相続手続きの代行は誰に頼む?司法書士・税理士・行政書士・銀行の違いと頼める手続き・費用の決まり方
この記事は、家族が亡くなり、戸籍集めから不動産や預貯金の名義変更まで、自分でやる時間がない方に向けています。相続手続きは、手続きごとに頼める先が条文で決まっています。登記の代理は司法書士、相続税の申告の代理と申告書の作成は税理士、官公署に出す書類の作成は行政書士の業務で、資格のない者は報酬を得て行えません。司法書士の報酬は、日本司法書士会連合会の報酬アンケートで、相続登記が平均74,888円、遺産承継が平均272,780円でした。金額は不動産の数や相続人の人数で変わるので、見積りの確かめ方も書きます。
| 知りたいこと | 原文に書かれていること | 出典 |
|---|---|---|
| 登記の代理 | 「登記又は供託に関する手続について代理すること」は司法書士の業務。司法書士でない者は、他の法律に別段の定めがある場合を除いて行えない | 司法書士法3条・73条 |
| 相続税の申告 | 申告の代理(税務代理)と申告書の作成は税理士の業務。税理士でない者は、別段の定めがある場合を除いて行えない | 税理士法2条・52条 |
| 書類の作成 | 行政書士は官公署に提出する書類や権利義務・事実証明の書類を作成する。他の法律で制限されたものはできない | 行政書士法1条の3 |
| 費用 | 司法書士の報酬は各司法書士が自由に定める。行政書士も各自が定める | 日司連・日行連 |
出典:e-Gov法令検索、日本司法書士会連合会、日本行政書士会連合会(いずれも2026年10月2日取得)。
資格ごとに、条文で頼める手続きが決まっている
相続手続きの代行をうたう事業者は多くありますが、法律が資格者に独占させている仕事は決まっています。条文の文言は次のとおりです。
| 資格 | 条文が定める仕事 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 他人の依頼を受けて、登記又は供託に関する手続の代理、法務局に提出する書類の作成、これらの相談を行う | 司法書士法3条1項1号・2号・5号 |
| 税理士 | 他人の求めに応じ、税務代理(申告等の代理・代行)、税務書類の作成、税務相談を行う | 税理士法2条1項 |
| 行政書士 | 他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成する。他の法律で制限されているものはできない | 行政書士法1条の3第1項・2項 |
| 弁護士 | 訴訟事件・不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行う。弁理士と税理士の事務も当然に行える | 弁護士法3条 |
出典:e-Gov法令検索 司法書士法・税理士法・行政書士法・弁護士法(2026年10月2日取得の施行日時点の版)。
資格のない者が行えないことも、条文に書かれています。司法書士法73条1項は、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、登記の代理などの業務を行ってはならないとし、ただし書で「他の法律に別段の定めがある場合」を除いています。税理士法52条は、税理士又は税理士法人でない者は、別段の定めがある場合を除いて税理士業務を行ってはならないと定めます。行政書士法19条1項は、行政書士又は行政書士法人でない者が、報酬を得て業として1条の3の業務を行うことを禁じています。
弁護士法72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを、別段の定めがある場合を除いて禁じています。
手続き別に見る:誰に頼むことになるか
実際の相続は、戸籍の収集から預貯金の解約まで、複数の手続きが続きます。各連合会が公表している業務の説明と、条文を手続き別に並べると次のとおりです。
| 手続き | 頼める先 | 原文の根拠 |
|---|---|---|
| 相続登記の申請 | 司法書士 | 司法書士法3条1項1号(登記の手続の代理)、73条1項 |
| 相続税の申告 | 税理士 | 税理士法2条1項、52条 |
| 遺産分割協議書・相続関係説明図の作成 | 司法書士(登記に使うもの)、行政書士(登記・税務に関するものを除く) | 日司連の設例が「登記原因証明情報(遺産分割協議書及び相続関係説明図)の作成」を含む。日行連が「税務・登記申請業務に関するものを除き」書類作成を引き受けると説明 |
| 戸籍の収集、相続人・財産の調査 | 司法書士、行政書士 | 日司連の設例が「戸籍謄本等5通の交付請求」を含む。日行連が「前提となる諸々の調査も含め」引き受けると説明 |
| 預貯金の解約・各相続人への振込 | 司法書士(遺産承継業務)、信託業務を兼営する金融機関 | 日司連の設例が「預貯金口座の解約手続及び各人の口座への振込手続を代理」を含む。兼営法1条1項7号 |
| 相続人どうしで争いがある | 弁護士 | 弁護士法3条・72条。日行連も「法的紛争段階にある事案」を除くと説明 |
出典:e-Gov法令検索、日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(令和6年3月実施)」、日本行政書士会連合会「遺言・相続」(2026年10月2日取得)。
不動産の名義変更が残っている家があるなら、登記の部分は司法書士の業務です。相続登記は2024年4月から義務になっているため、長く放置している家ほど、戸籍の収集から登記の申請までを一括で引き受ける窓口に聞く価値があります。
銀行(信託銀行)に頼めるもの
銀行の相続手続きの代行サービスに関わる条文は、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」です。同法1条1項は、銀行その他の金融機関が、内閣総理大臣の認可を受けて、信託業のほか次の業務を営めると定めています。
