相続登記・手続 読了時間:約11分

PR(本記事はアフィリエイト広告を含みます)

数次相続の不動産登記|祖父名義のままの家を相続したときの申請書・一括で申請できる場合・必要書類・登録免許税

祖父名義の登記を直さないまま、相続人だった親も亡くなったとき、法務局は「相続・遺産分割(数次相続)」の申請書の記載例を示しています。記載例は、2回分の相続を原因欄に並べて一件で申請する形です。ただし、最終の相続以外の相続で共同相続人数名が権利を取得している場合は、一件の申請では登記できないと書かれています。この記事は、祖父母名義のまま残った家・土地を整理して売りたい方に向けて、記載例と条文に書かれている範囲を整理します。

祖父名義のまま親が亡くなったとき:数次相続とは

法務局の申請書様式の一覧には、「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」の様式と記載例があります。この記載例が想定しているのは、第1の相続が開始し、その相続の登記が未了の間に、その相続人が死亡して第2の相続が開始した場合です(法務局)。

民法882条は、相続は死亡によって開始すると定めています。896条は、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(被相続人の一身に専属したものを除く)と定めています。祖父が亡くなって相続が始まり、その登記をしないうちに祖父の相続人(父)が亡くなれば、父の死亡でも相続が始まります。

人立場登記簿の状態
祖父第1の被相続人。登記簿上の所有者名義は祖父のまま
父祖父の相続人。祖父の相続登記をしないまま死亡祖父の相続の登記が未了のため、名義人になっていない
あなた父の相続人。いま登記をしたい人名義人にしたい人

出典:法務局「不動産登記の申請書様式について」記載例、民法882条・896条(2026年10月2日取得)。

法務省は相続人申告登記の案内で、登記記録上の所有者の相続人を「第一次相続人」、その相続人の相続人を「第二次相続人」と呼んでいます。

相続2回分を一件の申請で登記できるのか

法務局の記載例は、2回分の相続を一件の申請書にまとめた形です。記載例の登場人物は、第1の被相続人が法務太郎、その相続人が法務春夫、春夫の相続人が法務一郎と法務温子です。

申請書の欄記載例の内容読み方
登記の目的所有権移転相続ごとに別の申請書にはしていない
原因「平成2年3月21日法務春夫相続」「令和7年6月20日相続」の2行1行目は第1の被相続人(太郎)の死亡日と、その相続人の氏名に「相続」。2行目は春夫の死亡日に「相続」(注1)
相続人「(被相続人 法務太郎)」に続けて、最終の相続人2人の住所・氏名と持分各2分の1被相続人の氏名は登記記録・登記原因証明情報と合っている必要がある(注2)
添付書類登記原因証明情報、住所証明情報、代理権限証書戸籍などの詳細は「必要書類」の節(注4〜6)
課税価格・登録免許税2,000万円・80,000円課税価格の1,000分の4(注16・17)

出典:法務局「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)記載例」(2026年10月2日取得)。

記載例の相続関係説明図に載っている太郎の相続人は、春夫だけです(太郎の妻は昭和63年に先に亡くなっています)。この例は、祖父にあたる人の相続で権利を取得した人が1人だけで、その人の相続人が最終の相続人になる形です。

記載例の冒頭には、次の注意書きがあります。

祖父の相続人が父のほかにもいて、その全員が権利を取得している形なら、この注意書きに当たる可能性があります。その場合に何件の申請を、どの順番で出すかは、記載例には書かれていません。祖父の相続人が誰で、遺産分割でだれが取得したかを戸籍で確かめたうえで、法務局の登記手続案内(予約制。法務省Q&A)か司法書士に聞くのが確実です。

この記事は、法務局の記載例と条文に書かれていることだけを整理しています。一件で申請できる条件の細かい範囲(過去の先例の要旨)は、法務省・法務局の公開ページで確認できなかったため書いていません。

令和8年10月5日以降に申請する場合は、法務局が別の様式と記載例(令和8年9月11日更新)を用意しています。申請人となる相続人の国籍等を申請書に書き、国籍等を証する情報を添付する点が変わります。日本国籍の方は、相続人であることが分かる戸籍全部(個人)事項証明書で足りるとされています。

遺産分割協議書はどうするか

様式一覧の名称は「相続・遺産分割(数次相続)」ですが、記載例の相続人欄は持分2分の1ずつで、遺産分割協議書の見本そのものは載っていません。記載例の注4は、遺産分割協議書について「別にその謄本を提出する必要があります」と書いています。

