相続手続き 読了時間:約9分

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特別受益と寄与分とは|親の介護・家業の手伝いは遺産分割に反映されるか・生前贈与や住宅資金の援助は特別受益か・持ち戻しの計算例と免除・10年の期限・相続人以外の特別寄与料

相続人が生前に受けた贈与や遺贈は「特別受益」として遺産に加えて計算し、受けた分を引きます。親の介護や家業の手伝いなどの貢献は「寄与分」として、遺産から先に取り分けて貢献した人に足します(民法903条・904条の2)。寄与分は共同相続人に限られ、相続人でない親族の介護は「特別寄与料」の別の制度です(民法1050条)。どちらも、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では原則として使えません(民法904条の3)。

場面特別受益か寄与分か根拠
親の療養看護を続けた子寄与分(「特別の寄与」といえるとき)904条の2第1項
親の店・農業を手伝った子寄与分(事業に関する労務の提供)904条の2第1項
親の事業に資金を出した子寄与分(財産上の給付)904条の2第1項
結婚・養子縁組のとき親から援助を受けた子特別受益903条1項
家を買う資金を親からもらった子特別受益(生計の資本に当たるかが論点)903条1項
遺言で家を特定の子に遺贈された特別受益903条1項
子の妻が義父を無償で介護した特別寄与料(相続人でない親族)1050条
婚姻20年以上の夫婦で自宅を配偶者に贈与持ち戻さない意思の推定903条4項

出典は民法903条・904条の2・1050条(2026年10月3日取得、版 2026年6月24日)。当てはまるかは、個別の事情で変わります。

特別受益と寄与分の違い

2つは向きが逆です。特別受益は、すでに多くもらった人の取り分を減らす調整、寄与分は、貢献した人の取り分を増やす調整です。どちらも、法定相続分で分けると不公平になる場面を直すためのもので、結果として各人の相続分(具体的相続分)が変わります。

法定相続分の割合そのものと、介護や同居が割合に反映されるかの大枠は、法定相続分の割合(介護や同居は割合に反映されるかの節)にあります。このページでは、場面ごとにどちらに当たるかと、持ち戻しの計算を扱います。

寄与分:介護・家業の手伝いは反映されるか

寄与分が認められる人と行為

民法904条の2第1項は、次の人と行為を挙げています。

  1. 共同相続人であること。相続人でない親族は寄与分の対象外で、特別寄与料(後述)の制度になります。
  2. 次のいずれかの方法であること。被相続人の事業に関する労務の提供、事業に関する財産上の給付、療養看護、その他の方法。
  3. 被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をしたこと。

「特別の寄与」に当たる期間や程度を、数字で決めた条文はありません。協議で決めた寄与分を遺産から先に控除し、残りを法定相続分で分けたものに寄与分を加えます。協議が調わないときは、家庭裁判所が、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を定めます(同条2項)。寄与分の上限は、相続開始時の財産の価額から遺贈の価額を引いた残額です(同条3項)。

仕組みの計算(仮の数字)

遺産が3,000万円で、子2人のうち1人に寄与分200万円が認められたとします(200万円は、計算の仕組みを見るための仮の数字で、実際の水準ではありません)。遺産から寄与分を引いた2,800万円を2人で分けると1,400万円ずつで、寄与した子は寄与分を足して1,600万円、もう1人は1,400万円です。

申し立てるときの注意

寄与分の請求は、遺産分割の請求(民法907条2項)があった場合などにすることができます(同法904条の2第4項)。寄与分だけを単独で決めるものではありません。裁判所の案内も、寄与分を定める処分調停が不成立になって審判に進むときは、遺産分割審判の申立てをしないと不適法として却下されるとしています。

特別受益:生前贈与や住宅資金は持ち戻すか(計算例)

特別受益になる贈与

民法903条1項は、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けた人、または婚姻もしくは養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた人がいるときに、その価額を遺産に加えるとしています。住宅資金の援助が「生計の資本」に当たるかは、金額や使い道の基準が条文に書かれていないため、話し合いで決まらなければ家庭裁判所が判断します。

