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原野を相続したら|相続税の評価・相続登記・届出・相続放棄・売れないときの選択肢

相続した原野は、相続税の評価は固定資産税評価額に倍率を掛ける方法が基本で、相続登記は取得を知った日から3年以内、相続放棄は3か月以内と、期限の短い順に手続きが並びます。手放す方法として、相続土地国庫帰属制度は地目が原野であること自体は申請できない理由にならず、審査手数料は土地一筆につき14,000円です。相続放棄は相続全体について行うもので、原野だけを選ぶ形ではありません。

このページは、相続した原野を手放したい方向けです。評価の方法、登記・届出、放棄と国庫帰属の違い、売れないときの選択肢を、法令と国税庁の原文で順に整理します。

原野の相続税評価は何で決まるか

国税庁の財産評価基本通達は、原野の評価を3つに分けています。土地の地目は課税時期の現況で判定します(同通達7)。登記簿の地目が原野でも、現況が違えば別の地目として評価されることがあります。

区分評価の方法根拠
純原野固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定める倍率を掛ける(倍率方式)評基通58
中間原野固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定める倍率を掛ける(倍率方式)評基通58-2
市街地原野宅地とした場合の1平方メートル当たりの価額から造成費相当額を引き、地積を掛ける(宅地比準方式)。倍率が定められた地域では固定資産税評価額に倍率を掛ける評基通58-3

出典:国税庁 財産評価基本通達 第5節 原野及び原野の上に存する権利(2026年10月2日取得)。

倍率方式の計算は、固定資産税評価額×倍率です。たとえば固定資産税評価額が40万円で、倍率を1.1と仮置きすると、40万円×1.1=44万円です。この倍率は説明のための仮の数字で、実際の倍率は国税庁サイトの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で地域ごとに確かめます(タックスアンサーNo.4602)。固定資産税評価額の調べ方は固定資産税評価額の調べ方にあります。

相続税がかかるかどうかは、原野の評価額だけでは決まりません。同じ被相続人から財産を取得した全員の課税価格の合計が、基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を超えるかで決まります(相続税法第15条)。超えて相続税額があるときは、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告します(同法第27条)。

相続登記と、森林法の届出

相続登記は、相続で所有権を取得した人が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ取得を知った日から3年以内に申請します(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です(同法第164条第1項)。条文に、土地の価値や地目による除外はありません。

遺産分割がまとまらないなど、期間内に登記できない事情があるときは、相続人である旨を登記官に申し出る「相続人申告登記」があります。期間内に申出をすると、申請義務を履行したものとみなされます(同法第76条の3第2項)。ただし、その後の遺産分割で所有権を取得したときは、分割の日から3年以内に登記を申請します(同条第4項)。手続きと費用は相続登記の義務化のページにまとめています。

森林法の届出は、地域森林計画の対象となっている民有林について、新たに所有者となった人が市町村長に届け出る制度です(同法第10条の7の2第1項)。届出は所有者となった日から90日以内で(同法施行規則第7条第1項)、届出をしない、または虚偽の届出をすると10万円以下の過料です(同法第213条)。

この対象になるかは、地目ではなく土地の状態で決まります。森林法第2条は、森林を「木竹が集団して生育している土地」などと定義しています。地目が原野でも木竹が集団して生育していれば該当しうるため、原野が対象外とは言い切れません。確かめるには、土地のある市町村の林務担当窓口に問い合わせます。山林の場合の届出は山林を相続したらどうする?で詳しく扱っています。

相続放棄と国庫帰属を比べる

原野を手放す手段として、相続放棄と相続土地国庫帰属制度は、手放す範囲と期限が大きく違います。

項目相続放棄相続土地国庫帰属
手放す範囲「相続について」放棄する。初めから相続人でなかったものとみなす(民法915条、939条)申請した土地の一筆ごとに承認される(法第5条第2項)
期限・資格自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。家庭裁判所は期間を伸長できる(民法915条第1項)相続等(相続、相続人への遺贈)で土地を取得した人が申請できる(法第2条第1項)
お金家庭裁判所の手続きの費用(費用のページ)審査手数料は一筆14,000円。承認の通知から30日以内に負担金を納める(令第3条、法第10条第3項)
できない・残ること相続財産の一部を処分すると単純承認とみなされる(921条1号)。放棄の時に現に占有していれば、引き渡すまで保存義務が残る(940条)建物のある土地・境界が明らかでない土地などは申請できない。崖や地上の樹木などがあると承認されない(法第2条第3項、第5条第1項)

出典:民法、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律・同施行令(e-Gov、2026年10月2日取得)。