遺産分割協議書について、法務局のご案内(遺産分割協議編)に書かれているのは次の点です。

数次相続で誰が協議に加わり、どう署名するかの公的な記載例は、取得できませんでした。そのため、署名の書き方はここに載せません。司法書士か弁護士に確認してください。一般的な協議書の項目は遺産分割協議書の書き方にまとめています。

必要書類

記載例の注と、法務局の「必要な書類とその入手先等」(遺産分割協議の場合)から、書類を並べます。

誰の・何の書類記載例・一覧の記載
被相続人出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本など注4。第1・第2のどちらの被相続人にも要るかは、記載例に明記なし
相続人全員戸籍全部(一部)事項証明書注4。被相続人が死亡した日以後の証明日のもの。重複する戸籍は重ねて出さなくてよい
被相続人の登記上の氏名・住所が戸籍と異なる場合住民票の除票または戸籍の附票の写し注4。登記記録上の所有者であることを示す
不動産を取得する相続人住民票の写し注5。住民票コードを申請書に書けば省略可
相続人全員印鑑証明書、遺産分割協議書必要書類一覧(遺産分割協議の場合)
不動産固定資産課税明細書一覧。登記申請をする日の属する年度のもの
代理人が申請する場合委任状(代理権限証書)注6
原本の還付を希望する場合相続関係説明図注21、一覧

出典:法務局 数次相続の記載例(注4〜6・21)、「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(2026年10月2日取得)。

法定相続情報証明制度を使っている場合は、法定相続情報一覧図の写しで戸籍に代えられると注4に書かれています。取り方は法定相続情報一覧図の取り方にあります。戸籍の集め方が分からないときは、本籍地または最寄りの市区町村役場に問い合わせます(注4)。

登録免許税と免税措置

相続による所有権の移転の登記の税率は、課税価格の1,000分の4です(法務局ハンドブック)。記載例の注16・17は、計算を次のように説明しています。

項目内容出典
課税価格固定資産課税台帳に登録された価格(当分の間100分の100)。1,000円未満は切り捨て、全額が1,000円未満なら1,000円記載例 注16
登録免許税課税価格の1,000分の4。100円未満は切り捨て、1,000円未満なら1,000円記載例 注17
記載例の数字課税価格2,000万円で、登録免許税80,000円記載例 1・2ページ

出典:法務局 数次相続の記載例、登記手続ハンドブック(遺産分割協議編)(2026年10月2日取得)。

相続登記には免税措置があります。租税特別措置法84条の2の2は、令和9年3月31日までを期限として、次のように定めています。

場面条文の内容条文
相続で土地を取得した個人が、登記を受ける前に死亡したその個人を土地の登記名義人とするために受ける登記は、登録免許税を課さない第1項
不動産の価額が100万円以下の土地相続による所有権の移転の登記は、登録免許税を課さない第2項

出典:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」、e-Gov法令検索 租税特別措置法84条の2の2(2026年10月2日取得)。

法務局は第1項の例として、登記名義人Aから相続人Bが土地を相続したのに、その相続登記をしないままBが亡くなった場合、Bを登記名義人とするための相続登記は免税になると説明しています。申請書には「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と書きます。条文は土地の所有権について定めており、建物には書かれていません。

数次相続を一件で申請したとき、相続ごとに登録免許税がかかるのか、第1項の免税が使えるのかは、取得した原文に書かれていないため断定しません。申請する前に、法務局か司法書士に、この不動産の場合の税額を確かめてください。登記費用の相場は相続登記の費用の相場にあります。

3年の期限と過料

相続登記には申請の義務があります。条文と法務省の説明は次のとおりです。

場面期限・内容出典
相続で所有権を取得した相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請不動産登記法76条の2第1項
遺産分割で法定相続分を超えて取得した遺産分割の日から3年以内に申請同条第2項
令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、未登記令和9年3月31日まで法務省Q&A
正当な理由なく申請を怠った10万円以下の過料不動産登記法164条1項

出典:e-Gov法令検索 不動産登記法、法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(2026年10月2日取得)。

祖父の相続と父の相続のそれぞれで、期限をどの日から数えるかは、法務省のQ&Aに書かれていませんでした。期限が近いときは、日付を示して法務局か司法書士に確認してください。

