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相続時精算課税のデメリット|暦年課税に戻れない・小規模宅地等の特例が使えない・不動産の登録免許税と取得税・値下がりしても贈与時の価額・孫は2割加算
相続時精算課税の主なデメリットは、一度選ぶと暦年課税に戻れないこと、贈与した宅地に小規模宅地等の特例が使えないこと、不動産は贈与の登録免許税と不動産取得税がかかること、値下がりしても贈与時の価額で加算されること、孫が受けると2割加算になることです。下の表は、国税庁の説明と相続税法の条文から整理したものです。
| デメリット | どういうときに困るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 暦年課税に戻れない | あとで年110万円ずつの暦年贈与に切り替えたくても、選んだ贈与者からの贈与は戻せない | 相続税法21条の9第6項、No.4103 |
| 小規模宅地等の特例が使えない | 贈与した自宅や事業用の土地は、相続のときの評価の減額を受けられない | No.4124 |
| 不動産は贈与の税金が重い | 登録免許税は相続の5倍(1000分の20)、不動産取得税もかかる | No.7191、地方税法73条の7 |
| 値下がりしても贈与時の価額 | 土地や株が下がっても、原則として贈与時の価額で相続財産に足される | 相続税法21条の16、No.4103 |
| 孫は2割加算 | 養子でも代襲相続人でもない孫は、相続税額が2割増える | 相続税法18条・21条の16 |
| 相続税がゼロでも申告が要ることがある | 納めた贈与税の還付を受けるには、相続税の申告が必要 | No.4301 |
国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と e-Gov 法令検索から。2026年10月3日取得。
デメリットが重なりやすいのは、こんな場合
6つのデメリットは、贈与する財産と相手によって、効いてくる数が変わります。
- 自宅や事業用の土地を贈与したい:小規模宅地等の特例が使えず、登録免許税と不動産取得税もかかります(節3・節4)。
- 孫に贈与したい:相続のとき、孫の相続税額に2割が加算されます(節6)。
- 値下がりしそうな財産を贈与したい:原則として贈与時の価額で足されます(節5)。
- 現金を毎年少しずつ渡したい:年110万円の基礎控除は相続時精算課税にもあり、110万円以下なら申告も、相続のときの加算も要りません(国税庁 No.4402・No.4103)。一方で、暦年課税には戻せません(節2)。
相続税がかかるかどうか、どちらが有利かは、財産の額や家族の人数で変わります。このページは原文の整理で、有利不利は判断していません。
暦年課税に戻れない・毎年の手続
相続時精算課税は、贈与者ごとに選びます。届出書を出したあとは撤回できず(相続税法21条の9第6項)、選んだ贈与者から受ける財産は、その年分以後すべて相続時精算課税の対象です。国税庁は、暦年課税へ変更することはできないと説明しています(No.4103)。
選べるのは、贈与をした年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母などから、1月1日に18歳以上の子(推定相続人)または孫への贈与です。選ぶときは、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、「相続時精算課税選択届出書」を提出します。
- 贈与税の申告:1年間の贈与の合計が110万円を超える年は、贈与税の申告が必要です(No.4402)。110万円以下なら申告は不要ですが、初めて選ぶ年の届出書は期間内に出します。
- 特別控除2,500万円:期限内に申告書を出した場合に限って引けます(No.4103)。
- 110万円の枠:特定贈与者が2人以上いる年は、110万円を課税価格であん分します。
枠の使い方と110万円以下のときの扱いは、相続時精算課税の110万円控除に、具体的な数字は相続時精算課税の計算機にあります。
小規模宅地等の特例が使えない
小規模宅地等の特例は、相続や遺贈で取得した宅地等のうち、被相続人などの居住用や事業用だったものの評価額を減らす制度です。国税庁は、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等には、この特例を適用できないと説明しています(No.4124)。
同じ宅地でも、相続で受け継げば特例の対象になり得て、精算課税で贈与を受ければ対象外です。自宅や事業用の土地を生前に渡す場合は、相続のときの評価の減額を受けられなくなる点が、デメリットになります。
特例の内容と適用要件は小規模宅地等の特例とは?、減額される額の試算は小規模宅地等の特例の計算機にあります。
不動産の登録免許税と不動産取得税
