相続税 読了時間:約8分

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相続税の債務控除とは?|差し引ける債務(借入金・未払金・税金)・差し引けないもの(墓の未払代金・保証債務)・誰の負担になるか・相続放棄した人

債務控除は、被相続人が死亡したときに現に存在した債務(借入金や未払金など)で、確実と認められるものを、遺産総額から差し引く制度です。差し引けるのは、その債務を負担する相続人や包括受遺者で、生前に買った墓の未払代金や、原則として保証債務は差し引けません。

債務差し引けるか根拠
借入金・未払金差し引ける(死亡時に現に存在し確実なもの)No.4126、相続税法13条・14条
死亡後に相続人が納める所得税など差し引ける(死亡時に確定していなくてもよい)No.4126、相続税法施行令3条
延滞税・加算税(相続人の責任によるもの)差し引けないNo.4126、相続税法施行令3条
生前に買った墓の未払代金差し引けないNo.4126、基通13-6
保証債務原則は差し引けない。例外ありNo.4126のQA、基通14-3

出典は国税庁のタックスアンサー No.4126(令和8年4月1日現在法令等)、相続税法基本通達、e-Gov法令検索の相続税法・同施行令。2026年10月3日取得。葬式費用は債務ではありませんが、同じく遺産総額から差し引けます(別のコラムにまとめています)。

差し引ける債務

基本の考え方

国税庁 No.4126は、差し引ける債務を、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で、確実と認められるものとしています。相続税法14条1項も、控除する債務は「確実と認められるものに限る」と定めています。

国税庁の解説に、医療費、クレジットカード、ローンといった個別の項目名ごとの一覧はありません。個々の債務が当てはまるかは、「死亡時に現に存在し、確実と認められるか」で見ることになるため、迷うときは税務署または税理士にご確認ください。

死亡後に納める税金

被相続人に課される税金で、被相続人の死亡後に相続人などが納付または徴収されることになった所得税などは、死亡時に確定していないものでも、債務として差し引けます(国税庁 No.4126)。

相続税法施行令3条は、被相続人の死亡の際に納税義務が確定しているもののほか、死亡後に相続税の納税義務者が納付したり徴収されたりすることになった税額として、被相続人の所得に対する所得税額、消費税、酒税などを挙げています。被相続人の死亡後に出す準確定申告との関係は、準確定申告とは?にまとめています。

葬式費用は別枠

葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引けます(国税庁 No.4126)。どこまでが葬式費用かは、葬儀費用と香典は相続税でどう扱う?にあります。

差し引けないもの

項目扱い根拠
延滞税・加算税(相続人の責任によるもの)差し引けないNo.4126、相令3
生前に買った墓の未払代金差し引けない相法13③、基通13-6
保証債務原則差し引けない基通14-3
消滅時効が完成した債務差し引けない基通14-4
相続財産に関する費用債務ではない基通13-2

相法は相続税法、相令は相続税法施行令、基通は相続税法基本通達の略です。

墓の未払代金

墓地や墓石など日常礼拝をしている物は、相続税がかからない非課税財産です。国税庁 No.4126は、非課税財産に関する債務は遺産総額から差し引けないとしています。相続税法基本通達13-6も、被相続人が生前に墓碑を買い入れてその代金が未払のときは、その未払代金は債務として控除しないと定めています。

保証債務

国税庁 No.4126のQAは、保証債務は原則として債務控除の対象にならないとしています。保証債務は、履行したときに求償権の行使で補てんされる性質があり、確実な債務とはいえないためです。

ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、主たる債務者に求償しても弁済を受ける見込みがない場合は、その弁済不能部分の金額は債務控除の対象になります。相続税法基本通達14-3は、連帯債務についても、弁済不能者の負担部分を負担しなければならないと認められる場合の扱いを定めています。

相続財産に関する費用

相続税法基本通達13-2は、民法885条の規定により相続財産の中から支払う相続財産に関する費用は、債務控除の債務にならないとしています。相続登記の費用も、債務控除にはなりません(詳しくは相続登記の費用の相場にあります)。

誰の負担になるか

債務や葬式費用を差し引けるのは、その債務などを負担することになる相続人や包括受遺者です(国税庁 No.4126)。相続税法13条1項は、財産から控除する金額を「その者の負担に属する部分の金額」としています。

相続税法基本通達13-3は、この「負担に属する部分の金額」を、相続または遺贈で財産を取得した人が実際に負担する金額としています。実際に負担する金額が確定していないときは、民法の規定による相続分、または包括遺贈の割合に応じて負担する金額として扱います。

