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オーバーローンの家は売れる?|抵当権の抹消・差額の扱い・任意売却と競売の違い・相続した家にローンが残っているとき
売却額がローン残高に届かないとき(オーバーローン)は、抵当権を外す段取りを先に決める必要があります。住宅金融支援機構のパンフレットの流れは、代金の決済と同時に、抵当権を抹消する書類を引き渡す形です。外す道は、差額を用意して完済するか、抵当権者に抹消に応じてもらうか(任意売却と呼ばれます)のどちらかで、売れないまま進まなければ、債権者が競売を申し立てることもできます。任意売却の語は民法・民事執行法に見つからず、債権額に満たなかった分の返済義務は残ると機構は案内しています。
| 場面 | できること | 確かめること |
|---|---|---|
| 売却額でローンを全額返せる | 決済で完済し、抵当権者から届く書類で抹消の登記を申請する(法務局) | 残高と決済日 |
| 届かないが、差額を自己資金で払える | 差額を足して完済すれば、同じ流れで抹消できる | 残高証明書、金融機関への事前連絡 |
| 届かず、新居を買う予定がある | 完済できない分を新居のローンに含められる商品がある(りそな銀行の住みかえローンは最大1,000万円・諸条件あり) | 金融機関ごとの商品と審査 |
| 届かず、差額も用意できない | 抵当権者に抹消に応じてもらって売る「任意売却」。残った債務の返済義務は残る(機構の案内) | 抵当権者への相談、後順位の権利者の有無 |
| 任意売却が進まない | 債権者が担保不動産競売を選べる(民事執行法180条) | 機構は媒介契約から6か月で買い手が現れないと競売に着手する場合がある |
| 相続した家にローンが残っている | 団信の保険金で返済に充てられる場合がある。入っていなければ相続人が承継する(民法896条) | 団信の加入有無、借入先 |
民法、民事執行法、法務局、住宅金融支援機構、裁判所、りそな銀行の公開情報から作成(2026年10月3日取得)。
自分はどの場合に当てはまるか
- 売却の査定額を聞いたら、ローン残高に届かなかった:節2で抵当権を外す段取りを見て、節3で差額の道を選びます。
- 返済が苦しくなって、売ることを考えている:節3と節4に、任意売却と競売の違いを書きました。個別の返済計画は、借入先と専門家に相談してください。
- 親から相続した家にローンが残っている:節5から読んでください。団信の扱いと、相続人が承継するものを書きました。
- 固定資産税の滞納で差押えが付いている:差し押さえられた不動産のページに流れをまとめました。
売るには抵当権の抹消が要る
抵当権は、債務者や第三者が占有を移さずに担保に差し出した不動産から、他の債権者より先に自分の債権の弁済を受けられる権利です(民法369条1項)。住宅ローンでは、多くの場合、貸した金融機関が家に抵当権を付けています。
法務局の案内は、ローンを完済したときの流れを次のように示しています。完済すると、抵当権者である金融機関から、登記識別情報(または登記済証)、「解除証書」や「弁済証書」といった登記原因証明情報、会社法人等番号、委任状が送られてきます。所有者は登記申請書を作って、これらを添えて法務局に抹消の登記を申請します。金融機関の書類に日付や不動産の表示の記載漏れがないかも、確かめる点に挙げられています。
売却の場面では、この書類の受け渡しが売買の代金の決済と重なります。機構のパンフレットは、売買契約のあとの代金決済の段階で、売買代金の決済と抵当権抹消書類の引き渡しを行う流れを示しています。だから、決済日までに、抹消に必要な額を用意するか、抵当権者に抹消に応じてもらう必要があります。
抵当権の登記の抹消のしかたと、相続した家に古い抵当権が残っている場合は、相続した家の抵当権抹消のページに、根抵当権は根抵当権のページにあります。
買い手の側にある「抵当権消滅請求」
民法には、抵当権のある不動産を買った人(第三取得者)が、抵当権を消すよう請求する手続があります(379条から386条)。第三取得者は、登記をした各債権者に、取得の原因や代価などを書いた書面を送ります。債権者が2か月以内に競売を申し立てないときは、その代価を承諾したものとみなされ(384条)、承諾を得た額を払い渡すか供託すると、抵当権は消滅します(386条)。債権者が2か月以内に競売を申し立てれば、代価を承諾したものとはみなされません。
主たる債務者、保証人とその承継人は、この請求ができません(380条)。売る側(債務者)が使う手続ではありません。
差額が出るときの道
売却額と、ローンの残高や抹消に必要な費用との差額が出るときに、取れる道を並べます。どれを選ぶかは、家計の状況や借入先の条件で変わるため、ここでは決めません。
- 差額を自己資金で払って完済する。完済すれば、節2の流れで抵当権者から抹消の書類が届きます。決済日に間に合うよう、借入先に残高と手続を確かめます。
- 新居のローンに含める。新居を買う場合に、旧居の売却で完済できない分を新居のローンに含められる商品があります。りそな銀行の住みかえローンは、残ったローン金額分を新居分の住宅ローンに含めて借りられ(最大1,000万円まで)、旧居のローンが他の金融機関のものでも使えるとしています。借入には諸条件があると書かれており、取り扱いの有無と条件は金融機関で違います。
- 抵当権者に抹消に応じてもらって売る(任意売却)。節4に流れを書きました。
- 債権者が競売を申し立てる。民事執行法180条は、不動産を目的とする担保権の実行は、担保不動産競売または担保不動産収益執行のうち債権者が選んだ方法で行う、と定めています。裁判所の案内では、担保不動産競売は、債権者が債務者の不動産に抵当権などの担保権を持っているときに、その不動産を売却して債権を回収する手続です。