不動産を贈与で受けると、所有権の移転登記に登録免許税がかかり、不動産取得税も課されます。どちらも、相続のときと税額が大きく違います。この2つは相続時精算課税だけでなく、暦年課税の贈与でも同じです。
| 税金 | 相続で取得 | 贈与で取得 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 1000分の4 | 1000分の20 |
| 不動産取得税 | 課されない | 課される(標準税率100分の4。住宅・土地の取得は令和9年3月31日まで100分の3) |
国税庁 No.7191、地方税法73条の7・73条の15・附則11条の2。登録免許税の課税標準は、固定資産課税台帳に登録された価格が原則です。
たとえば、固定資産税評価額2,000万円の宅地なら、登録免許税は贈与で40万円、相続で8万円です。不動産取得税は、宅地は令和9年3月31日までは課税標準が価格の2分の1(附則11条の5)なので、2,000万円×1/2×3%=30万円です。相続なら不動産取得税はかかりません。
評価額が違うときの金額と、贈与税を含めた合計は不動産を親から子へ生前贈与したときの税金で計算しています。
値下がりしても贈与時の価額で加算される
特定贈与者が亡くなったとき、相続時精算課税適用財産は、原則として贈与時の価額で相続財産に加算されます(国税庁 No.4103、相続税法21条の16第3項)。令和6年1月1日以後の贈与は、贈与を受けた年分ごとの合計額から基礎控除額110万円を引いた残額です。
たとえば、ある年に2,000万円の宅地を贈与した場合、その年の基礎控除110万円を引いた1,890万円が、相続のときに加算されます。贈与のあとで宅地の評価が1,500万円に下がっても、加算される額は1,890万円のままです。
この年の贈与税は、1,890万円が特別控除2,500万円以内なので0円です。ただし、特別控除は期限内の申告書が条件です(No.4103)。贈与税が0円でも、相続のときには1,890万円を足して相続税を計算します。
災害で被害を受けた場合の再計算の特例は、条文を取得できなかったため、このページでは扱いません。該当しそうなときは、税務署または税理士にご確認ください。
孫に使うと2割加算になる
相続税には、財産を取得した人が被相続人の配偶者と一親等の血族でない場合に、その人の相続税額へ2割を加算する制度があります(相続税法18条)。孫は、代襲相続人になった場合を除き、一親等の血族ではありません。また、孫を養子にした場合も、一親等の血族には含めない扱いです(同条2項。代襲して相続人となった場合は除く)。
孫が相続時精算課税を選んだ贈与を受け、特定贈与者から相続や遺贈を受けなかった場合は、適用財産を遺贈により取得したものとみなして、相続税を計算します(相続税法21条の16第1項)。このため、孫の相続税額には2割が加算されます。
2割加算の対象になる人とならない人、孫への遺贈の計算例は、相続税の2割加算とは?にまとめています。
相続税がかからなくても申告が要るとき
特定贈与者が亡くなったときは、適用財産を相続財産に足して、相続税が出るかを調べます。足した結果が相続税の基礎控除額以下なら、相続税の申告は不要です(国税庁 No.4301)。
ただし、適用財産について既に贈与税を納めている場合は、相続税の申告をすることで還付を受けられます。この申告書は、相続開始の日の翌日から5年を経過する日まで提出できます。相続税が0円でも、贈与税を納めていたなら、申告しないと戻ってきません。
基礎控除以下かどうかの目安は、相続税の計算機で試算できます。
暦年課税との違い(メリットとの比較)
相続時精算課税には、暦年課税にない特徴もあります。2つの課税方法を、国税庁の説明で並べました。どちらが有利かは、財産や年数、家族の状況で変わるため、この表では判断していません。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 贈与税の枠 | 1年間の合計から110万円を引く | 110万円を引き、さらに特別控除2,500万円まで |
| 枠を超えた分の税率 | 10%〜55% | 一律20% |
| 選べる人 | 制限なし | 60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫 |
| 相続のときの加算 | 相続開始前の一定期間の贈与(最長7年) | 贈与時の価額(110万円を引いた残額)を、特定贈与者の相続のとき加算 |
| 課税方法の変更 | 精算課税を選べる | 暦年課税に戻せない |
国税庁 No.4103・No.4161・No.4402・No.4408。暦年課税の加算対象期間は、相続開始が令和8年12月31日までは3年、令和13年1月1日以後は7年で、間は経過措置があります。
暦年課税の加算期間の経過措置は暦年贈与の持ち戻しは3年から7年へに、贈与税の計算は贈与税(暦年課税)の計算機にあります。
よくある質問
相続時精算課税のデメリットは何ですか?