持ち戻しの計算例(当サイト試算)

前提:被相続人は父、相続人は長男と長女の2人(母はすでに他界)。相続開始時の遺産は、実家(評価額2,000万円)と預金1,000万円で合計3,000万円。長男は生前に、家を買う資金として600万円の贈与を受け、これが特別受益と認められたとします。贈与の価額は、相続開始の時に原状のままであるものとして定めます(民法904条)。

項目持ち戻さない場合持ち戻す場合
相続開始時の遺産3,000万円3,000万円
計算の元にする額(贈与600万円を加える)3,000万円3,600万円
子1人あたりの相続分(2分の1)1,500万円1,800万円
長男が遺産から受ける額(贈与600万円を引く)1,500万円1,200万円
長女が遺産から受ける額1,500万円1,800万円

当サイト試算。前提は上の本文のとおり。民法903条1項の方法で計算しています。

長男が実家(2,000万円)を取り、長女が預金(1,000万円)を取るなら、持ち戻さない場合は長男が長女へ500万円、持ち戻す場合は800万円を支払って調整します(家を1人が取り、他の相続人にお金を払う方法は代償分割のページにあります)。差の300万円は、贈与600万円の半分です。

贈与が遺産を超える場合の扱いも、条文にあります。贈与の価額が相続分に等しいか超えるときは、受贈者はその相続分を受けることができません(民法903条2項)。

相続税の「持ち戻し」とは別の話です。相続開始前3年から7年に延びる贈与の加算は、相続税の税額を計算するための仕組みで、遺産の分け方は変えません(暦年贈与の持ち戻し7年)。民法の持ち戻しは、誰がいくら受け取るかを決めるための計算です。

持ち戻しの免除:引かなくてよいという意思

被相続人が、特別受益として引かなくてよいという意思を表示していたときは、その意思に従います(民法903条3項)。条文は、意思を表示する方式を定めていません。表示があったかどうか、どんな内容だったかは、事実として確かめることになります。

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、他方に対して居住用の建物またはその敷地を遺贈または贈与したときは、持ち戻しの規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定されます(同条4項)。推定なので、反対の事情があれば覆ります。

持ち戻しを免除しても、遺留分の計算は別の規定で動きます。民法1044条3項は、遺留分の算定に加える相続人への贈与を、相続開始前10年のうち、婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本として受けたものに限っています。この条文に、持ち戻しの免除があるかどうかの区別はありません。遺留分の割合と金額は遺留分の計算機、不動産の評価は遺留分の計算で不動産はどう評価するかにあります。

主張できる期限:10年と、特別寄与料の6か月・1年

特別受益と寄与分:相続開始から10年

民法904条の3は、特別受益(903条・904条)と寄与分(904条の2)の規定を、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割には適用しないと定めています。10年を過ぎると、法定相続分(または指定相続分)で分けるのが原則です。次の2つの例外があります。

  1. 10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。
  2. 10年の期間の満了前6か月以内に、遺産分割を請求できないやむを得ない事由が相続人にあり、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に家庭裁判所に請求したとき。

令和5年4月1日より前に開始した相続の経過措置など、10年の数え方は遺産分割に期限はある?10年を過ぎると変わることに整理しています。

相続人でない親族の特別寄与料:6か月または1年

民法1050条の「特別寄与者」は、相続人、相続の放棄をした人、欠格・廃除で相続権を失った人を除く、被相続人の親族です。特別寄与料の額は、協議で決め、まとまらないときは家庭裁判所に処分を請求します。申立てができるのは、相続の開始と相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始の時から1年以内です(同条2項、裁判所の案内)。額の上限は、相続開始時の財産の価額から遺贈の価額を引いた残額で(同条4項)、相続人が数人いるときは、各相続人が相続分に応じて負担します(同条5項)。

