みます)」という確認項目があります。

「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」58ページの現金・預貯金等の記載例には、家族名義の財産を記入する場合は、「備考」欄にその財産の名義を記入すると書かれています。記載例には、備考欄に「税務幸子 名義」と書き入れた例があります。

申告書の作り方の全体は、国税庁の「相続税の申告のしかた」をご覧ください。

判断の基準:裁決の3つの事例

国税不服審判所の公表裁決事例集には、家族名義の預貯金が相続財産かどうかを争った裁決が複数あります。裁決事例集No.74は、名義人が誰であるかという形式的な事実だけで判断するのではなく、原資となった金員の出捐者、その管理・運用の状況、贈与の事実の有無等を総合的に勘案して帰属を判断するのが相当としています。このうち出捐者の判断が特に重要な要素とされています。

事例1:妻と子の名義(平成19年10月4日裁決、No.74)

被相続人が家族全員の郵便貯金の残高を書き出したメモを自分で作り、預入限度額の超過を理由に自分名義の郵便貯金を妻と子の名義に書き換えていました。名義人の通帳や証書の多くは、被相続人宅の鍵のかかる引出しに保管され、口座開設や改印の書類の筆跡も被相続人のものでした。原資は被相続人の退職手当などと認められ、妻の固有の収入は別の預金に入っていて、これらの原資にはならないと判断されました。

妻と子は贈与を受けたと主張しましたが、妻は被相続人から贈与を受けたことはないと述べ、贈与税の申告書も出ていなかったため、受贈の意思があったとは認められませんでした。原資が不明だった1口の普通預金を除き、相続財産と判断されています。

事例2:家族・孫の名義(平成25年12月10日裁決、No.93)

原処分庁は、被相続人の妻、子夫婦、孫らの名義の預貯金等を相続財産として、重加算税まで課していました。審判所は、被相続人名義と妻名義の預貯金は妻が管理し、家族と孫の名義の預貯金等は被相続人の印鑑でも妻の印鑑でもない印鑑を使って子夫婦と孫らが管理・運用していたと認定しました。

原資の出捐者は個々の預貯金について認定できず、被相続人から贈与がなかったとも認められないため、預貯金等が誰のものか明らかではなく、被相続人に帰属する(相続財産に当たる)とは認められないとして、原処分は全部取り消されました。裁決は、原処分庁が管理状況や出捐の状況について具体的な主張・立証をしていない点にも触れています。

事例3:毎年一定額を入れていた子の名義(令和3年9月17日裁決、No.124)

被相続人が、毎年一定額を子らの名義の口座に入金していた事案です。贈与証はありましたが、受贈者の署名押印はありませんでした。

出典:国税不服審判所 公表裁決事例集 No.74・No.93・No.124の裁決書(抄)。審判所が認定した事実から要点を抜粋しています。同じ事情でも同じ結果になるとは限らないため、個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。

贈与の合意と、贈与税との違い

民法549条は、贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずると定めています。550条は、書面によらない贈与は各当事者が解除でき、履行の終わった部分は除くとしています。親が子に知らせないまま子の名義で積み立てただけでは、受諾がなく、贈与が成立しない場合があります(事例3の成年の子の口座)。

項目贈与が成立している被相続人の財産と認められる
預金は誰の財産か名義人(受贈者)亡くなった人
関係する税贈与税。暦年課税は年110万円の基礎控除相続税(相続財産に含める)
根拠民法549条、国税庁 No.4402国税庁 申告のしかた Q&A

国税庁 No.4402は、贈与税は個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金で、暦年課税は1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を引いた残りにかかるとしています。

贈与が成立していても、相続開始前7年以内の贈与は、相続税法19条により、相続・遺贈で財産を取得した人については相続税の課税価格に加算されます。条文は「相続又は遺贈により財産を取得した者」について定めています。加算の期間と計算は、暦年贈与の持ち戻しは3年から7年へにまとめています。

孫名義・未成年の子名義

孫名義でも、判断の枠組みは同じで、名義だけでは決まりません。事例2のNo.93は、孫ら名義の預貯金も、管理・運用の状況、原資の出捐者、贈与の事実の有無で判断しています。孫の口座のひとつは、設定時の届出印が被相続人の印鑑でしたが、のちに孫が使う印鑑に改印され、以後は相続人である子夫婦が管理していたことなどから、相続財産とは認められませんでした。

未成年の子や孫の名義では、事例3のNo.124のように、親権者が法定代理人として贈与を受諾し、通帳と印鑑を管理していたことが、名義人のものと認められる事情になった例があります。

孫が相続も遺贈も受けない場合に、孫への贈与が相続税の加算の対象になるかは、暦年贈与の持ち戻しのコラムの「孫への贈与は加算される?」にあります。

いくらから調べられる?時効は?