期限までに遺産分割がまとまらないときは、相続人が単独で申し出られる相続人申告登記で、申請義務を果たしたものとみなされます(同法76条の3第2項)。法務省は、数次相続の場合の戸籍の例も示しています。詳しくは相続人申告登記とはにまとめました。ただし、相続人申告登記は権利関係を公示するものではなく、売却や抵当権の設定には相続登記が必要です(法務省Q&A)。

名義を整えて売る

名義が祖父のままの家を売るには、相続登記が必要です(法務省Q&A)。祖父の相続人の人数や遺産分割の有無で登記の形が変わるため、先に戸籍で相続関係を確定します。未登記の建物が含まれるときは未登記建物を相続したらを、共有になっているときは共有名義の不動産を売却・分割するにはを見てください。

買取業者の一つ、ラクウルが公式サイトに書いている内容は次のとおりです(2026年10月2日に確認)。

公式サイトには、名義が祖父母のままの物件や、数次相続の登記が済んでいない物件の買取条件についての記載はありません。登記簿の名義人と、現在の相続人の関係を示せるようにして、問い合わせ時に伝えるのが確実です。

よくある質問

祖父名義のままの家で、相続人だった父も亡くなっています。登記はどうなりますか?

法務局は、第1の相続が開始し、その相続の登記が未了の間に、その相続人が死亡して第2の相続が開始した場合の申請書の記載例を示しています。記載例では、登記の目的を「所有権移転」とし、原因欄に第1の相続(死亡日と相続人の氏名と「相続」)と第2の相続(死亡日と「相続」)を並べ、最終の相続人を相続人欄に書きます。ただし、最終の相続以外の相続について共同相続人数名が権利を取得している場合は、一件の申請では登記できないと記載例に書かれています。

祖父の相続人が父のほかにもいる場合、一件で申請できますか?

記載例の注意書きは、最終の相続以外の相続について共同相続人数名が権利を取得している場合は一件の申請では登記できない、としています。祖父の相続人が複数いて、その全員が権利を取得している形なら、この注意書きに当たる可能性があります。ただし、遺産分割で誰が取得したかによっても形が変わり、その場合に何件をどの順で申請するかは、記載例に書かれていません。戸籍で相続関係を確かめたうえで、法務局の登記手続案内(予約制)か司法書士にご相談ください。

数次相続の遺産分割協議書は、誰の署名が要りますか?

法務局のご案内(遺産分割協議編)は、遺産分割協議書には相続人全員が印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、その印鑑証明書を各1通添付するとしています。この印鑑証明書は、作成後3か月以内といった制約はありません。数次相続で誰が協議に加わり、どう署名するかの公的な記載例は取得できませんでした。法務局は遺産分割協議書の作成の相談に応じられないと明記していますので、司法書士か弁護士にご確認ください。

登録免許税はいくらかかりますか?

相続による所有権の移転の登記の税率は、課税価格の1,000分の4です。課税価格は固定資産課税台帳に登録された価格で、1,000円未満は切り捨てます。法務局の記載例は、課税価格2,000万円の場合の登録免許税を80,000円としています。相続ごとに分けて申請したときの合計額や、一件で申請したときに租税特別措置法84条の2の2第1項の免税が使えるかは、取得した原文に書かれていませんでした。価額が100万円以下の土地は、同条第2項で令和9年3月31日までの登記について登録免許税が課されません。

期限はいつまでですか? 過ぎるとどうなりますか?

不動産登記法76条の2第1項は、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならないと定めています。令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産で未登記のものは、令和9年3月31日までです(法務省Q&A)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(同法164条)。数次相続で、どの相続の知った日から数えるかは、法務省のQ&Aには書かれていませんでした。

名義が祖父のままでも、家を売れますか?

法務省のQ&Aは、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりするときは相続登記が必要だと説明しています。名義が祖父のままの不動産を売るには、まず登記の名義を整える必要があります。整え方は、祖父の相続人の人数や遺産分割の有無で変わります。買取業者のラクウルは公式サイトに、相続前でも相談でき、書類が揃っていなくても査定できると書いています。名義が祖父母のままの物件の買取条件は、公式サイトに記載がありません。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案での登記の件数・順番・必要書類・登録免許税の額・期限の数え方は、司法書士・弁護士・法務局にご確認ください。

運

空き家計算機 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。空き家・相続不動産の活用・売却・管理について、国土交通省・法務省・農林水産省などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。