裁判所は、令和元年7月1日より前に開始した相続について、この申立てはできないとしています。

制度期限根拠
特別受益・寄与分相続開始から10年(例外あり)904条の3
特別寄与料知った時から6か月以内、かつ相続開始から1年以内1050条2項
民法の持ち戻し贈与が何年前かの限定はなし(10年経過後の遺産分割を除く)903条

出典:民法903条・904条の3・1050条、裁判所「特別の寄与に関する処分調停」(2026年10月3日取得)。

話し合いがまとまらないとき

特別受益や寄与分で意見が割れたまま協議書にサインすると、あとから争いにくくなります。協議でまとまらないときの家庭裁判所の流れと費用は遺産分割調停、まとまったときに書く内容は遺産分割協議書の書き方のページにあります。

相続税の申告を任せる例として、相続アシスト(税理士法人SWATSとSWATS法律事務所の共同運営)の公式サイト(2026年10月3日取得)には、「グループ内に弁護士が在籍しているため、万が一の相続トラブルにも迅速に対応可能。遺産分割や相続放棄といった揉め事にも…無料で相談できます」とあります。対応は東京・神奈川・大阪・京都・兵庫の案件で、無料相談(電話・オンライン)は15分程度、手続き面談を経て契約するまでは費用がかかりません。一方、手続きの流れには「必要に応じて、弁護士オプション」ともあるので、揉め事の相談にどこまで含まれるかと費用は、面談で確かめてください。

よくある質問

親の介護をした長男は、ほかの兄弟より多くもらえますか?

介護をしたという事実だけで、割合が自動で変わる定めは民法にありません。共同相続人が、療養看護などで被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をしたといえるときに、寄与分が認められます(民法904条の2第1項)。寄与分は共同相続人の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めます(同条2項)。認められる額の水準は条文に書かれていません。

兄弟の1人だけ、生前に家を買う資金をもらっていました。遺産から引かれますか?

共同相続人の1人が「生計の資本として贈与を受けた」ときは、その贈与の価額を遺産に加えて各人の相続分を計算し、贈与を受けた人の相続分からその額を引きます(民法903条1項)。住宅資金の援助が生計の資本に当たるかは、金額や使い道の基準が条文に書かれていないため、話し合いで決まらなければ家庭裁判所が判断します。被相続人が「引かなくてよい」という意思を表示していたときは、その意思に従います(同条3項)。

特別受益の持ち戻しは、何年前の贈与までさかのぼりますか?

民法903条は、贈与の時期を何年前までと限る定めを置いていません。ただし、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として特別受益の規定そのものを適用しません(民法904条の3)。相続税の「持ち戻し」(相続開始前3年から7年へ延びる贈与の加算)は、税額を計算するための別の仕組みで、遺産の分け方を決める民法の持ち戻しとは関係がありません。

亡くなって10年以上たっていると、特別受益も寄与分も主張できませんか?

相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割には、特別受益と寄与分の規定を適用しません(民法904条の3)。ただし、10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したときなど、例外が2つあります。令和5年4月1日より前に開始した相続の経過措置は、遺産分割に期限があるかを扱ったページにまとめています。

長男の妻が義父を介護しました。遺産を受け取れますか?

相続人でない親族が、無償で療養看護その他の労務の提供をして、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたときは、相続人に対して特別寄与料の支払を請求できます(民法1050条1項)。協議がまとまらないときの家庭裁判所への申立ては、相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年を過ぎるとできません(同条2項、裁判所の案内)。令和元年7月1日より前に開始した相続には申し立てられません。

寄与分や特別受益で話し合いがまとまらないときは、どこへ申し立てますか?

遺産分割そのものは、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。寄与分は、寄与した共同相続人が、寄与分を定める処分調停として申し立てます(申立ての費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手)。寄与分の調停が不成立になって審判に進む場合も、遺産分割審判の申立てが別に必要で、申し立てないと不適法として却下されると、裁判所は案内しています。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の遺産の分け方や寄与分・特別受益の可否は、家庭裁判所、弁護士または司法書士にご確認ください。計算例は当サイトの試算で、実際の結果を示すものではありません。

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