相続放棄は原野以外の財産も受け取れなくなるため、原野だけが負担のときの手段にはなりません。放棄後の管理の考え方は実家を相続放棄したら管理義務はどうなる?、手続きは相続放棄は自分でできる?にあります。

国庫帰属は、原野だけを手放したいときに使える可能性があります。申請できない土地の条件に、地目が原野であることは含まれていません。境界が明らかでない土地は申請できないため(法第2条第3項第5号)、原野でも境界がはっきりしない場合は、先に境界を確かめます。確認の手順は相続した土地の境界確認と測量にあります。

国庫帰属の負担金は、原野だといくらか

負担金は、国有地の種目ごとの10年分の標準的な管理費用を考慮して政令で定められています(法第10条第1項)。施行令第5条は、土地の利用状況で4つに分けています。登記の地目ではなく、現況と従前の使用状況で区分される書き方です。

土地の区分負担金根拠
市街化区域内の宅地(直ちに建物の敷地にできる土地)面積に応じた額令第5条第1項第1号
主に農地として利用され、一定の区域内にある土地面積に応じた額同項第2号
主に森林として利用されている土地面積に応じた額同項第3号
前三号以外の土地20万円同項第4号

出典:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(e-Gov、2026年10月2日取得)。

原野がどの区分に当たるかは、現況で決まります。宅地・農地・森林のどれにも当たらない原野は、第4号の20万円です。現況が主に森林として使われている土地は第3号に当たり、面積に応じた額になります。区分の当てはめは個別の判断になるため、申請前に法務局に相談してください。

承認されない土地には、崖(勾配30度以上かつ高さ5メートル以上)のほか、地上に管理や処分を妨げる樹木などがある土地、鳥獣や病害虫の被害のおそれが軽微でない土地などが挙げられています(法第5条第1項、令第4条)。審査手数料や要件の全体は相続土地国庫帰属制度の記事にあります。

売れないときの選択肢

原野を売る、寄付する、国庫帰属を申請するという選択肢は、建物のある空き家の場合と共通する部分があります。空き家の処分方法のページに、売る・寄付・解体・国庫帰属を費用とできない場合で比べています。原野には建物がないため解体の項は当たりませんが、寄付は受け入れるかどうかを寄付先が決めること、国庫帰属は条件に合う土地だけが対象であることは同じです。

手放せないあいだの負担は、土地の維持費のページに整理しています。使い道を探すなら相続した土地の活用法5選があります。

期限のある手続きから順に、次の流れで進めると抜けにくくなります。

よくある質問

原野を相続したら、相続税はかかりますか?

原野だけで決まるのではなく、同じ被相続人から財産を取得した全員の課税価格の合計が、基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数。相続税法第15条)を超えるかで決まります。超える場合で相続税額があるときは、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告します(同法第27条)。原野の評価額が小さくても、ほかの財産と合算して判定します。

値段が付かない原野でも、相続登記は必要ですか?

不動産登記法第76条の2は、相続で所有権を取得した人に、取得を知った日から3年以内の登記申請を義務づけており、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(同法第164条第1項)。条文に、土地の価値や地目による除外はありません。すぐに登記できない事情があるときは、相続人である旨を申し出る相続人申告登記(同法第76条の3)で、この期間内の申請義務を履行したものとみなされます。

原野だけを相続放棄することはできますか?

民法第915条第1項は「相続について」放棄をすると定め、第939条は、放棄した人はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなすとしています。財産ごとに放棄するかどうかを選ぶ形ではなく、預貯金など原野以外の財産も受け取れなくなります。また、相続財産の一部を処分すると単純承認をしたものとみなされます(第921条第1号)。

原野は相続土地国庫帰属制度を使えますか?

法第2条第3項の「申請できない土地」に、地目が原野であることは含まれていません。ただし、建物の存する土地、境界が明らかでない土地などは申請できず、申請できても崖や地上の樹木などがあると承認されません(法第5条第1項)。審査手数料は土地一筆につき14,000円で、承認後は負担金を30日以内に納めます。個別の可否は法務局に確認してください。

原野を相続したときも、森林の土地の所有者届出は必要ですか?

森林法の届出(第10条の7の2)の対象は、地域森林計画の対象となっている民有林です。森林は同法第2条で「木竹が集団して生育している土地」などと定義されており、登記の地目ではなく土地の状態で決まります。地目が原野でも木竹が集団して生育していれば該当しうるため、市町村の林務担当窓口で確かめてください。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の土地の評価額や手続きの要否を示すものではありません。相続税は税務署や税理士に、相続登記は法務局や司法書士に、相続放棄は家庭裁判所に、森林法の届出は市町村に、国庫帰属の可否は法務局にご確認ください。法令は改正される場合があるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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