差額の金額やローンの残り方は、人によって大きく違います。売却額の目安はここには載せません。査定額と、借入先の残高証明書の数字で見比べてください。
任意売却と競売は何が違うか
住宅金融支援機構は、返済の継続が困難になった場合に、融資住宅の任意売却で残債務を圧縮することも検討してほしいと案内し、任意売却を勧める理由を3つ挙げています。通常の不動産取引として売買されるため一般に競売より高値で売却できることが期待される点、売却代金から不動産仲介手数料や抹消登記費用などを控除できる場合がある点、競売より引渡しの時期を調整しやすい点です。
| 項目 | 任意売却(機構の案内) | 競売(裁判所の案内) |
|---|---|---|
| 手続の性質 | 強制的な物件処分ではなく、通常の不動産取引 | 債権者が地方裁判所に申し立て、担保権を実行して売却する手続 |
| 買い手を探す方法 | 仲介業者が販売活動を行う。売出価格は機構が確認して通知する | 入札。買受可能価額は、売却基準価額から10分の2を引いた額 |
| 売却代金の行き先 | 仲介手数料や抹消登記費用などを控除できる場合がある。利害関係人への配分額は事前の協議が要る | 配当。抵当権のある債権は、債務名義しかない債権より優先し、抵当権同士は登記が早い順 |
| 残った債務 | 返済義務は残り、返済計画は生活状況を踏まえて決める | 裁判所の案内には記載がない |
住宅金融支援機構「融資住宅等の任意売却」と任意売却パンフレット(令和8年4月)、裁判所「担保不動産競売」から作成(2026年10月3日取得)。
機構の任意売却の流れ
機構のパンフレットが示す流れは次のとおりです。借入先が機構でない場合は、それぞれの金融機関の手続に従います。
- お客さまが仲介業者を選び、「任意売却に関する申出書」を提出する。
- 仲介業者が物件調査をして価格査定書を出す。
- 機構が売出価格を確認して通知する。通知した価格未満で買い手を見つけても、抵当権の抹消に応じられない場合がある。
- 専任媒介契約または専属専任媒介契約を結び、販売活動をする。
- 購入希望者が現れたら、機構が抵当権の抹消に応じられるか審査する(通知までに2週間程度)。
- 抹消を承諾したあとに売買契約を結び、代金の決済と抵当権抹消書類の引き渡しを行う。
販売活動と並行して、差押債権者や後順位抵当権者などの利害関係人と、抹消の条件を確かめる必要があります。利害関係人の有無は最新の登記事項証明書で確かめるよう書かれています。次の場合は、任意売却を断念して競売の手続に着手することがある、とされています。必要書類を速やかに出せないとき、報告をしないとき、初回の媒介契約から6か月たっても買い手が現れないとき、機構が売却予定価格と控除費用を審査して抹消に応じられないと判断したとき。機構が債権回収会社に委託する場合は、申出書の提出後、委託までに通常3か月程度かかります。
相続した家にローンが残っているとき
民法896条は、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する、と定めています。ローンの返済義務も、そのままでは承継の対象です。
ただし、団体信用生命保険(団信)に入っていれば、ローンが保険金で返済される場合があります。住宅金融支援機構の団信は、加入者が死亡や所定の身体障害状態になったときなどに、住宅の持分や返済割合にかかわらず、以後の返済が不要になる生命保険で、支払われた保険金が債務に充当されます。民間の金融機関の団信は、金融機関と契約ごとに条件が違うため、ここでは書きません。借入先に、団信に加入していたか、今回が保険金の支払い事由にあたるかを問い合わせます。
| 状況 | ローンの扱い | 確かめること |
|---|---|---|
| 団信に加入していた | 支払い事由にあたれば、保険金が返済に充てられる | 借入先への連絡、必要書類 |
| 団信に加入していなかった、事由にあたらない | 相続人が一切の権利義務を承継する(民法896条) | 売却額と残高、相続の方法 |
| 借金の全体が分からない | 相続放棄・限定承認という選び方がある | 期限と手続(下のページ) |
民法、住宅金融支援機構の団体信用生命保険の案内から作成(2026年10月3日取得)。
相続放棄をするかどうかの判断と手続は、相続放棄のページと限定承認のページに任せます。相続の放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
買取に出すときの確かめ方
仲介で買い手が付きにくい家には、不動産会社が直接買い取る方法もあります。ラクウルの公式サイトは、買い取れる物件として、事故物件、再建築不可物件、共有持ち分物件、違反建築物件、旧耐震・築古物件、借地権、債務整理物件、長屋連棟式物件、立ち退き物件、底地、紛争物件を挙げています。ローンが残っている家、抵当権の抹消や任意売却については、公式サイトに記載が見つかりませんでした。
買取に聞く前に、次を手元に用意しておくと、話が早く進みます。
- ローンの残高証明書と、借入先の連絡先。売却額との差が、抹消の条件を考える出発点になります。
- 登記事項証明書。抵当権者と順位、後順位の抵当権や差押えがないかを見ます。機構のパンフレットも、利害関係人の有無は最新の登記事項証明書で確かめるよう求めています。
- 買取の窓口に、ローンが残っていることを最初に伝える。対応できるかは窓口の判断になるため、伝えたうえで可否を聞きます。
- 借入先に、買取に出すことを事前に相談する。抵当権者の了解が必要な場合の進め方は、借入先で決まっています。
売却額の目安は、物件ごとの査定でしか分かりません。ここには載せません。
よくある質問
売却額がローン残高より少ないと、家は売れませんか?