主なものは6つです。①一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません(相続税法21条の9第6項、国税庁 No.4103)。②贈与で取得した宅地等には小規模宅地等の特例を適用できません(No.4124)。③不動産は贈与の登録免許税(1000分の20)と不動産取得税がかかり、相続より負担が増えます(No.7191、地方税法)。④財産が値下がりしても、原則として贈与時の価額で相続財産に加算されます。⑤孫など一親等の血族でない人が受けると、相続のときに2割加算の対象になります(相続税法18条)。⑥相続税がかからない場合でも、納めた贈与税の還付には申告が必要です(No.4301)。
相続時精算課税を選んだあとに、やめることはできますか?
届出書を提出したあとは、撤回できません(相続税法21条の9第6項)。選んだ贈与者から受ける贈与は、その年分以後すべて相続時精算課税の対象で、暦年課税には変更できないと国税庁が説明しています(No.4103)。贈与者ごとに選ぶので、選んでいない別の贈与者からの贈与は暦年課税のままです。
相続時精算課税で贈与された土地には、小規模宅地等の特例を使えませんか?
使えません。国税庁は、小規模宅地等の特例について「相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等」は特例の適用を受けることができないと説明しています(No.4124)。特例は、相続・遺贈で取得した宅地等が対象だからです。減額の内容は「小規模宅地等の特例とは?」のページにあります。
贈与した財産が値下がりしたら、相続税も下がりますか?
原則として下がりません。相続のときに加算されるのは、原則として贈与時の価額です(国税庁 No.4103、相続税法21条の16第3項)。令和6年1月1日以後の贈与は、贈与を受けた年分ごとの合計額から基礎控除額110万円を引いた残額です。逆に、贈与のあとで値上がりしても、加算されるのは贈与時の価額です。災害で被害を受けた場合の扱いは、税務署または税理士にご確認ください。
孫に相続時精算課税を使うと、どうなりますか?
孫が被相続人の養子でも代襲相続人でもない場合、孫は一親等の血族でも配偶者でもないため、相続のとき孫の相続税額に2割が加算されます(相続税法18条)。孫が特定贈与者から遺贈を受けていない場合も、相続時精算課税適用財産は遺贈により取得したものとみなして計算します(同法21条の16第1項)。対象になる人とならない人は「相続税の2割加算とは?」にまとめています。
相続のとき、贈与分を足した結果が基礎控除以下なら、申告は要りませんか?
相続税の申告は必要ありません(国税庁 No.4301)。ただし、相続時精算課税適用財産について既に納めた贈与税がある場合は、相続税の申告をすることで還付を受けられます。この申告書は、相続開始の日の翌日から5年を経過する日まで提出できます。
不動産を贈与するときは、暦年課税でも登録免許税と不動産取得税がかかりますか?
かかります。これらは贈与の課税方法に関係なく、贈与という取得の仕方でかかる税金です。登録免許税は、贈与などによる所有権の移転が1000分の20、相続は1000分の4です(国税庁 No.7191)。不動産取得税は、相続による取得には課されませんが、贈与による取得には課されます(地方税法73条の7)。金額の計算は「不動産を親から子へ生前贈与したときの税金」にあります。
相続時精算課税と暦年課税は、どちらが得ですか?
一概には言えません。贈与する財産の種類(現金か不動産か)、贈与する年数と金額、相続税がかかる見込み、贈与者が今後何年生きるかなどで変わります。このページはデメリットを国税庁・条文の原文で整理したもので、有利不利の判断はしていません。具体的な判断は、税務署または税理士にご相談ください。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務
- 国税庁 タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合
- 国税庁 タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表
- e-Gov法令検索 相続税法(第18条・第21条の9・第21条の15・第21条の16)
- e-Gov法令検索 地方税法(第73条の7・第73条の15・附則第11条の2・第11条の5)
- 相続アシスト(税理士法人SWATS) 公式サイト
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の贈与・相続の税額や有利不利は、税務署または税理士にご相談ください。