状況控除する金額根拠
実際の負担額が決まっている実際に負担する金額基通13-3
負担額が決まっていない相続分・包括遺贈の割合に応じた金額基通13-3

相続分の割合どおりに負担すると、取得した財産の価額を超える場合の扱いも、基通13-3のただし書きにあります。

日本国内に住所がない相続人などで、国税庁 No.4126が挙げる区分に当てはまらない人は、差し引ける債務の範囲が限られ、葬式費用も差し引けません。海外に住んでいる場合の区分は、国税庁 No.4138(相続人が外国に居住しているとき)にあります。

相続放棄した人・相続人でない人

立場債務控除根拠
相続放棄をした人法13条の適用なし。葬式費用を実際に負担したときは例外基通13-1
相続人でない人への特定の財産の遺贈法13条の対象は包括遺贈と相続人への遺贈相法13①

放棄した人が被相続人の借入金などを実際に返した場合の扱いは、税務署または税理士にご確認ください。

相続税法基本通達13-1は、相続を放棄した人と相続権を失った人には法13条の適用がないとしています。その人が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合に限り、その負担額を、遺贈で取得した財産の価額から債務控除してよいとされています。

相続税法13条1項の対象は、相続、包括遺贈、被相続人から相続人への遺贈で財産を取得した人です。相続人でない人が特定の財産の遺贈を受けるだけの場合は、この条文の対象に入っていません。

書面の証拠と金額が未確定のとき

相続税法基本通達14-1は、債務が確実かどうかについて、必ずしも書面の証拠があることを必要としないとしています。

債務の金額が確定していなくても、債務の存在が確実と認められるものは、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除します。

申告にどんな資料を添えるかは、国税庁の解説では示されていません。申告書の提出先の税務署または税理士にご確認ください。申告で全員が出す書類は、相続税の申告に必要な書類は?にまとめています。

計算例

次の前提で、国税庁の考え方を当てはめた当サイトの試算です。実際の判断は、事情に応じて税務署または税理士にご確認ください。

項目計算金額
差し引ける債務借入金800万円+所得税20万円(墓の未払100万円は不可)820万円
債務控除後の合計額5,000万円-820万円4,180万円
基礎控除額3,000万円+600万円×2人4,200万円

債務を引かない5,000万円のままなら基礎控除額4,200万円を超えますが、引いたあとの4,180万円は基礎控除額の範囲内です。国税庁 No.4205は、範囲内なら申告も納税も必要ないとしています。

申告は要るか・ほかの手続き

国税庁 No.4205は、申告と納税が必要なのは、債務などの金額を控除したあとの財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合としています。

よくある質問

相続税の債務控除とは何ですか?

国税庁 No.4126は、相続税を計算するときに、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引けるとしています。差し引ける債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した債務(借入金や未払金など)で、確実と認められるものです(相続税法13条・14条)。

被相続人の死亡後に納める所得税(準確定申告)は債務控除できますか?

国税庁 No.4126は、被相続人に課される税金で、被相続人の死亡後に相続人などが納付または徴収されることになった所得税などは、被相続人が死亡したときに確定していないものでも、債務として遺産総額から差し引けるとしています。相続税法施行令3条にも、被相続人の所得に対する所得税額が挙がっています。

延滞税や加算税は差し引けますか?

相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは、遺産総額から差し引けません(国税庁 No.4126、相続税法施行令3条ただし書)。

生前に買ったお墓の未払代金は債務控除できますか?

差し引けません。国税庁 No.4126は、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は遺産総額から差し引けないとしています(相続税法13条3項、相続税法基本通達13-6)。

被相続人が誰かの保証人になっていた場合、その保証債務は債務控除できますか?

原則として対象になりません。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、主たる債務者に求償しても弁済を受ける見込みがない場合には、その弁済不能部分の金額は債務控除の対象になります(国税庁 No.4126のQA、相続税法基本通達14-3)。

相続放棄をした人は債務控除を受けられますか?

相続税法基本通達13-1は、相続を放棄した人については、債務控除を定めた相続税法13条の適用はないとしています。ただし、その人が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合は、その負担額を、遺贈で取得した財産の価額から債務控除してよいとされています。

債務の金額が確定していなくても、債務控除できますか?

相続税法基本通達14-1は、債務の金額が確定していなくても、債務の存在が確実と認められるものは、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するとしています。債務が確実かどうかは、必ずしも書面の証拠があることを必要としないとも書かれています。

債務控除を使えば相続税の申告は不要になりますか?

国税庁 No.4205は、申告が必要なのは、債務などの金額を控除したあとの財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合で、基礎控除額の範囲内なら申告も納税も必要ないとしています。申告が要るかどうかの見方は、別のコラム(相続税の申告が不要な場合)にまとめています。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の債務が控除できるかどうかや金額は、税務署または税理士にご相談ください。

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