売買そのものが禁じられているわけではありません。住宅金融支援機構のパンフレットは、買い手が現れた段階で、機構が抵当権の抹消に応じられるかを審査すると案内しています。通知した売出価格より低い価格で売り出して買い手を見つけても、抵当権の抹消に応じられない場合がある、とも書かれています。売る前に、抵当権者である金融機関へ、いくらで売れたら抹消に応じてもらえるかを確かめてください。
任意売却は法律に定められた手続ですか?
2026年10月3日に取得した民法と民事執行法の全文に、「任意売却」という語は見つかりませんでした。住宅金融支援機構は、任意売却を「不動産競売のように法的手続による強制的な物件処分ではない」ものとして案内しています。条文にある担保権の実行は、担保不動産競売または担保不動産収益執行のうち債権者が選んだ方法で行う、というもの(民事執行法180条)です。
任意売却をすれば、残ったローンはなくなりますか?
住宅金融支援機構のパンフレットは、任意売却による返済金が債権額に満たない場合、破産免責となっている方を除き、残債務の返済義務は残る、と案内しています。そのうえで、任意売却後の返済計画は、生活の状況を踏まえて返済可能な金額を決めていく、という書き方です。他の金融機関の扱いは、それぞれの金融機関に確かめてください。
任意売却を申し出ると、団信の保障はどうなりますか?
住宅金融支援機構のパンフレットには、借入申込日が2017年10月1日以後のフラット35(買取型)で新機構団信に加入している場合、または借入申込受理日が2020年10月1日以後で新機構団信(金利組込方式)に加入している場合、期限の利益の喪失が約款の解約事由にあたるため、全額繰上償還請求の期限日で保障が終了する、とあります。任意売却の申出が、全額の繰上償還を催告する流れに入るためです。加入している団信の扱いは、金融機関に確かめてください。
相続した家にローンが残っているとき、団信で完済されますか?
団信に加入していて、保険金の支払い事由にあたる場合は、保険金がローンの返済に充てられます。住宅金融支援機構の団信は、加入者が死亡したときや所定の身体障害状態になったときなどに、以後の返済が不要になる生命保険です。加入していなかった場合や、金融機関の団信の条件にあたらなかった場合は、民法896条のとおり、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。団信の有無と条件は、借入先の金融機関に問い合わせてください。
買取業者に売れば、オーバーローンでも売れますか?
機構のパンフレットは、抵当権が設定された物件の売買の際の手続を示すもので、買い手の種類を限った書き方ではありません。買取業者への売却でも、抵当権を外す段取りと抵当権者の了解が要る、と考えておくのが安全です。ラクウルの公式サイトの買取対象には「債務整理物件」が挙がっていますが、ローン・抵当権・任意売却についての記載は見つかりませんでした。ローンが残っていることを伝えて、対応できるかを窓口で確かめてください。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(369条・379条から386条・896条・939条)
- e-Gov法令検索 民事執行法(180条)
- 法務局 住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)
- 法務局 抵当権の抹消の登記の申請に必要な書類とその入手先等
- 住宅金融支援機構 融資住宅等の任意売却
- 住宅金融支援機構 任意売却パンフレット(令和8年4月)
- 住宅金融支援機構 新機構団体信用生命保険制度
- 裁判所 担保不動産競売
- りそな銀行 住みかえローン(住み替えローンの一例)
- ラクウル 公式サイト(買取対象)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、売却の方法や債務の整理について助言するものではありません。個別の判断は、借入先の金融機関、弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。