- 4号:財産に関する遺言の執行
- 7号:財産の管理、財産の整理又は清算、債権の取立て、債務の履行に関する代理事務
「遺産整理」という語そのものは、この法律の全文にありません。三井住友信託銀行の「相続手続トータルサービス<まかせて安心>」の説明では、手続き代行・サポートの内容が次の6項目で示されています(2026年10月2日取得)。
- 法定相続人の確定
- 相続財産の調査、把握
- 遺産分割協議のアドバイス
- 預貯金、有価証券などの換金、名義変更(各金融機関の所定の手続きを代行)
- 不動産の名義変更
- 所得税・相続税など納税資金の手当てのアドバイス
申し込む前に確かめたいのは、不動産の名義変更の登記を誰が申請するのかと、手数料の算定方法です。同ページには、登記を誰が申請するかは書かれていません。手数料は各行の案内で確かめてください。
費用の決まり方と、公表されている数字
日本司法書士会連合会は、司法書士の報酬を「各司法書士が自由に定める」とし、会則では報酬の額や算定方法・諸費用を明示して、依頼者との合意で決めることになっていると説明しています。日本行政書士会連合会も、報酬額は行政書士各々が自由に定めるとしています。税理士の費用は相続税申告の費用はいくら?にまとめています。
両連合会は、参考として報酬の統計を公表しています。
| 業務 | 平均額(回答数) | 設例・調査の条件 |
|---|---|---|
| 司法書士:相続登記 | 74,888円(1,109件) | 土地1筆・建物1棟(固定資産評価額の合計1,000万円)、法定相続人3名のうち1名が単独相続。戸籍謄本等5通の交付請求、遺産分割協議書と相続関係説明図の作成、登記申請の代理。登録免許税などの実費は別 |
| 司法書士:遺産承継 | 272,780円(502件) | 3つの金融機関に各1,000万円の預貯金、相続人3名が各1,000万円を相続する方針。委任契約書と遺産分割協議書を作成し、口座の解約と各人の口座への振込を代理 |
| 行政書士:遺産分割協議書の作成 | 69,752円(705件) | 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。立替金は含まない |
| 行政書士:相続人及び相続財産の調査 | 61,722円(443件) | 同上 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(令和6年3月実施)」(消費税10%を含む)、日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(消費税を含む)。2026年10月2日取得。
日本司法書士会連合会は、設例の報酬は「あくまで参考例」とし、相続登記は相続人や不動産の数で大きく変わると注記しています。遺産承継も、相続人の人数、財産の多寡や種類、遺産分割内容の複雑さで大きく異なるとしています。日本行政書士会連合会も、同じ業務でも取扱い内容によって報酬額に大きな差が生じるとしています。
窓口型の事業者の料金表の例
戸籍の収集から登記の申請までを一括で引き受ける事業者は、手続きを組み合わせたプランを公表しています。相続手続きのnocos(ノコス)の公式サイトに、次の表示があります。
| 手続き | 公式サイトの表示(税込) | 別途になるもの |
|---|---|---|
| 戸籍の収集と相続関係図の作成 | 42,900円 | 数次相続・代襲相続・法定相続人が5名を超える場合。兄弟姉妹が相続人になる場合は69,300円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 71,500円 | 遺産の種類・数・金額、相続人の人数などによる加算。残高証明書や登記事項証明書などの取得費用 |
| 預貯金の名義変更・解約(有価証券口座も対応) | 金融機関1か所につき55,000円 | 合計残高が1,000万円を超える場合。新規の株式口座開設など特別な手続き |
| 不動産の名義変更 | 71,500円 | 登録免許税(固定資産評価額の0.4%)。複数の物件、不動産の価格が1,000万円を超える場合 |
| 相続スタンダードプラン(戸籍の収集から登記の申請までを一括) | 165,000円 | 交通費・郵送費・登録免許税・戸籍や不動産資料の実費。標準的な居住用住宅(土地1筆・建物1戸)の料金で、1,000万円を超える場合は別途相談 |
| 相続税の申告 | 資産総額の0.5%〜1.2%(税理士報酬の目安) | 具体的な額は資産内容・業務量などで個別に算出。申告期限が近くなってからの依頼は加算料金 |
出典:nocos 公式サイト(2026年10月2日取得)。公式サイトでは、プランのうち登記の申請などは「実際の手続きは司法書士が代行します」と注記されています。料金や条件は変更される場合があります。ほかの事業者の費用は調べていません。
日司連の設例とこの料金表では、含まれる手続きの範囲が違うため、金額だけを並べて比べることはできません。見積りを取るときは、次の4点を確かめます。
- 戸籍の収集、協議書の作成、登記の申請、預貯金の解約のうち、どこまで含まれるか
- 登録免許税、戸籍の取得費用、交通費などの実費が別かどうか
- 不動産の数や評価額、相続人の人数に上限があり、超えると加算されるか
- 登記の申請や税務の申告を、誰が行うか
自分でやる手続きと頼む手続きを分けるとき
全部を頼まずに、手続きごとに分ける方法もあります。登記の申請だけを自分でやる場合の手順は相続登記を自分でやる方法に、期限内に相続登記が難しいときの手続きは相続人申告登記とは?にあります。
費用を先に試算したいときは、相続登記費用計算機で登録免許税と司法書士報酬を合わせた総額を確かめられます。