いくらから調べられるか

国税庁の「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)にも、「相続税の申告のしかた」にも、いくらから調べるという金額の基準は載っていません。同資料は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるのに無申告と想定される事案等について、実地調査を実施しているとしています。調査の件数は、相続税の申告が不要な場合にまとめています。

同資料の調査事例には、被相続人名義の口座から相続人やその家族名義の口座へ多額の預金が移動していることを把握して調査に着手し、相続税の納税を免れる目的で基礎控除以下になるよう預金を移動して無申告だった事例が載っています。増差課税価格は約7億2千万円、追徴税額は約4億3千万円(重加算税有)です。

裁決事例集No.101(平成27年10月2日裁決)には、相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査でも根拠のない答弁をした納税者について、国税通則法68条の重加算税の賦課要件を満たすとした事例があります。

時効に当たる条文

国税通則法70条1項は、更正・決定は、法定申告期限から5年を経過した日以後はできないと定めています。同条5項1号は、偽りその他不正の行為によって税額の全部または一部を免れた国税の更正決定等は、同じ期限から7年を経過する日までできるとしています。

72条は、国税の徴収権は、法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅すると定めています。これらは条文の定める期間で、何年経てば安全といった目安をこのページでは示しません。個々の事案の期間は、税務署または税理士にご確認ください。

ほかの手続き

よくある質問

名義預金とは何ですか?

口座の名義は家族でも、実質的には亡くなった人の財産と認められる預金を指す通称です。相続税法・民法・国税通則法の条文には「名義預金」という語はありません。国税庁は「家族名義の財産」として、名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になるとしています。

名義預金かどうかは、何で決まりますか?

名義だけでは決まりません。国税不服審判所の裁決事例集No.74は、名義人が誰かという形式的な事実だけで判断せず、原資となった金員の出捐者、管理・運用の状況、贈与の事実の有無などを総合的に勘案して帰属を判断するとしています。このうち原資の出捐者の判断が特に重要な要素とされています。

名義預金は、相続税の申告書にどう書きますか?

国税庁の「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」は、被相続人の財産と認められる家族名義の預貯金は申告に含める必要があるとし、記載例では、家族名義の財産を記入する場合は「備考」欄にその財産の名義を記入するとしています。

孫名義の預金も、相続財産になりますか?

孫名義でも、名義だけでは決まらず、原資・管理・贈与の事実で判断されます。裁決事例集No.93は孫らの名義の預貯金も同じ枠組みで判断しており、孫の口座は、設定時は被相続人の印鑑でしたが、のちに孫が使う印鑑に改印され、以後は相続人である子夫婦が管理していたことなどから、相続財産とは認められませんでした。個々の事案の結論なので、同じ事情でも同じ結果になるとは限りません。

贈与税の申告をしていれば、名義預金にならないのですか?

申告の有無だけで決まるとは書かれていません。裁決事例集No.74では、贈与税の申告書が出ていないことが、名義人に受贈の意思があったと認められない事情のひとつとされました。No.93では、贈与税の申告がないというだけでは、贈与がなかったとは認められませんでした。贈与があったかどうかは、贈与の意思表示と受諾があったか(民法549条)で見ます。

名義預金に時効はありますか?

条文にあるのは、国税通則法70条の更正・決定ができる期間の制限と、72条の国税の徴収権の消滅時効です。70条1項は、法定申告期限から5年を経過した日以後は更正・決定ができないとし、同条5項は、偽りその他不正の行為で税額を免れた国税についてはその期限から7年を経過する日までできるとしています。個々の事案がどちらに当たるかは、税務署または税理士にご確認ください。

名義預金は、いくらから調べられますか?

国税庁の「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」にも、「相続税の申告のしかた」にも、金額の基準は載っていません。同資料は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、無申告と想定される事案等について実地調査をしているとしています。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の預金が相続財産に当たるかどうかや税額は、税務署または税理士にご相談ください。

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